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Orientation
Rick R. Reed
Orientation★ summary:
1983年、22歳のRobertは44歳のKeithに出会い、倍の年の差があるにもかかわらず2人は深く恋に落ちる。
だがその年のうちにKeithは当時まだあまり知られていなかったAIDSを発症し、ひどく苦しんだ末、Robertの目の前で息を引きとった。クリスマスの日。

その24年後、2007年。RobertはKeithの遺産と資産管理の仕事をしながら、静かに生きていた。
彼の傍らにはいつも若い恋人がいて彼の孤独をまぎらわせたが、誰ひとりとして彼の心にとどくことはない。
そして2007年のクリスマスの日、今の恋人であるEthanは彼の目をかいくぐってどこかへ出かけ、戻らない。「クリスマス」がどれほどRobertに大切なものなのかわかっている筈の彼のそのふるまいにRobertは苛立ち、Ethanに対していくつもの疑いを抱くが、それを正面きって切り出すことはできなかった。Robertはいつでも孤独を恐れていた。

ひとりのクリスマスに耐えきれず、暗い夜の中を散歩に出たRobertは、湖畔で今にも水にとびこもうとしている娘に出会う。彼女はJess。24歳。クリスマス生まれ。…Keithが死んだ、まさにその年のクリスマス。
彼らはどこか近いものを感じあいながら、奇妙な形で近づいていく。そしてJessは夢を見はじめる。ずっと昔、まだRobertが若く、Keithと出会った店での夢を。
この出会いは運命なのだろうか?

一方、Rodertの若い恋人Ethanは、自分ではどうにもならない麻薬の深みにはまっていた。それは彼の体を、そして精神を蝕みはじめる。抜け出す道を探してもがきながら、EthanはRobertが彼を生命保険の受取人にしていることを知り…
.....


2008年のEPPIEのGLBTカテゴリ受賞作です。
しかしこれ、「スラッシュ」ではないですね。RobertとJessの、2人の男女の不思議な絆を中心にして話がすすんでいきます。Robertはゲイで、Jessもゲイ(レズビアンと言うほうが日本語のなじみはいいですね)なので、GBLTカテゴリなんだと思うけど。恋愛要素はなし。
ただ、最初の1983年のシーン、死んでいくKeithのためにRobertがクリスマスの飾りつけをし、プレゼントをひとりでひらき、豪華な料理を作るシーンはとても美しくて、胸がつまります。スラ的にはここだけで読む意味があるかもしれない。

Robertは24年もたって、今でもKeithの死とその喪失をのりこえることができず、人生に意味をもつことができていないように見えます。彼は親切で、心やさしく、人の世話を見るのが好きだが、同時に弱い男でもある。
Ethanはかつてはそこも含めて、Robertとそれなりに幸せな絆を結んでいた筈だった。だが麻薬が彼のすべてを奪っていく。そして恋人の変化に気づき、うすうすその正体を疑いながら、Robertは真実と向き合うことができず、Ethanの無数の言い訳にすがるように、目の前でおこっていることから目をそらしつづける。
それは先のない関係で、いずれは破滅が待っている。それも、ただの「別れ」以上の取り返しのつかない破滅が。

そのEthanの転落の軌跡が非常に怖いです。彼が常用している麻薬は「Meth」つまりメタンフェタミンで、非常に強烈な依存性を持つものとして知られています。どんどんと服用量がふえ、いずれは死に至る。
ほんの短い間にEthanは転落し、自分が肉体的にも精神的にも壊れはじめていることを感じながら、もがく。ただしもがく方向がかなり間違っていますが。
Ethanのシーンや、彼が取引しているドラッグディーラーのシーンの心理描写が非常に詳細で、読みごたえがあります。ほんとにEthanの「壊れてる」感が怖い。
彼が転落したのは彼自身のせいですが、結局Robertは彼を愛したことはなかったし(Ethanがそれを求めていたわけではないとは言え)、Robertの中にはいつでもKeithがいた。つねに彼は言葉に出さずとも、すべての恋人とKeithを引きくらべていた。そのことがEthanの足元をあやまらせた一因なのはたしかで、不健全な絆は不健全な人間を生みやすいのかもしれない。

「スラッシュ」ではないけれども、そういう人間ドラマを中心にした心理サスペンスが好きな人におすすめ。
性描写はほぼなし。超自然的現象が入るので書店のカテゴリに「Paranormal」が入ってますが、別に超能力で何かがおこるとかではないです。

★サスペンス
★死別した恋人












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