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Sins of the Father
D.W. Marchwell
Sins of the Father★★☆ summary:
Charlie Kirbyには過去があった。
彼の父親は人を殺し、刑務所で死んだのだ。

42歳になった彼は高校の教師をしながら、父親が入っていた刑務所でボランティアとして、囚人に高卒資格を取るための勉強を教えていた。
そんな彼に、Caleb Farmerという老いた囚人が手助けを求める。手紙を書きたいと。40年会っていない息子へ。

Calebは40年近く昔に妻を殺し、それからずっと刑務所で生きてきた。長い罪の時間を経て、彼は自分がどれほど愚かでどれほど周囲を傷つけたか悟り、それを謝りたいと思っていた。
彼の息子は事件の時にまだ6歳で、母が殴打されて死ぬ音をクローゼットの中で聞いていなければならなかった。Calebは彼に向けて手紙を書きたいが、文字の書き方を知らない。
そこで、自分の代わりに手紙を書いてほしいとCharlieにたのむ。

CharlieはCalebに文字を教え始めた。2人で一緒に手紙を書きながら、Charlieはその「息子」の行方を探す。
その探索は思わぬ形で彼の人生にはねかえり‥‥
.....



あえて、あらすじではいくつかの大きな要素を省いてあります。
これは導入がすごくうまい本で、まずは学生時代の若いCharlieからはじまる。父親の罪を背負うように生きてきて、他人との間に壁を作ろうとしているCharlie。
でも彼は変わります。
そのへんについても書きたいんだけど、書いてしまうと読む楽しみが半減する気がするので、割愛。すごくテクニカルな導入部だと思う。

本編の大部分は現代で、Charlieは42歳になっています。刑務所で出会った囚人のたのみを聞こうとして動き出す彼ですが、囚人と息子との間を結ぼうとする彼の行為は、ただの親切心ではなく、もっと切迫したところから出ている。
かつてCharlieは、服役している父親に毎週会いに行ったけれども、父親は彼に一度も会おうとしないまま死んだ。決して修復されることのなかった自分の家族の絆を、Charlieはこの囚人と息子のケースに重ねているようです。

Charlieはとても繊細で考え深く、ちょっと考えすぎるほどの人で、彼の慎重な視線のひとつひとつが過去の物事や人の心の動きを浮かび上がらせていく。そんなに神経質にならなくても!とつっこみたい時もありますが、その気配りが彼の魅力であるのもわかる。
また書き方がなかなかうまくて、盛り上がるまでは心理の動きが事細かに描写されている一方、物事の火花が散る時には、動作や表情、セリフを中心に淡々とつづられる。そこに至るまでの彼の気持ちを知っているので、読む方は、息をつめるようにしてその瞬間の彼の痛みやたじろぎを想像してしまう。
色々なことがよく計算して書かれた話だと思います。

やがて、彼の人生にはJamesという男が入ってくる。彼とCharlieの関わりはドラマティックで深く、2人ともに複雑な過去と現在に搦め捕られて、自由に動けない。その様子がもどかしくて読みごたえがあります。
ともに生きていきたいのであれば、彼らはそれぞれに過去の影から抜け出さなくてはならない。
この小説は痛ましい過去を重荷として描くだけではなく、過去や痛みのピースが「現在」を作っているのだという肯定の部分も大きい。振り返るだけでなく、前に進むための物語です。

色々な過去が絡み合う導入から中盤までは圧巻で、少し中だるみするかなーという感じがありますが、後半には静かな緊張感が戻ってきます。登場人物の誰も声高ではないのに、そこからにじみ出してくる痛々しさはクリアにつたわってくる。
Jamesの視点からのシーンがもうちょっとあればいいかなーとか、ラストでもうちょっと「手紙」についてJamesがどう思ったか知りたいなあとかありますが、過去の罪に対する人の心の動きが丁寧に描き出された物語だと思います。
すべてが丸くおさまったわけではない、そのあたりのさじ加減が憎い。読み終わった後、気持ちが動いて後を引く本です。
しかし3つ差のカプなんだけど、「younger man」とやたら年の差を強調するのは何なのだ。作者の萌えか。

人は、過去と和解しなければ前に進むことが出来ない。
罪とか過去とか、そういうテーマが好きな人に。スラ成分もちゃんと入っている、味わい深い話です。

★父親の罪
★手紙












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