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Slash(m/m小説) レビューブログ

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Seeing You
Dakota Flint
Seeing You★★☆ summary:
兄が事故で死んでから、Dylanは故郷に背を向けて逃げた。
自分だけが生き残ったことによる後ろめたさと、そして兄の恋人である男にひそかに恋をしていたことへの罪悪感からだった。

だが1年たち、妹から連絡を受けた彼は、重い気持ちのまま「Lazy G」へと戻る。
兄とWadeの牧場は、すっかり様変わりしてしまい、残った馬や牛を売りながらどうにかわずかな給金を払いつづけている状態だった。
そしてWadeは、周囲で何が起こっているのかまったく歯牙にもかけず、すべてを投げ出したような暮らしぶりだった。あれほど牧場を愛したWadeの変貌ぶりは、Dylanには耐えられないものだった。

牧場を立て直すために、Dylanは身を粉にして働き始める。
だが兄の死はすぐそこに今でも生々しい傷となって残り、重荷となって彼ら2人にのしかかっていた。
.....



前回レビューの「Double Shot Cappuccino」は戦死した男の友人と弟の話でしたが、今回は死んだ男の、弟と恋人と。複雑っぷりではこちらの方が上ですね。
この弟は、兄の恋人がずっと好きだった(描写から見るに、兄弟一緒にWadeに恋をしたけれども、おそらくDylanは一歩引いたのだと思う)。
Dylanは兄が死んだ時、その喪失に気持ちを破られると同時に、自分だけが生き残った生存者の罪悪感にもさいなまれている。そして、Wadeが「何故Dylanが生きていて、Simonが死んだのか」と自分を責めるのではないかと恐れて、逃げ出すのです。

時おりはさまれる、死んだ兄の追憶がなかなかいい味を出していて、いたずら好きでやんちゃで、それでもやさしい人物像が浮かび上がってきます。Dylanは養子なんですが、それも兄弟の絆を弱めるものではなかった。
実に愛された人物だった、それがわかるからこそ、兄の死が彼とWadeの心を引き裂いた様子にも重みがあります。

それほど兄を愛していたので、Dylanは多分、Wadeへの恋は一生あきらめていた筈です。でも今や目の前には、いわば「チャンス」がある。そのことにも罪悪感を感じているし、同時に「兄の身代わり」のようにWadeから都合よく見られてしまうのも嫌。
なかなか複雑な心模様が、繊細な一人称の文章で書かれています。Wadeとの間に「何か」が生まれ始めても、Dylanは決して一歩を踏み込もうとはしない。
2人の間にあるギャップを埋めようとするWadeの方法もちょっと洒落てます。

感傷的で痛々しいけれども、女々しい話ではないというバランスがいい感じ。
私はこの短編はわりとさらりと読んで、何となく放置していたんですが、Amazon.comのGLBT部門で上位にあったので読み返してみたらいい話でした。何で1回目の時にさらっと流したのかはちょっと謎。読んだ時の気分かなあ…(一人称ものは何気に流しやすいという癖もあるんですが)
あと、今回だけではありませんが、気になっているのは「Lazy G」という牧場の名前。「Broken XX」とか「Lazy XX」とか、そういう名前がよくあるのは何故なんだろ? 洒落っ気なのか、魔除けみたいな感覚も入ってるのか…

切ない系の話が読みたい気分の時におすすめ。
ちゃんと時間をおいて関係が進展していくので、あっというまに!とか、いつのまに!というびっくり状態がない(短い話には大変ありがち)点もプラスポイント。

★恋人の死
★帰還

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Double Shot Cappuccino
Stephani Hecht
Double Shot Cappuccino★★☆ summary:
5年前、Tylerは無二の親友のLukeとともに軍隊に加わった。未来は希望に満ちているように思えた。
そして今、彼らが育った小さな町に、Tylerだけが帰ってきた。足に傷を負い、心に友人の死の重荷を負って。

Lukeの弟、Nashは、1年たっても兄の死から立ち直れていなかった。
自分と兄の名前を付けたコーヒーショップは繁盛していたが、彼の心には大きな穴がぽっかりとあいたままだった。
帰還したTylerの姿を見て、彼だけが帰ってきたことにNashは怒りをぶつけたかった──その方が、この痛みをやりすごしやすい。
だがNashには、Tylerが彼と同じほどLukeの死によって苦しんでいることもわかっていた。

彼らの関係は急速に近づいていき…
.....



戦死した兄の死を悲しんでいる弟と、心にも体にも傷を受けて帰ってきた帰還兵の話。
弟が経営するコーヒーショップを舞台に、話は進んでいきます。

アマチュアバンドを追っかけて店を休んでしまう店員とか、いつもイチャモンをつけにくる客とか、美形だけど今いち役に立たない別の店員とか、色々と小さなドラマがうまい具合にちりばめられています。
そのあたりの、全体の話としての構成がかなりこなれていて、気持ちよく読めます。

兄の死を受け入れ切れてないNashと、親友の弟に欲望を感じるのが後ろめたいTyler。そのへんの葛藤がもっとがっつり書いてある方が好みだったりするのですが、そこのところはわりとさらりと流されています。
しかし、周囲にカミングアウトしていないのでNashとの仲を知られたくないTylerとか、一時的に町に立ち寄っただけの彼に深い恋をしてしまったNashのたじろぎや痛みとか、他にもコーヒーショップを中心と周囲しておこる客や従業員のトラブルなど、話は変化にとんでいます。
関係が進めば進むだけ、Nashは体だけの関係なのではないかと悩み、Tylerはその痛みに気付かない。

普段は優しいTylerが、エロの時になるとかなり支配的になったりして、そのへんも楽しい。
ラストで縁結びの役の一端を担うのが、すでにそこにはいない筈のLukeであるというのも、うまい具合にひねりが効いています。かなりうまく構成されて、色々なドラマが味わえる短編です。

短く後味のいい話を読みたい時に。
コーヒーがおいしそうなので、コーヒー好きな人にもおすすめ。

★親友の弟

With Abandon
J. L. Langley
With Abandon★★☆ summary:
With or Withoutシリーズ4。

Aubrey Reynoldsは由緒ある家と会社の跡継ぎとして、また人狼の群れのリーダーの跡継ぎとして、重圧と期待に応えるために日々苦悩していた。

弟の友人、Mattがアトランタの大学に通うためにこっちにやってくると聞き、彼は自分の住み処の一部屋を提供することにする。
Mattとはメールをやり取りするようになっていて、Aubreyは顔を合わせたことのないこの年若い友人を気に入っていた。

Matt Mahihkanは、空港に迎えに来た女性の匂いに強く反応し、彼女こそが自分のメイト──運命の相手──だと感じて混乱する。Mattはゲイなのに、何故女性のメイトが?
だが、Aubreyに直接顔を合わせた瞬間、真実が明らかになる。Mattは女性についていたAubreyの匂いに反応したのだ。
彼のメイトは、Aubreyだった。

だが、Aubreyは、周囲にはストレートとして通しており、スキャンダルを許すことのできない立場にあった。すべてを秘密にしなければならないと、Aubreyは告げる。ふたりの関係は決して明るみに出てはいけないのだと。
.....



J.LLangleyの人気の人狼シリーズの4です。
今回の新刊は、前回の「With Caution」でJakeの事務所で働いていた派手な格好の男の子、Mattと、その前の「Without Reservations」で主人公Keatonから誤解を受けていた兄、Aubreyの話。
Without Reservations」のエピソードがある程度元になってるので、少なくともこっちを読んでいないとわからないところ多し。

19歳で、純情で気のやさしい男の子Mattは、大勢の兄弟の面倒を見てきた大家族の長男。
Aubreyは30歳で、ホテル経営の家業を継いで苦労している、生真面目で、傲慢なほど自分のやり方を通すことに慣れた男。
ふたりは一瞬でお互いが "mate" だと知るのだけれども、Aubreyは決してカミングアウトするつもりはないのです。Mattは「いつか」を待とうとして、Aubreyは「いつか」Mattを手放さなければならないと思っている。

色々と事情は入り組んでいますが、話は思いのほかシンプルに、2人の気持ちのやり取りや行きつ戻りつを中心にして進んでいきます。Mattに必要以上に惹かれまいと思いながら、ついついチョコレートとか買って帰ってしまうAubreyが可愛い。自分で思ってるほどクールに振る舞えてないぞ!というところが。
Mattの弟のLoganもいい味出してます。あー、彼のプリンス・アルバート(ペニスへのピアス)が狼に変身した時にどう見えるのかはほんとに気になる…

血なまぐさい事件も起こるんだけど、話のトーンは全体に明るくて軽い。
逆にそのせいか、ちょっと展開が散漫な印象もあるのは惜しい。ものすごく盛り上がる刹那のドラマ感や濃厚さはあまりなくて、流れるように読んでしまったかな。Mattの色覚障害とかもう少し使いどころがあった気がするなあ。
しかし生き生きしたキャラ達と萌えシーンがたっぷりあるので、充分楽しめるし、Mattの無垢な感じもほほえましい。Aubreyはあれをちゃんと守らなきゃ駄目だよ。
あとMattの兄弟たち! やんちゃな犬の群れっぽくて、読んでると何ともほだされます。

作者のLanglayは自分のサイトで、出版にあたって本編から削除したシーンを公開しています。話のはじめ部分に一つ、エピローグ近辺(というかエピローグだったんだと思う)にひとつ。特に後ろのはネタバレなので注意。
私はこれ、両方とも入っていた方がよかったんじゃないかと思うんですけど、作者がこれを除いたということは、全体に話をあっさり仕上げたいという意図があったのではないかとも思います。

シリーズのファンには勿論、しがらみに縛られたビジネスマン×純情でシャイな男の子の組み合わせに萌える人にもおすすめ。
人狼の「メイト」は問答無用の運命の相手なのですが、今回はそのメイトの幸せな部分だけでなく、負の部分も描かれているのがなかなかに新鮮です。

★メイト
★秘密の関係

Hidden Heart
Thom Lane
Hidden Heart★★☆ summary:
Tales of Amaranthシリーズ3。

Tiffinは奴隷だった。
奴隷商人に売られ、High Holdという古い砦に送りこまれた彼は、奴隷として労働と奉仕の日々を送り始める。
Zanderという名の兵士に出会い、支配的で強引なこの男に惹かれたが、奴隷の身ではTiffinの意志や望みなど何の価値もなかった。すべてはZanderの意志と望みだけにかかっている。

だが、High Holdに来てすぐに、Tiffinの身に異変がおこりはじめる。
誰か、Tiffinの体の中にいる何者かが彼の意識を乗っ取り、動き回っている。その何者かは、この砦の中に封じられた何かを探しているようだった…
.....



奴隷の視点からファンタジー世界を書いたシリーズ3冊目。
1と2は読んでなくても独立して読めます。わずかに1のカプが顔を見せてますが、わからなくても問題なし。ただ、この世界の当たり前のように「奴隷は奴隷でしかない」という独特の価値観をしっかり踏まえてから読んだ方がおもしろいと思います。

この世界では、奴隷は「奴隷」という範疇から決して踏み越えることはない。誰かに解放されて自由になれるとか、そういう可能性はないのです。
それがここの価値観であり、システムで、誰もがそれを当たり前と感じている、その独特の雰囲気が読みごたえのあるシリーズです。ファンタジーならではのうっすらとした「異界」感がちりばめられている。

今回は、奴隷のTiffinにふりかかる危難の話で、わけもわからずZanderになつこうとするTiffinの気持ちの動きが哀れでちょっといじらしい。奴隷だというのにあまりにも無邪気で、簡単に傷つきそうなので、読みながらハラハラします。
ZanderはZanderで、Tiffinに対して愛情はあるようなのですが、それでもあくまでTiffinは「奴隷」であるというところからは決して外れない。奴隷は永遠に、誰にとっても──当人にとっても──奴隷であるのだという、切ない部分まで描かれた1作です。
Tiffinが幸せならいいんだけど、恋の形は色々だなあ。ハッピーエンドである一方、ちょっとした寂寥感の残るラストでした。

魔法の世界と奴隷と、ファンタジー好きならかなり楽しめます。1や2の方がストーリーはドラマティックでしたが、その分この3は読みやすく仕上がってますね。

★軍人×奴隷
★記憶喪失

Two Man Advantage
Riley Shane
Two Man Advantage★★ summary:
教授のNathan Troyは、恋人とすごすつもりの冬のキャビンへ、傷心のまま1人で来なければならなかった。
自分を捨てた男を愛していたのか、それともただ恋をしていると思いこんでいただけなのか、心の整理もまるでついていないままに。

疲れ切ってやっとたどりついたキャビンのベッドには、裸の見知らぬ男がいた。

Kyle Harperは、ホッケー選手としての選手生命をケガで絶たれ、すべてから逃げるようにして湖畔の冬のリゾートへやってきた。
部屋のダブルブッキングがあったと知った彼は、はじめのうちは鷹揚にゆずる気持ちでいたが、Nathanの刺々しい物言いに腹を立てて、部屋を明け渡すのを拒否する。
2人は刺々しい空気のまま、部屋を共有する羽目になるのだった。

それぞれに傷を負って、それぞれに逃げてきた男。
苛立ちにまぎれるように、欲望をぶつけるのは簡単だ。だが、ふたたび誰かに心をひらくのは、はるかに難しい。
.....



リゾートのキャビンのシェアというのは「Grey's Awakening」でもあったシチュですね。どちらも、第一印象が最悪というのが素敵だ。どの男も意地っ張りだし!
今回はまた、雪の降る冬のリゾート地が舞台で、それがいやおうなしに彼らの距離を近づけ、独特の閉塞感が漂っています。雪にふりこめられちゃえばもっとよかったんだが(そこまでの雪ではなかった)。

恋人に手ひどく捨てられた大学教授と、ケガで栄光を失った元アスリート。
どちらもつらいし、どちらも痛みだけでなく怒りをかかえている。
傷の痛みから、素っ気なくふるまってしまうNathanをKyleは鼻持ちならない嫌なヤツだと思うし、テンションの上下動が激しく子供っぽいKyleをNathanは腹立たしく感じる。でも、彼らはお互いに惹かれていくのです。
まあキャビンに男2人ったら、行きつくところはひとつなわけで。

その関係は、特殊な状況の下でストレスにさらされた2人の男の、逃げ場を求める行為なのかもしれないし、それ以上のものなのかもしれない。
とは言え、2人を結ぶものは体だけではなくて、たとえばKyleがケガ以来はじめてスケート靴をはくシーンとか、2人が相手の力を借りて立ち直っていくエピソードなど気持ちの動きもきちんと描かれています。Nathanも可哀想だけど、強気でプライドの高いKyleが裏にかかえこんだ痛々しさは、読んでいると胸にくるものがある。

傷ついた男2人の偶然の出会いと、そこから生まれる小さな癒しの物語。
刺々しく、でも強く惹かれあう2人の様子が楽しくて、読みやすい1冊です。楽しい冬の読書向け。

★ダブルブッキング

Icing on the Cake
Shayla Kersten
Icing on the Cake★★ summary:
Jeff Morganは仕事に生きる男だった。
恋愛に費やす時間はない。セックスはあくまでセックスで、それ以上のものではない。相手のことなど何も知らなくてもかまわない。

だが、数少ない友人の頼みを聞いて、ウェディングケーキの打ち合わせのために訪れた菓子屋で、彼は自分のセオリーもルールも通用しない男に会ってしまう。
甘い香りの中で出会った男は、スキンヘッドに筋肉隆々の体、タトゥ、耳にはずらりとピアスを並べていた。普段なら決してJeffの好みではない。だがその職人の何かがJeffを強く呼んでいた。

Ollie Cranfordは、目の前にチャレンジがあると挑みたくてうずうずしてしまう男だった。
恋人と別れてから、新しい恋には興味が持てなかった彼だが、店を訪れたJeffに彼は強く惹かれる。恋に興味がない男。誰かに弱みを決して見せられない男。固い殻で自分を覆って、何かを守ろうとしている男。

果たして彼に、「一夜関係」以上のものを望むのは愚かだろうか? 少しでも心を開いてくれると思うのは?
.....



前回のレビューの「Bittersweet」もバイカー風の悪そうなケーキ屋の話でしたが、今回もスキンヘッドにタトゥのケーキ屋の話です。「bakery」の主人なんだけど、パン屋と訳していいものかどうかが微妙。お菓子屋に近いのかなー。
何かこういう、「悪そうな」パティシエとかベーカリーとビジネスマンのカプ、とかに萌える層がいるんだろうか。(バイカー風味と言うより、よく見ると何だかハードゲイっぽい風味な気もするんですが…)

ビジネスマンのJeffは、ガチガチの仕事人間で強がりで意固地な男。
ベーカリーのOllieは、人生を楽しみながらもそれを分かち合う相手をほしがっている男。
「セックスなんて手早くすますもの」とか「終わった後はすぐ帰る」とか、色々なルールに縛られているJeffを、Ollieがあの手この手で誘惑していく話です。

似たシチュの「Bittersweet」よりも、こっちのがエロ中心で、基本「体を使って対話する」感じで進んでいきます。
Jeffが「やだやだ帰る、帰らないと」的なパニックと、それをなだめていくOllieのおだやかさとの対比が楽しい。精神的なつながりの方もちゃんと書かれていて、話の味わいとエロがうまく同居しています。
ほのぼのが読みたいならBittersweet、エロ多めでいきたいならこっちのIcing on the Cake、という感じでひとつ。

エリートサラリーマンが陥落していく話が好きな人におすすめ。
ケーキのアイシングを使ったエロなどがあるので、ちょっと趣向の入ったエロを読みたい時にも(逆に食材使ったエロがだめな人は注意!)。
短めなので、一気に読める感じ。

★ケーキ+エロ

Bittersweet
Maura Anderson
※出版社の問題で一時的にリンクを外してます。
Bittersweet★★☆ summary:
Brandonは「大人のためのチョコレート」の店のオーナーだった。彼の店では、スパイシーな味わいや、エロティックな連想を呼び起こすチョコレートや、セックス用のちょっとしたオモチャを添えたプレゼントを準備する。恋人へのプレゼントや、パーティの贈り物として。
だが、Brandon本人は恋ともセックスとも無縁で過ごしていた。前の恋人が去ってから。

友人のたのみでチョコレートギフトを受け取りに行ったDavidは、店のオーナーのたくましく、タトゥに彩られた体と、その微笑から目が離せなかった。
BrandonもDavidに惹かれるが、同時に彼はDavidを反射的に突き放そうとする。

人事マネージャーと、まるでバイカーのような見た目のチョコレートパティシエ。
まるで異なる世界に暮らす2人。
チョコレートが結んだ縁は、果たしてはじまることができるのだろうか。
.....



エロチョコレート屋って何かいいですね。本当にあるのかどうかは知りませんけど、そのコンセプトが好きです。そもそもチョコってそれだけでちょっとエロいし!
しかもそのチョコレート屋の店主が、バイカーのようなマッチョでタトゥの、でも優しい笑顔の男ときては。

そのBrandonは、前にビジネスマンの恋人に捨てられてから、恋にはちょっと奥手です。
いかにもできるビジネスマン風味のDavid(HRマネージャー。人事マネージャーと言っていいのかな)にも警戒して、彼はいささか非礼な態度を取ってしまう。

短めで、エロシーンもほとんどなく(多少あり)、さっぱりと愛らしい出会いとはじまりの話です。キャラクターに嫌みがなくて展開もこなれているので楽しく読めます。
Brandonの店にいるゴスコスチュームの女の子やら、Davidの女友達やら、回りが適度におせっかいでにぎやかで、何だか幸せな雰囲気が全体に流れているのがいい。
話の中心にあるイベントがDavidの友達の結婚式だということも関係あるのかも。結婚式はやっぱり何かハッピーな感じがするし、2人が「新婦の友達」と「チョコレート屋」という脇役であっても、結婚式のスペシャル感が彼らの出会いを照らしているようです。

軽い気持ちで読める出会い物。
適度にスパイスが利いていて、ほのぼのしていて、奇をてらわずに楽しく読める1冊に仕上がっています。短めだけど物足りなさもなく、ちょっと洒落たドラマの導入部みたいです。

★チョコレート

Taking You Home
Cooper Davis
Taking You Home★★☆ summary:
Boys of Summer続編。

自分がゲイだとも思っていなかったHunter Willisは、親友のMaxwell Danielsと激しい恋に落ちた。
彼らはお互いの存在、そして2人での生活に心から満足していたが、HunterがMaxに指輪をプレゼントしてプロポーズした時、問題は2人だけのことではなくなる。
彼らの結婚は、家族とMaxとの立場の食い違いを鮮明にあぶり出してしまうのだった。

Maxの家族は、Maxがゲイであることを否定はしていなかったが、いつか「卒業する」と期待していたふしもあった。
彼らはMaxとHunterの訪問を歓迎するが、彼らを「カップル」としては受け入れない。Maxの妹は彼らの関係をまるで汚いもののように嫌い、両親は口では受け入れているように言いながら、結婚式には出ないと言う。

自分がゲイであることに誇りを持ち、いつも堂々としているMaxが、家族の前では打ちひしがれている、その姿はHunterにとっても耐えられないものだった。
.....



親友と恋に落ちながらそれを否定しようとする青年を描いた一夏の繊細なストーリー「Boys of Summer」の続編です。
今回の「Taking You Home」の方がはるかに長い。単体で読めないこともないけど、「Boys of Summer」はなかなかに名作なのであれは読んだ方がいいです。読んでないとこっちの「Taking You Home」はちょっと単調に感じられるかも。

Cooper Davisは、独特の繊細で情熱的な描写をする作家で、今回も彼らの心の動きがきめ細かに描き出されています。Maxの苦悩、彼とHunterを結びつける情熱、様々なことに振れては戻ってくる気持ちの揺れ。
物語の全面に、そうした心の揺らぎがちりばめられている。

お互いへの気持ちに揺らぎはないけれども、だからと言って家族の冷たい対応にもMaxが傷つかないわけではない。
Hunterが前作で自分が「ゲイ」であることに抵抗しようとしたように、Maxにもストレートとしてふるまおうとした時期がある。家族の期待に応えて、「普通」でいようと。しかしもはやHunterに出会った今、彼は家族と断固として立ち向かっていきます。
そんな青年ふたりの、結婚式までの道のりの話です。

前作が一夏の運命的な恋の話で、今作はそれをより「現実」のものにするための話。
「これぞ運命の恋!」的なロマンティックさでは前作が上ですが、現実や家族と向き合って、お互いを支え合う2人の姿はなかなかにいじらしくて、やはりこの作者特有の濃密な文章がよく引き立つ。
人と人との絆とか、濃厚な愛情とか、気持ちが入りこんで読める1冊です。

前作よりずっと長いのですが、ここまで長くない方がさっぱりしたかもな、とはちょっと思います。とは言え妹とHunterの対立とか、前半の際立つ緊張感は読みごたえがありますし、ラストの方もまた盛り上がります。
様々な苦労を2人でのりこえながら、2人の恋は揺るぎがない。その様子が美しいし、ロマンティック。

恋だけでなく、「その後」の話が読みたい人や、現実とロマンスが絡み合ったドラマが好きな人におすすめ。

★結婚
★家族の反対

Falling
D.W. Marchwell
Falling★★ summary:
Scott Alanの父の死後、兄が林業の会社を継いだ。
Scottは会社にも山の仕事にも興味はなかった。彼は故郷を離れて都会へと出て行き、今やバンドのメンバー、そして作曲家としての成功を収めつつあった。

だが、1本の電話がすべてを変えた。兄が木の伐採中に転落事故にあったというのだ。常にScottをサポートし、彼を守ってくれた兄が。
恐怖にわしづかみにされて故郷へ戻ったScottは、兄の下で伐採の仕事をしているHankという男に出会う。

Hankは兄の事故への責任を感じ、打ちひしがれ、孤独だった。
そんな彼を励まそうとしながら、Scottは大きくこの男に惹かれていく。Hankも明るいScottに心をひらいた。

はじめは友人として。だがそこからどこへ向かっているのか、2人のどちらも知らなかった。
.....



若くて成功しているミュージシャンと、きこりの話。
チェーンソー持って木を伐採してヘリで運んでいるお仕事なので「きこり」というのもどうかという感じだけど、loggerってほかに何かいい言葉がないかなあ。「伐採作業員」と言うのも何だか味気ないけど、この方が近いか。

はねっかえりで愛らしいScottと、不器用だけれども優しい山の男Hankが恋に落ちていく様子はほほえましくて、読んでいて心がなごむ一冊です。Scottは明るくて人を笑わせるのが上手で、2人がじゃれあっているシーンの会話なんかもけっこう笑える。

Hankは何よりもその仕事を愛する男。枝を払う作業のために木に高くのぼっていって、上から世界を見晴らした時、まるで世界の王のような気持ちになる。木を愛し、山を愛する彼は腕のいい作業員でもありますが、同時にひどく孤独で、その孤独を酒でまぎらわしている。
そんな彼の世界にふってわいたように現れたのがScottです。
兄の事故を聞いて帰ってきたScottは、打ちひしがれているHankを守り、励まそうとする。自分も大変な時だというのに、まっすぐ前を見据えてねじけることのないScottの意志の力は実に鮮やかです。頑固で、優しくて、活発。
そしてScottの目はHankの奥にある孤独や、そこにある大きな心とか、ユーモアをきちんと見る。誰も見たことのないHankの一面を見て、それを引き出す。
それははじめから、恋だったのかもしれません。彼らの関係は友情としてはじまっていくのだけれど。

ちょっと後半長いかなー、というのはあるかな。きっと後半にHankのカミングアウト騒動があるだろうと思いながら読んでいたけど、そのへんも何だかナチュラルに流れてるし、それほど事件がおこるわけではない。前半に比べてやや後半の展開が単調でエロシーン満載!ばっかりになってしまうのと、ラストのおさまりがいささか唐突なのは残念。
でも、このカプには何かハッピーな「Ever after」がちゃんとありそうで、ボリューム感と読後感は満足度高し。山の雰囲気もよく出ているし、大自然の中で惹かれあう「山男と都会の若者」なコントラストが楽しい。

ScottとHankにとって、互いの存在は自分のことを完全にしてくれる、幸せへのピースなのです。
opposite attraction ものが好きな人、互いのことが大好きでたまらないカプや体格差カプが好きな人におすすめ。

★大自然
★事故

Breaking Logan's Laws
Cameron Dane
Breaking Logan's Laws★★★ summary:
Quinn Securityシリーズ

Logan Jeffriesは負傷をきっかけに警官をやめ、かねてから友人に強く誘われていたQuinnセキュリティに入社する。
だが、彼には社内で決して顔を合わせたくない相手がいた。
Nate Jordan。友人の義理の弟。
明るく活発な彼の姿に、いつもLoganは目を引き寄せられたが、決して手をのばしてはならない相手だった。

Loganには、決して破らないようにしている5つのルールがあった。ストレートの男と関わらない、仕事とセックスを決して混ぜない…誰かを、自分の弱みになるほど近づけてはならない。
彼自身しか知らないそれらのルールを盾にして、LoganはNateとの間に壁を作ろうとする。

Nateは、新しい仕事でLoganのアシスタントとして働くのを承諾したことを、大きく後悔していた。
3年前に見てからずっと恋をしていた相手、そして決してNateのことを見てはくれない男。そのそばで働くのは、どんな苦しみだろうか。
だが、彼は間近で見るLoganの姿に、いつもは押し隠されているLoganの真実の感情をかいま見るようになり…
.....



Quinn Securityシリーズ
前までのカプとはかなりきっちり切り離されてるので、単独で読めます。

Cameron Daneらしい話でもあり、らしくない話でもあり。
「らしい」のは、自分の中のルールや枠にしがみついてもがいている、強くて頑強な男が苦悶する姿。Loganの強さというか、容赦ないたたずまいは物語の中からもはっきりと読みとれるので、彼が自分のルールや、古傷、Nateへ揺らいでしまう気持ちなど様々な物の中で苦しむ姿も鮮やかです。
「らしくない」のは、ふたりがお互いに強く惹かれつつ、体の関係をなかなか結ばないあたり。結構しぶとい、今回のLoganは。そのしぶとさと、くじけないNateの体当たりっぷりが楽しい。

でも、エロ魔神というかエロ魔王というか、さすがなCameron Dane。どえらく濃厚な自慰シーンとかはさまってて、エロ的にもとてもこってりしてます。自慰をここまでドラマティックに書くのって、この人くらいのもんだと思います…ちょっと妄想の域にまで入ってて、エロいけどつい笑ってしまいました。

彼らは2人で、相手への強い引力を感じながら、ひとつの事件に取り組みます。それは金持ちの娘が行方不明になった事件で、こっちの事件の方もなかなか興味深く書かれています。特に、被害者の双子の弟の拗ねて繊細で甘ったれたろくでなしな姿とか、サブキャラもよくできていて、全体に話に深みを与えてます。ちょっとこの弟が切ないので、そのうち続編で彼の話を書いてくれないかなーとか思ったり。

Nateが必死にLoganの役に立とう!とがんばる姿もけなげで、Loganが段々とほだされていくのもよくわかる。Nateを拒否するのって、ほとんど何かなついてくる犬を蹴飛ばすようなもので、情がうつるとそんなことできるわけもありません。
少しずつ、Loganは自分のルールを破って行かなければならないわけですが、それでも抵抗は残る。もういい加減そういう気持ちは手放してしまえばいいものを、いつまでもLoganはぐるぐると堂々巡りをして、もがいて、何かにしがみついている。
複雑で、強靭で、そして時に理不尽なLoganの拒否や怒りを、Nateがどう突破していくかが読みどころです。
まあ最後は体当たりだ。いろんな意味で!

Loganと元彼が顔を合わせる短いエピソードとかも印象的で、キャラ同士の関わりがよく練られていると思います。
エロも話も読みごたえのある長編を読みたい時におすすめ。まあすべてが濃いので、濃厚注意です。

★失踪事件の捜査
★頑固な年上×強情な年下

Finding Home
Cameron Dane
Finding Home★☆ summary:
Quinn Securityシリーズ

Adam Reyesは人の荷物やサイフをかすめとることで、どうにかその日を食いつないでいた。
だがある日、シカゴの空港で彼の幸運は尽きる。セキュリティの専門家、Rhone Quinnに狙いを付けたのがあやまちだったのだ。
いやもしかしたらそれは、これまでの人生の中で、Adamがつかんだもっとも大きな幸運だったのかもしれない。

Rhone Quinnは彼の携帯電話を狙ったすばしこい掏摸のガキをつかまえて、その素早さに内心舌を巻いていた。
理性に従えば、この少年を警察に突き出すべきだっただろう。だがRhoneは直感を選んで、Adamに人生をやり直すチャンスを与えることにする。
仕事と、住む場所も。

何年かをともにすごすうちに、Adamの存在はRhoneにとってかけがえのない仕事の片腕となっていた。そしてプライベートにおいても、AdamはRhoneの心の支えであり、常によい友であった。
だがAdamにはRhoneには言えない秘密があった。
彼はこの年上の男、自分の人生を救ってくれた男に長い間恋をしてきたのだ。ストレートであるRhoneが決して返してはくれない恋を。
.....



掏摸の少年と、彼をとっつかまえて別の人生を与えた男。
男性版シンデレラと言うか、足長おじさんという感じです。

およそ10年に渡る2人のエピソードが書かれていて、彼らが濃厚な人生の一瞬を積み重ねてきたことがわかるので、AdamがRhoneにめろめろなのが痛いほどにつたわってくる。
彼らはルームメイト、というかAdamがRhoneの部屋に居候する形で彼らの暮らしが始まるのですが、今となってはその状態がどちらにとっても心地よく、誰よりも距離が近い2人になっていきます。でもRhoneはストレートなので、Adamのことをそういう目では見てくれないけれども。

保護者で同居人とか、ネタや展開は大好きな一作です。
しかし、個人的にこの話には全体に難があってこれまでレビューを書かずに放置してきました。でもシリーズ続編が出たので、今回こっちもレビューしとこうかなーと。
何が難かと言うと、話は好きなんだけど、正直ちょっとエロシーンがな。まあ色々あるんだけど、女性がらみになったり、「いやそれは微妙」と一歩引きたくなるようなシチュがあったりするのですよ。女性がらみ(ややアブノーマル)がOKな人なら濃厚でいいと思う。濃い濃いじつに濃い。

んでもって、続編として2人の後日談「Saying I Do」(エロだく楽しめ、なかなかにおすすめ)と、この話にも出てくるCaninとKaseyの男女SMもの「The Ultimate Kink」(男女もの好きな人に)なんかもあるので、興味があったらそのへんも。書店のページでシリーズ全体の確認ができます。

★保護者
★ルームメイト

The Boy Next Door
Kate McMurray
The Boy Next Door★★ summary:
Lowellは高校生の時、自分がゲイであるとカミングアウトした。その小さな町で初めてのことで、彼と父親との不仲を決定的なものにした。罵倒、暴力。母も彼の盾にはなれなかった。
18になった彼は町に背を向け、両親に背を向けて去り、二度と戻らなかった。

だが父が死に、ひとり残された母の面倒を見るために、Lowellは生まれた町へ戻り、家を買う。
すべての手続きが済んだ時、隣人が幼なじみだったJaseだということを知ったが、それをどう思えばいいのかわからなかった。昔は仲がいい友だった。だがいつしか離れた相手だ。

Jaseは、Lowellが隣に越してきたことに嫌な予感を感じていた。結婚に失敗して離婚し、6歳の娘を引き取って面倒を見ながら、彼は二度と誰かと深い関係を結ぶまいとしていた。
ゲイであることを隠して、ここまで生きてきた。
この先もそうやって生きられる筈だ。娘を守り、成長を見守るために。

しかし、JaseにとってLowellの存在はあまりにも大きくなり…
.....



子持ちの隠れゲイと、かつて学生時代、堂々とカミングアウトするだけの勇気を持っていた男の話。
「The Boy Next Door」の「Boy」は仲のいい友達だった子供のころの彼らを表しているのかも。

とても仲が良かったふたりは、しかし段々と別々の道をゆくようになる。Jaseが野球の道を選び、Lowellがアーティスティックな方面へ進んだから、というように見えていますが、それは表面的なものだった。少なくともJaseは、Lowellに惹かれる自分を感じて、距離を取った。Lowellはそのことを知らないけれども。

大人になったふたりには、色々な人生がのしかかっている。Lowellは老いてきた母の面倒を見なければならないし、Jaseには娘の面倒と、そして最近やたらとトラブルを引き起こしている元妻との摩擦もある。
特にJaseは人生の色々な面に行き詰まっていて、娘の存在は彼に取ってほとんど唯一の光です。

はじめのうちは、Lowellの帰還とともに静かに深まっていく人間関係が、かなり淡々と書かれています。すごく盛り上がるというより、すぎていった時間の重さと、新たに作られる彼らの関係が積み重なっていく感じ。
でもJaseはLowellとの間に体以上の関係が生まれるのを望まないし、元妻は「隣に引っ越してきたホモを娘に近づけたら承知しないからね」と言い放つホモ嫌いです。まあ、彼女としては、結婚した旦那が「実はゲイだった」ということで離婚をしなければならなかったので、今でもその傷が彼女を攻撃的にしているのかもしれません。

淡々とした話の中で、そういった複雑な状況が折り重なっていって、ついに破綻する。
その瞬間の盛り上がりはボルテージ高くて、痛々しいです。
それはJaseを傷つけ、Lowellを傷つける。

全体によく書かれた話だと思うんですけど、ちょっと気になる点もなくはなくて、ひとつは元妻。かつてJaseの本当によき友人であった(らしい)元妻が、この話の中ではただの性格の悪いビッチちゃんにしか見えないもので、そこはもうひとつフォローがほしかったなあと思う。Jaseの語る元妻の記憶と、現在の彼女がうまく重ならないのが気になります。
あとラストへの集約の仕方も、複雑に絡み合ったキャラの気持ちをまとめるにはちょっと安易かもなあ。もうひとつふたつ、そこは工夫がほしかったところ。

とは言え、人生を背負った「大人」の、恋だけでは何も解決しないけれども恋を手放してしまうと自分の気持ちがからっぽになってしまう、という複雑なところは味わい深く書かれていて、読んでいると2人を応援したい気持ちに駆られます。色々と根の深そうなサブキャラも出てたので、もしかしたらシークエンスものに発展するかもしれないですね。
子持ちや、隠れゲイという色々な問題をかかえた男が苦悶する様子が好きな人におすすめ。

★隣人
★ゲイ×子持ちストレート(隠れゲイ)

Cold Steel
Morgan Lee
Cold Steel★★ summary:
DEA、麻薬取り締まり局の捜査官であるParker Tateは、潜入捜査中の偽装身分のまま逮捕され、手錠をかけられる。
それは麻薬組織を検挙しつつ、彼の身の安全をはかるための芝居だった。

だが、両手にくいこむ冷たい手錠は本物だった。
そして手錠をかけたGarretの目の中には何かがあった。

Garret Lamontと彼は、相棒を組んでから数ヶ月と期間は短い。だがParkerははじめからGarretに惹かれるものを感じていた。
誰にも言うまいと思っていたその感情を、彼は捜査中の緊張感からGarretに告げ、逃げたのだ。
そのGarretの手錠が、今や彼の両手首にかかっていた。

署へ向かう筈の車が、誰もいない場所で止まった時、Parkerは驚かなかった。
.....



短くて展開の早いショートストーリーです。
基本的に迷いなく進んでいきますが、警官ふたりの力と力がぶつかりあう感じや、切羽つまった一瞬の感じがよく出ていると思う。
エロシーンもがつがつっとした荒い雰囲気があるので、そういうの好きな人ならかなり楽しい。

片方が手錠をかけられているというのがやっぱりいいですな!
そんな中で、Parkerは体だけの関係でもいいと思いながら、「その先」があったらいいとぼんやりと願っている。
そういう気持ちの揺れもちゃんとちりばめられています。

ハイスピードで、一気にエロまでたたみかけつつ、ちょっと小技がきいてる短編を読みたい時におすすめ。
頭をからっぽにして単純に楽しめます。


とりあえずSmashWordsにリンクしましたが、別のところから買った気もするんだよなあ。元の出版はDemanding Romanceなので、ここからたどると色々なところで買えるようです。

★短編エロ
★警官×警官

2011年のDA BWAHAがスタートしたようです。
GLBT部門他のエントリーはこちら。読者投票で対決しながらトーナメントで勝ち上がっていきます。

7冊しかありませんが、残り1冊は読者選考で選出されます。
好きな本があれば投票してみるのも楽しいです。投票合戦は3月後半から4月頭にかけて。

今年のラインナップの中では、「No Souvenirs」しか読んでないんだよなあ。これは今いちキャラがピンと来なかったので自分の中で評価保留にしてあります。K.A.Michellは個人的にキャラの当たり外れの振れがでかい。話はいつもちゃんとしていてすごいと思う。
あと2冊は読もうと予定していた本がまざってるけど、後は知らない本ばかり。今度そのへんも買ってみるかなー。

DA BWAHAについての説明と、去年の記事はこちら

Shenandoah
Ally Blue
Shenandoah★★☆ summary:
Mother Earthシリーズ2

海の怒りによって、かつて栄えた文明は脆くも失われた。
人々は過酷な自然の中に隠れ住みながら、あるいは群れを作って戦い、あるいは互いを狩って生き延びていた。

出会ったばかりの男、追放者であるDragonを守るために己の部族を去ったBearは、旅が過酷さを増してもその決断を決して後悔したり、振り返ったりはしなかった。
彼らを受け入れてくれる部族はどこにもないだろう。ただひとつ、「Shenandoah」──どこかにあるという、誰もが平等に暮らせる街以外は。伝説のその地を探すのはBearの夢でもあったし、そこへ向かうことに迷いはなかった。
たどりつく方法はまだ知らない。だが必ずたどりつける。Bearの確信に揺らぎはない。

だが、DragonはBearにそんな決断をさせてしまった自分自身に迷いを感じていた。
Shenandoahなど、所詮は噂にすぎない。夢にすぎないだけの存在だ。本当に存在しない街を探し求めて何になるだろう?

Bearは強い。彼はひとりでも生きていける。
Dragonも決して弱い戦士ではなかったが、Bearに比べれば、常に彼の足を引っぱる。そのことがいつか悪い運命をもたらすのではないかと、Dragonは旅の中で懐疑心を抱くようになっていた。
いつか、Shenandoahなどどこにもないのだと悟った時、Bearはそんな空しい旅に自分を引きずり込んだDragonにも失望するのではないだろうか。ならば、今の内に彼らは離れた方がいいのではないだろうか。
.....



短編「Dragon's Kiss」の続編。これだけでも読めますが、続けて読んだ方がわかりやすい。
前作は本当に短い話だったので、キャラの陰影もそれほど深くはなく、全体のファンタジーや廃虚の雰囲気を楽しむ感じの話でしたが、続編はそんな2人の姿や、2人の差をくっきりと描き出しています。

食うか食われるか。そんな恐ろしい場所になった世界を、2人は安全な場所を求めながら旅をしていく。旅の細かいディテールがよく練り込まれていて、読んでいて楽しい。
Bearは「Shenandoah」という神話の街にたどりつこうとしていて、Dragonはそれに従うけれども、決してShenandoahの存在は信じていない。そんなものはただの噂にすぎないと思っている。ここで彼らは大きくくいちがう。

Bearは強く、迷いなく、その名の通り獣のようなゆるぎない強さと本能を持つ男です。Dragonは知的で論理的だけれども、その分迷いやすい。
そんなDragonの悩みは、旅の間に少しずつふくれあがっていって、彼を苦しめていく。

Bearがすごくいい男で、がっつりと「雄」って感じの男なんですが、決して雑なわけではない。DragonがShenandoahを信じないまま、Bearに従っているだけだと言うことも、何かを悩み始めていることも感じている。
でもそのことすら軽々と両肩に担いでしまう、そんな力強さがあります。「DragonがShenandoahを信じていなくても構わない。自分が彼の分も信じてそこへ向かえばいい」という揺るぎのなさ。
Bearの気持ちはまっすぐで、純粋で、時に荒々しい。Dragonはそんな彼に対してどこか負い目を感じていて、心の影を振り払えない様子がリアルで、痛々しくもあります。コントラストがよくてきれいなカプです。

着の身着のままで土ぼこりにまみれて旅をしていく、みたいな野性味のある話なんですが、こういう人たちのエロってスラだと雰囲気が出てていいよな~と思います。
言い方は悪いけど、ちょっと小汚い感じや、生々しさがよく出ているんですよね。そういう何か生々しい文章って、我に返って和訳してみるとあんまり萌えなかったりするのが不思議ですが。

滅びかかった世界を旅していく雰囲気もよく出ていて、ファンタジー好きにおすすめ。
ラストに向けての流れも実にこなれててうまいと思う。旅の終わりでもあり、何かの始まりでもあるというおさまりのよさがさすが。
この2人の話はこれでおしまいかなーと思いますが、シリーズとしては続いてほしいシリーズです。

★伝説の街
★2人だけの旅

★Three-Star rating system★


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