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Physical Therapy
Z. A. Maxfield
Physical Therapy★★★ summary:
Jordan Jensenはリハビリを終了して、新たな出発をするために St. Nacho'sの町へと引っ越した。無二の友人Cooperが恋人と暮らす町へ。
だが St. Nacho'sへ来たのは、そこに友人がいるからだけではない。Cooperが、3年の放浪の末ついに足をとめ、彼の中の痛みを癒やした場所。その町に興味があった。

JordanとCooperは、かつてともに酒とパーティに溺れて未来を失い、酔ったJordanが運転していた車が子供を轢き殺して、彼らはどちらも想像だにしていなかった人生の深みへと転落した。
Jordanは刑務所へ行き、同乗していたCooperはどん底の人生のうちに路上生活者となり、やがてSt. Nacho'sへとたどりついた。
そしてそこで、Cooperは自分の人生を手に入れたのだ。
友人が St. Nacho'sで何を見たのか。Jordanはそれが知りたかった。

町のスポーツジムに職を得たJordanは、最初の日にKen Ashtonに会う。Kenには、Jordanを憎む理由はあれど、好く理由はなかった。Kenの野球人生は酒酔い運転のドライバーの事故に巻き込まれて破滅し、その事故で友人を失い、彼自身、昏睡から覚めた今も自由に歩くことすらままならない。
だがKenは、Jordanのマッサージに癒やされる。Jordanにふれられていると、事故からはじめて、自分が生きていると感じる。

KenはJordanに惹かれ、Jordanはそれを恐れる。彼もまたKenに強く惹かれていたが、2人が関ることがいい考えだとは思えなかった。刑罰としては償ったとは言え、今でもJordanにあの罪がのしかかる。
誰が許しても、誰が忘れても、Jordanだけは許すわけにも忘れるわけにもいかなかった。あの子供。あの一瞬、世界が砕けちったあの瞬間を。
.....



St. Nacho's 2。
前作の「St.Nacho's」ではCooperが主人公で、彼が絶望の中でバイオリンを背負ってSt. Nacho'sにたどりつき、恋人Shawnの力を借りて人生と向き合うまでが語られました。
その中でも出てきていた、Cooperの友人であり、恋人であった男、そして共犯者とも呼ぶべき存在のJordanが今回の主人公です。

前作では、Jordanの内面が今ひとつ見えてこないところがあって、それが後半部分をちょっと弱めていたと思うのですが、今回のこの「Physical Therapy」でJordanはとても魅力的な顔を見せます。シャイで優しい。だからこそ苦しい。
痛み、絶望、罪悪感。「St. Nacho's」でCooperに責任を転嫁しようとしていたJordanはもういない。彼は再度のリハビリを経て、自分自身を立て直すすべを覚えた。それは、他人を癒やすこと。だからマッサージを覚え、St. Nacho'sへとやってくる。

一方のKenは、自分の人生が事故によって奪われた苦しみと怒りをかかえています。世界は彼の周囲でとざされてしまったかのようです。だが、彼はJordanのぬくもりを感じ、Jordanの中にある優しさ、彼からつたわってくる光へとすがりつく。
Jordanは彼を癒やしてあげたいと思うけれども、KenがJordanに向ける思いをどうしていいのかはわからない。彼は他人に与えることはできても、他人から何かを受けとることはできない。まだJordanの中には、罪や闇がこびりついたままなのです。
癒やしが必要なのは、KenだけではなくJordanの方でもある。それが、繊細な語り口からゆっくりと見えてきます。やがてKenもそれに気付く。
そこまでの、ひとつひとつ言葉や仕種を積み重ねていくような、独特の描写が味わい深い。

Jordanが他人を癒やすことで自分を立て直そうとしたように、KenもJordanを癒やすことで自分自身をも癒やしているのだと思います。彼らはどちらも苦しみ、1人では出口へたどりつけない。
でもSt. Nacho'sは癒やしの場所。奇跡のおこる場所です。
奇跡にたどりつくまでが大変だけども…

前作の主役、Cooperと恋人Shawnが元気そうにしているのも嬉しい。Shawnは相変わらずかわいいなあ~。耳がきこえないんですけれども、そのためかどうか、ダイレクトに真実を見抜き、真実を恐れない勇ましさがあります。周囲の会話をCooperが何気なくShawnに手話でつたえている様子も、2人の調和が感じられて美しいです。
あそこには希望があって、それを求めてJordanはSt. Nacho'sに来たのだろうと思う。

こうしてJordanの内面をのぞいてから前作を読み返すと、CooperとJordanの2人の友人同士がたどってきた人生や痛みが鮮やかに見えてきて、数倍楽しめます。
私はシリーズ前作は★2つをつけたのですが、2冊セットで考えると、迷わず★3つをつけますね。
しかしこれを読んでから前作を読み返しましたが、以前に手こずったこの作家の文章が、結構あっさり読めるようになっていました。
あれから50冊くらい読んだからなー。さすがにちょっとは進歩してるか。やっぱり萌えは強い。

繊細で美しい、静かな癒やしと調和の物語です。
ストーリー重視、エロ以外の部分重視の人におすすめ。「St. Nacho's」と2冊セットでね!

★贖罪
★リハビリ

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ご訪問ありがとうございます!
今シリーズ3冊出てます~。(記事下の ■シリーズ:St.Nachos というタグをクリックするとシリーズが見られます)

Kindleからはちょっとわからないんですが、記事のリンク先のLooseIDからPRCフォーマットで買えるので、それが読み込めるかもしれないです。











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