Slash×Slash

Slash(m/m小説) レビューブログ

※万人向けの内容ではないのでご注意ください
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Dark Horse
Kate Sherwood
Dark Horse★★★ summary:
Dan Wheelerの人生は、もっと単純にいくはずだった。人が苦手で、馬のことしか知らない。
だがどうやってか、彼は1人の男と深い恋に落ちたのだった。

しかし今その恋人は、病院のベッドで目を覚ますことなく眠りつづけている。

そんなある日、Danの働く厩舎へ馬を買いに来たのは若い億万長者のEvan Kaminskiと、彼の馬のトレーナーJeff Stevensの2人だった。
彼らに出会ったことから、Danの人生はふたたび、思っても見なかった方向へ転がり始める。

果たして、もう1度誰かと恋に落ちることは可能なのだろうか?
それも1人とではなく、2人と?
.....



不器用で人付き合いが下手なDanの人生が上から下へとひっくり返る話。

長い話ですが、全体が大きくふたつに分かれていて、前半では恋人を失うDanの悲嘆、後半ではEvanやJeffとの問題でぐるぐるするDan、というような構成になってます。
後半も人間関係が絡み合って楽しいんですが、特に美しいのは前半で、Justinに対するDanの愛情や、彼を失う痛みや喪失感、怒りが鮮やかに描かれています。胸をつくようなシーンがいくつもあって、切ない。

Danの人生に新たに現れたEvanとJeffのキャラクターもよく出来ています。活発でやや後先考えないEvan、落ちついていて包容力のあるJeff。彼らはカップルだけれども、EvanはDanに誘いをかける。
お互いにカジュアルなカップルなのかなーと思っていたら、そういうわけではなく、「最後には相手に戻ってくる」ことをお互いに約束しているから、お遊びOKらしい。あそこもかわったカプです。

若いEvanのエネルギーにちょっとたじろぎ、Jeffのおだやかさに惹かれながら、Danの気持ちは決して恋人を去らない。
Danは本当に不器用で頑固な男で、あれこれ考えすぎてよくにっちもさっちもいかなくなっています。ちょっとしたことから不安になってしまい、不安になってしまう自分が嫌になり、そうやって嫌になると何もかもを投げ出したくなり、でも黙々と働こうとする。
その堂々巡りっぷりが実にリアルで、「もうちょっと割り切れよ」と思う一方、色々なものが割り切れずに悶々としてしまう気持ちはよくわかる。めんどくさい男ですが、それがDanだから仕方ない。自分でもそれがわかっていて、友人のChirsのアドバイスが得られない時には「Puppet-Chris」という架空のアドバイザーの反応を想像したり、Puppet-Chirsに頭をひっぱたかれたりと、ちょっと変わった男でもあります。

この小説は、珍しく、時制が現在形で進んでいきます。でもしばらく読むまで気付かなかったので、かなり自然に処理されてるんじゃないかなあ。現在形にすることで、臨場感が出ている気がする。
キャラがよく立っていて、全体にみんなそれぞれの欠点をかかえている様子がなんともほほえましい。Evanなんかも、一見金持ちの若造みたいな感じだけど、結構苦労してるんだよね。この人がプライベートで甘えん坊なのは普段のビジネスマン・Evanの裏返しなのでしょう。

恋人との死別ものにぐっとくる人なら、これは読むべき!ってくらい前半が痛々しくて切ないです。
後半、Evanが妹によせる愛情や、厩舎での生活もいきいきと細かに描かれていて、馬好きにもおすすめの一冊。ちなみに後々3Pになるので、複数が苦手な人は注意ですが、しかし3人ならではの人間関係の難しさも楽しいです。
続編の「Out of the Darkness」も出ています。

★死別
★3P

Lily White Rose Red
Catt Ford
Lily White Rose Red★★☆ summary:
Grey Randall探偵ファイル1。

1948年のラスベガス。
まだ生まれたばかりの罪の都市の裏路地で、ひとりの娘が殺された。
ダンサーと歌手を目指し、たぐいまれなる才能と容姿に恵まれていた彼女。その死の真相を探るべく、私立探偵のGrey Randallは金持ちの女に雇われた。

娘の死を調べるうち、彼は違法な秘密クラブに入るための手がかりをつかむ。
Greyは娘の足取りを追ってクラブに潜入し、そこで出会ったバーのオーナーに目を奪われる。

死んだ娘の背後から浮かび上がってきたのは、遠い昔のハリウッドのスキャンダルで…
.....



ハードボイルド風味の探偵物。舞台が1948年というのもそれを意識してるのでしょう(そのへんから1960年代を舞台にしたハードボイルドが多い)。
文章もそれを意識して、乾いた感じに皮肉をしのばせる感じで書かれています。ハードボイルド本家のチャンドラーとかより、エルロイっぽい気がする。依頼人の女性が、いかにもエルロイが書くような謎めいた美女だったせいかも。
話にも全体にエルロイのような退廃的な雰囲気が漂っています。ただし暴力描写はなし。

踊り子の卵を殺した犯人を捜し出すために、Greyは警官の友人から情報を引き出し、あちこちかぎ回ります。
作中に出てくる「Lambda(ラムダ)」の印が、大きな意味を持っています。作中では「古代ギリシアの神聖隊が使った印」とされてますが、史実なのかどうかは今いち不明。この神聖隊というのは実在した部隊で、男同士のカップルで構成されていました。
彼らの使っていた印を、ラスベガスの暗闇で、ゲイ同士の符丁として使っている者たちがいる。Greyはその秘密クラブへ潜入し、クラブのオーナーに出会います。
このオーナーが実にいい男。でも正体が謎。Greyは彼から情報を引き出そうと、かなりヤバい手まで使いますが、その方法は両刃の剣になる。

恋愛色は薄くて、Greyの捜査や皮肉っぽい考え方を楽しむ1冊です。依頼人の女性の何とも浮世離れしたハリウッド的なゴージャスさや、彼女の運転手(兼執事?)や使用人との強い結びつきとか、印象的なシーンがたくさんあります。彼女とGreyの間にある緊張感と、言葉にされない信頼感も味わい深い。
探偵物とミステリとスラを同時に楽しめておいしい!という話ですが、スラ部分に期待するとあっけないかも。いいシーンあるけどね!
互いに気持ちを見せまいとしながら主導権をつかみあう、でも実は相手にメロメロって感じのいいカプになりそうで、シリーズの続きが楽しみです。

ミステリ好き、皮肉っぽい一匹狼の探偵に萌える人におすすめ。
退廃的なモノクロ映画のような雰囲気があります。

★ハードボイルド
★探偵

With the Band
L.A. Witt
With the Band★☆ summary:
Aaron McClureは、バンドのメンバーと恋に落ち、彼らの関係と破局がバンドをも終わらせてしまう。
バンドメンバーと肉体関係を持つことほどまずいことはない。
その教訓を胸に刻み、彼はバンドと恋人の元を去って、故郷へ戻ってきた。

そこで待っていたのは新たなバンドのオーディションだった。
無事テストに合格し、兄と姉がメンバーになっているハードロックバンド「Schadenfreude」のリードボーカルとして迎えられたAaronは、このバンドが成功への道を駆け上がっていくことをほとんど確信していた。それだけの力のあるバンドだ。

その一方で、AaronはメンバーのBastianに強く惹かれていく。ほとんど息苦しいほどに。

バンドメンバーとの関係は、バンドに悪影響をもたらす。バンドのことを考えたら、Bastianとの距離は保っておかなければならない。
だが、もし…
.....



バンドもの。
ロックバンドの仲間がみんな仲が良く、かなりキツい冗談を飛ばしたりお互いを楽しく罵ったりして、「バンド」感がよく出てます。
ステージの上での緊張感もよく伝わってくる。

AaronとBastianとの間にある磁力も鮮やかで、一気に坂をころがりおちるように関係を深めていくスピード感が充分に味わえる1冊です。
特にキスシーンがなかなかに秀逸。とにかく相手を離したくない、離せない、バンドメンバーにばれないように早くみんなのところに戻らなければならないのに、どうしようもなく「one more kiss」をくり返してしまう様子がかわいい。

AaronもBastianも、互いの関係だけでなく、自分がゲイだということも兄弟や家族に秘密にしています。バンドに対して自分たちの関係を明かすということは、ゲイであるとカミングアウトしなければならないことも意味する。
バンドは少しずつ成功への道をのぼりつつある。そんな時に水を差すようなことを言いたくはない。でもどこかからばれる前に言わなければならない、それはわかっている。複雑に絡みあうプレッシャーの中で、「いつかは言わなければ」と思いながら、「いつか」を先のばしにしてしまう様子はリアルだと思う。

ただ、後半の展開がちょっと解せないまま、消化不良に話がまとめあげられた感じで、終わり方が唐突です。うーん。複雑な感情を書くのはうまい作家なので、その技が見られなかったのは残念。
色々と納得できないところが残ってしまって、ちょっと宙ぶらりんな感じですね。勿体ないなあ。2人だけの問題ではなく「周囲の」問題でもあるんだけど、そこがそのまま棚上げされてしまっているのが消化不良。

ロックバンドの疾走感とか、それと同じペースで恋に落ちていく2人の様子を読むのが楽しい1冊。エロシーン多し。切羽つまったギリギリのところで相手に手をのばし、しがみつく、そんな刹那の濃厚さがいいです。
BastianがAaronにベースを教えるシーンもエロティックで印象深い。

バンドもの好きな人におすすめ。秘密の関係に萌える人にも。

★エロ多め
★バンドもの

Undercover Sins
Hayley B. James
Undercover Sins★★ summary:
潜入捜査官のGabriel Carterは、大きな人身売買組織を摘発するため、幹部のDemetriusに近づこうとしていた。
3ヶ月もの間、彼はラスベガスで男娼に扮してきたのだ。そして、ついにDemetriusの目に留まった。
だが2人ですごした一夜は、思ってもみなかった深みへの入り口だった。

DemetriusはGabrielに共闘を持ちかけ、彼のライバルであるArdenを陥れるために手を貸せと言う。
Gabrielは彼を信用できないが、すでに抜け出せないほど深く、彼は足を踏み込んでいた。

Gabrielは、情報を得るため、Demetriusの「ペット」を演じることに同意する。
それは危険なゲームだった。彼の命にとって。そして、彼の心にとっても。
.....



潜入捜査物、しかも「犯罪者(のボス)/潜入捜査官」というおいしい取り合わせ。
これは萌えます。

Demetriusの正体がとにかく不明で、何回か2人の関係はひっくり返される。ネタバレになるので詳しくは書けませんが。
最初のうち、わりとよくある展開かと思って読んでいたら、途中でいくつかサプライズが入っていて、うまくひねられています。また実際Demetriusに謎で不気味な感じもあるので、ストーリーがひねられるたびにちがう顔が見えてきて楽しい。
GabrielはDemetriusが信用できずに、悪事に手を染めている男だと思いながらも、惹かれていく。そして、憎まなければならない相手と恋に落ちていく自分に自己嫌悪を抱く。潜入捜査のためだと割り切ろうとするも、気持ちは堂々巡りです。

好きなシチュでいい感じの流れなんですが、気になったのはGabrielのストイックさと言うか、青臭さと言うか。モラルに関してDemetriusとしきりに口論になるのが、今いち場違いな気がしてしまった。そんなにナイーブで潜入捜査官やっていけるのか?と心配で、そのたびにちょっと話から気がそれたのが残念。
Demetriusはそういう折れない正義感に惹かれたのかな、とか、あるいは悪事にまみれた深みまで入っていく潜入捜査だからこそGabrielも自分のモラルにかたくなにしがみついていないと流されそうになるのかな、とかは想像するんですが、そのへんが本文から読みとれたらもっとよかったなあ。
個人的にはGabrielがもっと大人な(性格や振るまいがね)感じだったら完全ツボど真ん中だった。もうちょっとDemetriusと対等だったらなあ。
私としては、とても惜しい。でも楽しい1冊でした。

全体にわりとBLっぽい雰囲気がある話で、受け攻め固定。かつ、エロが「いやだと言うけど体はいやがってないぞ」という鉄板の流れ。
「1回じゃ満足できないだろ」とか、色々とナイスシーン!ありで盛り上がります。そういうの好きなら読む価値あり!

DemetriusとボディガードのLeeとの深い結びつきとか、そのへんのストイックな男同士の関係もいいですね。この2人も長い間、闇の中をくぐり抜けようとしてきたのだと思う。
Leeの行く先も気になるなあ。

潜入捜査物とか、だめだと思いながら拒めないとか、背反的な関係が好きな人ならまちがいなく楽しめます。アップダウンが色々あって、エロも緊張感があるので、スピーディな話が読みたい人にもおすすめ。

★潜入捜査
★人身売買

Foxe Tail
Haley Walsh
Foxe Tail★★ summary:
Skyler Foxeは自分の育った町、Redlandsの高校で英文文学の教師をしていた。職場で問題になるのを恐れてゲイであることは秘密にしているが、そのことにうんざりもしていた。
ましてや、一夜のお相手がキレて学校へ押しかけ、Skylerの車を公衆の面前で叩き壊したときては、ごまかすのもそろそろ限界かもしれなかった。

そんなある日、彼はクラブの裏通りで少年の死体を見つける。
被害者は、Skylerの学校の校長の息子だった。

親友である女刑事Sidneyに叱り飛ばされながら、Skylerは事件に首を突っ込み、その少年が何にかかわっていたのかを探し出そうとする。
だがその反動は思わぬところにはねかえり…
.....



巻きこまれ型のミステリもの。全体にキャラがはつらつとしていて、読んでいて楽しいです。
Skylerは元気で節操がないタイプの、わりと「ゲイっぽい」感じの主人公。そもそも今の彼の親友達は(女であるSidneyを除いて)、みんなかつて彼と関係があった。そのせいで「Skyler's Fuck Club」なんて言い回しすらジョークにされてます。
「Mr. Right」を見つけられたら俺だって落ちつくんだよ、というSkylerの反論は、たしかにちょっと弱々しい。彼は今のままで充分に日々を楽しんでいるように見えます。

そんな時に、学校に新しいフットボールのコーチが就任してくるんですが、とにかくこの相手とSkylerは至るところでぶつかってしまう。まあSkylerの口もうかつだし、相手も愛想がない。でも不幸なことに、この相手はどえらくホットな姿形で、Skylerの好みど真ん中。
「ストレートのフットボールコーチなんかにときめいてる場合じゃない!」というSkylerの決心が虚しい感じがなかなかかわいい。

Skylerは事件に首を突っ込んで、よくわからないまま何かにぶちあたったらしく、警告に銃弾を撃ち込まれたり、部屋を荒らされたりする。一瞬怯えて反省するんだけど、だんだんムカついてきて「ふざけんな」モードに入ってしまう、なかなかに芯の強い男ですが、うかつだし後先考えないし、友達巻きこんじゃうし、見るからにあぶなっかしいぞ!
そんなSkylerの様子を楽しく読む話。活発主人公好きなら、1冊まるごと楽しいと思います。
Skylerがレトロ好きで、聴くものはモータウンレーベル、自分が捜査している(つもりの)間に思い浮かべるものはフィリップ・マーロウというのもちょっとおかしい。ハードボイルド気取ってるけど、足元のあやうさはそれどころじゃないですよ。

この作家のはじめての本だと思うんだけど、3部作予定らしくて、メインの事件は解決しているけども謎はいくつか尾を引いてます。
特に、事件とは別に、校内で何かがおこっているらしいとか、フットボールコーチには別の正体があるかも?とか、ベタだけど興味をそそられますね。
Skylerが、落ちこぼれの生徒に対してできるだけサポートしようとする様子も、見ていてほのぼのします。何ともカラフルな感じで、次も楽しみなシリーズです。

★殺人事件
★高校教師

Goodreadsという読書SNSみたいなサイトがあるのですが、このたびここに日本語中心(基本)のスラッシュ(M/M)&BLコミュニティができました!
「M/M,BL大好き」です。
作成者のAteさん、ありがとうございます!
和洋とりまぜて色々語ろうぜ、な場所なのです。私はFuyuというハンドルネームで参加しています。

承認制のコミュニティですが、スラに興味があればどなたでもお気軽に申請してくださいな。あ、18歳以上のみです。念のため。
Goodreadsのアカウントは無料ですので、アカウントのない人も気軽に登録してコミュに申請してねっと。
まだ何もかも始まったばかりで、正直右も左もよくわかりませんが!

同好の士の人が思ったよりいるな…というのはブログやっていても感じるので、いつか読者参加コンテンツを作りたいなあと思ってたんですが、コミュがあれば最強ですよ。
わからない英語とか言い回しとかジョーク(←すごく多いよね…)についても、疑問や相談なんかも書けますので、是非どうぞ。私もつきあたったら聞いてみたいことが色々…

Broken Rules
Jade Buchanan
Broken Rules★★☆ summary:
10年前、まだ少年だったJonah Chevalierは両親にゲイであることを知られ、家から叩き出された。
今では遠く離れたカルガリーで暮らしている。
だが、母の死とその葬儀が、彼にふたたび故郷の地を踏ませた。
そこで彼を待っていたのは遠く苦い記憶と、いまだに彼を許そうとしない父親と、彼を愛して受け入れてくれる従姉妹と、そして初恋の相手だった。

Neil Brogan。誰よりも親しかった、無二の親友。
そしてひそかな、Jonahの初恋。

Neilは、何故Jonahがいきなり姿を消したのか、いつでも不思議に思っていた。町を出て警官になった彼は、Jonahの母が死んだと聞き、Jonahが戻ってくるだろうと感じて休暇を取り、故郷へ戻ってくる。

葬儀の日々の中で、ふたりの距離は近づいていく。かつて誰よりもお互いをわかりあう友人だった、その日々のように。
もしかしたら、それ以上のように。
.....



ゲイの男と、その親友(ストレート)という、ある意味定番の組み合わせ。とは言え実はNeilはバイセクシュアルであってストレートじゃないらしいんですが、長年離れていたJonahはそんなことはさっぱり知りません。
ちょっと読み逃しましたが、舞台はケベックのどこかなんだと思います。従姉妹なんかもフランス語普通に使うしね! んでもって、その故郷を追い出されたJonahが住むのはカルガリー。ほぼカナダの東側と西側と、とっても離れたところです。
両親に追い出され、そこまで逃げ出していかなければならならなかったJonahの心の痛みは、今でも消えることはない。

途中にも別のキャラで「ゲイであることを受け入れられるかどうか」のエピソードがはさまれているのですが、ゲイであるがゆえに自分は「地獄へ行く」という感覚が、どうしても、特にティーンエイジャーには抜けないようです。
Jonahの母が、自分の死期を悟って息子に遺した手紙なんか、正直かなりむごいと思う。母は息子を愛しているけれども、彼がゲイであることを自分の罪だと思い、息子がその暮らしを改めることを最後まで願うのです。そんな手紙をもらっても、もはや死者には言い返しようがなく、Jonahの気持ちはどこにもやり場がない。

葬儀に至る心の痛みや、過去への悔い、息詰まるような怒りなど、Jonahの心の動きが痛々しくて、引き込まれる話です。Neilに惹かれないようにしながらも、彼は再会したこの親友へ落ちて行く。
葬儀や結婚式などでの再会、というのはよくある話ですが、この小説がちょっと珍しいのは、葬儀で再会してドラマティックに盛り上がり!というシーンで終わらないところ。その先にある、彼らのひとつの「ever after」をきちんと書いてくれています。

Neilは実にいい男で、ちょっと呑気で親しみやすくて、自分の気持ちや生き方に揺らぐところがない。
しかしJonahは、ゲイであることは早くから自認していたけれども、それゆえに家を追い出され、すべてを失った経験を持つので、あけっぴろげな関係など考えられない。どこかでまだゲイであることを負い目に思っているのかもしれない。
ふたりの価値観の差は、遠距離の恋以上に、彼らの関係をねじれさせてしまうのです。

Neilの弟の話なんかもはさんであるので、シークエンスシリーズで続くのではないでしょうか。「Broken Trilogy」の1だと書かれているので、あと2冊かなー。
私は古い友達のRichが気になります。ダメでちょっと嫌な奴みたいに書かれていたけど、何だか悪い奴じゃなさそうだし、彼の話が読んでみたい。

親友から恋人に、という話が好きな人や、「ゲイであること」の重みが書かれている話が好きな人におすすめ。テーマは重めですが友達同士のジョークとかがかわいくて、あちこちで笑えます。男友達のよさみたいなもの存分に味わえます。
世話焼きの従姉妹もかわいいけど、従姉妹の旦那のHenryがものすごいかわいい!んですよ。ストレートなのが残念だー。

★親友
★遠距離

Sonoran Heat
Katrina Strauss
Sonoran Heat★★ summary:
45歳のTonyは、20年近く暮らしてきた恋人と別れ、人生の芯を失ったような気持ちだった。別れたことそのものよりも、1人でいることの孤独が身にしみる。
そんな時、若いウェイターのJoshと出会ったのだった。

Joshはウェイターのアルバイトをしながら、画家として大成することを目指す学生だった。21歳と、Tonyからしてみれば子供のような彼は、だが年に似合わずおだやかで、Tonyともよく気が合った。
そして2人とも、自分たちの住む砂漠の町を愛していた。Tonyはその町で腕のいい庭師として美しい庭を作り、Joshは砂漠の中から彼が拾い上げた無数の色をカンヴァスに描いた。

2人はたちまちに恋に落ちる。
だが年の差やJoshの将来のこと、Tonyの迷いなど、さまざまなものが立ちはだかって…
.....



砂漠の町Sonoranでの、45歳と21歳の恋。
自然の美しさを存分に盛り込んだ、精緻で美しい話です。

この話で何が印象深いって、砂漠や自然の描写の美しさや、それによせる2人の情熱の繊細さ。
庭師のTonyが自分の仕事に誇りを持っていることや、Joshが絵によせる情熱などが自然に描き込まれていて、話に深い陰影を与えている。
Joshはコーヒーで絵の陰影をつけているのですが、それを読みながら、昔々に私もコーヒーで絵を描いたことがあるのを思い出したりしてました。色はいいけど匂うのだ…
さておき、そういう「追憶」にふっと浸りたくなるような、何とも言えないセピア色の雰囲気が漂っています。

誰もが驚く年の差カップルですが、友人たちの不安や心配をさしおいて、TonyもJoshも幸せです。ふたりの間にあるものはおだやかで、いかにも満ち足りている。
ほのぼのとした幸せカップルなんですが、やっぱりTonyは年のことが気になってしまいます。
今はいい。でも5年後は?10年後は?

そしてJoshも、選択を迫られる。何を取るのか。何をあきらめるのか。

まったりとして情緒的で美しい話ですが、評価はわりと読む時の気分によってわかれるんじゃないかと思う。
大きなドラマが少なくてテンポがゆったりとしているので、少しずつ深まっていく年の差カップルの心の動きや、ストーリーと絡み合った自然描写の美しさが存分に楽しめます。家でくつろぐ2人の様子なんか、本当に家庭的でほのぼのしているし。
一方で、スパイスやパンチの利いた話を読みたい時にはもどかしく感じてしまうかもしれない。エロは結構濃いめだけどね!
でもその感じが、この話のいいところです。

自然や砂漠の描写、2人の砂漠デートの情景などが本当に美しくて、のんびりとした読書にはおすすめです。気持ちがなごむ。2人とも人間性が豊かでいいカプだし、友達など周囲のキャラの表情も豊か。
年の差カプが好きな人、じっくりと読書したい気分の時におすすめ。

★砂漠
★庭師

★Three-Star rating system★


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・2017年
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas

・ほかにも出るかも
・王子とか何か売れてくれ〜(色々軽くピンチ)
・来年はもふもふやるよ!

*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流
・夜が明けるなら(ヘルハイ3)

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター