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Slash(m/m小説) レビューブログ

※万人向けの内容ではないのでご注意ください
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小説には文化が描かれています。その文化の中でも、他所者が呑み込みにくいのが「お土地柄」やらのお約束ごと。たとえば日本の小説を外国の人が読んでいると考えてみましょう。中にひとりやたら冗談を言いまくるキャラがいる。そのうち誰かが「あいつ大阪の生まれなんだ」と言い、「なーんだ」と皆が納得する…なんてシーンがあるとします。
この時に「なーんだ」を共有できるのは、ある程度「大阪」についての共有イメージ(実態にそぐっているかどうかはともかく)を持っているからであって、もし大阪が地名だとしかわからなければ、この会話の意味自体が呑み込めないわけです。
で、洋書を読んでいると、そういう「おいてけぼり」がたまにある。地名だけじゃなくてね。

その中で、「金髪」と「アイルランド」について。軽く解説しておきます。

・金髪
「お馬鹿ちゃん」「頭がからっぽ」のニュアンスを含む。
これはもう、実際に金髪が頭が軽いかどうかって問題じゃなくて、ステレオタイプで「金髪ジョーク」というジョークのジャンルがあるんですね。的外れな返答で笑いを取るお馬鹿タレントのごとく、金髪がどれだけ馬鹿なことを言うか、でオチになります。逆に、金髪をなめてかかった男がやりこめられるというパターンも少数あります。
「金髪だからって脳みそがないと思うなよ」みたいなセリフが出てきたら、この手の「金髪ジョーク」を元にしているんですね。
マリリン・モンローはこの手の「金髪イメージ」に苦しんだと言われており、彼女の生きた時代ではジョークだけでなく実際に人々が抱く共通イメージだったのでしょう。何でだろうね。

・アイルランド
アメリカは移民の国で、イングランドからも移民がたくさん行きました。イングランドといっても、アイルランド、ウェールズ、スコットランドなどで気質が異なります。
この中でもよくジョークのネタにされるのが「アイルランド」。
アイルランド人は頭の回りがゆるく、酒飲みで馬鹿である、というのがそのジョークのステレオタイプ。ちなみにスコットランド人は頭がひたすら固くて融通がきかない。ウェールズは思い出せない…ごめん。。

アイルランド移民は数が多く、そして彼らは喧嘩っ早くてガタイがいい(背は全体に低め)ため、歴史的に消防団員や警察官といった危険な職業によくつきました。スラでは消防や警察がよく舞台になりますが、ほぼ必ずと言っていいほどアイルランド系が混ざってくるのは、こうした歴史的な経緯があるのです。(さらに、アイルランド人の警官は大体父親や祖父の代からの警察官だったりとか)
もし「アイルランド人(アイリッシュ)だからさ」というセリフが吐かれた時には、それがアイルランド人のジョーク・イメージからなるものなのか、血の気が多い性格によるものなのか、どこのニュアンスで言っているのかを読み取れればちょっと楽しいです。

RockBetweenTheLines.jpg
ロックの英詞を読む ―Rock Between The Lines
ピーター・バラカン


ある程度英語の文章が読めるようになってくると、次に当たる壁が「ニュアンス」ではないかと思います。どんな感じで言っているのか、その言い回しが軽いのか深刻なのか、意味がわかっても「響き」に悩んだり。
さて、そんな人におすすめの一冊がコレ!

ピーター・バラカンさんが古今のロックの名曲の詞を解説してくれる、という嬉しい一冊。何しろネイティブ。そしてロックに詳しい。しかも日本語上手。
曲はImagineとか、ホテル・カリフォルニア(私はこの本で初めて歌詞ちゃんとみましたが、怖いな…)とか、ボブ・ディランの「風に吹かれて」とか。
何せネイティブなので、「この単語はリズムを整えるために入れてあるだけで意味はない」とか、「ここは複数の意味がかかってて受け取る人の自由だけどぼくはこんな感じに解釈する」とか、解説がのびやかなんですね。そののびやかさがこの本の持ち味で、「英語は色々解釈できるんだな」ということが段々とわかってくるのもいいところ。
特に歌の歌詞なんて、日本語の歌だって人によって解釈が分かれますよね。英語でも勿論、受け取る人次第なんだよ!というところをちゃんと残しつつ、きちんと彼自身のフィーリングで解説してくれます。言い回しを訳すだけでなく、その言葉が何を示唆しているのか(いる可能性があるか)までを示してくれるのが凄くいいですね。
当時、曲を聞いた時には時代背景と合わせてこう思ったとか、そういう枝葉の部分も楽しい。

中から例を出すと、ボブ・ディランの「Blowin' In The Wind」(風に吹かれて)のところでは、中学生の時にボブ・ディランを聞いたけど言葉は分かるけど意味がわからないことが色々あって、とか書いてある。社会背景を含まないと理解できない、そういうものが多かったのだと。
そして「The answer is blowin' in the wind」を、「答えは風の中に漂っている」と訳し(普通は風に吹かれている、と訳される)「舞っている、ゆらめいている」というニュアンスの方が近いと思う、と解説してくれます。

この本のいいところは、バラカンさんの書き方によるものだと思うけど、訳は「彼のフィーリング」であるということがはっきり伝わってくるところ。「正解」ではなくて、「バラカンさんの感じた歌詞訳」だというのがわかる。
対訳のついた本と言うのは、いかにも「正解訳」のような顔をしていることが多いのだけれど、そうではなく、考える幅を残した、どこか英語の揺らぎを残した訳になっているところが素晴らしいと思うのです。何しろ、英語と日本語は一対一ではないので、「絶対的な正解」は存在しない。そこをきちんと踏まえて読める良書だと思います。


今年はご無沙汰している間にいくらか英語の参考書とかも読んだので、ぼちぼちと、多少出していければなーと思います。
ついでのお知らせですが、近ごろ割とまめにtwitterやってるので、興味のある方はプロフィールからどうぞ。多少読書日記的なことも呟いてますが、プライベートとごたまぜなのでそのへんはよろしく。

Bulletproof
Mary Calmes
Bulletproof.jpg★★☆ summary:
A Matter of Time 続編。

Jory Harcourtは何をやってもトラブルに巻き込まれる運命なのだった。
パートナーのSam Kageが潜入捜査でいない間、彼は恋人探しの会社で働いていたが、気難しい金持ちに惚れられたり、麻薬の売人に気に入られたりと、どんどん深みにはまっていく。

だがたとえSamがいなくてどんなに淋しくても、Joryはほかの男などには目もくれない。
ただ、彼の親切心とそのはつらつとした態度と、あちこち飛躍する思考回路は、トラブルマグネットそのものだった。

彼がかかわった売人は、Samの潜入捜査ともかかわっている。恋人の偽装が剥がれないようにJoryは全力を尽くすが、トラブルはバカンス先のハワイにまで彼らを追ってきて…
.....



A Matter of Timeは元々1〜4までの続き物でしたが、Dream Spinnerに版権が移って、1と2を「1」、3と4を「2」として、2分冊で発行されました。加筆されてるのかどうかは不明。
さて、Bulletproofはその続編です。
まさにJory健在!

Mary Calmesは人気作家ですが、「彼女の書く主人公は全員結局はJoryだ」という指摘もあり、それももっともだなと私も思う。はつらつとした姫タイプの頑固な主人公の、集約形とでも言うべき存在がJoryです。
親切なんだとは思うんだけど、独特の思考回路と倫理観を持ち、結果としてトラブルまっしぐら!な若者だったJoryは、31になって、トラブルまっしぐら!な男になっております。最近、自分の本意でない職についているのでそのへんでちょっとフラストレーションも溜まっている。エネルギーの行き場を持て余している。だから、一度走り出したら歯止めがきかない。

この話を楽しめるかどうかは、みんながJoryに惹かれたり執着したりほめそやしたりする「姫」扱いにどこまでのっかれるか、にかかってきます。でもまあJoryは実際にかなりおもしろくエネルギーにあふれた男なので(進む方向がちょっとあやしいが)、姫扱いもそこまで大きな違和感はなく、話の勢いで大体読み切れると思う。
Samとの関係も相変わらずホットで、もうJoryにめろめろなSamが可愛い。今回は潜入捜査に行っていることもあって、普段はJoryが一人で動いていますが、それだけにSamの登場シーンは実に濃厚に描き出されています。もうこう、単純に、出てくるだけで萌え萌えする。

リアリティよりも、ある種BL風のキラキラとした勢いのある話で萌えたい時にぴったりの一本。
時にはこういうおとぎ話を全力で楽しむのもいいと思う。単独で読めないこともないけど、やはり「A Matter of Time」からがオススメ。
穴もあるけど、何だかんだで萌えの濃縮度が高いのですごく楽しいです。

★トラブルメーカー

Like Coffee and Doughnuts
Elle Parker
Like Coffee and Doughnuts★★☆ summary:
Dino Martiniは、古風なスタイルの探偵だった。銃を持ち、クラシックカーを運転し、女性には優しい。
親友のSeth Donnellyは車のメカニックで、Dinoは時おり仕事の手伝いをSethにたのんでいた。この男はいい加減で男でも女でも見境なく遊び倒し、ゴミ捨て場のような部屋に住んでいたが、Dinoにとっては背中を預けられる唯一無二の相手だった。

そのSethと、どうしてか、いつしかDinoは──恋に落ちたらしい。
どうしたらいいのかととまどうDinoと、苛立つSeth。だが二人の巻き込まれた事件は思いの外に大きなもので…
.....



この後にもう一冊出ているんですが、とても好きなシリーズです。
何となく洒落ていて、古い探偵小説の雰囲気を漂わせているのですが、ユーモラスで、二人の男がじゃれあってる様子も可愛い。
始めの方で、Sethが酒場で「俺の女に色目を使うな」と男にからまれているところに、Dinoが助けに入ります。「ダーリン、大丈夫か?この男に色目を使われてるのか?」と。
二人は楽しくその場を切り抜けて、笑い倒す。そんな仲ですが、いつの間にか少しずつ、親しい気持ちが別の物に変わっていく。

Dinoのたじろぎはまず一つ、彼がこれまで男と付き合ったことがないということ。Sethが親友だということ。そしてSethが「二本足で動く物なら何でもヤッちまう」プレイボーイだということ。
Dinoは古風で真面目な男だから、考え始めたらなかなか動けない。そこで焦れてるSethもかわいい。

ほのぼのと、ユーモアのある軽い感じて進んでいきます。ソフトボイルドというのか、軽いタッチの探偵ものが好きな人ならこの軽口に満ちた雰囲気は大好きだと思う。
Dinoが引越したアパートには四人の老婆が住んでいるのですが、彼らをまるで古い映画の世界のようにエスコートしてあげるDinoと、四人それぞれの個性のつよい女性たちの雰囲気も楽しい。頑固な老婆もいるし素敵で色っぽい老婆もいて、さりげなく皆に人生があるんだっていう影もある。
ロマンス部分もかわいらしくて、実はとまどっているのがDinoだけじゃなくて、プレイボーイのSethもだとか、ところどころ本当にほほえましい。

悪友ものとか、軽いユーモアのある感じが好きな人におすすめ。ストーリーもがっちりしてますし、安心してのどかに楽しめます。
タイトルの「Like Coffee and Doughnuts」、「コーヒーとドーナッツのように自然にそばにある存在」ということです。この響きにぐっとくる人なら読んで損はなし。

★悪友・相棒
★堅物×プレイボーイ

★Three-Star rating system★


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