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M/M小説 (原書)レビューブログ

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Running Blind
Goodreads-icon.pngKim Fielding, Venona Keyes

RunningBlind.jpg★★☆ summary:
人気アニメの声優Kyle Greenは熱烈なファンに支えられ、プライベートでは10年つれそった恋人と満たされた毎日を送っていた。
だが人生は一瞬で変わる。
脳梗塞で視力を失ったKyleは、ついに仕事のチャンスを手に入れた恋人と別れる。
もはや二人の間にあるのは「ロマンス」ではなくなっていたと感じていたし、恋人の新たなキャリアの邪魔をしたくはなかった。

アニメの仕事はもうできないだろう。絵と自分の声を合わせることができないのだ。
それでも小さな望みを得て、Kyleは走り始める。

そんな時、道でぶつかった男はSeth Caplan。
運命の出会いというほどドラマティックではなかった。少なくともその瞬間は。
.....

こういう話だと、パターンとしては「ハンディキャップを負った主人公を恋人が手のひら返しで捨てていく」ような導入がありますが、今回は違います。二人は子供のころからの友達で、恋人として仲良くも暮らしていたし、盲目となったことで心が醒めたわけでもない。
むしろ、彼らの間にあるものが「恋」ではなかったことが、その出来事によってはっきり見えてきたという感じ。恋人ではなく、兄弟のような存在になっていた。本当はずっとそうだったのかもしれない。

たとえそうであっても、自分に未来がなくなった(と思っている)状態で、恋人の手を離せるKyleを見ると、彼がフェアで芯の強い人だということがよくわかる。
視力を失い、恋人を別の世界に送り出し、Kyleは自分の新しい道を見つけようとするが勿論それは容易ではない。しかしそこの展開が地に足がついた筆致で描き出されているので、重くとも読んでいて苦しくはない。

共著者のひとりKim Fieldingは、そういうさじ加減がいつもうまいです。世界とうまく協調できずに(精神的あるいは肉体的に)自分の居場所をはっきりと定められないキャラの痛みや淋しさをしっかりと書きながら、声高ではない筆致がしみじみと味わい深い。

病院から家に戻ったKyleは、時々なにかが「見える」のに気付きます。
検査の結果、脳にダメージはあるが目は正常なので、その視覚情報を脳の別のところで処理するように適応してきているらしいということがわかる。要するに、動いていれば物が見える、ことがあるらしい。
そこでロッキングチェアを買って体を揺らし、新たな視野を得ようとして、さらに人生の新たな一歩として、Kyleは走り出す。
そしてそこで、Seth Caplanという男にぶつかるのです。

道でぶつかって恋が始まるなんてじつにクラシカル!(すぐに始まるわけじゃないですが)
ともあれKyleが持ち前の明るさとチャレンジスピリットを少しずつ取り戻していくさまは、読んでいて彼を励ましたい気持ちにさせられる。
ポジティブというか、繊細ながらに丈夫な人だ。ちょっと後ろ向きだったりするところにも共感が持てる。

Sethは母親の病気を看るために帰ってきて、自分も新しいテクノロジー関係の仕事を始めようとしている。
いい人で、ずっと遊び人だったけれどもそれにも疲れていて、何か人生でしっかりした基盤がほしくなっている頃です。そんな時にKyleと出会い、Kyleのランニングパートナーとなります。
二人の間には最初からおだやかなユーモアが流れており、SethがKyleとのディナーに「馬鹿みたいだけど、何を着ていこうか鏡の前ですごく悩んだ」と打ち明けて笑うところなんかも可愛いです。

人生にはつらいこともあるし、谷も坂もある。
そこで落ち込んでもいい、間違った判断をしてもいい、でもいつか走り出せば新しい何かに出会えるかもしれないという、地味に前向きな気持ちになれる話。目をみはるようなドラマがあるわけではないけれども、ゆっくり読みたい一冊。

アニメが仕事のひとつなので、日本の漫画作家さんとかもちらっと出てきて「sensei」と呼ばれているのがちょっとおもしろい。kake udonとか。
お好み焼きとか味噌汁とかちょいちょい日本の文化も出てきて、やはりアニメ文化というのは日本がイメージの中心にあるのだなとそんなところもおもしろく読みました。

「伴走者」っていう言葉は、この作品の中では実際の役割であると同時に、とても比喩的な意味を持っているのだと思う。

★アニメ声優
★伴走者












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