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Slash(m/m小説) レビューブログ

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I Spy Something Bloody
Josh Lanyon
I Spy Something Bloody★★ summary:
Mark Hardwickeはイギリスの諜報機関のスパイとして中東での活動を重ねてきた。
スパイとしての仕事、そして人生、それだけが彼の知る生き方だった。
そして、その人生から抜け出すのが怖い──その恐怖ゆえに、彼は恋人との間に距離をあけ、ついには修復できない溝を作ってしまう。

だが、密告され、仲間を殺され、命からがら逃げ延びたMarkは、その元恋人のところ以外に行く場所を思いつかなかった。
Stephen Thorpe。年上の男は、Markを拒否しようとしながらも、やむなく受け入れる。傷ついた相手を蹴り出せるような冷たい心臓を持たない男だ。Markが一生をともにしようと思いながら、傷つけた相手。

Markはまだ、Stephenとの間に何かが残っているのではないかと願う。
そうかもしれない。そこにあるのは痛みだけではないかもしれない。
だが、Mark自身が変わらない限り、何も始まらない。そして自分が変われるかどうか、生き方を変えられるかどうか、Markにはわからなかった。その答えを知るのが恐ろしかった。
.....



Stephenは50歳。Markはちょっと見のがしましたが、30いくつだと思う。18、9でスパイの道にスカウトされた彼は、身よりもほとんどなく、非情に孤独な人間です。
その孤独さと痛々しさが、彼を皮肉で人になじめない人間にしている。

まあ実際、なかなかの根性の男なので、Markの一人称で進む話なんだけど、あんまりこの男に同情できない部分も多し。子供のような痛々しさを持っていることは確かなんだけど、それにしても相手のStephenは大変だと思うぞ。
性格が悪いとかいうより、何と言うか、物事からちょっと目をそらすクセがあるんじゃないだろうか。嘘に嘘を重ねて生きてきた人生なので、本当のことを過度に怖がっているのかもしれません。
とは言えそんな彼も、Stephenのところに戻ってきて怪我を癒しながら、自分が失ってしまったもの──というか、自分が決断さえすれば手に入っていた筈のものの大きさに気付いていきます。Stephenとの暮らし。彼の愛情。それはもう、手からすべりおちてどこかへ行ってしまったかのように見える。

Stephenはいい男です。彼はMarkにチャンスをあたえ、いったんMarkが彼を裏切ってスパイの仕事に戻ってからも、2年もの間、心変わりを待ちます。
でも駄目だな、と断腸の思いで見切りをつけたところに、傷ついたMarkが転がり込んでくるのです。
そりゃ腹も立つってもんです。

そんなわけで、全体に痛々しくもあり、刺々しくもあり。距離感に戸惑いながら、近づいては突き放される、そんな元恋人同士の話。そんな中に、かつてのMarkとStephenの追憶シーンがはさみこまれていって、コントラストが鮮やかです。
ディケンズの引用もちらほら入ってると思うんだよなあ。Lanyonはディケンズの古書をテーマにした話も書いてるぐらいで、ディケンズファンなんでしょう。引用部はよくわからなかったので、そろそろディケンズも読んでみようかな…

全体に筆致はクールで、あまり雑音なく進んでいく話です。スパイとしてのMarkの活動の概要がもうちょっと見えてくるといいかな、とかエピソードを少し足してほしい感じはありますが、キャラの輪郭の強さと、妥協なくぶつかりあう感じはさすがです。
年の差カプに萌える人、意地っ張り主人公好きの人におすすめ。

★スパイ
★帰還

All He Needed
Simone Anderson
All He Needed★☆ summary:
MLRプレスの2011ホリデーラインナップの1冊。

世界で活躍する写真家、Chase Hansenはアメリカへの帰国ののち、ダラスに駆けつける。
妹は死に、まだ妊娠中だった彼女の胎内から救い出されたほんの小さな女の子だけが残された。

Chaseは妹に托された通り、子供を引き取る決心をする。だが長年のパートナーはそれを拒否し、彼を去った。
今まで求めてきた人生はなんだったのだろう?名声?富?仕事?それらをすべて手に入れたと思っていた。でもそれは、「ほしいもの」ではあっても彼にとって「必要なもの」ではなかったのかもしれない。

Eric Zimmermanは、昔から友人のChaseが好きだった。偶然の再会から、彼らは惹かれ合う。
だがEricには不安があった。派手な生活を追い求めたChaseとちがい、Ericは地に足がついた、堅実なタイプだ。Chaseには生き方を変える覚悟があるのだろうか。姪のために、そしてEricのために。
.....



富と名声を追い求めた男、派手好きの元恋人、男に昔から恋していたけなげな友人、とまあ色々な基本タイプが取りそろえられています。
ある程度パターンにはまった感じはある作品なんですが、クリスマスストーリーとしてはそれはそれで正しいと思うのです。今回のホリデーストーリーは、ひとつひねったり重かったりするものが多かったので、素直なホリデーものは読んでいて何だかほっとしたのでした。

Chaseの人生の転機を中心に、話が展開していきます。そんなにスノッブではなくて、それなりに思慮深いいい男なので、読んでいて快適。
引越してきた友達のEricとたまたま同じ建物だった!とか、ちょいっと偶然すぎるだろうって感じもなくはないのですが、まあホリデーものだからよしとする。クリスマスのかみさまのなさることだから!

さて、Chaseはカミングアウトしたことでかつて家族と断絶し、その後、妹が和解しようとするも、それを完全に受け入れたわけではなかった。だから、妹の死の後、彼はもっと何かができたんじゃないかと自責の念を覚えています。
そして、姪を引き取ることに決めた後、人生の変化を見つめて、「自分が求めてきたもの」と「自分に必要なもの」の違いに気付いていくのです。
そのへんの描写は軽いタッチでさらっと書かれていて、Chase本人の変化がもっと出てきた方がよかったかな、とも思いますが、「ほしいもの」と「必要なもの」のテーマには共感できます。追い求めるだけ追い求めて成功したけれども、そこには本当に必要なものはなかったのかもしれないと。

子供の存在とともに、何とも「未来」の明るさを感じさせる一編です。やや引っ込み思案のEricもかわいいし。
スノッブでチャラチャラした元彼との対決シーンは、お約束だけど気持ちがスカッとしますよ。
定番ホリデーものを楽しみたい人におすすめの作品。読みやすいです。

さて、2月も後半になって、ホリデーものレビューもやっとこれでおしまい~!

★残された子供
★再会

★Three-Star rating system★


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