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The Manituw
Lisbeth Jenkins
The Manituw★★ summary:
イギリスから、水質汚染と生態系の調査にカナダの小さな町を訪れたRobert Silsburyは、予約した筈の船の船長が町の留置場にいるのを見て、初日から後悔していた。

July Cyrは、カナダ先住民と白人との非嫡出子であった。彼を憎んだり、嫌がらせをしてくる男たちは絶えない。顔なじみの警察官は、トラブルを避けるために、彼が飲みすぎると留置場に引きとって酔いが醒めるまで置いてくれるのだった。
深酒のせいで日にちをまちがえて、客を留置場で出迎える羽目になった彼は、相手の科学者が彼を解雇しないよう願うのみだった。
今年は船客も少なく、蓄えも底をつきかけ、しかも前金はとうに使い込んでしまっていたのだ。

Robertはこの船長を信用し切れないまま、結局Julyの船 "Manituw" に乗りこんで海洋調査に出る。
2人が互いに感じている磁力は、船の上で互いをつなぐ情熱に変わる。
ただのセックスではなく、もっと強い、心の結びつきへ。

だが彼らのどちらも、自分の過去を許し切れておらず、特にJulyは互いの情熱を信じるだけの希望を持てなかった。
調査が終わればRobertはイギリスに戻る。その先に何があるだろう? 2人の関係がこの瞬間以上のものに発展できる望みが、どこにあるだろう。
.....



過去の自分を許し切れていないまま、投げやりに暮らしている船長と、大切なものを守れなかった重さをかかえこんでいる科学者。
彼らがそれぞれに背負ったものは重く、彼らはそれを相手に見せる勇気を持てずにいる。

船長Julyの複雑なキャラが、物語に深い陰影をつけています。彼はRobertが「大丈夫、うまくいく」と言ってもそれを信じ切れず、プライドが邪魔をしてRobertにたよることもできず、"Do you love me?" とずばりと聞かれても、"No." と嘘をつく。
彼は、みじめといってもいいような底辺の暮らしをしているけれども(彼の住む家は美しく、快適に保たれてはいますが)、その暮らしから抜け出そうとはしていない。酒や、人々からの嫌がらせ。明日の約束のない日々。
彼は、そこから抜け出すのが怖いのかもしれません。

Julyの友達であるベストセラー作家のPhillipsが、また脇役としていい味を出しています。彼はJulyの人生を本に書いて大金を稼いでいる、シニカルで毒舌家な作家です。その一方で、「リアルな世界」を感じたいと言ってJulyと大げんかしては殴り合いになるような不思議な男でもある。
ただシニカルなだけではなく、彼は彼で切羽詰ったものをかかえこんでいるようにも見えます。それが何だかはわかりませんが、人の人生を書くばかりのPhillipsの中にはもしかしたら「自分の人生」というものが欠けているのかもしれないと、読みながらうがったことを想像してしまいました。

そのあたりのキャラの強烈な陰影にくらべてしまうと、Robertはちょっと無個性というか、全体にキャラとしてのまとまりが今一つだったかも。おとなしく見える一方で、内側に怒りや激情をかかえているのはわかるんだけど、そのあたりがスムーズに見えてこないのが惜しい。
エロの時にいきなり支配的になるのもなんだか唐突で、そこに何かあるのかと思ったら特にフォローもなかったので、そのへんは肩透かしだった。うむ。普段おとなしくてエロの時に強気な科学者!というのは萌えるんですけど、あんまりいきなりだったのでびっくりしたさ。

船の上での2人の気持ちのつながりあいとか、望みを持つまい、Robertにも持たせまいとするJulyの葛藤は、描写が強くて、読んでいて引き込まれます。
ラストの方は少し唐突にまとめられた感はあるけれども、このくらいの短さだと、先に想像の余地をたっぷり残したそういうまとめ方もありかなあ。

強い傷や過去をかかえた2人の話が好きな人におすすめ。ろくでなしっぽい船長にときめく人にも。
表紙がじつにエロくていいと思うのです。

★過去あり












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