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The Tin Box
Kim Fielding
TinBox.jpg★★★ summary:
かつて精神病患者を収容していたJelley’s Valleyの精神病院。カリフォルニアで最大の精神病院だったという。
今はからっぽのその建物に、William Lyonは管理人としてやってくる。秋までの間、そこなら誰にも邪魔されずに論文を書き上げることができる。その筈だった。

Williamには孤独が必要だった。そこで静かに引きこもって、あとは妻が離婚の手続きをすませるのを待とうと思った。
だがふたつのものが、彼の孤独な心をかき乱していく。

ひとつはColby。町の唯一の雑貨屋兼郵便局を手伝っている若者。何にも屈さないような明るさを振りまく彼は、Williamの拒否などかまわずずかずかと近づいてくる。

そしてもうひとつは、小さな錫の弁当箱。昔々、誰かが使っていたような。
病室のひとつに隠されていたその箱の中には、もう70年も昔に書かれた手紙が入っていた。届けられることのなかった手紙。
その手紙には、70年前、ゲイだということから精神病院に放りこまれて様々な「治療」を受けていた一人の若者の心の叫びが綴られていたのだった。
.....



Williamはまだ子供の頃、自分がゲイだと感じて、保守的な両親に「ゲイだ」と告白する。途端に親たちは彼を「治そう」として、サマーキャンプやセラピーに送り込む。
自分が誘惑にかられるのは、自分が弱いから。祈りが足りないから。
そう信じてWilliamは努力を続ける。そう信じて、気の合う女性と結婚し、「正常な」暮らしをしようとする。限界が訪れるまで。

そんな彼を「何かいいもんが町に来た!」とキラキラした目で見るのがColbyです。
とても小さな町で、「あのパン屋はいとこ、あのレストランの料理人もいとこ」というような町ですが、Colbyは自分がゲイだということはまるで隠そうとしていない。のびのびと、自分らしく振る舞っているColbyにWilliamは最初たじろぎますが、次第にその自由な空気を好むようになっていく。
このあたり、はっきりと「こうだ」というエピソードはないのですが、自然に二人の雰囲気がよくなっていく感じはよく読みとれて、実にうまい作家さんだなと思います。

Williamが「ゲイの初心者」だと知ったColbyは「よしきた!」とばかりにやる気になり、Williamにゲイポルノを見せ、ゲイロマンスを貸し、ゲイクラブまでドライブに連れ出す。
このあたりは「おいおい!」ってちょっとつっこみつつ楽しく読めました。後から思うと、Colby、退屈しすぎだろ…
そんな中で、二人の距離感は変わっていくのです。

その一方で、この話の主軸を貫いているのが70年前の「手紙」の話。
この手紙が話の主役だと言っても過言ではないでしょう。
ゲイだということで家族から精神病院に放りこまれた若者は、こっそりと取っておいた紙を使って、恋人へ届かない手紙を綴る。自分が「治療」でどんなふうに変えられてしまうのか、それでも気持ちは消えないと、真摯に綴られる手紙を読んでいると気持ちが締めつけられそうになります。またこの子がいい子なんだ……
彼に何が起こったのか。何故手紙は書かれなくなったのか。それを、Willamは知ろうとします。

途中で何度か、息抜きをしたくなるくらい読んでいて切ない話でした。
声高ではないけれども、それだけに強烈に迫ってくるものがあります。終わった後も気持ちが残る、辛いけれども後ろ向きではない話です。

切ないものが読みたいとか、どっぷり浸かりたい気分の時に。非常に読みごたえのある強いストーリー。
おすすめです。

★古い手紙
★なりたてのゲイ

切なくて、しっかりした筋のお話ということで(最近エロorバイオレンス風味なのを続けて読んでたこともあり(汗))、"The Tin Box"、読んでみました!

Colbyが、年上だけど、うぶうぶなWilliamに嬉々としてゲイ道指南する様子が面白かったですw
でも、確かに雛の刷り込みみたいではありましたが、あそこまで填まらせておいて、「もっと広い世界を見ないと!」とか言って距離を置くなんてひどいな~と思ってたら、最後はWilliamが漢らしく口説いてくれてよかったです。

70年前のもう一人のWilliamの一途さは胸につまりましたね。
カルテから判明する彼の結末がとても辛い…
現代のWilliamがColbyとの幸せを追求する気持ちに導いてくれたのが救いでした。

あと、この方の英語はすごく読みやすいと思いました。
他の読み辛いのに当たっちゃったら、この方の本を読めば頭がリフレッシュできそうです。
Colbyは本当に「調子に乗ってそんなことするから〜」とさとしてあげたくなる感じがしますね!
私は最初、彼があまり好きになれなかったのですが、話が進むにつれて「君こそ心のオアシスだ」という気分になりました。彼の明るさがなかったらひたすらつらい話になってしまったかもしれません。
でもやっぱり悪ノリしすぎだと思う(笑)

本当に、本当に途中で、William(昔)のことについては祈りました。とても切なくなりましたが、でも彼の存在が現代に何かをもたらしてくれたのはせめてもの救いだなと。ううう。

きれいな英語ですよね、淡々とした中にも品があるというか。ほかの作品も読んでみたい作者さんです。出会えてよかったなという作品で、作者さんで、こういう読書の時間が持てるのは本当に幸せです。











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