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M/M小説 (原書)レビューブログ

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Weight of the World
Goodreads-icon.pngRiley Hart、Devon McCormack

WeightOfTheWorld.jpg★★★ summary:
Tommyは常に弟を守ろうとしてきた。父親からの暴力も自分が一手に引き受けて、弟にはその拳が及ばないようにした。
弟のためなら世界のすべての苦しみを引き受けてやりたかった。
だが弟のRobは、ある夜にビルから飛び降りて命を絶つ。

何故?
あんなに守ろうとしたのに、何故だ?

理解できないTommyの前に一人の若者が現われる。彼はRobを知っていると言った。
そのZackには、決してTommyに言えないことがあった。
自分はたしかにRobを知っている。だがそれは一夜だけのこと…Robが飛び降りた夜、そのビルでのわずかな出会いにすぎないのだ。
あの夜、命を絶とうとしていたのはZackのほうだった。それを救い、人生に希望を持たせてくれたのはRob。
そのRobが何故まさにその夜に飛び下りたのか、彼にはそれがわからなかった。

二人は、Robが死んだ理由を探そうとしはじめる。
何故? 何故? 何故?
残された者たちはいつまで答えを探しつづけるのだろう。
.....



あらすじでわかるように非常に重い話です。
登場人物が悲惨な状況にあるとか行き詰まっているという話はほかにもあるけれども、この話は「去っていってしまった人の影を追う」話で、残された者たちの行き場のない悲しみと苦しみが全編を黒雲のように覆っています。

ロマンスがないかといえばそういうわけでは(勿論)なく、弟を失った真面目で厳格な男Tommyと、希望を失いながらもその弟に命を救われた(でもそのことを打ち明けられない)若者Zackの二人は、死者の残した痕跡を追いながら少しずつ絆を育んでいく。
しかし、ZackはRobが死んだ夜にまさに現場のビルにいたことを言えていないわけで、その秘密が明らかになった時に兄ちゃんはきっとZackを許せないんじゃないかなーと、ここにもまたどおんと重い時限爆弾が仕掛けられています。
あー、ほんとにキリキリする。胃が重くなる話だ…!

少しずつ見えてくるRobの姿が奇妙なほど明るくて、それが不思議と気持ちをなごやかにもしてくれるし、痛々しくもある。Tommyにしてみればいつまでもフラフラしているたよりない弟でもあったけれど、Rob自身はずっと苦しんでいた。それでもその苦しみの中で精一杯明るく生きていた気配はある。
実際、読んでいてなんだかRobの印象がひっくり返ってきて、最後にはけなげに思えてきてしまったくらい。
そしてあの運命の夜、飛び下りようとしていたZackを引き止め、人生を語り、煙草をわけあって一緒にダンスしてくれたRobは、たしかに一瞬の輝きを放っていた。その輝きに惹かれてZackはもう一度人生をやり直す決心をするのです。
なのに何故、Rob自身はそこで諦めてしまったのか。手放してしまったのか。
Zackにとって、それは解かねばならない謎なのです。とんでもなく緊張しながら、会ったこともないRobの兄の家のドアを必死で叩きにいくくらいに。

言っておくと、きっぱりと白黒つけてくれるような、すべてが明らかになって目の前に分けて並べられるような話ではないです。
むしろ人には他人のことは完全にはわからないし、誰かを完全に守ることなどできないという、そういうぼんやりとした限界が見えてしまうような話でもある。
神話のアトラスは世界の重さを双肩で支えたけれども、誰にも他人の世界の重さを肩代わりしてやることはできないのです。

謎を解くことよりも、人の死をどうやって残された人たちが整理し、あるいは背負い、悲しみ、その悲しみを消化していくのかというところに眼目のある物語です。
主役二人にもそれぞれの弱さや欠点があるし、それがむき出しにされる瞬間もあって、この兄貴に苛々させられたりもする。「正しい人」って困ったもんだ。

読む時の気持ちを選ぶ一冊で、そして読んですべてが晴れるかというとわからない。愛とロマンスはちゃんとあるけどね!
それでもよい物語だったと、読み終わった時にそう思った一冊でした。
人が人と理解しあうことには、たしかに限界がある。それでも、きっとそれだからこそ、そうして得られたつながりは大切で、思っていたよりも脆いその絆が、ときに失われたり、またつながりあったりすることが人生の陰影なのかもしれません。

重めに浸りたい時の一冊として。
こういう話もあるところが、M/Mジャンルの広さでもありカオスの一面でもあるなあ。

★秘密
★喪失












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