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Regularly Scheduled Life
K. A. Mitchell
Regularly Scheduled Life★★ summary:
SeanとKyleは、6年の間、友人から冷やかされるほど甘く幸せな関係を続けていた。
だが、10月のある晴れた火曜日の朝の出来事が、彼らのすべてを崩してしまう。

理科の教師であるSeanは、校内にひびく銃声を聞いたのだ。
駆けつけた彼は発砲者を取り押さえたが、足を打たれて傷を負った。

傷はいずれ治る。だがSeanの中には治せない物が残った。救えなかった生徒。彼がもしもっと早く走っていたら、あの生徒は死なずにすんだのではないだろうか?

Kyleはその事件をラジオで聴いてから、Seanが無事であるとわかるまで、生きた心地がしなかった。
無事ならいい。
ほかのことは2人ですべて乗り越えていける。その筈だった。

何もかも、元には戻れない。Seanの罪悪感は彼をさいなみ、自分の中に生まれた虚無を埋めるように、彼はさまざまな活動を始める。公的な場所に顔を出し、演説をし、エージェントを雇い、マスコミのインタビューに応じた。
突然、自分たちが人々の目にさらされはじめたことに当惑しながら、Kyleはできる限りSeanをサポートしようとした。だが、それは正しい恋人同士の形だろうか? 1人の心に巣くった罪悪感に振り回され、ほかのことはすべて後回しになってしまう。
Seanの「一番」はもうKyleではない。
そのことに傷つくのは、あまりにも自分勝手なことだろうか?
.....



これは読んでいてとにかく気持ちのおさまりが悪い話で、何だかうまく言えませんが「気持ちの悪い」話でした。ほめてるんだが。

学校での銃乱射事件と、その時犠牲になった生徒に衝撃を受けたSeanは、とにかく「世の中をかえたい」という気持ちで「正義の人」になるわけです。Kyleはそのことに反対しているわけではない。でも自分たちの時間もほしいし、プライバシーもほしい。
ある種の「ヒーロー」となったSeanにはエージェントがつき、そのエージェントが2人の生活の中にまで入りこんでくるけれども、Seanはそのことに対しても鷹揚。でもKyleには耐えられない。
耐えられないが、笑顔で「大丈夫」と請け負ったりする。Seanのためだから。Seanはさすがに恋人の中にある不満に気付くけれども、「ほかにどうしようもないし、Kyleはわかってくれている」と自分の気持ちをKyleの気持ちの上に置いてしまう。

それでも彼らの生活はうまくいかず、Kyleは元のような2人に戻りたいと思う。Seanにとってはすべてはもう変わってしまったことで、戻りたいと言われてもわからない。
そして彼は何故、Kyleが今の状況を理解してくれないのかわからない。
Kyleが言うのは「2人」のことばかりで、でもSeanには今や、自分たちより優先されるべきことがある。それが正義だと思うから。
でも愛は前の通りそこにあるし、Seanはそれでいいと思っている。

KyleはSeanの新しい生き方に添ってみようとしたり、耐えられなくなって態度が悪くなったり、Seanとぎくしゃくしたりします。「お前は自分中心すぎる」とSeanは言うけれども、Kyleは「自分を大切にしてほしい」のではなく(それもあるけど)「2人を大切にしてほしい」のです。
2人の認識のずれがものすごく詳細に書かれていて、これ結構怖い話だと思います。些細な言葉、些細な態度から色々なものが溜まっていく。ほんとに些細なことで、些細だから口に出してみると馬鹿馬鹿しく、それだけに気持ちの持って行きどころがない。
ほんとは、もっと根本的なところで彼らの立ち位置は間違っているのです。

優しくて判断力にあふれたSeanはいい男で、癇癪もあるが活発なKyleとは本当にいいカップルです。
その2人が、大きな一瞬の暴力によって、これまで築いてきたすべてが危険にさらされる。2人の愛情がはっきり書かれているだけに、彼らの関係がいびつになっていく様子がつらい。
派手なエピソードもありますが、大半が暮らしの中のリアルな物事を通して描かれていて、ディテールがすごくしっかりしています。
またK. A. Mitchellが日常の繰り返しの中で歯車が狂っていく様子を書くのがうまいので、読んでいてとても面白いし、気持ちがざわざわします。

心理描写や日常描写の詳細な話が好きな人におすすめ。

★発砲事件
★ヒーロー












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