Slash×Slash

Slash(m/m小説) レビューブログ

※万人向けの内容ではないのでご注意ください
→このブログについて

Dark Heart
Thom Lane
Dark Heart★★☆ summary:
Amaranthの国の旅人ギルドは、繰り返し何者かに襲撃されていた。
ある夜、魔道士Lucanが嵐を逃れてギルドの屋敷を訪れ、屋敷の奴隷であるTamは彼に仕えることになる。

魔道士は誰もが恐れる存在であったが、その中でもLucanは特に恐しく見えた。闇よりも暗く、強烈な力と意志を持つ存在に。
Tamはベッドの中と外の両方で彼に奴隷として仕えながら、Lucanの冷厳さに惹かれていく。
だが奴隷は未来のことを考えない。過去のことを考えない。彼らにはその一瞬ずつの人生をやりすごして、その時々に目の前にいる者たちにつくしていくだけだ。今をこえた望みなど、身にすぎたことだった。

Lucanはギルドにたのまれて襲撃事件を調べはじめ、Tamは彼につき従って手伝う。
LucanはTamをしきりに呼びつけ、つれ回し、ベッドに入ればTamを抱くが、それ以上の個人的な興味を見せる様子はない。ただ道具のように彼を使うだけだ。
奴隷と主人、その関係の中にTamは自分の思いをとどめておくしかない。そしてLucanが去っていけば、また次の主人に仕えるしかない。
それが、盗賊としてとらえられ、奴隷の烙印を押された時にさだめられたTamの運命だった。
.....



書店的には「BDSM」のカテゴリに分類されてますけど、そういうわけではありません。主人/奴隷で支配と服従の関係ではありますが、それは人間関係であって、この話の性的嗜好はわりとノーマルです。
ただ、「奴隷」というもののありよう、その心の向きの特殊さが実によく書かれています。それがおもしろい。

この世界での奴隷はどうも、1度奴隷になったら解放されたりしないらしい。
Tamは、決してひよわでもなく、むしろはねっかえりで反骨精神にあふれた少年なのですが、こと主人に対する服従となるとそこには鉄の規律があって、つねに主人やギルドを自分の上に置いています。たとえ直接の命令に反して、罰せられる時でさえも。
彼の迷いのない忠誠を一身に受けながら、魔道士LucanはTamを時に冷たくあしらったり、生意気な物言いや反論を鞭で罰したりする。
奴隷をしつけるのは主人の権利でもあり、義務でもあって、それは自分の体面のためだけではなく奴隷のためでもあります。奴隷はきちんとしつけられてふるまう限り、奴隷としての人生をまっとうできますが、その規範を踏み越えた奴隷にはさらに厳しい人生が待っているからです。

Tamが、新しい奴隷が馬車を引いている姿を見るシーンがあります。Tamはその奴隷の中にまだ反発があるのを感じ、やがて彼も落ちるだろうと思う。「ある日、必ずその時がやってくる。鞭が怖いから主人に従うのではなく、ただ従うために従う、そういうふうになっている自分を知る」のだと。
そのことを悲しんだり、痛みをもって振り返っているわけではない。単純にそういうものなのだ。それが自分におきたことであり、他の多くの奴隷におこったことであると、Tamは知っている。
いつかその新しい奴隷も、Tamのように根っからの奴隷となる。そうなればもう戻ることはできない。

そのあたりの特殊さがリアルに書かれていて、おもしろいです。
彼らの力関係を踏まえた上で、LucanとTamとの間に生じる感情や軋轢、決して口には出されない思いなど、なかなか巧みに書かれています。
ファンタジーらしさも満載で、LucanがTamをつれて地獄の門をくぐるシーンなど見所も多い。それにしてもLucanはTamを悪魔との取引にさし出しちゃったりするんだ。鬼ですな。
それでもLucanが好きなTamがかわいいやら、かわいそうやら。

ファンタジーや主従ものが好きな人、「傲慢攻め×けなげ受け」の組み合わせにぐっとくる人におすすめ。
シリーズ続編の「Healing Heart」では、彼らのバカップルぶりも楽しめます。

★主従(奴隷)
★ネクロマンサー












管理者宛の投稿

★Three-Star rating system★


[カテゴリ]View ALL
レビュー (314)
★★★ (90)
★★ (190)
★ (34)
モノクローム・ロマンス (10)
電子ブックリーダー (23)
iPodTouch・Stanza (19)
nook (4)
雑談 (84)
英語 (29)
文法 (4)
読書日記 (11)
…このブログについて (9)
…書店情報 (2)
[タグリスト]

09 | 2017/10 [GO]| 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

カテゴリ一覧 最近の記事一覧 プロフィール リンク一覧 メールを送る
[カテゴリ]


モノクロームロマンス(M/M翻訳)


■公式サイト■

・2017年
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas

・ほかにも出るかも
・王子とか何か売れてくれ〜(色々軽くピンチ)
・来年はもふもふやるよ!

*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流
・夜が明けるなら(ヘルハイ3)

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター