Geography of Murder
P.A. Brown
★☆ summary:
サンタバーバラの殺人課刑事Alex Spiderは、誰にも弱みを見せない冷徹で有能な刑事であった。
彼は、殺人の容疑者であるJason Zacharyをとらえる。
22歳の若者Jasonは、起きたら死体と一緒のベッドで眠っている自分を発見して、仰天したのだった。
家を逃げるように出て、町の底辺で生きのびながら時おりドラッグに逃げるような暮らしをしていた彼だが、人が死ぬようなトラブルに巻きこまれたことはない。
Alexはやがて、Jasonが無実であることをつかみ、彼を留置場から出す。
だがJasonはそのままAlexの人生の中にとどまった。
お互いをつなぐ強い磁力を、どちらも無視できなかった。
Alexは「マスター」としてJasonの意志や欲望、生活を支配し、Jasonは主導権をすべてAlexに手渡す。
彼らの関係はBDSMのセックスパートナーのようにしてはじまり、やがて、AlexもJasonのどちらにも経験のない深い感情的なつながりに変化していく。
それは、AlexにもJasonにも、どちらにも心の準備ができていない関係でもあった。
.....
支配的なDomと自分の感情を持て余している若くて未熟なSubの出会い、そして関係を構築するまでの話。年の差8歳。
全体に硬派な筆致で書かれていて、殺人の捜査の部分もきっちりと描写されています。
…表紙はちょっとアレですが。
Alexは自分の生活を完全にコントロールしている、コントロールフリークです。彼は強く、支配的で、その場の主導権を握らないと気がすまない。警察の仕事は彼に対して強いプレッシャーでもあるけれども、そういうプレッシャーの中でこそ生きていく実感を得られるタイプの男です。
Jasonは若く、性格の中に強い芯をもっているけれども、弱い面もある。自分自身に対してもはや価値を持っていない、どこか投げやりなところがあるし、辛いことや嫌なことがあるとすぐドラッグに走ります。
だけれども、AlexはそんなJasonの中に、自分にはないやわらかさを見て惹かれていく。Jasonの弱さを、自分の強さで守ろうとする。
そしてJasonを完全にコントロールしないと気がすまない、Alexの支配欲は時に、自分で思うよりも強く暴走してしまうのです。
彼らは惹かれつつも互いを信頼できずに、一度は築いたものを壊してしまう。信頼のない支配関係はどちらにとっても危険なものです。
DomとSubの間の緊張感を、割と珍しい感じの視点から描いている話。両方の感情のエッジがよく描き出されています。
AlexはいかにもDomらしいDomで、人を支配するのは彼の「趣味」ではなく根っからの「生き方」なのだということがよくわかります。貴重なDomだ。
しかし、エロシーンの描写がとても少ない。個人的には、BDSMの話というのは(特にカップルが構築されていく過程では)プレイの中で極限まで剥き出しになった気持ちの交錯とか、その時の支配や服従の感情がとても重要だと思うので、そこが書かれていないとあちこち空白な感じがしてしまう。薄いと言うか。
あんまりエロエロしたくないのであれば、そのシーンそのものを書かなくとも、そこでどんな感情的な交錯があったか、2人の関係にどんな変化があったかなど、フォローを入れてほしかったところです。
うーん、勿体ない。
若い迷えるJasonと、彼にめろめろになりながらもそんな弱みを見せることなんてできないAlexのカプはとても味わい深いので、年の差BDSMカプが好きならおすすめです。
30歳と22歳の8歳差で、しかも刑事と容疑者という、まるで異なる2人の対照が鮮やか。
続編も出てますが、Jasonが成長していて、1から読むとなかなか味わい深いです。
★BDSM
★刑事×容疑者
■P.A.Brown ■長さ:5~10万語 ■キャラ:警官 ■ジャンル:サスペンス ■キーワード:体格差 ■ジャンル:BDSM ■キーワード:年の差