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Slash(m/m小説) レビューブログ

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もうすぐ年が明けそうですが、まだホリデーレビュー強化中です。書き終わってないのがあるもんで…
まあ新年もホリデーと言えばホリデーだよね!

さて、今年はかなりとびとびになってしまいましたが、1年間、お付き合い頂いてありがとうございました。拍手、コメント、色々と励みと参考にさせてもらっています。
毎年思いますが、このブログを始める時には「誰か来てくれるかな」という不安が山積みだったのですが、はじめてみてよかったです。同士いるんだよなあ。これからも色々紹介していきますのでよろしくお願いします。
にしても、今年はほんとにレビューがスローペースだったから、多分30冊ぐらい書いてないのが溜まってるんだ…来年がんばろう。

2012年の予定としては、2011年に読んだ本の中からオススメセレクションをしようかなーと。同時に、皆様からもベストリーディングを聞かせてもらえれば!と思います。
あとはいつもと同じ、レビュー。読んですぐレビューというリズムでできるのが理想的なんだけどなあ~。

去年あたり、M/M界も作品数が増えすぎて、よくあるシーンをつなげただけ、みたいな安易な作品が目につくこともありましたが(アメリカでもそういう発言をいくつか見た)、今年はそういう流れにまた反発してか、練られた作品が増えた気がする。ホリデーものもひとひねりしたものが多かったし。
来年も楽しみ。

2012年もよろしくお願いします!
お互いよい作品にたくさん出会えますように~

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The Christmas Proposition
K.A. Mitchell
The Christmas Proposition★☆ summary:
Melの住む町は、この数年で急激な変化を遂げつつあった。ガス採掘の大規模な開発がはじまり、土地を貸した者は大きな富みを得て、労働力が流れ込む。
だがMelはかわらず、頑固に両親からの牧場を守り、クリスマスシーズンには注文を受けて木を切り倒していた。
それだけではやっていけないため、彼は町のレストランでウェイターのシフトも持ち、クリスマスは、彼にとってもっとも忙しい季節だった。

彼にはひとり、恋人と呼べる存在がいた。
Bryce Campion。億万長者のくせに、身分を隠して労働者の中で働く気まぐれも持ち合わせている男。
Bryceは3年前、Melに一緒に来ないかと言った。だがMelはそれを断った。牧場を切り盛りする重荷は肩にずしりとのしかかり、Bryceと行くことを夢見ないでもなかったが、それでも彼にはその1歩が踏み出せなかった。

クリスマスの休暇の予定は寸前で壊れ、友人がMelの牧場で結婚式を挙げると言う。
久々に町を訪れたBryceは、またMelに対して新しい選択肢を示そうとするのだが…
.....



MenUnderTheMistletoe.jpgCarina Pressのクリスマスアンソロジー「Men Under the Mistletoe」に含まれている1篇。

これはK.A. Mitchellらしい、心理描写のきめが細かいクリスマスストーリー。
田舎の小さな町で頑固に暮らそうとしているMelは、でも心からその生活を愛しているわけでもない。
3年前、Bryceと一緒に行ったらどうだったのだろうと、今でも思っている。


全体の感じは、億万長者に口説かれてる!といういかにもなシンデレラストーリーなんだけれども、このシンデレラがちょーめんどくさいプライドの持ち主です。町から出ていけない、でも町が嫌いなわけではない、牧場を切り盛りする日々にも閉塞感があって、どこにも行き場がない感じに悩まされている。
でも、そこから逃れるために男にたよるっていうのもどうだろうと意地が先に立つ、そんなパラドックス。
Bryceの言葉にうなずいたら、自分の人生に主導権が持てなくなるのではないかという、そういう不安もMelにはある。まあ考えすぎる男で、考えすぎて身動きが取れない様子がとにかくリアルです。この作家はそういうシチュを描くのがほんとにうまい。現実がひしひしと足元にせまってくる感じが、ちょっと怖いくらい。

Melのプライドをのりこえてどうにか恋を成就させたいBryceと、うろたえつつつっぱねようとするMel。強い男ふたりの意地と根性の心理戦です。
周囲はとうにわかってて、どうにか彼らがくっついちゃえばいいよ!と思ってるんだけども、Melはほんとに一歩を踏み出せないのです。
踏み出せない彼にBryceはほとんど最後の手段を使うけれども、玉砕。クリスマスマジックは彼らには働かないのだろうか、というところがひとつのクライマックス。楽しいです。

あまりにも堂々めぐりの心理戦がちょっとくどいかなあ、と思ってしまったところが個人的なマイナスポイント。環境汚染の話や、お互いへの信頼の問題なども盛られていて、うまいんだけど、これだけうまいんだから、もうちょっとあっさりめにしてもいいんじゃないかなーと思う。

迷える男が好きならツボ。エロシーンがたくさんあってどれもホットなので、「エロ+心理描写+クリスマス」という濃密さてんこ盛りです。
じっくり読むもよし、エロに萌えたりシンデレラストーリーにときめくもよし。

★億万長者
★プレゼント

Lone Star
Josh Lanyon
Lone Star★★★ summary:
テキサスの町で育ったMitchell Evansは、故郷の町を出てから12年経って、はじめて町へ戻ってきた。
彼にとっては明るい子供時代ではなかった。バレエダンサーになりたいと願ってレッスンしていたが父親には認められず、殴られて、彼は逃げ出した。血のにじむような苦労とともに成功をつかんでからも、帰るつもりはなかった。
半年前に父親が死んだと聞いた時も、その葬儀にも、ツアー中だった彼は帰らなかった。

だが、白鳥の湖の大役を逃し、その上恋人の裏切りを目の当たりにして、打ちひしがれたMitchが思いつく居場所は故郷の家だけだった。

家に向かってレンタカーを走らせていた彼は、目の前をトナカイが横切った──と思った──せいでクラッシュしてしまう。幸いケガはなく、すぐそばを走っていた警官が停まって彼を助けた。

まさか、その警官(レンジャー)がWeb Eisleyだとは、Mitchは予想もしていなかった。
彼の初恋、少年時代の彼の親友であり、それ以上であり、すべてだった年上の男。

ふたりの間にはまだ強い何かがある。それを感じながら、だが、Mitchはどうしたらいいのかわからない。
彼にも、Webにも、あきらめられないものがある。
夢か、初恋か。
それとも、どちらかを選ばなくてもいいのだろうか?
.....



MenUnderTheMistletoe.jpgCarina Pressのクリスマスアンソロジー「Men Under the Mistletoe」に含まれている1篇。
それぞれバラでも買えますが、まとめ買いがお得。

この1篇はJosh Lanyonらしい、切れ味のある、強い男2人の物語。

テキサスの町でバレエを習うこと、プロのダンサーになる夢を見続けることは簡単ではない。でもMitchはやりとげます。父親の反対や、時に折檻にも耐え、夢を追い求めた。
ある夜、Mitchは恋人のWebにカミングアウトを求めますが、拒否された。傷ついた彼は家に戻り、勢いのまま、父親にカミングアウトする。それきり家を出て、Mitchは帰らなかったのです。12年。
夢をかなえ、でも彼はこのクリスマスにひとりだった。

今、父が死んだ家に戻り、Webと再会して、その時の思い出が鮮やかにふたりの間によみがえる。少年同士の迷いや、時にまちがった判断。
そんなものが少しずつひも解かれていき、現在の彼らの関係をも変えていく、話の展開が鮮やかです。

Lanyonのうまさというのは、中心になっているキャラクターの描写だけでなく、周囲の人間も短いエピソードの積み重ねで見事に浮き上がらせる手腕です。今回は、Mitchの父親の姿がくっきりと、見えない影のように話の中に刻み込まれている。
Mitchは父が自分を憎んでいたと思っている。望まれたような、強いテキサス男の息子ではなく、バレエダンサーになりたがり、ゲイでもあった。だけれども、父は彼を愛していた。バレエダンサーになることも、ゲイであることも許せなかったけれども、彼は彼なりに、不器用にMitchを愛していたのです。
今になって、彼ははじめてそれを悟る。
Mitchにとって、故郷へ帰ってすごすこのクリスマスは、過去の自分には見えなかったものを見つめる時間でもある。

Webは「テキサスレンジャー」の一員で、これは(メジャーリーグの球団ではなく!)テキサスのひとつの警察機関です。元々は自警団のようなもので、騎馬警官とも訳されたようですが、今では公的な機関の中に組み込まれています。
Mitchが所属しているアメリカンバレエシアター(ABT)は世界的に有名なバレエ団で、日本にもよく来てますね。
それぞれの夢をつかんだ2人の男たちの、静かだけれども、パワフルな再会の物語。そして、ちょっとだけ、クリスマスの奇跡もあります。

派手ではないけれども、3万語ない短さの中で非常に濃厚に話が紡がれていて、やはりLanyonの手腕に舌を巻きます。
失われたもの、戻らない人への静かな思いと、未来への希望。リアルティのある、でもロマンティックな一編です。
話の最初にMitchが見たひとつの星(Lone Star)と、最後にWebがMitchに送るふたつの星との対比がきれいで、オチも素敵でした。
ゆったりとした、クリスマスの読書に。

★帰還
★再会

Winter Knights
Harper Fox
WinterKnights.jpg★☆ summary:
Gavin Lowdenは若い歴史学者で、アーサー王伝説についての検証を行いにNorthumberlandを訪れていた。
アーサーとランスロットとの間に特別なつながり──ロマンスがあったというのが、彼の説だった。

そしてそのクリスマスの日、ホテルで、彼は恋人のPiersを待っていた。敬虔なカトリックであるPiersは、宗教的な罪悪感や、家族に秘密をもつ後ろめたさをかかえながら、Gavinとの関係を続けてきた。
彼を楽にしてやりたくて、Gavinはこのクリスマスの日、家族にカミングアウトしてホテルに来るようにPiersに提案したのだった。

だが、恋人は来ず、かわりに別れの電話だけがくる。
雪の中にさまよい出したGavinは、やがてふたりのレスキュー隊員に救い出されるが、それは思いもかけずにエロティックな一夜となり…
.....



MenUnderTheMistletoe.jpgCarina Pressのクリスマスアンソロジー「Men Under the Mistletoe」に含まれている1篇。
それぞれバラでも買えますが、いいアンソロです。


この話を書いたHarper Foxは、人の心の痛みを書かせると本当にうまい。痛みがどっしりと心にのしかかってきて、ひびを入れ、今にも体ごと粉々になりそうなつらさが、文章からにじみ出してくるようです。
一方でそこに気合い入っちゃって、別のところがおろそかになる気配があるんですが。シーンはすごくいいけど話全体のバランスが。
どう言ったらいいのか、いびつでアンバランスですけど、読みごたえはある。


今回の話はかなり変わったクリスマスストーリーで、GavinとPiersというメインカップルよりも、Gavinを助けるふたりのレスキュー隊に話のフォーカスの半分があたっています。
謎めいたレスキュー隊で、しかも片方はGavinと地下にとじこめられた最中にちょっとエロい展開になったりして、読んでいるとびっくりします。いいのかそれ?と思うんですが、その先に「実は…」という真実のターンテーブルも用意されていて、正体が段々見えてくる。
この2人がマジですごく格好いいです。何とも心痛む、でも愛らしいカップル。

一方で、GavinとPiersには読んでてもあんまり気持ちがときめかなかったかなあ。とは言え、宗教的な重荷に苦しみつつGavinとの関係を続けてきたPiersの決断とか、彼の立場に立って思いやることが出来なかったGavinが自分の身勝手さに気付くシーンとか、印象深い萌え場面はいくつもあります。
もう少し話が短い方が、その印象は際立ったかもしれない。Gavinがレスキューの2人の正体を知ったあたりでどんと切ってくれたら、★ひとつ上がったと思うんだけど、ちょっと話の尻が長かったですね。
痛みとか別れとか、そういうドラマティックなシーンを書くのは半端なくうまいけど、それ以外の淡々としたシーンを書きこなすのがこの作家の課題かなと思います。期待してますが。

クリスマスの奇跡が、ひびわれたカップルをふたたび結びつける。そんなロマンティックな話です。
アーサー王伝説と噛んでますが、とりあえずアーサー王の友人で頼れる騎士がランスロット、というところだけ押さえておけばいいでしょう。Gavinはガウェイン、Piersはパーシヴァルと、ほかの騎士の名前とも絡めてあるんだと思うけど。
苦悩と幸福の対比が鮮やかで、読みごたえがあります。いくつかマイナスポイントはあるものの、読後感もよく、骨太のクリスマスストーリーが読みたい人におすすめ。

★超常現象
★レスキュー

My True Love Gave to Me
Ava March
MyTrueLoveGaveToMe.jpg★★★ summary:
1817年の12月。
Alexander Nortonは天にも昇る心地だった。
Thomas Bennettと、ついにふたりきりの夜を迎えられるのだ。初めての、それは彼らの愛を確かめる大きな1歩になるはずだった。
真実の恋。オックスフォード大学でThomasに出会った瞬間、彼らのどちらもそれを見つけたのだと、Alexanderは信じていた。

1821年の12月。
Alexanderはクリスマスが近づいて世間が華やぐこの時期を、心の底から憎んでいた。4年の時がたってもなお、彼は自分に背を向けた恋人のことと、その傷を忘れることができなかった。

そんな時、Thomasがニューヨークから戻ってくる。ある決心を心に秘めて。
彼は、4年前の許しを乞いにAlexanderと向き合うのだが…
.....



Alexanderは愛らしい、よく笑う、誰もが心を許すような青年だった。
彼に恋し、でも最後のところで怖じ気づいたThomasは背を向けて逃げ出す。
そして4年後、どうしてもかつての恋が忘れられずに戻ってきたThomasが見たものは、すっかりシニカルになり、警戒心を解かず、人に向かって壁の隔てを作ってしまったAlexanderです。
彼は変わってしまった。そのことを自分の罪と知り、Thomasは立ちつくす。

何せ、わんこのようにThomasになつきThomasを信じていた4年前のAlexがあんまり可愛いので、4年後の皮肉屋で冷たい青年の姿には読んでいるこっちも心が痛みます。
ThomasはどうにかAlexの許しを得ようと、そして4年前の傷を修復しようと様々な手を尽くすのだけれども、Alexは彼を拒みつづける。
まだ恋している──ずっと忘れたことなどなかったけれども、またThomasが去ったら、彼は今度こそ立ち直れる気がしない。だから拒むしかないのです。痛々しいな。

ホリデーシーズンのロンドン。あちこちでパーティが行われ、招待がとびかう中で、彼らはすれちがい、出会ってはぶつかり、どちらも新しい傷を抱えて、それでも相手から目が離せない。
Thomasを傷つけようとしてするどく舌鋒をふるいつつ、そんな自分に嫌気がさすAlex、Alexの憎しみや怒りを当然のものとして受けとめて手をさしのべようとするThomas。若い恋を引きずるふたりの感情表現が濃密で、美しい。

明るく機知にとんでいたAlex(今は皮肉屋のAlex)と、誠実だけれども不器用なところもあるThomas。
愛らしいカップルで、いいヒストリカルものです。
短めですがアップダウンがよく練られた話で、ヒストリカル好き、再会もの好きにおすすめ。

MenUnderTheMistletoe.jpgこの短編はCarina Pressのクリスマスアンソロジー「Men Under the Mistletoe」に含まれている1篇です。バラでも買えるけど、アンソロジーで買った方がお得。
1話が2~3万語弱なので、4話入って10万語ほど。
去年のアンソロ「His for the Holidays」も面子が豪華でよいアンソロでしたが、今回も読みごたえありますよ。

クリスマスの奇跡とか再会がテーマになっている様子で、苦い思いを引きずりつつ向かい合ったりすれちがったりするカプが楽しいです。話はどれも全体に重めですが、ハッピーエンド。


★クリスマス
★裏切りと再会

Simple Gifts
LB Gregg
SimpleGift★★☆ summary:
Jason Ferrisは友人に無理につれていかれた彼女の実家のクリスマスで、居心地の悪い思いをしていた。あたたかな歓迎、プレゼント、笑顔──そのどれもに、彼は逃げ出したくなる。

孤児として育ち、荷物ひとつだけをかかえて里親のもとを点々としたJasonは、ひとりでいることには慣れていた。
だが、家族のクリスマスパーティ?どうしたらいいのか、わかるわけがない。

しかも、そこには友人の兄のRobb Sharpeがいた。
かつて、彼の心を奪って、消えた男。
軍から戻ってきたRobbはすっかり変わってしまい、まるで別人に見えた。

パーティから逃げ出そうとしたJasonは、庭でクリスマスオーナメントに激突されて気絶する。
彼を病院に運ぶ車のハンドルをRobbが握り、彼らは奇妙な再会を果たすのだった。
.....



ホリデーシーズンには色々なクリスマスものが出るので、M/Mもいつになく盛り上がるシーズンです。LB.Greggも去年に引き続き、ホリデー短編を書いてくれました。
明るい主人公が多い彼女にしては結構ダークなタッチで、暗いものを抱えた2人の男の再会の話。でもやはり主人公のどこかユーモラスなまでの頑固さや、ユニークさは健在です。
「A Cornwall Novella 2」となっていて、1はDudleytownですが、つながってないのでどちらも単独で読めます。

主人公のJasonは、分厚い殻にくるまったような人間です。友人のクリスマスの誘いを断りつづけたけれども、ついに泣き落としに負けて、家までつれてこられてしまう。
そして、即座に後悔するのです。あたたかな歓迎とプレゼントを見て。しかも、そこにはかつて愛した男がいたから。

歓迎されればされるほど、「自分はここに属していない」ということを強く感じるのは、Jasonが孤児であることに深く傷つきつづけてきたからでしょう。彼は里親にあたたかく歓迎されたことがない。恋した相手は自分を去って軍隊に入った。
孤独は、彼が自分を守るために築き上げた壁で、その中に誰もいれたくない。そんな孤独と、そこにしがみつこうとするJasonの様子がちょっとユーモラスに、そして痛々しく見えてきます。人から歓迎されると逃げ出したくなり、小さな紙が手元にあればすぐに折り紙で何かを折ってしまう。折り紙で折った星で家の天井を星座のように飾って、空間を満たしている。
痛々しいんだけれども、ちょっと微笑ましくもある。

Jasonをかつて去ったRobbも、深い傷を見せます。軍隊生活で様々なものを見てきたらしい彼は、身体的にも、心も傷ついている。家族は彼を歓迎したいけれども、まるで壊れ物のように扱う。
Robbにとっても、これは居心地の悪いクリスマスなのです。

頭を打ったJasonを病院に送るのは、Robbもクリスマスから逃げたかったから。
かつての恋人同士は、お互いの傷をかかえたまま、どちらもクリスマスパーティから逃げようとする。
どちらも相手に気持ちが残っているけれども、すぐさまお互いの手を取れるほどたやすい状態でもない。クリスマスの再会だけでは充分ではないのです。去っていくRobbをJasonは追わないし、これが最後だとも思う。
でもそれは本当に最後なのだろうか?

折り紙が話のちょっとしたアクセントになっていて、特に千羽鶴が小道具になってます。少しずつ送られてくる鶴ってロマンティックですが、千羽はかなり置き場を取りそう。まあ、Jasonはある程度まとまると糸を通して吊るしてるみたいだけど。

2年にわたる、クリスマスの夜の物語です。孤独な男と、傷ついた男。
いい具合に重みがあって、読後感はあたたかい。ロマンティックだけれども、ちょっと重みもあるものが読みたい時にぴったりです。
不器用さん同士の恋に萌える人におすすめ!

★クリスマス
★再会

The Book of Daniel
Z.A. Maxfield
The Book of Daniel★★ summary:
St. Nacho's シリーズ4。

Daniel Livingstonは、ついに自由を手に入れた。
妻と離婚し、いつわりの生活を捨て、弟のJacobのいるSt. Nacho’sに引越して、彼は新たな独身生活を謳歌していた。やりすぎなほどに。

弟とその恋人が幸せそうにしている様子を見るのは嬉しい。弟の幸せばかりを、いつも願っていた。
だがそれでも、自分だけが置いていかれるような理不尽な淋しさが心を侵食していくのをとめられる筈もなかった。
暴力的な父親との生活で、弟を守る盾になることは彼の本能だった。弟を守る兄であろうとした。母に対してはよい息子であろうとし、愛のない結婚の中でも忠実な夫であろうとした。嘘で塗り固めてでも。
そのすべてを失った今、一体、Danielは何者なのだろう?

その答えを、彼自身すら知らない。あまりに嘘をつきすぎて、真実を見失ってきた。

消防隊の一員であるCameron Rooneyは、Danielと対立し、彼を揺り動かす。Cameronに対してだけは、Danielは嘘をついてごまかす事ができない。
だが彼らの間にあるものは、まだ不確かで、脆く、一瞬のあやまちで崩れるほどのもので…
.....



St. Nacho's シリーズの4。特に前作の「Jacob's Ladder」と密接にかかわっています。前作はJacobの自分探し的な話でしたが、そこに出てきた兄のDanielの物語がこの第4作。
このシリーズは毎回、それぞれに自分探しの話で、クセのあるキャラの痛々しさが好きです。作者のZ.A. Maxfieldは当たり外れがある作家だと思うんですが、やっぱりこのシリーズは好きだなあ。

さて、今回の主人公、Danielもかなりクセのある男です。前作でも何となくつかみどころのない男だなと思ってましたが、実際に、彼は相手にあわせて色々な顔を見せている男なのです。
彼ら兄弟のの父親は暴力的で、Danielはいつでも弟を守ってきた。今でもそれは変わらない。守ることが、弟に嘘をつく事であれば、嘘をついてきた。
しかしその嘘が明るみに出て、兄弟の信頼は揺らいでしまう。

弟がカミングアウトした後、母親が心を痛めているのを見て、Danielは自分のカミングアウトをあきらめ、女性と結婚する。これもまた彼が重ねてきた嘘のひとつです。相手を幸せにしようと様々な努力をするけれども、そこに心がないことは相手にも伝わって、彼らの結婚生活は破綻する。

そんなふうに嘘を重ねながら、やや日和見的に生きてきた男。つかみどころのない、でも痛々しくて、自虐的で、頑固なところがぼんやりと切ない、その感じがいい読み味になっています。
Cameronとの恋も濃厚でいいんですけども、やっぱりDanielの内面を読んでいく1冊でしょう、これは。

St. Nacho’sの町はこれまで、訪れた人を包容して、自分を探す手伝いをしてきたような不思議な楽園です。しかし今回、Danielは町を拒否する。彼にとってこの小さな町は居心地が悪く、しめつけてくる檻のような存在でしかない。St. Nacho’sすら彼の居場所ではない。
その居心地の悪さ、どこにも「根」を持てない男のやるせなさが話の中から漂ってきます。他人を幸せにするための嘘を投げつづけ、その嘘がやがてあばかれてはブーメランのように戻ってきて傷を作る。Danielはもはやそんな生活をやめなければならないし、そのためにCameronが必要なのです。

エロどころか、恋人関係すらメインではない話ですが、「弟のために自分を犠牲にする兄」が大好物の私としては、そこだけで大変においしく読みました。
ちょっと引っかかる点としては、DanielとCamの関係が深まるところがいささか唐突な感じがしたのと、エロシーンの一部にやや収まりが悪い感じがする。BDSM風味なんですが、この作家はSub側を書くのはうまいんだけど、Dom(ライトなものなので、立ち位置として)を書くとぎこちないんだよなあ。浮いてるというか。まあ一部の問題で、全体にはエロもホットでよいですよ。

やや曲がりくねった、神経質なタイプの話。
ブラコン好きの人、ややこしい男が好きな人におすすめ。何もかもがすっきり!という話ではありませんが、陰影と深みのある1冊です。漢字のタトゥが話のちょっとしたポイントになってたりするのはご愛嬌。
シリーズ全体おすすめですが、とりあえず3と4はセットで読むのがいいかと。
"The Book of Daniel" というタイトルは、"The Book of Denial" のアナグラムではないかと思うんだよなあ。嘘と否定の人生を変えていく、それは難しいことだし、勇気のいることです。

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・不甲斐なくてごめん

*発行済*
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・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
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・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター

 
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