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Breathe
Sloan Parker
SP_Breathe_coverlg.jpg★★★ summary:
Lincoln MacCawには差出人不明の手紙が届いていた。憎しみに満ちた手紙。
__刑務所はさぞや平和だったことだろう。もうそうはいかない。

送り主の見当はついていた。そして、Lincolnには相手を責める気にはなれなかった。
彼がひき殺した女性の夫を。

Jay Millerは息が詰まるような日々を送っていた。
悲しみと憎しみで押しつぶされる。それも、彼のものではない悲しみと憎しみに。
あまりにも周囲の悲嘆が大きくて、彼自身は今でも、死んだ妻を悼むことすらできない。
そんなある日、彼は自分よりも重いものを背負っているような一人の男と出会う。

二人の男の偶然の出会い。
それは新たな憎しみへの道なのか、彼らがたどらなければならない許しへの道なのか…
.....



Lincolnはプロのレースドライバーでしたが、女性をはねて殺してしまい、刑務所に6ヶ月入ります。その罪を背負っていかなければならないと知りながら、それでも彼はまた元の町へ戻る。
そこに妹が、小さな子供をかかえて必死で生きているからです。彼女を決して見捨ててはいけない。そのためなら彼は、人殺しだという白い目にも、脅迫の手紙にも耐えようとしている。

Jayは、最愛の妻を失う。
ですが自分の家族と妻の家族の憤怒、加害者への憎しみの凄まじさに、彼の気持ちは行きどころがない。
彼はただ妻を、妻の不在を悼み、悲しみたいだけ。
憂鬱な気持ちでバーに行ったJayは、そこで打ちひしがれている一人の男と出会って、その痛みに強く惹かれます。
そうして、交通事故の加害者と、被害者の夫は出会ってしまう。

最初はてっきり、JayがLincolnを許すまでの話かなと思ったんですが、Jayはもう、怒りを抱えてはいない。彼はただ、妻のことをちゃんと悲しみたい。遺族たちはLincolnに怒りを向けるだけで、死んだ妻の名前も呼べない。
Jayが、妻の名を呼んで妻の話をできる相手は、加害者のLincolnだけなのです。

二人は出会い、まずいと思いながら互いに落ちていく。Lincolnは自分は許されるべきでないと思っているし、JayはLincolnの存在が知られたら、家族が何を言い出すかわからなくて悩んでいる。
でも、彼らは幾度もぶつかりあいながら、幾度も相手に戻っていくのです。
この葛藤部分がよく書けていて、二人が痛みを乗り越えられればいいと、読みながらはらはらします。でも未来のない感じがつらい。
時にぶつかりあう気持ちは、互いに対する刃となる。

脅迫状は、Jayの送ったものではありません。でも誰が送ったのかわからないし、Lincolnの中にはJayを疑う気持ちもある。
Jayは、自分の家族が脅迫状の主ではないかと思うと、つきつめるのが怖い。
そんな二人の迷いをよそに、脅迫はエスカレートしていき、妹を巻き込み始めた時、ついにLincolnは耐えるのをやめる。

二人の感情だけでなく、周囲の人間の感情も濃密に描き出されていて、痛みが鮮やかです。
特に、痛みにとらわれて憎しみを吐き出し続ける家族と、彼らに押しつぶされそうなJayの対比は凄い。悲しみが、人から何を奪い、がんじがらめにするのか。飲み込まれまいとするJayの、静かな強さも段々と見えてきます。
死んだ妻の姿も、Jayの記憶を通して描き出されていますが、とても魅力的な女性で、物語に厚みを与えています。

とても骨太で、読みごたえのある話でした。
この作家はもう一冊読んだんですが、やっぱりおもしろかった。感情表現がうまい作家なので要注目です。
しっとりと、喪失の痛みや罪悪感の物語に浸ってみたい人に。結構ぐいぐいきます。

★罪悪感
★事故












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