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The Dark Tide
Josh Lanyon
The Dark Tide★★★ summary:
Adrien Englishの人生は、やっと平穏の時を向かえたかのように思えた。
銃で撃たれ、心臓の手術を受け、生き延びた彼の前には、ついに新しい人生がひらけているはずだった。
彼が愛したかつての恋人、Jake Riordanはカミングアウトを果たし、Adrienと生きて行きたいと告げる。それはAdrienの望みでもある筈だった。

だが、Adrienには未来も希望も見えてこない。
Jakeとの関係を取り戻すことすら怖く、Adrienは彼を遠ざけながら、彼のことを考え続けている。
Jakeと一緒にいた10ヶ月、離れていた2年間、そして再会の時に得た、心臓が引き裂かれるような心の痛みを。

そんなある日、Adrienが本屋を広げようとして買い取った建物から古い骸骨が見つかり、彼はその調査をJakeに依頼するのだが…
.....



Adrien Englishシリーズ最終巻。Lanyonは「ぐずぐずシリーズを続けるのは作家の最大の失敗のひとつ」とか言ってる人なので、多分潔く最後だろうなあ。残念。
とは言え、最後らしく読みごたえのある一冊です。表面的には穏やかだけれども、頑固で意地っ張りで人を一定以上よせつけないAdrienと、ゲイである自分自身に苦しみ、憎しみを抱えこんでいたJakeのたどりついた、人生の1ページが鮮やかに描かれています。

前作でJakeがカミングアウトし、彼らのハッピーエンドは約束されたかのようでしたが、果たして、そんなにうまくいくものではありません。Adrienは傷ついた痛みを忘れることはできないし、Jakeをどこかで信じ切れていない。
それは愛しているがゆえの痛みですが、深い痛みを知ったAdrienは怖じ気付いている。

今回の読みどころは、Adrienの痛みや迷いとともに、Jakeの変化でしょう。Adrienは、不可抗力のもとでカミングアウトをせまられたJakeが怒りや後悔を抱え込んでいるのではないかと恐れるのですが、Jakeは落ちついている。それどころか、これまで彼が抱え込んでいた刺々しい攻撃的な態度もなくなって、彼はきわめて穏やかで、平穏です。
JakeがAdrienに「カミングアウトはお前だけが原因ではない」というシーンがあります。Adrienの存在は一因でありきっかけで、ですがJakeはこれまであらゆる道を探したのだと。女とつきあい、結婚して家庭を作ろうとし、欲望は表から見えない形で吐き出してすませようとした。勝手ではありますが、それは彼にとって血のにじむような模索の結果だったわけです。自分ではないものになろうと。
そのすべてに失敗し、彼は、自分が生きるにはもはや偽りのない人生しかないと知る。そこまでもがきつづけ、自分を否定しつづけた──そんな壮絶な苦しみが文章の間から見えてくるような一冊です。

相変わらず、Adrienの皮肉っぽいユーモアや、斜めすぎる視点は健在です。つうかますます磨きがかってますね。物腰柔らかそうでキツい男なのですが、彼がJakeのそばにいると自分のガードを自然におろせる様子がほほえましい。
ミステリの部分もおもしろかったし、切なかった。チャンドラーのセリフや映画があちこちにちりばめられていて、Lanyonのチャンドラーに対する憧憬も見える。チャンドラーが舞台にした時代(ほぼ)を今回のミステリの背景にしたのは、偶然ではないでしょう。

上質の読書なので、じっくりと何かを読みたいときにおすすめ。あちこちに味わい深いシーンがあります。
中で言及される "Joan of Arc" はジャンヌ・ダルクのこと。
これだけを読んでもわからないので、シリーズまとめておすすめです。

★50年前の殺人












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