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M/M小説 (原書)レビューブログ

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A Casual Weekend Thing
Goodreads-icon.pngA.J. Thomas

ACasual.jpg★★ summary:
Doug Heavy Runnerはつねに他人と線を引いてきた。
ネイティブアメリカンの居留地で育ち、だが祖父たちは牧場の成功により地元で妬まれてきた。一方、居留地の外に行けば地元では人種に対して白い目を向けられる。
遠いマイアミで警官となり、その時だけはゲイということもオープンにして暮らしていたが、犯罪者につけこまれて酷い目にあってから、地元に戻って保安官としてひっそりと生きてきた。

そんなある時、男の死体を山から引きあげる。
自殺のようだったが、その男の両腕には「Happy Birthday」と刻まれていた。
Dougは唯一の肉親である男の弟に連絡を入れる。

Christopher Hayesは肩を撃たれて命をとりとめたが、人生の転換期を感じていた。右手がうまく動かない。拳銃を撃てなければ刑事の仕事は続けていけない。
ずっと刑事として悪人を裁き、走りつづけてきた。
兄から逃げるために。
その兄が死んだという連絡を受け、彼は一人でその町へ向かう。
.....



走りつづけてきた男の話。

Christopherは走るのが好きな男です。何が何でも走る。肩を撃たれたあとも、走りすぎて傷がひらいてしまうくらいに走る。マラソンどころか、百キロ以上のいわゆるアドベンチャーレース(荒野を走ったり砂漠を走ったりするやつ)も走る。
彼が走るのは、自分の中にかかえている何かを押しとどめておくため、そして過去から迫ってくる何かを振り払うためなのです。
なんだか落ちつきのない男なのですが、そこのところが見えてくるとおもしろくなってくる。

彼は、もう二十年くらい会っていない兄が死んだと連絡を受けて、小さな町へ向かう。山の上にある町に行く前に、泊まったふもとで色っぽい男を引っかけて一夜のお楽しみと洒落込むわけですが、その相手が山の上の保安官Doug。
お約束といえばお約束だけど、ちょいと都合よすぎでもある。わりとちょいちょいそういうところのあるお話ですが、キャラの作りにちゃんと厚みがあり、展開にスピード感があるのでその辺はさらっと流して読めると思う。

この話で一番おもしろかったのは、走ることにかけてのChristopherの執着と、そしてその兄のキャラクター。
兄はもう死んでいますが、Christopherは検死報告書を見て彼の死亡日が自分の誕生日であると知る。そう、この兄ちゃんは長年会っていない弟のために腕に「Happy Birthday」と刻んで自殺するような男なのです。
それを読んだChristopherもまばたきひとつしない。ただ走る。倒れそうになるまで走る。
彼はずっとそうやってきた。兄に傷つけられた子供の時から。兄が「逃げろ」とChristopherを追い出した時から。
兄は養父から虐待を受けていて、その虐待をそのままChristopherへと転化していた。傷つけられたものが別の誰かを傷つける負の連鎖。「逃げろ」と言ったのはChristopherを守るためだったのだろうか? その環境から、そして自分から。Christopherを逃がし、刑務所に入った兄はその連鎖から逃げられずに闇に呑み込まれたのだろうか。
語られることのない、想像するしかない闇ですが、その闇は話の中心にずっと居座っていてChristopherを引き込みそうになる。

でも彼にはDougがいます。
週末に遊びで寝てみただけの男。タイトルどおり「A Casual Weekend Thing」でしかない筈の相手。
お互い、この関係はカジュアルだし一時的なものでしかないし、と自分に言い聞かせながら二人はそれぞれの弱みを相手に見せるようになっていく。
それは深みじゃないのか?って誰が見てもハマりつつあるんだけど、二人だけは「いや、ゆきずりの関係だから」とあらかじめ守りに入っている。傷ついたことのある男ってのはこれだからたちが悪いし、楽しい。

兄の死が、この町でひっそりと起きていた犯罪をあぶり出していきます。町の子供たちが、保護と養子のシステムの中で消えている。誰の目も届かないところで、誰かが子供たちを食いものにしている。
そこにはやはり兄が抜けきれなかった「負の連鎖」の悲劇があって、それを断ち切るため、そしてChristopherを呼ぶためには死ぬしかなかった兄の決断の愚かさと悲しさが印象に残った一冊でした。
兄ちゃんのことはもう少し知りたかったな!ほんとどうしようもない奴だが!

展開をもうちょい整理してあると(あともうちょい短いと)ぐっと質があがったと思うのですが、ところどころにキラリと光るキャラ描写があって飽きさせない一冊です。
それぞれのバックグラウンドをかかえて、みんな何かから逃げているようでもある。その「われ鍋にとじ蓋」的な組み合わせぶりが味わい深い。
あとエロシーンがしっかりエロい作家さんなので(大事)、そこもしっかり楽しめます。
ちらっと出てくる本当にどうしようもねえ相棒が続編の主人公になっているので、これから読むぞっと。

★ランナー
★トラウマ












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