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Slash(m/m小説) レビューブログ

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The Slow Road to Hell
Goodreads-icon.pngGrant Atherton

slow road to hell★★★ summary:
犯罪心理学者Michael MacGregorは、長く会っていない父親の様子を見に帰り、変わり果てた父の姿を発見する。父は死んでいた。
司祭の父親とはかつて縁を切り、それからMichaelはずっと過去と向き合おうとしてこなかった。
だがその過去が今、目の前にあらわれようとしている。Nathan。昔の恋、捨てた筈の思い出。
そのNathanが捜査の指揮を取るという。なんと父の死は殺人事件だったのだ。しかもMichaelはその容疑者。

再会したNathanは昔のことなどなかったかのように、知らない他人に対するような態度でMichaelに接する。
もうなにも取り戻せないのかもしれない。自分に嘘をつき続けてきたMichaelに、それが当然の報いなのかもしれなかった。
.....



作者Grant Athertonさんのデビュー作、のようです。The Slow Road to Hell: A Gay Murder Mystery。これ全部タイトルなのかな。
非常に先が楽しみなミステリ作家さんが出てきたな!というのが感想。

主人公は犯罪心理学者で、人の無意識の動作や表情から嘘を見抜いて犯罪捜査に貢献している。なにやら未解決殺人事件に関するラジオ番組なんかも持っているようで、そこそこ有名人らしい。やや皮肉屋、追いつめられるととりあえず相手を口で攻撃してあとで後悔するタイプ。
洋ドラ好きならなんだかビジュアルが目に浮かんでくるような美味しい設定です。

彼は、少年時代の恋が司祭の父親にばれ、そのまま親子の縁を切ってロンドンへ出ていった。
その時に何も言わずに勝手に別れた相手がNathan、その彼が今回殺人事件の捜査のチーフとしてやってきます。
容疑者と捜査官としての、気まずい再会。これも美味しい!

過去のわだかまりの中、冷たいNathanの態度にMichaelの感情はかき乱され、しかもマスコミが事件を嗅ぎつけて集まってくる。殺人事件と関係のないMichaelのプライベートも彼らの手によって暴露されてしまう。
人生の苦さが漂い、捜査もかなり丁寧に描かれていて、読みごたえがあります。閉鎖的というほどに狭い町ではないようだけれども、そこそこ誰もが誰もを知っている距離感の近さがあって、そんな中での殺人がまた次の殺人を呼んでいく。なんのための殺人なのか。Nathanが思っているように、Michaelが帰ってきたことが何かのきっかけになったのか?

欲を言えば後半、もうひとつ話にひねりがあれば理想的だったんだけれども、前半あまりに私好みの話の進み方だったから気持ちのハードルが上がってしまったのかもしれない。うむ。キャラの微妙なひねくれかたなども読んでいてとても楽しかった。
余韻を残した終わり方が気になるんだけど、シリーズ物になるのかな?それなら楽しみだ!

ミステリ好き、勢いにまかせない再会ものが好きなら絶対楽しいおすすめの一冊。

★再会
★容疑者と捜査官

Before You Break
Goodreads-icon.png K.C. Wells, Parker Williams

BeforeYouBreak.jpg★★★ summary:
ロンドン警察の銃器専門班のメンバー、WayneとEllisは無二の親友であった。
ある日、WayneはEllisの変化に気付く。苛々し、眠れていない様子で、作戦中に判断ミスをする。
これ以上ほうっておけないと判断したWayneは、Ellisをロンドンにできる新しいBDSMクラブのオープニングパーティに招く。

ゲイでもないしBDSMにも興味はないんだ、と言い訳しながら、Ellisは初めてこの親友のDomとしての一面を見る。BDSMという新たな世界を。
そしてWayneは、Ellisにひとつ契約を申し出るのだった。自分のSubにならないかと。
Ellisが人生を立て直すには、それしかないと。
本当に?
.....


Secretsシリーズの1。
親友、BDSM、契約、と心ときめくワードがあるお話です。
珍しいのはこの二人に恋愛関係や肉体関係が(少なくとも契約の時点では)ないこと。Wayneはゲイだということを隠していないし、Ellisとそうなれたらなーと思ってますが、そのために自分のSubになれと言い出したわけじゃない。
彼はただ、親友の人生を救いたい。大好きなEllisが人生の足を踏み外しつつあることに気付き、そしてこの強情な親友を救うには彼をDomとして支配するしかないと思っている。
それが本当かどうかはともかく、Wayneがそれを信じているのはたしかで、クラブのオーナーの片方が言ったように「Domは何でも治したがる」というDomの生態のような気もします。

そんなわけで、彼らはBDSM契約を結ぶ。契約書が細かい細かい。何に同意し、行為の中でどこまで許せるか。一項目ずつ検討し、確認していく。えらいぞBDSM界。非常にホワイト。
でもセックスは契約の中には入らない。WayneはそれをEllisに強いるつもりはない。おしおきにひっぱたくのはいいとして。
Domも大変だな…

Ellisの中には根深い自分への不信感や、植え付けられてきた家族への義務感がある。
歪んだ価値観を、Wayneは断ち切ろうとするし、Ellisはもちろんそれに反発しながら、それでもDomに仕え、支えられていくことの悦びを知っていく。
でもへらず口を叩き、Domへのリスペクトには欠けているけどね!そんなEllisと一緒に、WayneもまたDomとして学んでいきます。
だがそんな時、Ellisに事件が起きる。二人の関係を決定的に壊しかねない物事が。のりこえられるのか、そしてEllisは本当にWayneにたよることができるのか。

二人の関係性やDomとSubの意味にかなりしっかりフォーカスが当てられているので、BDSM初心者にもたいへんオススメの一冊です。Ellisの「それなに?なんで?」が色々な疑問を解いてくれそう。
BDSMは人を救えるか。誰かのSubであるというのは人に従いつづけることを意味するのか?
クラブのほうにはまた別の人間関係があって、この本だけ読むと少しついていきにくいんだけど(本筋には関係ないレベル)、これは多分Collars and Cuffsのシリーズの人たちではないかな。こっちも読めばたぶん一粒で二度美味しい。そのうち読むー

人間関係重視のBDSMを読みたい人、口の減らない生意気Subにときめく人におすすめ。

★親友
★BDSM

The Layover
Goodreads-icon.pngRoe Horvat

layover.jpg★★☆ summary:
8年前、Ondro Smrekは決してゲイと公表できない故国スロバキアを逃げるように去り、スチュワードとして世界中を旅してきた。
だがうつろな心をかかえたまま、彼は選挙結果次第ではゲイが激しく弾圧されそうな状態の故国へ帰ることにする。

理想などではない。ただ後悔があるだけだ。

乗り継ぎのスイスの空港で、飛行機が遅れてホテルに滞在になった夜、彼はやはり飛行機待ちのJamieという若いアメリカ人と出会う。純粋で脆さを漂わせる彼にOndroは強く惹かれるが、どうせ一夜しかない関係だ。
その筈だった。
.....



作者さんはチェコスロバキアで生まれ、それがチェコ共和国となったのちにそこを去って、ドイツとスペインに住んだ後スウェーデンに住んでいるそうで、その視点が色濃く投影された中編だと思います。
結構評価に悩むところがあるお話で、それはもう読んだ時の気分次第かもしれない。始めのうちの、空港での最終便逃しから相手の存在に気づくあたりなんかはちょっとリズム悪いかなと思うんですが、後半のOndroの気持ちやどうしてスロバキアに帰るのかの本音がむき出しになっていくあたりはひりひりしていて読みごたえがあります。

そしてなにより、普段アメリカやせいぜいイギリス辺りの話を読むことが多いので、スロバキアという正直なじみの薄い国の事情を読むのは非常に新鮮だった。開かれていない国、宗教というものの存在が濃密で閉鎖的。その息苦しさが、逃げ出したOndroの視点から密に描き出されていきます。
色んな国でゲイの権利が確立され(少なくとも制度の上では)ていく今、それでも世界のすべてがそういう場所ではない、ゲイとして生まれたこと自体が呪いのように人生を支配してしまう場所がたくさんあるのだということは、こうして物語として読むと余計に鮮烈に染み込んでくる気がします。
そして、それこそが物語という形のもつひとつのパワーなのではないかと。人に違う世界の見方を分けてくれる。この話は、たしかにそういう話でした。

痛みや閉塞感を出しつつも、全体には希望のある話です。
タイトルのLayoverという言葉は「乗り継ぎ」とか「乗りかえ」という意味ですが、実際に空港で飛行機便を乗りかえようとしていた二人という以上に、この出会いが彼らにとっての人生の乗り継ぎポイントだったんじゃないかと思います。

一夜の運命の出会い(ちょっとリアルバージョン)ものスキーとか、異国の雰囲気を感じたい人にオススメの一本。
あとみんなOndroの名前が発音できなくて「Andrewでいいよ」と言ってるのに、正しい発音にこだわるJamieがかわゆす。

★帰郷
★一夜の関係

Amazonアフィリを始めてみましたん。前からやっとこうと思いつつ面倒で手続きしてなかったんですが、今回ついにその壁をのりこえまして、まあ次からそんなこんなでひとつよろしくです。モチベ上げの意味もあります。
もともとAmazonリンクは貼りたくないほうでしたがAReがなくなった今どこからリンクひっぱってくるのかが面倒になってきて、負けましたよ!でもアフィリ嫌じゃとかAmazonちょっとねという人もいると思うので(私の心の一部もそう言っている…)タイトル下のマークにGoodreadsのリンクも貼ってみた。Goodreads-icon.png
←このアイコン
(横に貼ろうとしたら画像の回り混み設定がうまく解除できなくてな…CSSとかいついじったかな…)

そんなわけで適当適度によろしくお願いします。

Runner
Parker Williams
runner.jpg★★☆ summary:
Matt Bowersの人生は16歳の時に崩壊した。それ以来、人を信頼することも近づけることもできずに、彼はひとりきりで屋敷の中に住んでいる。家族すら寄せ付けず。
彼だけの世界、すべてのものがあるべきところにある世界。

だがそんな時、一人の男が彼の敷地近くまで毎日ジョギングしてくるようになり、Mattはパニックに陥る。
弟の保安官にどうにかしてくれと電話で泣きつくが、相手がなにもしてこない以上無理だとはねつけられる。ただひとつ、Mattが外に出てその男の名前を聞けたなら、打つ手を考えてもいいと。

日常。世界。注意深く築き上げてきた彼の世界。
ジョギングランナーはそれをおびやかす存在なのか、それとも……
.....



トラウマもの、引きこもり主人公。
この手の話はそこそこ成り行きが読めたりするんですが、ある意味で「予想外」な話でもありました。

Mattは彼の世界に入ってきた一人のランナー、Charlieに惹かれていきます。彼のそばにいると怯えずにすむ自分を知って、驚きながらも少しずつ心を開くようになっていく。
Mattは非常にナイーブで、それは16歳の時に人への信頼を打ち砕かれたことからきているのですが、こわれた世界を自分なりに寄せ集め、人から見れば「異常な」世捨て人の生活をしながらも、彼は少しずつ自分を癒してきた。そのたくましさが意外でおもしろい。
人と会いたくないからって野菜を自分で育て、釣りに出かけて魚を釣る。冬の間は雪に閉ざされて雪かきもこない場所で、たくわえた食料でひとり冬をこす。
なかなかたのもしいじゃないか主人公!

一方で、彼は他人という存在にひどく過敏です。16歳の時に起きたことに対して、その後の彼の反応はちょいと行きすぎな感じもあるんですが、たぶんあれは行為そのものよりもその後の他人や家族との食い違いがもたらした自分への拒否感なのだと思う。
家族はMattを支え、「いつか正常に」なる日を待つのだけれど、Mattにとって世界も自分ももう壊れてしまったものであってそれを「いつか正常に」「元通りに」と期待されることは重すぎることだった。
彼にとって必要だったのは「変わってしまった」自分を見て、受け入れてくれる存在だった。それを自分でも気がついていない。まだ。

特に弟Clayとの関係はおもしろい。兄を大事にしているあまりちょっとやりすぎたりもするんだけど、いい弟です。
うまく兄の支えになれなかったかもしれないけれど、彼の存在なくしてMattは世界の存在を感じつづけることはできなかったと思うよ!世界に残してきたもやい綱のような存在でしょう。ブラコンすぎる。

Mattのトラウマ重すぎないかとか甘すぎないかそれでいいのかとかで評価が分かれているみたいなんですが、それはわかるなあ。私も最初そう思いながら読んでいたけど、でもやっぱり壊れた世界を取り戻すっていうのは大変なことなんだと思う。もっとうまくやることはできただろう、でも最善の道なんてその時にはわからない、それも読んでいるうちに感じられたことでした。
なので、個人的にはとても優しくよく描かれた世界だと思うよ!
それはそれとして、金の心配せずにあんな生活できるMatt超うらやましいじゃないか……と少々のやっかみは感じましたけどもな。あれはうらやま。

きつすぎないトラウマもの好きな人なら是非。悪人いないので、色々あるけれども優しい世界です。

★PTSD
★ブラコン

★Three-Star rating system★


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