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All She Wrote
Josh Lanyon
All She Wrote★★★ summary:
Holmes & Moriarityシリーズ2

古典的なミステリ作家であるChristopher Holmesは、巻きこまれた殺人事件の渦中で、5歳年下のベストセラー作家J.X. Moriarityと再会したのだった。
3ヶ月たって、彼らの関係はまだ続いていたが、Christopherはぎこちない思いをしつづけていた。長年の恋人は、彼を捨てて年下の男と逃げた。J.X.がいつか、Chrisが様々な面倒に値しないと気付いて、同じように彼の前から姿を消さないとは限らない。

だから、かつての恩師であるAnna Hitchcockからかかってきた助けを求める電話はChrisにとって渡りに船だった。階段から転落して足を折った彼女の代わりに、作家の卵たちのセミナーの講師役をつとめることは、週末のJ.X.との予定をキャンセルするいい口実だった。

だが、それはただの口実ではすまず、J.X.との関係に決定的な亀裂を入れてしまう。
そして、家を訪れたChrisに、Anna Hitchcockは思わぬことを告げるのだった。自分の命が狙われていると。その犯人をChrisに探し出してほしいと。
.....



前作「Somebody Killed His Editor」でじたばたしながら殺人に巻きこまれて右往左往していた落ち目の作家、Chrisふたたびの1冊。

Chrisは、何とか出版業界で生き残っているけれども、いささか先のあやしい作家です。恋人のJ.X.は元警官で、書くものはなんでもベストセラーリスト入りする。
そんな恋人に、Chrisは引け目を感じているし、年の差が気になるし、お互いの釣り合いが取れてない気がして仕方ない。彼は及び腰で、J.X.はそこにどう踏み入っていいのかわからない。

Chrisは猫と植物学者の女性を探偵役にした古典的ミステリのシリーズを長いこと書いています。今やそんなに売れてはいない。そのことも彼の悩みの種で、J.X.も彼のそのシリーズに対して「現実味がない」と手厳しい。
おもしろいのは、J.X.が決してChrisの作家としての技量を低く見ているわけではないところ。前作でもそうでしたが、J.X.は「Chrisはもっと自分をさらけ出して書くべきだ」と思っている。「お前は俺よりいい作家なんだから、自分をさらけ出すことを恐れずに、自分の体験に基づいたことを書くべきだ」と。
それをコンスタントに言われるのもChrisにとっては重荷で、苛立ちの元なんですが、果たしていつか彼はJ.X.の忠告に従うんだろうか。意地っ張りだから簡単には従わないと思うけど、楽しみ。

Chrisは頑固で、ちょっと天然が入っていて、皮肉屋。でも見た目以上に実は繊細で、クールに見えるのはシャイなだけで、長年の恋人の裏切りに今もまだひどく傷ついています。
でも今回、Chrisの回想によれば、彼らはどっちもTopを好んで、義務感からBottom役をかわりがわりにやっていたけれどもそれを楽しんだことはなかったし、何となくぼんやりして2人ですごす時に手を握りあうこともなかった。彼と元彼の関係が、愛情や情熱に満ちた甘いものだったようには見えません。
シャイなあまり、そういう不器用な人間関係しか結べないのがChrisで、今回、J.X.はひとつずつ彼の防御を壊しにかかります。そしてChrisはJ.X.にそれを許す。
ただの週末の関係から、恋人同士になっていく、そのステップが小さいながらもドラマティックで、はらはらします。
J.X.は優しくて、Chrisに首ったけだけれども、何か言う時はまじで容赦なく本音。実際Chrisはめんどくさい人間なので、そういう人とまっすぐ向き合うには相当の体力や誠実さを要すると思うのですが、惚れた弱みとは言え、J.X.もよくがんばるなあ。探偵ごっこにもちゃんとつきあって、彼をどこまでも守ろうとする。

ぎこちない作家が、5歳年下の作家仲間に追いつめられて、逃げ場を探しながら落ちてく感じが可愛い。恋にちょっとおろおろしながら、探偵役もやろうとして右往左往している。頑固で、誠実に。でもそんな彼が最後に対面する真実は残酷なものでもあります。

ミステリの軸もしっかりしていて、読みやすいです。前回の舞台も外界から切り離された館で、古典的なミステリの形式を踏襲してましたが、今回もほぼ館内で物事が進みます。物理的に隔絶されているわけではありませんが、やはり古典的な雰囲気の残るミステリに仕上がっています。
作者のLanyonは、Adrien Englishシリーズを完結させた後はこれを主軸にしたいのかな。今回Chrisが旅の間に読もうと思って持って行った本に「Adrien Englishシリーズ」の本が入っていたのはご愛嬌。

肉食系×草食系のカプが好きな人、古典的ミステリの雰囲気が好きな人におすすめ。ユーモアと恋愛模様とミステリのバランスがよく取れてて、読みやすい1冊に仕上がってると思います。

★古典ミステリ












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