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Fair Play
Josh Lanyon
FairPlay★★★ summary:
50年前、Roland Mills、すなわちElliotの父親は世界を変えようとして過激な戦いに身を投じた、左翼の闘士であった。
今でこそ引退した大学教授である彼が、最近、回想録を書こうとしているのはElliotも知っていた。
だがその本が、父の身をあやうくするようなものであるとは、想像もしていなかった。

家に放火され、命を狙われる父だが、Elliotに対して何かを隠している。
それを探ろうとするElliotに、パートナーのTuckerは「他人の境界を尊重しろ」と告げる。それはどういう意味だ?
一緒に暮らし出したばかりの二人の間には、まだ互いに理解しきれぬ、きしむようなものがあった。

そして、Tuckerもまた、Elliotに何かを隠しているようで…
.....


Fair Game続編。というか、All's Fairっていうシリーズなんですね、これ。
今のところ3冊シリーズの予定だそうなので、ここで折り返しということになります。
単独で読めると思いますが、ちと勿体ないので前作のFair Gameからがオススメ。

前作で誤解を解いてくっついたElliotとTuckerは、まあツノつき合わせながらゴツゴツとやってます。ラブラブなんですけど、ゴツゴツ。
いやもう何というか、惚れた弱みという言葉をひしひしとTuckerに感じずにはいられません。ElliotはTuckerに支配権渡しすぎてる気がして焦ってるんですけど、はたから見てると弱いのはTucker。
お互いに距離をはかりながら、近すぎてぶつかりながら、不満もありつつ、反省もしたりして。愛はあるので足元は揺らがないけど、その上はぐらぐらしまくり。
まあこの人たちは仕方ないな。一巻で「言葉足りない」と思ったけど、二巻は「言い過ぎ」ですよ。

で、Elliotに負けず劣らずの頑固者がお父さんのRoland。相変わらずいい味出してます、親父!
さて今回のメインテーマはこの父に降りかかる災難と彼が書いていた過去の闘争の回顧録なんですが、その回顧録につれて読む側も当時の歴史を振り返れるようになっています。
といってもベトナムの反戦運動が中心で、多くの日本の読者にもそれなりになじみがあるのではないかと思う。ヒッピー、フリーセックス、ビートルズ。デモ、爆弾。そんな時代の渦の中、世界を変えられると信じて戦った若者たちの姿は、決して今でも古びてはいない。

過去の中の、何がよみがえってきたのか。
Elliotはそれを探ろうとして、父親はそれを拒否する。
似た者親子です。
父親は反体制側ですので、息子のElliotがFBIに入った時には親子の縁が断絶するほどの不和が生じたのですが、こうして二巻を読むと「世界のために何かしたい」「正しいことをしたい」という理想の炎は、サイドこそ違えど、親子を通じて流れている血であると見えてくるのもおもしろい。

今回の裏のテーマは、孤独。
孤独を知る者、その孤独に傷つけられたもの。孤独から抜け出す道を手に入れたもの。
あとちょっとエロい。
最近Lanyonさん、少しエロい気がするんだよな。どうした!好きだけど!
エロと人間関係の絡み合いがなかなかに濃密で、ごちそうさまでした。三巻も楽しみです。

★反戦運動
★同棲生活

Pale as a Ghost
Stephen Osborne
PaleGhostLG.jpg★★★ summary:
A Duncan Andrews Thriller1

Duncan Andrewsは私立探偵だ。
だが、普通の探偵ではない。彼の恋人Robbieは十年前、19歳の時に交通事故で死に、それ以来十年間、幽霊としてDuncanと一緒に暮らしている。
親友のGinaは何百歳かわからない魔女であり、飼い犬はゾンビだ。

Duncanは、子供の時から幽霊が見えた。
この世の中には、ほかにも人間以外の色々な存在が生きているのだ。

恋人、Robbieを今でも愛しているが、それにしても十年、セックスなしというのは厳しい。
人間とのふれあいも恋しい。ちょっとデートしてみようか、とDuncanは考え始めるのだが、Robbieに可哀相な気もしてならない。

だが根本的に明るい、永遠の19歳・Robbieには別の考えがあった。
もしDuncanのデート相手に霊感があるならば、ちょっとのりうつって──できないだろうか、その体を使って、セックスが?
.....



設定がトンデモ系ですが展開自体は地に足がついている感じの、探偵ものシリーズ。
多分、全四冊で完結したのかなと思うんですが、はっきりとはわからない。でもとてもかわいくて切ない、楽しいお話です。
DuncanとRobbieはかつてとても愛らしいカップルだったんだろうなと思います。今、幽霊になって十年一緒に暮らしながら、気持ちは衰えていないけれども、十年は長い。十年たてばDuncanも三十歳くらいになるわけで、Robbieが永遠の19歳なのに対して自分ばかりが年を取っていくことに悩み始めている。

幽霊についてのルールもかなりはっきりしていておもしろい。
幽霊は、死ぬまでに行ったところにしか行けない。死ぬまでに着た服しか着られない。エネルギーを集めて、少し存在感を出すことはできるけれども、わずかでも実体化した時に消費されるエネルギー量は半端ではない。
それでも、Robbieがすべてのエネルギーを振り絞って一瞬のキスをして、そのまますうっと消えていくところとか、なんてけなげでかわいいんだ!
まあ「お前のデート相手にのりうつれないかな?そしたらデキるかな?」とか言い出しますけどね、Robbie。Duncanも「それって厳密には3Pなのかどうか……」とか悩んでる場合じゃないから!
結果どうなったかは、読んでのお楽しみということで。

さて、探偵仕事も真面目にやっています。今回は人捜しとか、妙な心霊現象がおきる家に出向くとか。
町では次々とストリッパーが殺され、内臓を持ち去られている。
果たしてそれは何か、人ならぬものの仕業なのか?

なにしろ幽霊相手なのでエロなしですが、すっごく!かわいいし、エロが難しいだけに時おりのキスとかが本当に萌える。
人間の恐怖をエネルギーにして動く悪霊を目にして、Duncanは魔女のGinaに問う。「じゃあ、Robbieは何をエネルギーにして存在してるんだ?」
「もちろん、あなたの愛よ」
もちろんね!!!!でも本当に人間と幽霊はずっと恋人でいられるのか?Duncanのセックスレスライフも問題だが、ほとんど誰からも見えないRobbieもまた、実は孤独です。彼にはいくべきところがあるのか、幽霊がまだこの世にとどまっていることは本当に正しいのか。
愛だけで、本当に十分か?

シリーズまとめてオススメです。

★人間×幽霊
★ゴーストバスターズ

Stranger on the Shore
Josh Lanyon
Stranger on the shore★★★ summary:
20年前、幼かったBrian ArlingtonはArlington家の邸宅から忽然と姿を消した。
やがて身代金要求の手紙が届き、差出人は逮捕されたが、Brianは戻らなかった。
よく知られた、大富豪のArlington家の悲劇である。

その悲劇はずっと眠ったままであったが、何故かArlington家の当主がジャーナリストのGriff Hadleyを邸宅に招き、その事件をテーマにした本を書いてほしいという。
滅多にない幸運に、Griffはとびついた。

家族たちの多くは、Brianの悲劇を忘れたがっている。だが年老いた当主はGriffを温かく歓迎し、自由に調査する許可を与えた。
一方、弁護士のPierce MatherはGriffに対して、敵意もあらわな態度を取る。

20年前、幼い子供の身になにがあったのか。犯人は今、獄中にいる男ではないのか?
調べていくGriffの身に、不穏な出来事がふりかかり……。
.....



古い、子供の誘拐事件を追うジャーナリストと、それを眉をひそめて見張っている弁護士。
昔の事件、掘り起こされる敵意、対立する二人、とLanyonさんの得意技がそろってますよ!

いくつもの謎がストーリーの中にちりばめられてます。子供をさらったのは、本当に逮捕された男なのか? そうなら子供はどうなったのか? 殺されたのか? 死体はどこに隠されたのか?
もしほかに犯人がいるのなら、それは誰なのか。その人物はまだ、この壮大な邸宅に、富を蜜のように吸いながら、暮らしているのか……。その謎とGriffの疑心が絡み合って、緊張感が増していく流れがさすがです。

Griffはそれほど名のないジャーナリストですが、「この事件を調べて本を書いてくれ」という誘いにとびつき、これを自分の未来を変える大きな飛躍にしたいと思っている。とても有名な事件だが、Arlington家はその金と権力で自分たちを守り、これまで取材などに応じたことがなかった。
それが何故、20年も経って? そして何故、Griffが選ばれたのか?
その謎をかかえながらも、彼はできるかぎり誠実に、そして果敢に事件の糸をときほぐそうとしていきます。時に自分を疑い、時に家族たちから向けられる敵意にたじろぎ、時に自分の過去に刻まれた傷を隠そうとして必死になる。
迷いながら、それでもあきらめない。派手なキャラではありませんが、けなげさにぐっときます。

一方、Arlington家の弁護士Pierceは、一家に対して何らかの不利益が生じることを案じ、Griffに対して刺々しい態度を取る。
鉄板だな!
いやいや、この人たちの対立と、その一方でPierceが時おり見せる動揺とかひび割れとか、実に萌える。勿論(勿論!)二人は対立しつつも惹かれ合うのですが、惹かれながらも互いに相手を信用できない、そこがまたいい具合に陰影を落としています。

ミステリ部分の構成も美しくて、Lanyonさんは過去への郷愁を書かせると特に手腕を発揮する作家さんですが、今回のこの「20年前の誘拐」というテーマも彼の個性を非常によく生かしていると思う。
派手ではないけれども、隙のない、いい雰囲気のミステリに仕上がってます。

Lanyonさんファンなら鉄板だし、ミステリが読みたい、骨格のしっかりした話が読みたい時にお勧め。

★20年前の事件
★敏腕弁護士

In Plain Sight
Josh Lanyon
InPlainSight.jpg★★★ summary:
FBI捜査官、Nashは一目ぼれなど信じていない。恋を信じているかどうかもわからない。
だが、地方の警察の研修にきて一週間、Glenとすごした日々は彼の心に深くくいこんでいた。
さよならを言うのなど簡単な筈だったのに。

それでも無理だ、と思う。Nashは自分のFBIのキャリアが大事だし、Glenにも捨てられないものがある。
二人に未来はない。

Glenと別れて飛行機に乗ったNashだったが、気持ちは後ろに残っている。
彼らしくもなく、電話をかけてみたがGlenは出なかった。
Glenは、行方不明になっていた。
.....



Lanyonさんの、ほぼ一万語の短編ですが、実にうまく構成されています。短編といいつつ、しばしばまるで長編の外伝とか一部になっちゃいがちなのですが、彼はさすがによく圧縮して、長編とはまるで別の書き方をしてくるのが凄い。
今回の主人公も、Lanyonさんお得意の意地っ張り型、言葉の足りない大人の男の物語。

Glenに一目ぼれして(当人は認めないけどね)、それでもこの恋に(恋とは認めないけどね)未来はないと、どうしようもないとGlenのことをあきらめて自分の普段の暮らしに戻ろうとしたNashだが、Glenが消えたと聞いてそのまま仕事を放り出し、町にとんぼ返りします。
Glenは何故消えたのか。この地方の町で、彼がどんなふうに生きてきたのか。調べる内に、Nashは段々とGlenのことを知っていく。
特に何か秘密が明かされるとか、知らなかった顔が!というものではなく、ただ真摯に生きてきた男の姿をあらためて目にしていくお話なのですが、大人の男の不器用さはやっぱり萌えますね。

段々と、自分の気持ちを見つめ直すNash。でもGlenはもういません。
どこに消えたのか、探し出せるのか。もう遅いのか。

大人の短編です。分別をわきまえ、人生に奇跡などないことを知ってしまった大人。でもそれでも恋は人を変える。
ラストの方で、「You are...raining.」とちょっと変わったセリフがあって、あれが大好きだなあ。

★追憶

Long Time Gone
SE Jakes
LongTimeGone.jpg★★★ summary:
Hell or High Water2。

Tomは己の凶運を恐れてProphetから離れ、別のパートナーと組んで仕事をこなす。
Prophetは姿を消していた。Tomはくりかえし、返事のないメールを出す。

誘拐された少女を救い出したProphetは、新たな仕事を受ける寸前、Tomからのメールを読む。
それが彼をこの世に引き止め、引き戻す。Tomのいる世界へ。

ルイジアナの、Tomの故郷にハリケーンが近づいていた。Tomが任務で戻ってこれないのを知っていたProphetは、Tomの叔母のところへ様子を見に行く。
ハリケーンのさなか、誰かがその家にしのびこもうとして──Prophetが雨の中へ倒した男はTomだった。

二人の再会は、激しい感情を呼び覚ます。彼らのどちらもまだ、受けとめきれていない感情と迷いを。
そしてTomの故郷には、Tomが今でもまだ捨てられない、幽霊のように彼をさいなむ過去があった……
.....



SE Jakesさん節全開というか、本当に熱くて荒い、湿度も温度も高いお話。
今回はTomの過去に主に焦点があたっていますが、1からProphetがトムを「ケイジャン」と茶化して呼ぶように、ニューオーリンズの湿地帯近辺はケイジャンの入植地で、今でも独自の文化を誇っています。ケイジャンというのは、元々フランスからカナダへ移住した人たちで、住んでいた場所がイギリス領になった時に住み処を失って長年の放浪の末、スペインの好意(というか打算)があってニューオーリンズに入植した人々です。今でも、ケイジャン・フレンチと呼ばれるフランス語の方言を話すし、独自の文化を持っている。
そんな沼地の町で、Tomはつらい少年時代をすごした。

ハリケーンのさなかに再会する二人、というのがまず象徴的で、いいシーンです。彼らを取り巻く状況は嵐のようだし、彼ら自身も内側に嵐をかかえていて、決して自分自身とうまくつきあえているとも言えない。
いびつな男たちの、どうしようもない恋なのです。

Tomの昔の同級生たちが殺され、そのことはTomの過去と密接に関係している。
Prophetは彼を守りたいが、Tomはおとなしく守られようともせず、二人は争い、ぶつかりあう。相変わらずな二人。
人のことなどどうでもいいようでいて、実は保護者タイプのProphetが実にかわいいと思うのです。Tomもおとなしく守られてればいいと思うんだけど、そんな男だったら始めからProphetと恋に落ちるわけもなく。

話自体は一段落つきますが、全体としては続きものなので、読むなら1から。
強い男、傷だらけの男の話が好きなら鉄板だと思います。

★ハリケーン
★再会

Collusion
Eden Winters
Collusion★★★ summary:
Diversionの続編。

かつて違法な薬物取引に絡んで有罪となったLucky Lucklighterは、刑期のかわりに政府の薬物捜査組織の一員となって働いていた。
その取引は終わったが、今は別の名前を持ち、同じ仕事を続けている。
同じ相棒……Bo Schollenbergerとともに。

その年、大きな薬物回収事件が起こり、工場の一時停止などもともない、アメリカ国内では薬品の在庫が品薄になっていた。
多くのクリニックや病院が必要な薬品を手に入れるのに苦労していた。

薬品の値段ははね上がり、高い値段でも手に入れようとする病院はグレーマーケット(違法ではないが合法すれすれのマーケット)に手を出すようになる。
そんな中、汚染された薬物によって患者たちの命が危険にさらされる事件が起き……
.....



LuckyとBoのお話ふたたび。
前回のDiversionで新人だったBoはすっかり仕事にも慣れてきましたが、その中にはまだ脆いところがあって、Luckyはそれを心配しています。潜入捜査はBoに向かないのではないかと。
しかし向いているとか向いていないとか言っていられない。仕事はやらなければならない。

この「薬物品薄」の状態と言うのは、2011年かな、実際にアメリカで起こった事態だそうです。薬価というのは日本では保護されているのですが、アメリカではそれは自由にしていいもの。だから品薄になると値段が上がる。
うーん、怖い話です。
そしてそんな加熱したマーケットには悪者が目をつけるわけで、薬品があるのに値をつり上げるために「ないふり」をする連中、金を荒稼ぎするために薬品を添加物で薄めて売りさばく連中。こうした奴らが今回のLuckyとBoの相手です。
いやあ硬派で読みごたえのある一冊でした。

Boは今回も薬剤師としてクリニックにもぐりこむのですが、そこであまりにもクリニックの同僚や患者に感情移入している気がして、Luckyはハラハラしどおし。心配で仕方がない。
いつか、その優しさでBoがとりかえしがつかないほど傷つけられるのではないかと。
……でも今回、最後のところで命取りの優しさを見せてしまうのはLuckyなんですけどね!この男は本当にガラの悪いツンデレです。

さて、二人の仲は事件のさなかで近づいたり遠ざかったり熱されたり冷えたりしつつ、ダイナミックに変化していく。Luckyは「いや俺は人とつき合うとか無理無理!」ってロマンスから全力で逃げようとしてますが、さてどうなるか。
Luckyに引っぱられるだけだったBoが背中をしゃんとしてくる様子とか、ニヤニヤしてしまいます。
しかしBoっていい家の生まれっぽいですね、名前もあれだし。そのあたりは今後出てくるのか、楽しみです。

骨太のサスペンスもの、捜査ものが好きな人にオススメ。「口が悪い×人がいい」相棒の組み合わせに萌える人にも。

★潜入捜査
★薬物汚染

Diversion
Eden Winters
Diversion.jpg★★★ summary:
薬物の違法取引。それは、ストリートで行われているものだけではない。
もっと大きな、もっと目に見えないマーケットがあり、そこにはストリートギャングたちとは違う種類の商人がいるのだ。
時には紳士の顔をした者まで。

"Lucky"──Richmond Lucklighterは薬物の違法取引で10年の刑をくらったが、今は南カリフォルニアの薬物取締局で働いている。
だが自由の身ではない。
いつ刑務所に戻されてもおかしくない。ただ犯罪者としての、裏の知識を利用され、働いているだけだ。

あと少しで、その契約も終わる。
後任としてやってきた新人Bo Schollenbergerは元海軍だというのに、Luckyの目にはあまりにやわで、あまりに真面目すぎる男に見えた。ベジタリアン、モラルの塊、片付け魔。
こんな男が自分の後任?
彼を叩き直し、潜入捜査で殺されないように仕上げてやるのがLuckyの仕事だ。

廃棄薬物が違法にリサイクルされている証拠をつかもうと、囮捜査が始まり……
.....



Luckyは元犯罪者でまだ刑期は明けていませんが、現在はいわば猶予措置として政府のために働きつつ、口は悪いし態度も悪く、他人をよせつけず他人にたよらない男。
一言で言えばまさにasshole。
今回、組むことになった新人のBoに対しても、彼はひたすら嫌がらせを続けて対立する。嫌なやつなんだけど、じつに憎めない。

Boは絵に描いたような「真面目君」ですが、Luckyが思うように温室育ちのヤワな男ではないことが段々わかってくる。
薬剤師の免許を持つBoは、実は過去に違法に薬物を持ち出していた(理由はあるのですが)という汚点があり、Luckyと同じようにその償いとして政府のために働いているのです。二人ともに、過去に傷を持っている。

Diversionのシリーズは今のところ3冊まで出ていて、一話完結の犯罪捜査もの。薬物取締局近辺の話なので、毎回そうした薬物流通(麻薬に限らず、医薬品横流しなども含む)の事件を取り扱っており、とにかくその話の骨格がしっかりしています。潜入捜査の進行具合、捜査のためにもぐりこんだ側の心の動きや組織同士のパワーバランスなど読みどころが多い。アメリカの医療制度や保険制度などについても鋭く切り込んでいる。
その一方で堅い話になりすぎないのは、ひとえにLuckyの人徳だな。すべてのものを下品に茶化して鼻で笑いとばし、足で踏みつけていく男です。Boのことも踏みつけようとしますが、Boはそこまで簡単な相手ではない。

水と油のような二人の男の関係と、Luckyの悪態と嫌がらせへのBoのしぶとさや不屈さなどは本当に読みどころで、あまりのことに時々にやにやしてしまいます。Luckyは実は一皮剥けば結構かわいい男なんだけど(背も小さいし)誰にでも牙を剥いて人をよせつけないようにしているから、壁が厚い。
がんばれBo!

一巻では、明かされていくLuckyの過去が大きな読みどころ。犯罪者としての暮らしや、結果としてボスを裏切って刑を軽くしたことなど、はさみこまれる追憶シーンが凄くいい。Luckyが何故ああも人をよせつけようとしないのかもよくわかってくる。
特にパスポートに関わるシーンは、クライムものに惹かれる人ならあれは読んでおいて損はない、という名シーンだと思う。
Luckyたちのボスの、でっぷりとして鷹揚で、でも切れ者というWalterもたまらん存在感を醸し出している。

映画のような一冊で、がつっと骨太な話です。シリーズ通していくとBoの成長っぷりも読みどころ。

★犯罪者
★潜入捜査

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*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
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・恋人までのA to Z
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