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Nowhere Diner: Finding Love
T. A. Chase
Finding Love★★★ summary:
Timothy Gapinは傷心のうちに、故郷のミネソタを去る。
残ることはできなかった。彼はゲイであることを隠している恋人のために、ずっと自分たちの関係を秘密にしてきた。誰にも言わず、誰にも見られないように。それは仕方がない。そのことには耐えられた。
だが恋人は父親に言われるまま、女性と結婚した。しかも結婚してからもTimとの関係を続けたいと言う。
Tim自身も、また相手の女性も、そんな扱いを受けるいわれはない。嘘に塗り固められた人生に入りこんでしまう前に、Timはそこを去るしかなかった。

バスに乗って故郷を去った時、どこへ行くというあてはなかった。ただ遠くへ、遠くへ。
4日間バスで移動を続け、深夜のテキサスの食堂で、Timは食堂の若者が癇癪をおこして辞めるところに行き合う。成行からその青年のかわりに食堂で働きはじめた時、Timは何かを期待していたわけではなかった。
ただ通りすぎていく途中でたまたま足をとめた、それだけの、何でもない場所だった。

だが食堂と仲間は彼の存在を受け入れ、Timは思いもかけずに自分の居場所を得る。
そしてトラック運転手Bernie Capleyとの出会いは、Timに探すつもりのなかったものをもたらした。彼はBarnieと恋に落ちたのだ。
しかしミネソタに置いてきた筈の過去は、そのまま彼を放っておいてはくれなかった…
.....



「Nowhere Diner」の「Nowhere」というのは、どこにもないような不思議な場所、というようなことだと思います。

この食堂が実際になかなか不思議というか、ありそうでなさそうな不思議感が漂う場所で、小さい町の小さな食堂らしくゴシップもとびかい、人のことに口もはさむのですが、その一方でちゃんと相手の尊厳を大事にする。ゲイだからと言ってTimを特別視したりはしない。
海軍のコックあがりの主人、レズビアンであることから家を叩き出されたウェイトレス、戦争のトラウマから酒に溺れているコック。決して人生は薔薇色ではないけれども、彼らはその食堂で小さな世界の調和を作っています。

Timは22歳で、人生の経験も乏しく、過去の恋の記憶を引きずってもいる。
思いもかけずにBernieとつきあうようになってからも、どうもその記憶が彼を揺さぶります。あの不誠実な恋人以外、Timは恋人を持ったことがない。「電話するよ」と言われて「わかった」と返事をしても、電話がくるわけないと決めこんでしまうところがある。相手を信じるとか信じないということではなく、Timはそんなふうにちゃんと約束を守ってもらったり、恋人から大事にされたことがない。
そのことにひとつずつ気付き、Timは自分がどれほど不健全な恋をしていたのかに気付いていく。

コックのChadとTimとの淡い友情もいい味を出しています。
傷ついている相手を、Timは無理に殻から引きずり出そうとはしない。自分が傷を得た経験から、彼はただChadに居場所を提供して、Chadのブライドを尊重する。そのことはきっとChadにはとても大きなことだったのだと思う。
Chadの物語はこの中では語られませんが、「Nowhere Diner」シリーズとしていずれ書かれるのではないかなーと。というか、作者のTAのことだから、故郷にいるあのろくでなしな元恋人もいつか救済してあげそうな気がします。まあ救済される前にいっぺんどん底に落ちることまちがいなしだが。ほんとにあの男、最低だー!あの最低っぷりは結構すごい。
でも彼の中にも痛みや苦しみはある。それはよくつたわってきます。

人生の現実が色々とふりかかってくる中で、その痛みと、おだやかな食堂の空気とが調和した、独特の雰囲気の話です。
つらいことはたくさんあるんだけど、明日はいいことがおこるかもしれない。そんな静かな希望が全体を通して感じられるのは、Timのおだやかな人となりが語り口から感じられるからでしょう。BernieがTimの中に何を見て恋に落ちたのか、何故Timを助けたいと思ったのか、Bernie自身も語らないんだけど、読む方にはつたわってくる。派手ではないけれども、とても魅力的でやわらかな青年です。

どこにもない、どこかにあるかもしれない場所。
そんな食堂を舞台にした、ほろ苦さもある大人のおとぎ話。気持ちの中に静かに入ってくる話です。おすすめ作。
包容攻め好きとか、攻めに大事にされる受けが好きな人には、特に!おすすめ。

★過去の傷
★居場所探し












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