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M/M小説 (原書)レビューブログ

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Murder and Mayhem
Goodreads-icon.pngRhys Ford

MurderAndMayhem.jpg★★☆ summary:
もと美術品泥棒のRook Stevensは、物なら山ほど盗んだが、人の命を奪ったことはない。そう告発されたことも。
だが今、自分の店で死体を見つけ、そして警察の掃射から命からがら逃げ出したRookは新たな危機に直面していた。
LA市警のハンサムな刑事、Dante Montoya。
まさに仇敵。

血まみれで逃げようとする男をとらえたDanteはショックを受けていた。なんと相手はRook、かつてDanteが刑務所に叩きこもうと全力を尽くした相手だ。
嘲笑うかのように法の手を逃れつづけたその男が、今、殺人の容疑者として追われている。

ついにこの男を塀の中に放りこめるのか?
だが果たして、この良心のない、恥知らずの犯罪者は…有罪なのだろうか?
.....



Murder and Mayhemシリーズ1巻。
かつて盗みを働いて食っていた男と、彼を刑務所に放りこむべく全力を尽くして負けた刑事。
その二人の血みどろの(主に血まみれなのはRook)再会から、彼らの関係が転がり出します。

刑事のDanteと元犯罪者のRookにとっては五年ぶりの再会。
DanteにとってRookは憎んでも憎みきれない相手です。必死の捜査が報われなかっただけでなく、Danteの相棒は法でRookを裁けないことに絶望してついに偽の証拠をでっち上げることまでした。
結果、Danteは自分の面子を失い、彼を刑事として一人前にしてくれた相棒も失った。

いいですよね、猫と鼠の(刑事と犯罪者の)話って!!
しかもかつての因縁あり。Danteは心の底からRookを憎む一方、RookはDanteに対するひそかな気持ちも持っていたりとか。どれだけこじれるのかと読みながらわくわくします。期待にたがわず、まずRookにタックルして引っ立てていくDanteから話は始まる。

Rook自身は犯罪で人生を作ってきたことを恥じてはいない。自分が何歳なのかも正確に知らず、父親もわからない彼は、ついに自力で店を持つところまで這い上がってきた。
彼にとってそれは当然のサバイバルなのです。
Danteに惹かれてはいるけれども、いやだからこそか、Rookは本能的にDanteを挑発せずにはいられない。「警察っていうのは無能なものだからね。それともそれは俺を追っていた刑事さんたちだけかな?」みたいに。
DanteはそんなRookについ過剰に反応しますが、同時に自分に偏見があるのではないかとも悩む。過去の軋轢から、Rookのことを公正な目で見られていないのではないかと。彼を有罪にしたいあまり、正しく事件を判断できていないのではないかと。
真面目で、正義を信じる男なのです。

そして、誰にも言えない。
Rookを檻の中に放りこみたいのと同じくらい、ベッドの中へ放りこみたいと強烈に願っているのだとは。

Danteはヒスパニックで、同居している叔父がドラァグクイーンでいい人なんですね。頭に血が上りやすい直情型のDanteをある意味で補っている感じ。
昔、ゲイだとカミングアウトして親から家を追い出されたDanteに、叔父さんが手を差し伸べてくれた。
ここには温かい家族の絆があって、Danteが頑固ながらもまっすぐでいいやつなんだなというのがじつによくわかる。

事件は大きなダイヤモンドを中心にめまぐるしく動いていき、Rookの過去の仲間にずるずると芋づる式につながっていく。
自分がここまで作り上げてきた人生を、店を守ろうとするRookに、愛憎入り混じる気持ちを抱きながらもDanteも巻きこまれていきます。

ちょっと展開が騒がしすぎるかなという感じもあるんですが(ここは読む時の気分との相性も大きいかな)、設定が大好きだしキャラも可愛い。
Rookだって彼なりにまっすぐな心を持っていて、手の届く範囲では優しい子なんですよ。ただ生きのびるために、犯罪のラインや世の中の常識というものにあまり重きを置いてこなかっただけで。でも自分は犯罪の世界からきちんと足を洗ったし、そうしたい仲間には道を開いてあげたりもしている。
今回、その中の誰かが彼を裏切っているかもしれないのですが。
そんなRookに対してDanteが抱くようになる保護欲と、法を守ろうとする精神がぐるぐると戦う葛藤もみどころです。

シリアスではあるけれどもにぎやかで軽いテンションのシリーズ。楽しい読書がしたい時におすすめ。

★犯罪者×刑事
★逃亡劇

Model Citizen
Goodreads-icon.pngLissa Kasey

modelcitizen.jpg★★ summary:
Oliver(Ollie)は世界的に活躍する人気モデル。中性的な美貌と体つきを活かして働きながら、兄の探偵事務所を時々手伝っている。
そしてついに、兄と暮らせる理想の家を買った。
だが兄は現われない。
彼はその頃、軍人時代のPTSDから自殺していたのだ。

およそ一年後、兄の残した探偵事務所を必死で切り盛りしながら、探偵の免許も取れないOllieはもう限界に近かった。
そんな時、兄の友人のKade Almeが現われる。戦場の負傷で死にかけた彼は新たな人生のスタートを求めていた。
.....


Haven Investigations シリーズ1。というか、1をメインに、全4冊まとめてのレビューになります。
兄を心の底から愛し、兄の死後も意地になって探偵事務所を続けようとするスーパーモデル様!という設定が大好き。Ollieは意地っ張りで、そして盲目的に兄のNathanを愛していて、その聖域(主には探偵事務所)に誰かが入ってくることにとても反発しています。誰の助けも受け入れようとしないけれども、もう限界であるのは誰が見ても明らか。
そこに現われたKadeはまだ戦場の傷を引きずっていて、肉体的にも深く傷ついている。そして家族と縁を切り、孤独です。
傷を分かち合うように、二人は結びついていく。

このOllieがちょいと変わったキャラで、中性的というかむしろお姫様みたいな容姿で時にワンピースとか着ますが、女として装いたいということではなく、ただ性というどこかの枠に自分をはめこむことが不自然で窮屈だと感じている。gender fluidという(まあまたジャンルに入れてますが)、男女の性の間をシームレスに行き来して男性や女性というカテゴリにとらわれない人。
その自由さを、周囲はなかなか理解できない。ゲイならゲイ、女装すれば「女の子になりたい男」、というふうにOllieをくくろうとする。
だがKadeはそのままのOllieに惹かれ、Ollieを縛ろうとせず、ただ支えてくれる。

理解者であった兄でさえOllieに対しては支配的なところがあったのに(ていうか後の巻に出てくるけどNathanのOllieへの干渉ぶりは過保護を越えて兄貴のパワハラだと思うよ…)、KadeはOllieの自由さをそのまま愛します。
そこが読んでいて可愛い。Ollieは決して扱いやすい子ではないけれども、Kadeの助けすらなかなか受け入れようとしないけれども、ついに理解者と出会ったのだな!と読んでいてほのぼのする。

しかし、その包容力のあるKadeにいろんなことが起きるシリーズでもある。誘拐されたり、毒を盛られたり、偏執狂的になったり。もう大変。お前がいなかったらOllieはもう太陽を失った子供みたいだよ。

シリーズ通して、そして先に進むほどちょっとメロドラマ調になってくるところがあって、少し「ん?」と思う箇所もありますが全体に楽しく読める四冊です。
Ollieの元彼のロックスターが、セックスは好きでもロマンスに対してはまったく興味がない人間だとか、自分の性やセックスに対していろんな係わり方をしているキャラがほかにも出てきて、それぞれの生き方を見つけているところがこのシリーズを通した特徴というか、テーマではないかと思う。
誰でもみんな独特の性を持っているのだ、ということを感じられる話。社会と折り合いをつけやすい場合はその独自性が目立たないだけで、ひとりずつがそれぞれの形で独特で、人とは違っている。
その空気感がとても貴重。

誰かにさらわれたり(二人とも)、じつはKadeの親が億万長者で保守的だとか、Ollieの家系はとある財宝を追う連中に追われているとか、兄は本当に自殺だったのか?とか、あとからいろんなドラマが出てきてにぎやかです。うろたえ、ぶつかりあい、行き詰まり、そして成長したり手を取り合って、彼らは(二人だけではなく、みんな)がんばっていくのです。
わちゃわちゃと色々な出来事が襲ってくる洋ドラのノリで読むと楽しい。

★gender fluid
★探偵事務所

Where Death Meets the Devil
Goodreads-icon.pngL.J. Hayward

WhereDeathMeetstheDevil.jpg★★☆ summary:
Jack Reardon、SAS出身で今はオーストラリアの情報機関Meta-Stateの情報局員は、今、混乱していた。
潜入捜査の末にやっと犯罪組織のボスの信頼を得たと思ったら、砂漠の中のコンクリの部屋で椅子に縛られて、裏切者だと弾劾されている。
そして彼を処刑しに現われたのは伝説の殺し屋、Ethan Blade。
運命は尽きたのか。

だが気付けば彼はEthanに救い出されて二人で砂漠を逃げ出していた。
この男は死の使いなのか、救いの手なのか。無謀で良心というものを持たず、なににも執着しないEthanがJackにはまるで理解できない。

一年後。
やっと普段の人生を取り戻しつつあるJackだったが、そんな時、彼の働く情報局に客がやってくる。
客の名を聞いた瞬間、Jackは悟った。人生は決して元には戻らないのだと。
Ethan Bladeがふたたび目の前に現われた今は。
.....



情報局員と殺し屋とラクダの話。

二重の展開で進んでいく話で、一年前のJackの(そしてEthanとの)逃亡劇と、現在のJackとEthanとの再会からはじまる情報戦とが交互に語られます。
ちょっとクセのある展開だけれども、かつて二人の間に何があったのか、何故またEthanがわざわざ身柄を拘束される危険を冒して現われたのかが少しずつ明らかになっていくところは盛り上がります。

それにしても設定が憎い。目的を果たすためならJackを売り渡し、それでいて眉ひとつ動かさずにJackを救う殺し屋のEthan。この男にいつ裏切られるかと思いながら、その手に救われるしかないJack。
人を殺して生きてきたEthanのことがJackは理解できないし、理解したくもないし、彼に救われる自分自身のことが嫌で仕方ない。しかし砂漠でたよれるのはEthanだけ。あとEthanが飼っている(というか友達らしい)ラクダ。
熱砂の砂漠を、二人は逃げながら、同時に敵を狩っていく。彼らがそれぞれ立つ世界は、ひとつは「悪」でひとつは「正義」といわれる側にあるけれども、していることはもしかしたら同じようなことなのかもしれない。
でもJackはそのことにも気付きたくない。否定するJackに対して、Ethanは至ってのどかなものです。彼は他人に理解されなくともどうでもいい、ただ仕事を果たすだけ。

謎は主にふたつ。
1年前、砂漠で二人に何があったのか、彼らの関係はどうなったのか。これは回想で少しずつ語られていく。
そしてもう一つの大きな謎は、Ethanは何故今になってまたJackの前に現われたのか。Jackは「次に現われたらつかまえる」と言っているし、事実、Ethanが現われた瞬間に情報局の建物を封鎖してEthanを拘束させています。
そっちの謎は少しずつ、過去と現在の両方を使って紐解かれていく。

過去と現在を重ねた語り方はなかなか効果的ですが、もう少しスイッチの回数が少なくてもよかったかなという気はする。ちょっと後半が長いというか、過去と現在の切り替えがチカチカするんですよね。回数じゃなくて、何か現在と過去をつなぐような強いエピソードや物があればもっと統一感が出せたのかもなあ。
とはいえ、この野心的な語り口と、骨太のテーマは評価高いです。周囲のキャラも、類型をうまく使ってわかりやすいながらもきちんと書きこんである。
謎めいたEthanに振り回されてばかりのJack。しかしそんなJackにEthanが振り回される瞬間もあるわけで、普段本音を見せないだけに無防備な一瞬のEthanはなかなかぐっとくる。動物が好きで車が大好き。どこか子供のような部分がEthanの中にはあって、彼がその無防備さを見せられるのはJackだけ。Jackが誠実で、頭は堅いが決して人を裏切ったりする男ではないとわかっているから。
味方とは言いきれないまま、おかしな絆が二人をつないでいる。むしろEthanのほうがJackを無条件に信頼しているかのように見えるのがおもしろい。その無邪気さが、この殺し屋の深い孤独をうつしているようにも思える。

しかしこれ、シリーズ物のようなんだけど、次の話はどうするんだろうっていうくらいこの一話でいろいろ書ききっていて、次の話を勝手に心配しつつ楽しみです。この作者さんのことだからきっとひねった話を投げてきてくれるに違いないけども。
展開にもキャラにも文句なし、もうちょい無駄なくまとめてくれると素晴らしかったなというところだけが残念。
その分は、次作への期待値としておきたい。

いわゆる冒険小説、スパイもの、殺し屋ものが好きなら是非おすすめの一冊。ずっしり骨太に楽しめます。

★殺し屋
★砂漠の逃亡劇

Let the Wrong Light In
Goodreads-icon.pngAvon Gale

let_the_wrong_light_in.jpg★★☆ summary:
Averyは大手建築会社で働く駆け出しの建築家だが、上司Lacroixから幾度もデザインを却下されてもう限界だった。氷のようで人間味ゼロの上司から嫌われているのだ、いくらいいデザインを出しても通らないのはそのせいに違いない。

だがいくらこんなボスのことは嫌いだと自分に言い聞かせても、Averyは肉体的にLacroixに惹かれていることを否定できなくなっていた。
人間的にまるで好きになれない相手でも、寝てみたいって思うのは変なことじゃないだろう? 多分?

ふたりはどちらも自分たちの状況を把握できないまま、主従のセックスプレイにはまりこむ。
そこに気持ちなどない。ないはずだ。
少なくとも、言葉にして伝えていいような気持ちは。
.....


感情表現が極端に少ない上司と、口から生まれてきたかのようにしゃべりまくる部下の、前途多難な関係。
Averyがじつに明るくてへこたれない、かつその奥底に傷つきやすい優しさを持った子で、読みすすむにつれほっこりしてきます。まあその優しさというのは、落ち込んだ友達を前にしておもしろいジョークを必死に考えるとか、そういうところに発揮されがちなんですけども!器用なようで不器用。とくに自分に関しては自覚がない。そこがあやうい。
彼と水と油のような、まったく自分というものを見せてくれない上司のLacroixがはまりこむ(築いていくとは言いにくい)BDSMの関係とその行方が話の中心になっています。

しかして、困ったことに、二人ともBDSMに関してはまったくの素人。というか自分たちがしていることがそのカテゴリだということにも自覚がないふしがある。
ただLacroixの支配欲をAveryは受け入れ、それだけがお互いにふれる手段だと思っていて、関係の行く先を見ようともしていない。ホットだけれども非生産的な関係と言っていい。でもAveryにはどうしたらいいのかわからないし、Lacroixはどうしようとも考えていない感じです。不毛だな!

そんな二人をむすびつけているのが建築で、Averyの抱く建築へのこだわりと愛の描写が、この話とタイトルの"Let the Wrong Light in"というフレーズをうまく際立たせています。Averyがどういう建築をしたいのか、どんな夢を持っているのか、己の才能を信じながら信じきれず、不遜でありながらもつねに挫折を恐れている、そのひとりの若い建築士の姿は読んでいて楽しい。
そして、次から次へと、まるで憎んでもいるかのように彼の建築案を却下してきたLacroixもまた、建築物への自分の視野とかつて失った夢を持っている。その夢が、Averyの存在によってもう一度息を吹き返す、そのエピソードがどんな言葉よりもLacroixにとってAveryがどんな存在かを語っていると思う。

嫌いなのに(嫌いだと思っているのに)肉体的に惹かれ合う、そして気持ちが芽生えてきたと思ってもその行きどころがなく、心がせき止められたように詰まる。そういうお話です。一筋縄ではいかない関係を読みたい人におすすめの一冊。

★BDSM(素人)
★おしゃべり×鉄面皮

The Layover
Goodreads-icon.pngRoe Horvat

layover.jpg★★☆ summary:
8年前、Ondro Smrekは決してゲイと公表できない故国スロバキアを逃げるように去り、スチュワードとして世界中を旅してきた。
だがうつろな心をかかえたまま、彼は選挙結果次第ではゲイが激しく弾圧されそうな状態の故国へ帰ることにする。

理想などではない。ただ後悔があるだけだ。

乗り継ぎのスイスの空港で、飛行機が遅れてホテルに滞在になった夜、彼はやはり飛行機待ちのJamieという若いアメリカ人と出会う。純粋で脆さを漂わせる彼にOndroは強く惹かれるが、どうせ一夜しかない関係だ。
その筈だった。
.....



作者さんはチェコスロバキアで生まれ、それがチェコ共和国となったのちにそこを去って、ドイツとスペインに住んだ後スウェーデンに住んでいるそうで、その視点が色濃く投影された中編だと思います。
結構評価に悩むところがあるお話で、それはもう読んだ時の気分次第かもしれない。始めのうちの、空港での最終便逃しから相手の存在に気づくあたりなんかはちょっとリズム悪いかなと思うんですが、後半のOndroの気持ちやどうしてスロバキアに帰るのかの本音がむき出しになっていくあたりはひりひりしていて読みごたえがあります。

そしてなにより、普段アメリカやせいぜいイギリス辺りの話を読むことが多いので、スロバキアという正直なじみの薄い国の事情を読むのは非常に新鮮だった。開かれていない国、宗教というものの存在が濃密で閉鎖的。その息苦しさが、逃げ出したOndroの視点から密に描き出されていきます。
色んな国でゲイの権利が確立され(少なくとも制度の上では)ていく今、それでも世界のすべてがそういう場所ではない、ゲイとして生まれたこと自体が呪いのように人生を支配してしまう場所がたくさんあるのだということは、こうして物語として読むと余計に鮮烈に染み込んでくる気がします。
そして、それこそが物語という形のもつひとつのパワーなのではないかと。人に違う世界の見方を分けてくれる。この話は、たしかにそういう話でした。

痛みや閉塞感を出しつつも、全体には希望のある話です。
タイトルのLayoverという言葉は「乗り継ぎ」とか「乗りかえ」という意味ですが、実際に空港で飛行機便を乗りかえようとしていた二人という以上に、この出会いが彼らにとっての人生の乗り継ぎポイントだったんじゃないかと思います。

一夜の運命の出会い(ちょっとリアルバージョン)ものスキーとか、異国の雰囲気を感じたい人にオススメの一本。
あとみんなOndroの名前が発音できなくて「Andrewでいいよ」と言ってるのに、正しい発音にこだわるJamieがかわゆす。

★帰郷
★一夜の関係

Runner
Parker Williams
runner.jpg★★☆ summary:
Matt Bowersの人生は16歳の時に崩壊した。それ以来、人を信頼することも近づけることもできずに、彼はひとりきりで屋敷の中に住んでいる。家族すら寄せ付けず。
彼だけの世界、すべてのものがあるべきところにある世界。

だがそんな時、一人の男が彼の敷地近くまで毎日ジョギングしてくるようになり、Mattはパニックに陥る。
弟の保安官にどうにかしてくれと電話で泣きつくが、相手がなにもしてこない以上無理だとはねつけられる。ただひとつ、Mattが外に出てその男の名前を聞けたなら、打つ手を考えてもいいと。

日常。世界。注意深く築き上げてきた彼の世界。
ジョギングランナーはそれをおびやかす存在なのか、それとも……
.....



トラウマもの、引きこもり主人公。
この手の話はそこそこ成り行きが読めたりするんですが、ある意味で「予想外」な話でもありました。

Mattは彼の世界に入ってきた一人のランナー、Charlieに惹かれていきます。彼のそばにいると怯えずにすむ自分を知って、驚きながらも少しずつ心を開くようになっていく。
Mattは非常にナイーブで、それは16歳の時に人への信頼を打ち砕かれたことからきているのですが、こわれた世界を自分なりに寄せ集め、人から見れば「異常な」世捨て人の生活をしながらも、彼は少しずつ自分を癒してきた。そのたくましさが意外でおもしろい。
人と会いたくないからって野菜を自分で育て、釣りに出かけて魚を釣る。冬の間は雪に閉ざされて雪かきもこない場所で、たくわえた食料でひとり冬をこす。
なかなかたのもしいじゃないか主人公!

一方で、彼は他人という存在にひどく過敏です。16歳の時に起きたことに対して、その後の彼の反応はちょいと行きすぎな感じもあるんですが、たぶんあれは行為そのものよりもその後の他人や家族との食い違いがもたらした自分への拒否感なのだと思う。
家族はMattを支え、「いつか正常に」なる日を待つのだけれど、Mattにとって世界も自分ももう壊れてしまったものであってそれを「いつか正常に」「元通りに」と期待されることは重すぎることだった。
彼にとって必要だったのは「変わってしまった」自分を見て、受け入れてくれる存在だった。それを自分でも気がついていない。まだ。

特に弟Clayとの関係はおもしろい。兄を大事にしているあまりちょっとやりすぎたりもするんだけど、いい弟です。
うまく兄の支えになれなかったかもしれないけれど、彼の存在なくしてMattは世界の存在を感じつづけることはできなかったと思うよ!世界に残してきたもやい綱のような存在でしょう。ブラコンすぎる。

Mattのトラウマ重すぎないかとか甘すぎないかそれでいいのかとかで評価が分かれているみたいなんですが、それはわかるなあ。私も最初そう思いながら読んでいたけど、でもやっぱり壊れた世界を取り戻すっていうのは大変なことなんだと思う。もっとうまくやることはできただろう、でも最善の道なんてその時にはわからない、それも読んでいるうちに感じられたことでした。
なので、個人的にはとても優しくよく描かれた世界だと思うよ!
それはそれとして、金の心配せずにあんな生活できるMatt超うらやましいじゃないか……と少々のやっかみは感じましたけどもな。あれはうらやま。

きつすぎないトラウマもの好きな人なら是非。悪人いないので、色々あるけれども優しい世界です。

★PTSD
★ブラコン

Vanished
Carter Quinn
Vanished.jpg★★☆ summary:
HenryはTomと結婚してもう20年になる。二人は9歳だった少年を見つけて養子にし、血を分けた我が子のように可愛がった。息子のCJはもう大学へ行き、HenryとTomは幸せに暮らしていた。
だがある朝、目覚めたHenryはTomの姿がないのに気づく。仕事ですれ違いかと思ったが、いつまで経ってもTomは帰ってこない。
異常を感じたHenryはTomを探し始める。
しかし、友人たちは皆非協力的で、Henryをののしる者までいるのだった。
一体、何が起こっているのだろう?
.....


全三巻。
ミステリ仕立ての三部作になっていて、2からのレビューを書くとその時点で前の巻のネタバレになるという素晴らしく困った仕掛けがあるので、ここで3までのレビューをまとめて書きますよ(ネタバレできないのでそこは遠回しに…)!

主人公は熟年カップル。の、片方。理性的でやや考えすぎる気配もあるHenry。
目を覚ましたら愛する夫がいきなり消えていてわけのわからない彼は、追憶を抱きしめるようにしながら必死に夫を探そうとするけれども、なぜか友人たちの誰からも拒否され、罵倒され、憐れまれ、嫌がられる。
なんでだ!

まあ途中で「これやばい物件か…」と薄々読んでいる方も気がつき始めますが、うまいことちょこちょこと愛を感じる回想が入ってくるので、ハッピーエンド頼む!という気持ちもあって結構手に汗握ります。

で…先が書けないんですけど、1巻、「ああやっぱり」と見抜けた感を味わった瞬間、ラストでどん!と展開がひっくり返されます。2巻も同じく。それぞれの巻で伏線を回収しつつしっかりクリフハンガー!を味わわせてくれます。なかなか舌を巻くうまさ。
途中にいい感じに周囲の人間関係も織り交ぜてきていて、当人のロマンスは少なめですが、そこそこ甘い雰囲気はあります。特に2巻以降。そのあたりもスリリング。

クリフハンガー感を味わいたい人、よくできたドラマみたいな展開を読みたい時にぜひおすすめ。おもしろかったです。

★謎の失踪
★ストーカー

★Three-Star rating system★


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・So This is Christmas(外伝、短編集)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
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・夜が明けるなら(ヘルハイ3)
・還流

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
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