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The Little Library
Goodreads-icon.pngKim Fielding

TheLittleLibrary.jpg★★☆ summary:
Elliott Thompsonは一度は将来を嘱望された歴史学者だったが、男に利用されて職を失い、名声も失ってカリフォルニアの町でひっそりと通信大学の講師をしながら暮らしていた。
彼の気晴らしは、毎日のジョギングと、書店サイトで買いこむ大量の本だけ。
気がつけば家の中はゴミ屋敷、とはいかなくとも、本に占拠されつつあった。

兄にうるさく言われて、Elliottはほとんど気まぐれから家の前に小さな「図書館」を作る。実際にはそれはただの本棚のようなものだ。
最近話題の、家の図書館。誰でも本を借りていいし、読み終わったら返却するか、かわりに自分が人にすすめたい本を置いてもいい。

それは小さな一歩。
その一歩から、Elliottは近隣の住人のSimonに出会う。膝を負傷して退職した元警官とのその出会いが、Elliottの世界を少しずつ、そして大きく変えはじめた。
.....



なんかもう、可愛い話です。
別に可愛いエピソード満載とかそういうわけではないんだけども、Elliottの引きこもり具合が読んでいてじつにわかる。共感できる的な意味でわかる。
たとえ人生に挫折してなくても、ストレス溜まった時にAmazonでぽちぽち本をたのみまくる生活に耽溺してしまったらもうそこから出ていくのは面倒くさくてしょうがないよね!わかるわかる!って最初の章読みながら完全にうなずいてました。ましてや人生に挫折してそうなったならもう一生その穴ぐらから出ていける気がしない。

そんな非社交的な生活を送っているElliottは、本の処分方法を求めて、いわゆる私設図書館的な本箱を庭に置きます。
これ実際にここ数年アメリカではやりの運動で、本の貸し出しというよりは交換に近い形で本のやりとりをするんですね。とても楽しそうだと思う。紙の本ならではの自由さだなあ、これは。
もちろん庭に十数冊の本を出したところでElliottの家の中や本棚が片付くわけもないのですが(一冊もらわれていかれたら一冊どこかからやってくるシステムだし)とりあえず何かやっとけば兄貴にしばらく口出しされないですむだろという、逃避行為の一環です。
とはいえ、善意の図書館というアイデアにはElliottも心惹かれている。誰が借りるかもわからないのに、誰も借りていかないかもしれないのに、自分の蔵書の中からバランスよく本を選ぼうと考えこむElliottの姿からは、本への愛情と彼自身の誠実さが読みとれる。

真面目なだけに、かつて男に裏切られたことの傷はElliottの中に深く残っている。
憎しみや恨みというより、自分への失望感が大きい。なんであんなふうにころりと引っかかってしまったのか、自分はそれだけの人間でしかなかったのか。
そういう不確かさが、自分を信じきれなくなってしまった苦しさが、今でもElliottの中にひっそりと目立たない棘のように刺さって抜けていないのです。見えにくいけれども、たしかにそれはそこにある。そして多分、自分でも知らないうちにその小さな傷はちょっと膿んでいる。

そんな彼が出会ったのは、元警官で、膝を撃たれてリハビリ中のSimon。
二人は時おりの近所でのすれ違いから、そしてElliottの小さな図書館から、出会って、少しずつおずおずと距離をつめていきます。
Elliottの自己評価の低さをSimonはそのまま包みこんでくれるし、ゲイとしての恋愛経験のないSimonの経験不足をElliottは笑わず、一歩ずつ一緒に進んでいってあげる。杖をついて歩くSimonに歩調を合わせるのと同じように。
何気なかった日々の光景が、小さな図書館ができたこと、そしてSimonがその光景の中にいることで変わっていく。毎日が少しずつ特別に感じられはじめる。
このあたりの日常によりそった描写が自然でじっくりと読ませます。

図書館の本が借りられていくことでElliottは世間とのつながりを感じ、実際に借りていく人たちの顔を見たり言葉を交わすことで自分の本が、そこにこめた思いがとどいているような気持ちになれる。
己への信頼も他人への信頼も一度失ってしまったElliottにとって、兄やその妻のような「よく知っていて支えようとしてくれる人」よりも、本をただ借りていくゆきずりの人の笑顔のような小さなつながりこそが必要なものだったのかもしれません。世の中には悪魔やいじわるな小鬼ばっかりじゃないんだよ、という実感。
そしてそこには彼を愛してくれる誰かもいるし、出会いもあるのです。

中盤すぎあたり少し話のペースが平板だった気がするんですが、全体としてFieldingさんらしい、丁寧でよくまとまったいい話でした。おっとりしたユーモアも楽しめる。
Simonがなんだかほのぼの系のキャラで、元警官という実感があんまりわかないんだけど(仕事中に膝を撃たれてはいるんだけど)可愛いからいいや。
ほのぼのとデートを楽しむ大人二人の男を、こっちもほのぼのとしながら読ませてもらった、そんな心あたたまる話でした。

犬可愛いので犬好きにもおすすめできる話です。二人とも大人なので声を荒げて感情的に衝突したりしないし、一言の誤解でくいちがったりもしない、安心して読める一冊。

★私設(小型)図書館
★人間不信












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