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Slash(m/m小説) レビューブログ

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Survival Instinct
Roxy Harte
Survival Instinct★★ summary:
Brian Van Zantは一度に多くの物を失って、自分の道を見失っていた。
彼の愛する夫は浮気をしていた──それも、Brianの双子の兄弟と。
彼らを許すことが出来ず、彼らからきた電話を取ることができなかったBrianは、そのすぐ後に2人が車の事故で死んだことを知らされる。

どうすればいいのかわからないまま、投げやりに家を出た彼の車は、雪の中で立ち往生してしまう。

モンタナでパークレンジャー、Tobias Red HawkがBrianを助け出し、つきっきりで低体温症から救った。
2人は互いに惹かれあうが、Hawkは自分がゲイであることを周囲に隠している。これまでは、人に明かすほどの決心がつかなかった。そこまで価値のある相手にめぐりあったことがなかった。
もしかしたら、Brianはそんな相手になるかもしれない。Hawkにはそんな予感があった。

Brianはその町をすぐに立ち去ろうとするが、車の修理をするまでのつもりで滞在をのばす。
小さな町の、少しおせっかいな人々の中で、彼は段々と自己憐憫から立ち直り、元の活発な気性を取り戻していく。
だが、山には奇妙なことが起きていた。時おり、山腹に奇妙な光が見えるのだ。
誰かがヘリをとばして山を訪れている。
そこに何があるのだろう? 彼らの目的は何だろう?
.....



やけっぱちで旅に出て死にかかったBrianと、ネイティブインディアンの血を引く頑固なパークレンジャー・Hawkの話。
BrianはHawkに出会ったことでもう一度生きる道を見出し、Hawkは自分の人生のあるべき形を見つける。
宝探しやアクションなんかもあったりして、なかなかドラマティックな感じの仕上がりです。

兄弟と夫に浮気された上に事故で死なれたBrianの投げやりな姿がなかなかリアルで、もうどこにも居場所がなく、その閉塞感から逃げ出そうとして彼は雪の中で死にかかる。可哀想だけど、何だかあまりにもふてくされているので、どことなくいい気味でもあります。
そんな彼にどうしてHawkが惹かれるのか、最初はピンと来ないところもありますが、立ち直ったBrianは頭脳も明晰で、積極的で、生来の明るさがあって、とても魅力的なキャラです。彼が生き生きとしていく様子はなかなか愛らしい。
相当にたくましく立ち直っていきますが。

Brianが最初に「(ラストネームなしで)Just Brian」と自分のことを言ったものだから、Hawkがずっと「Just Brian」と呼んでいた様子がかわいらしくて好きです。あれずっとやってればいいのに。
名前を捨て、新しい自分として出直す、そのメタファーでもあるのかなあと思います。

山をうろつき回る謎の存在が話のひとつの核になっていて、HawkもBrianも、相手が狙う物を、そして自分自身の命を守るために戦わなければならない。
戦い抜くこと、生きのびること。
そんな戦いのさ中、Brianはかつて自分を裏切った双子の兄弟、Brandonの存在を傍らに感じます。自分を励まし、守っている。
それはBrianがBrandonの裏切りを受け入れ、その傷を癒していくためのステップなのかもしれません。

過去の傷や人間関係がちりばめられて、テンポよく進んでいく一作です。キャラも一面的ではなく陰影があって、よく書けていると思う。
アクションまじりの話が好きな人におすすめ。
ちょっとルーズなところはなくもないけど、家族の再会とか、恋愛以外の部分のストーリーもよく仕立てられた一本だと思います。ライトなBDSM風味あり。

★アクション

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Winner Takes All
Jenny Urban
Elizabeth Silver
Winner Takes All★★ summary:
Dominic TaylorとMatt Harrisは仕事上のよきライバル関係でもあり、友人同士でもあった。
その友人関係には多少の見返りがあった。

Domはゲイだが、Mattはストレートだ。だが2人で飲んで、くつろぐ夜には、Mattは気楽にDomに体を許した。
何の感情も付随しない、快楽のための体の関係。
後腐れなく気軽なその関係にMattは疑問を持っている様子はなかったが、Domは、この友人に対する気持ちが次第に深まっていくのを感じていた。
だが決して気持ちが返ってくることはない。ストレートの──少なくともストレートだと思いこんでいる──男に恋をすることほど、愚かなことはない。

彼らの関係を変えたのは、大きな不況の波だった。
Domの会社は何とかその波を乗り切りつつあったが、Mattが社長を務める会社は沈む寸前になる。
それを知ったDomは、Mattに賭けを挑んだ。期限までにMattが会社を立て直して株主を説得することが出来なければ、会社への買収を行うと──そして、賭けに負けた代償として、Mattの体を(正確には「尻を」)いただくと。

期限は一ヶ月。
この賭けをきっかけに彼らの関係は形を変え、どちらも予期していなかった形で、2人は己が本当に求めるものを見出していく。
.....



DomとMattはたまに体の関係を持っているけれども、挿入まで行為が及んだことはない。だから、DomがMattに「お前が負けたら "ass" をいただく」と言うわけですが、まあ言う方も言う方なら、何だか言われる方も言われる方です。

Mattは賭けの前も後も、酔うとDomにいいようにされちゃうし、DomはDomでそんなMattによろめきつつ、きっとMattにとっては体の関係でしかないだろうと自分に言い聞かせる。用心しろと。
ストレートの男に今さらよろめいて、いいことがあるわけがない。
遊びのふりをしている方が楽で、多分、Domが賭けを持ち出したのもそのノリの一環(実益も兼ねて)だったのでしょうが、Mattを追いつめようとしつつDom本人がのっぴきならないところに追い込まれていきます。
はじめは余裕ありげにかまえていたDomが、自分の仕掛けた賭けのせいで足元を崩し、口実をかまえてくり返しMattに会いにいったり、こんな不毛なことはやめようと自分に言い聞かせている様子が楽しい。

賭けがとんでもない内容の割に、賭けに至る2人の感情はそんなに深刻なものではなく、リアルさには欠けますが、おだやかなユーモアが漂っていて、とにかく雰囲気がいい。相手の飲むビールを小馬鹿にしながら、ちゃんと冷蔵庫にその銘柄をそろえておいてあげたりとかね。
いい男が遊びのつもりで体の関係を持ちながら、うっかりあぶない賭けなど始めてしまい、じゃれあいつつも、互いにそれぞれうろたえている。
体の相性はいい。それだけのことだと思っていた。でも段々と、その向こうにあるもの、深いところにある欲望や望みに気付いていくのです。

ほとんどこの2人以外の登場人物がいない話で、それもちょっと珍しいですね。
いい男同士が軽いドツボにはまって、段々と深みにころがっていく。ちょっとエロいそんな話が好きなら、気楽な読書におすすめ。

★賭け
★ゲイ×ストレート

表紙が写真が多いというのもスラの特徴で(最近イラスト、それもBLみたいな絵のものもちらほら出てきてますが。あっちの人はyaoiカテゴリに分類しているらしい)、とてもいい写真もあれば何故それを使う?とツッコミたくなる写真もあり。
そして、使い回しされているのか、何度も出会う写真もあります。
フリーの素材集みたいなのに入ってる写真なのかなあ…

たまにはこういうのもおもしろいかも、ってことでダブリ表紙の紹介をちょろっと。

FB_Lawless_coverlg.jpg HisWolfHeart.jpg
Flesa Blackの「Lawless」と
Lila Duboisの「His Wolf Heart


StNachos HotTicket.jpg
Z. A. Maxfieldの「St. Nacho's」と
K.A Mitchellの「Hot Ticket


White Flag Twilight.jpg
Thom Laneの「White Flag」と
Carolina Valdezの「Twilght


何かこうやって並べると全体に心霊写真みたいかも。。

Skipping Stones
D. J. Manly
Skipping Stones★★ summary:
Leoの望みは傷心のパリを去ることだけだった。
画材も売り尽くし、家賃も払えない。
残ったのは年上の恋人──元恋人から贈られた時計だけ。

Leoから電話を受けた親友のMarkは、自分が経営にたずさわるリゾートにしばらく身をよせるようすすめる。
彼らは古い友人で、Leoは一度はMarkに恋をしていたこともあったが、Markは別の男と激しい恋に落ち、今でもその恋の中にいた。
問題は、その恋人が不実な男で、遊び歩き、滅多に家に戻ってこないことだった。
LeoはMarkを傷つけ続けるその男が大嫌いだったが、ほかに行き場もなくMarkの言葉に従う。

かつてその男さえ現れなければ、彼ら2人には別の未来があったかもしれない──LeoもMarkも今のように傷つかずにすんでいたのかもしれない。
そんなやりきれない気持ちの中、LeoははじめてMarkの恋人と顔を合わせる。
Reed。はじめて見たその男は、たしかに傲岸さを漂わせ、感情の読めない、勝手そうな男だったが、Leoは気持ちが強く揺さぶられるのを感じる。
これは失恋からのリバウンドなのだろうか?
だが、ReedはMarkの恋人だ。決して関係を持ってはいけない相手だ。

人間関係が絡み合っていく中、LeoはMarkが自分に何かを秘密にしていることに気付いていく。MarkとReedの関係は何かがおかしかったが、どちらも真実をLeoから隠し…
.....



友人の恋人と恋に落ちる、というネタはちょっと苦手で、しかも今回友人のMarkがほんとにいい人!だったので読みはじめはためらいがちだったのですが、この話には見かけ以上の裏があります。
MarkとReedの関係は、Leoが友人から思いこまされているようなものではないのです。

謎の男・Reedが魅力的に書かれています。ぶっきらぼうで、Markを冷たくあしらっているようだけれども、同時に彼を傷つけまいとかなり気持ちを払っているのが(事情がわかれば)見えてくる。
でも彼は、Leoから見れば「親友の人生を踏みにじっている最低男」。地球で一番恋に落ちてはいけない相手です。
そんな男に惹かれてしまい、Leoは混乱する。
2人が互いを見定めようとして、結局互いに落ちていき、でもそれが体だけの関係だと面と向かって言い続け、相手の言葉にどちらも傷つく、その濃密さは読みごたえがある。エロもそんなに回数ないですが、濃い。
数少ない中で、Reedが一瞬感情を剥き出しにする、その瞬間が鮮やかです。

いくつか気にかかるところはあって、友人のMarkが裏返すとあまりにビッチちゃんなので、もう何か納得できるように造形してほしかったなあとか。彼のReedに対する執着は恋というよりある種の強迫観念になってる気がするし。みんな呑気にしてないでカウンセリングにつれてった方がいいんじゃね、とか。何か、展開に合わせていい当て馬にされてる感が拭えない。
でも恋愛ドラマとして楽しく読めます。まあ些細なご都合主義は仕方ないかなー。

寡黙で傲岸ないい男が好きだとか、三角関係に萌える人におすすめ。
「お前なんかひどいヤツだ!」と思いながら恋に落ちちゃう意地っぱり受けもなかなかかわいいし、「どうせお前から見たら俺は非情なだけの男なんだろ」と微妙に拗ねてる寡黙攻めも萌えます。

★三角関係
★失恋

スラを読んでると色々、ふつうでは出会わない単語にぶちあたりますが、特に下半身関係が多いのは当然と言えましょう。
口では言えないところにピアスをしてたりとか。
私がこれまで出会ったところ、パンツの中のピアスには大体二種類ある?ようです。


Prince Albert

男性器の亀頭にするピアス。
通常亀頭から尿道まで、リング状のピアスを通す。見た目としては、亀頭にピアスのはじのボールが見えてたり、リングがあったりする感じ。(亀頭から尿道までまっすぐ入る棒のピアスもあって、これは中が空洞になっていてそこから排尿できるとのこと)

名前の由来になったアルバート王子(イングランド)には、大きすぎるペニスの外見をとりつくろうためにピアスで形を整えていたという噂があって(真偽不明です)、それが名前になって残っちゃったそうです。当人は微妙だろうな…


Jacob's Ladder

ペニスの亀頭の下から、竿の表面にずらっと、バーベル状のピアスを何本もはしご段のように装着したもの。

「Jacob's Ladder」自体はキリスト教の聖書の創世記に出てくる「天国と地上を結ぶはしご」のこと。
この性器ピアッシングは、Frenum Ladderなど異名も多々あるらしい。多分、「○○のはしご」という名前のピアスがいかんところにあったらもれなくこれでしょう。



ちなみに、「Prince Albert」は片手で数えるくらいスラで会ったことがありますが、「Jacob's Ladder」は一度だけ。
「Prince Albertがあるから用心しようね」つってゴム二枚重ねしていた攻めには何だかほろりときたなあ。

BDSMを読むわりに、あんまり派手なボディ改造系とか見たことないですね。乳首ピアスはジャンル問わずポピュラーだけど。
改造が少ないのは、スラは女性の作者が多いのも関係してるかもしれません。萌える前に痛そうですよ。

Pinky Swear
Lynn Lorenz
Pinky Swear★★★ summary:
LaneとMattは10歳の時から分かちがたい親友同士だった。
馬鹿げた、だがわくわくする冒険を一緒にくぐりぬけ、互いを支えてきた。

LaneはいつもMattの勇気に憧れ、彼の強さを羨望のまなざしで見つめていた。
それがただの友人にたいする気持ちでないことに気付いたのは早かったが、Laneには気持ちを言葉にできなかった。Mattのような生き生きと輝いた少年が、どうして引っ込み思案でどもりのあるLaneを恋人にしたいと思うだろう?

2人はいつも、互いの秘密を小指で誓ってきた。
大人に知られたくない物事、Mattがゲイであるというカミングアウト、そして家出しようとするMattをLaneは小指の誓いで引きとめる。大学を卒業するまで去らないと。
彼らはいつも、その誓いを守った。

2人は一緒に大学へ行き、ルームメイトとしてすごす。
一度としてMattがLaneに友情以上の気持ちを見せたことはなく、Laneは彼らの関係をあきらめていた。
だが、小指の誓いが切れてMattが去っていく寸前、2人の関係は大きく変わる。
そしてMattはLaneの心を砕き、彼の人生から姿を消した。

2人が新たな小指の誓い──「pinky swear」を立てるまでには、長い時間が必要だった。
.....



pinky swearっていうのは、wikipediaによると日本で言う「指切り」のようです。
古来、約束を破った者は小指を切り落とされた。その故事が子供同士の約束となって今に残っているのだとか。
この話の中では、さらに互いの小指を引っぱりあい、指切りが外れるまでのカウントを「約束を守る年数」として互いに誓う。バリエーションかな?
そのpinky swearが、とても効果的に使われている話です。

何せこういうネタは萌えます。
幼なじみ、子供の憧れ、友人として距離を保とうとする緊張感、ルームメイト。うーん。列挙してるだけで盛り上がる。

子供時代のLaneは、墓場にしのびこんで骨を拾ってくるようなMattの豪胆さを崇拝し、その気持ちはそのまま愛情へと変化していく。
でも彼はMattに言うことができない。大学でルームメイトとして一緒の部屋ですごしながら、Mattが色々な男をひっかけてやりたい放題やっているのを見るしかない。

一方のMattは、いつもLaneの強さに支えられてきた。彼にしてみれば強いのはLane、誓いを守り、いつでもそこにいてMattを支えてくれたのはLaneなのです。MattはいつでもLaneの輝ける部分を見ていた。
そのことが後半になって彼の視点から物事を見た時に、しみじみと語られていて、2人の間にある絆が見えてくる。もっとも、2人にはどちらもその絆が見えていないわけですが。
そんな彼らのすれちがい、相手への気持ちがじれったくも可愛い。
2人ともそれぞれに相手に真心を抱いているのだけれども、行き違って、離れてしまうのです。

彼らが育ったニューオーリンズをカトリーナが襲う、その時にまた2人の運命は変わります。
最近カトリーナの話を読んだな、と思ったらつい数日前にレビューした「Breakfast At Tiffany's」ですが、これ作者が同じです。この人、ニューオーリンズ出身なんですね。

幼なじみネタに萌える人は鉄板。
話に意外性はあまりないけれども、キャラがきちんと練り込まれていて、ほのぼのと読めます。Mattの父親に関してその後のフォローがないのがちょっと気になりますが(読み飛ばした可能性もあるが…)、ほかの周囲のキャラも全体によく書けていて、バランスがとてもいい話です。
目新しい話もいいけど、丁寧に書かれた話はやはり読んでいて気持ちがいい。

★幼なじみ
★片思い

In and Out
L.B. Gregg
※出版社の問題で一時的にリンクを外してます。
In and Out★★★ summary:
Men of Smithfieldシリーズ4。

作家、探検家、有名テレビ番組のナビゲーターであった Holden Worthingtonは、今や自分の家から一歩も外に出ることができなかった。
二年前、彼の名声をすべて滅ぼしたあの一件から。
豪華な家に1人で住み、金にも仕事にも困らなかったが、彼は家の囚人だった。

打ち捨てられた庭の手入れのために、1人の若者が働き出した時、Holdenの世界はふたたび動きはじめる。

Adam Morganは謎めいた若者だった。Holdenのジョークに笑わず、常に警戒を崩さず、黙々と働く彼の姿は、Holdenの中に久々の感情を呼びさます。不器用でピュアなAdamの姿を眺める時間はHoldenにとってかけがえのない息抜きだった。
だが、Adamが裏庭から掘り出した一体の死体が、Holdenの世界の安定を脅かす。静かだった暮らしに警官が立ち入り、ふたたびニュースとゴシップのネタにされ、彼は追いつめられていく。

そんな中、二年間家から出たことのないHoldenを、Adamは車に乗せて表に連れ出し…
.....



Men of Smithfieldシリーズですが、どれも独立して読めます。シリーズ全体に出ているのはresident trooperのTony。(resident trooperって、コネチカット州の一部で保安官の代わりに使われている駐在システムのようです)
ユーモアとテンポがよく絡み合ったスピーディな展開のシリーズですが、今回はいつもより真面目。あちこちおかしいけど。
広場恐怖症の40歳Holden Worthingtonと、24歳の庭師Adam Morganの話。

2人とも、それぞれに影を持つ。
Holdenの影はかつての栄光とそこから落下した痛み、それによって彼が陥った恐怖症。
彼はきわめて陽気でユーモアにあふれ、現状をそれほど嘆いているわけではない。
とは言え、世界からひきこもった彼の時間はとまっていて、そのユーモアは緊張やネガティブな感情の裏返しであることも多い。一種のヒステリーというか。
どこか強迫観念に追いかけられているところがあって、世界を回って集めたレシピをアルファベット順に毎日作り、家の中でワークアウトを行う。

一方のAdamは、人の感情や言葉の裏を読むのが苦手です。
それは病のたぐいではなく、何かで手ひどく傷ついてから人と距離を離し、その裏にあるものをできるだけ見ないようにしているAdamの立ち位置であるようです。なにしろ段々とHoldenに気持ちを許すにつれ、Adamは誰よりもよくHoldenの内面を読むようになるからです。
そして彼は、Holdenを守ろうとするようになる。
HoldenもAdamの存在で変わりはじめるけれども、AdamもまたHoldenの存在によって変わりつつある、それが行間から見えてくるのがいい。

そんな2人の世界を揺らすのが、裏庭から出てきた死体。
町の勝手な噂ではそれはHoldenを2年前に陥れた前の恋人で、Holdenが彼を殺して埋めたのだと言う。
家から出られない自分がどうやって?とHoldenはうんざりしつつその元恋人にコンタクトをとり、町の人間に姿を見せるようたのむけれども、現れた元恋人の様子がおかしいし、しまいには姿を消してしまう。
しかも、離婚協議中でHoldenの家にころがりこんでいる兄も、何故かいなくなる。

Holdenの家はたくさん部屋があって、普段は静かなのに、殺人事件をきっかけに人が入り乱れます。なのに、Holdenが必要とする時には誰もその姿を見せてくれない。
事件はまるでHoldenを犯人と指し示しているようだけれども、勿論Holdenは自分でないことはわかっている。
では、誰が?

Holdenが家の中から見る自然の描写──傾いた陽の光や夜の霧、花の色や芝生にあたる陽の反射などが本当に美しくて、失われた外界への憧憬が鮮やかに描き出されています。
Adamに対する彼の強い気持ちもそうで、彼はAdamから土の香りや太陽のぬくもりを感じる。ふれて、味わってみたい。それはほとんど本能的な衝動です。
広場恐怖症の人間が庭師に恋に落ちると言うのは、なかなか深いものがあります。

テンポが速く、軽いユーモアがあちこちにちりばめられていて、読んでいて楽しい一冊。ほぼ家だけに舞台が限られているのですが、それをうまく逆手にとって、5日間でおこる変化がつづられています。

エロもあるけどエロばかりじゃないよ、という話が読みたい人におすすめ。
テーマは重いようですが、この作者独特の軽みとキャラのしぶとさがあって、読んでいる感じも読後感も軽やかです。

★広場恐怖症

Breakfast At Tiffany's
Lynn Lorenz
Breakfast At Tiffany's★★☆ summary:
ルイジアナを去り、Scottはニューオーリンズのフレンチクォーターにやってきた。
Scottがやってきてすぐに町をハリケーンカトリーナが襲い、彼はしばらく路上での暮らしを強いられたが、今はシェルターの寝床で眠りながら、レストラン「Tiffany」で働いていた。

Tonyはずっとフレンチクォーターで育ってきた。
彼の母親はどこかへ去り、弟たちはハリケーンで死んだ。
彼にはもう何も残されていなかった。
金を得るため、ついにTonyは路上で強盗に手を染めようとするが、結局襲われているScottを助けながら彼から金を取るという奇妙なことになってしまう。

Tonyから見ると、Scottはすべてを持っているように思えた──眠る場所、仕事、レストランの常連との友情。
ハリケーン以来、Tonyは一歩も前へ進むことができずにいた。弟たちがその命を失い、二度と町を去ることができない時に、どうしてTonyだけが新たなスタートを始めることができるだろう?

だがScottの存在は、はじめてTonyの中に何か、あたたかなものを生む。
未来への希望。人とのつながり。
そしてTonyの存在もまた、孤独なScottの心の奥に入りこんできていた。
.....



タイトルこそ「ティファニーで朝食を」ですが、ハリケーンで荒れ果てた町での、ホームレスの2人の青年の話。

Scottは子供の頃に母親を失い、グループホームで育ち、大きくなってからゲイであることの軋轢に耐えかねてニューオーリンズにやってくる。
彼がどんな予定を立てていたにしろ、それはハリケーンで吹っ飛んでしまい、彼は結局ホームレス用のシェルターで寝泊まりしています。とはいえ職もあり、稼いだなけなしの金をまめに貯金し、希望を失ってはいない。
やわなようですが、しっかりとした芯がある。

一方のTonyは大柄でドレッドヘアの男で、一度は金欲しさに強盗をしようとするけれども、結局その一歩を踏み出すことなく、Scottを助ける。
ただその時は、TonyはScottの金を持っていってしまいますが、その金を使うことも出来ずに返しに行く。
色々な経験がTonyの内側に傷をつけ、今でも弟たちの死が肩にのしかかり、絶望しか見えていないけれども、優しい男です。

彼らはどちらもいい暮らしをしていない。Scottはシェルターで、Tonyはハリケーンでうち捨てられた空き家に入りこんで眠っている。電気もなく、湯も出ない。
そんな、社会の底辺に近い場所で生きる2人が奇妙な形で出会い、互いに惹かれていく、ハリケーンの傷が残る町でのほんの小さな奇跡が書かれています。
孤独は人を痛めつけるもので、出会いによって彼らがその孤独を癒し、希望を見出していく様子が美しい。
少しずつ、一歩ずつ。そんな話。

シンプルできれいな話を読みたい人におすすめ。
後味があたたかです。

★ホームレス
★強盗

Be The Air For You
T. A. Chase
Be The Air For You★★☆ summary:
Rod Hannahはロックスターの頂点にまでのぼりつめ、ツアーのために世界を駆け回っていた。だがはなやかな生き方の影で、彼は今でもかつての中毒の影と戦っていた。
ドラッグ、アルコール──長年の中毒からRodがかろうじて抜け出すことができたのは、友人Hawk McLeodのサポートがあってこそだった。
Hawkはいつもそこに、Rodのためにいた。必ず彼を支えた。

ツアーの最中、RodはHawkに夜中の電話をかけながら、孤独と戦う。Hawkと話し、彼の声を聞けば、薬を服用せずとも眠ることができた。

Rodはもう長い間、Hawkに恋をしていた。
だが一度として踏み出すタイミングは訪れず、今となってはあまりにもHawkは彼にとってかけがえのない存在になっていた。
決してHawkを失うことはできない。離れてしまうくらいなら、友人のままでいる方がいい。

Hawkの経営するクリニックに経済援助を続けながら、Rodは彼らはこのままずっと変わらないのだろうと思っていた。いつまでもこのままなのだろうと。
だがそんなある時、Hawkに理由のわからない変化があり…
.....



ロックスターと小さなクリニック(眼科?)の医者の友情。
これまで一歩を踏み出すには、あまりにも相手を大事にしすぎてきた、そんな2人の話。

保護者系、包容系のHawkも素敵ですが、Rodのキャラクターがいい味出してます。かつて中毒に落ち、幾度となくリハビリをくり返したRodは、最後の最後に「これで駄目だったら俺はもうお前のそばにはいられない」というHawkの最終通告をつきつけられ、すがるように立ち直った。
それでも今でもなお薄い刃のような境界線の上にいる自分を知っている。いつかまた、向こう側へ転がり落ちるかもしれない。
Rodの繊細さがあちこちの描写からにじんでいるので、彼のHawkに対する思いとためらいもよくつたわってきます。
彼はHawkの存在に支えられ、Hawkへの思いで日々をこらえている。

一方のHawkには、Rodに秘密がある。
いつまでも隠しておくつもりの秘密でもなく、彼はRodにそれを語りますが、その秘密の重さは彼らの上に強くのしかかり、彼らの人生を変えてしまう。
その中で揺さぶられながら、2人は互いを思いやり、互いを支え、時に1人で苦しんだり、2人で苦みをわけあったりしていく。
信頼、愛情、苦悶、そして絶望。
そんな彼らの気持ちの交錯が短く(話が短めなので)、でも丁寧に書かれています。

愛情にあふれた関係と、思いもかけない運命の試練が絡み合った、短いけれども読みごたえのある話。
包容系とか保護者系が好きな人におすすめ。あと闘病もの好きも。

★ロックスター
★友人同士

Taurus: All That You Do
Jamie Craig
Taurus: All That You Do★★ summary:
アンティークの店主Christopher Gleasonは、いつも注意深いスタンスを保ってきた。友人たちをトラブルから遠ざけ、悩みを聞き、彼らの「保護者」のようにふるまうことにも慣れていた。

そんな友人のひとりにつきあってゲイバーに行った彼は、そこにいたシャイで場違いな若者、Gage Kimballに気持ちをかき乱された。静かで、どこか自信なさげで、それでいてその向こうには情熱がひそんでいそうなGageのたたずまいは、Christopherを惹きつける。

Gageはモルモン教の家で育ち、ゲイであることを家族から拒否され、ギターだけを持ってソルトレイクを去った。傷心のままLAにたどりついた彼は、孤独だった。
多少やけっぱちな気持ちで足を踏み入れたバーで、おだやかなChristopherに出会い、Gageははじめての男とのセックスに向かって一歩を踏み出す。
それは新たな世界の入り口になるはずだった──Christopherが、Gageを未経験だと知り、背を向けて去るまでは。

Gageは混乱し、傷つき、望みがないと思いながらもChristopherに惹かれる気持ちをとめられない。
そしてChristopherもまた行き詰まっていた。Gageと友人としての距離を保ち、彼を守ろうとしながら、Christopherはこの若者から目を離すことが出来なくなっていた。

2人は微妙な距離を置き、互いを遠くから見つめる。
.....



「Boys Of The Zodiac」というシリーズ(大勢の作家がそれぞれ十二宮を書くらしい?)の一作。タウロス、牡牛座は「何があろうとあなたを守る」らしいです。

Christopherはとても落ちついた、おだやかな人間で、祖父から引き継いだアンティークショップを経営している。
友人が(やや皮肉も込めてでしょうが)「He's the oldest thirty-one-year-old I've ever known.」と評するシーンがあるほど。いつも友人たちの面倒を見て、皆で飲みに行けば彼が運転するか、タクシーを手配する。
そういう人っていますね。みんなから大切にされているけれども、どことなく微妙に貧乏くじをひいてたり。保護者というスタンスに慣れていて、落ちついているけれども、誰かにそれ以外の自分を見てほしいと思ってもいる。

一方のGageは痛みと夢とをかかえて、音楽で身を立てようと故郷を去った。ゲイであることで、家族も宗教も捨てなければならなかった彼の傷は深い。
それでも前へ進もうとしています。
彼ら2人は惹かれあうけれども、Christopherの拒否とGageの痛みが彼らの間に大きな距離をあけてしまう。

GageはChristopherの拒否を受け入れようとしてもがき、ChristopherはGageの保護者というポジションにおさまろうとする。誰に対してもそうだったように。
ですが、彼らの間にあるものはどんどん濃密になっていって、どちらもそれを無視できない。
その間にもGageは淋しさから刹那的な恋人を作ってしまいます。彼は孤独で、好奇心と欲望を持て余している。Christopherは嫉妬に気持ちが痛みますが、彼の理性と保護欲は、あくまでGageに対して「いい友人」というポジションを崩させない。お互いに、それぞれの理由で足踏みをしています。

2人の距離の開け方がなかなか憎い感じで、読んでいて「くっついちゃえよ!」と思うのが楽しいです。
語数の割にさらっと読める感じで、もうちょっと時間をかけてじりじり近づいてもいいかなあーと思いますが、保護者系攻めが好きならツボの一作。
作者の「Jamie Craig」ってのはPepper EspinozaとVivien Deanの共同ペンネームだそうです。

★保護者攻め
★初体験

Hemovore
Jordan Castillo Price
Hemovore★★☆ summary:
およそ10年前、「Human Hemovore Virus」が世界に大感染を巻き起こした。感染すると生き残る者はまれで、生き残った者は日光にアレルギーをおこし、栄養源として血液を求めるようになる。

非感染者Mark Hansenは、感染者の画家Jonathan Vargaに雇われて働いていた。非接触、手袋、消毒。Jonathanは自分のアトリエにこもり、Markはそこへは足を踏み入れない。
あらゆる潔癖な手段を使いながら、2人は決して近づくことも、ふれあうこともない。

Jonathanのため、Markは猫の血液を売る女から血を買い、絵の売買の交渉を行った。
Jonathanの絵は、Markには真っ黒なカンバスにしか見えない。だが感染者たちの闇に慣れた鋭敏な視覚には、そのカンバスに塗りこめられた様々な色や形が見えるのだった。非感染者には決して理解できない絵。
その絵を高値で買い取ろうと言う申し出がふってわき、Jonathanは顧客に会いに彼のスタジオから外へと踏み出す。

だが彼らを待ち受けていたのは、Jonathanの過去からの追手であった。
.....



Jordan Castillo Priceらしい、とても独特なスタイリッシュさを持った吸血鬼ものです。
ウイルス名の「Human Hemovore Virus」の「Hemovore」というのは、血液嗜好の人間のことをさすようで、その点からいくと感染ポジティブの人はあくまで「感染者」であって「吸血鬼」ではないのかもしれませんが、ストーリーとしては吸血鬼ものに分類しちゃってまちがいないでしょう。

現代物で、後天的吸血鬼化の小説は色々ありますが、この話では完全に「病気」として扱われ、感染者と非感染者が互いに互いを隔離しながら生きている、その孤独が味わい深い。
幾度も消毒するMarkの手の神経質さ、何重にもする手袋、感染者用と非感染者用に別々に売られる飲み物、Jonathanの飲む不思議なフレーバーのついた水──そんなふうな、色々なディテールから孤独が色濃く浮き上がってきます。
Markは非常に潔癖にJonathanを避け、JonathanもMarkを避ける。
彼らは、やむなく2人での逃亡生活に出るのですが、その先で出会った人々は彼らなりの「感染者・非感染者」の壁を持っている。それはMarkとJonathanのものより薄い壁ですが、そこに厳然として存在する。
距離はいくら近づいても、孤独はなくならない。
Markはその「近づいた距離」を見ますが、Jonathanはそこに残ってしまう「孤独」を見る。どうやってもMarkにふれることはできないのだと。

そして、その「孤独さ」こそが物語の鍵でもあります。MarkとJonathanだけでなく、追ってくる者の根にあったものも、拭いがたい孤独であり、その孤独から生まれた残酷さであった。
Jonathanの後悔が鮮やかにくつがえされる、あのオチはいいですね。

何しろ、感染してしまうと最後のステージまでたどりついて生きのびる人間はとても少ない。ふれたが最後、きっとその先にはMarkの死が待つ。
MarkとJonathanの間にあるテンションは無視できないものですが、そこには常に死の匂いがつきまとう。
ダークでクールな雰囲気が、とても独特。静かですが、緊張感に満ちている。表紙のスタイリッシュさがそのまま最後まで書ききられる感じです。

変わった吸血鬼物を読みたい人におすすめ。

★吸血鬼感染
★逃亡

買った小説がまたStanzaで文字化けしたので、どうにか読む方法を探してみました。
ePubのファイルです。

ちなみに化けたのは「L.A.Heat」。最初Stanzaで化けたので、Adobe Digital Editionsというアプリであけてみたら、あく。でもこれだとデスクトップで読まないとならないので、どうにかStanza(というかiPodTouch)に入れる方法がないかと試行錯誤。

まず、Adobe Digital Editionsで開けたファイルを「プリント」から「PDF」を選んで「PDFで保存」してみた。
おー、できたじゃないか。

とか思ったのも一瞬、全ページ画像で書き出されてるぜ。200MB近い。
めげずにそれをiPhoneアプリの「GoodReader」で読み込んでみた。
‥‥さすがに表示がのろいし(GoodReaderはPDF表示においてはiPhone最強のアプリなんですが)、やっぱ字が小さくて、Touchを横倒しにしてもスクロールしないと無理。
最悪これで読むかあ、と思いつつ、OCRアプリを探しに行く。

Macなので、あんまりOCRアプリはないんだけど、英語ならフリーで「Penteract」というものがある。
PDFをAutomatorでページごとにばらしてJPG保存して、OCRしようかと計画。

結論からいくと、それはためす前にとりやめになりました。
思い出したのだ。
ePubって、XHTMLファイルの集合体なのですよ。

XHTMLってのは「HTMLのちょっとえらいやつ」みたいなもんでして、実はePubは複数のXHTMLファイルをフォルダにまとめて、zip保存して、「.zip」の拡張子を「.epub」に変えたもの
こないだ自分でePubを作ろうと思ってごたごたした時に(結局Stanzaで章分けがうまく認識できなくて保留中ですが)、そのへんを勉強して、すっかり忘れてました。
なんだ、中をのぞいて何がおかしいのか見てみればいいじゃん。

そんなわけでまず「L.A.Heat」のePubファイルの拡張子を「.zip」に変えてから、zip解凍アプリで解凍する。と、フォルダが出てくる。
その中の画像以外の構成ファイルをエディタで開け、ファイルの1行目で指定されている文字コードが「UTF-8」なのを確認。んで、ファイルの文字コードがUTF-8じゃないものを全部UTF-8にする。(UTF-8でなきゃ駄目ということはなく、指定の文字コードとファイルの文字コードを合わせるのが肝心)
それでまたzipにしてePubにして、Stanza読んでみたけど、駄目。

次は、同じように中を開けて、テキストエディタで開けたファイルの改行コードが「CR/LF」のものを「LF」に変えて保存
それからフォルダ全体をzipにして、拡張子を「.epub」に変え、Stanzaで開ける。

開いた!!!

文字コードと改行コードのどちらが問題だったのかは(あるいは両方が)、そこまで検証してないのでわかりませんが、ePubに関してはそうやって中をのぞいてあれこれいじることができます。
オリジナルファイルを上書きしないように注意しつつ、何かトラブルがあった時には試してみるといいかと思います。

Duty & Devotion
Tere Michaels
Duty & Devotion★★★ summary:
Faith & Fidelityの続編(Love & Loyaltyとも関連あり)

どちらもずっとストレートとして暮らしてきたにもかかわらず、はからずも恋に落ちた2人の中年男、MattとEvan。
Evanの子供たちもMattになつき、新たな家を買い、彼らの「家族」としての暮らしが始まった。
それは、決して楽なことばかりではなかった。

Evanは自分の新しい暮らし、事故で失った妻ではなくMattとの生活を、どう受け入れるべきかもがきつづける。
一方のMattは、Evanのために子供の面倒を見て家のことを取り回しながら、かつての「妻」がいた場所に自分がはめこまれつつあるのではないかという疑念が拭えなかった。Evanが今でも求めているのは、死んだ妻の影なのではないかと。

そしてまた、Evanは自分が「ゲイ」であることを受け入れられそうになかった。社会に対して。
Mattと二人きりの時ならいい。欲望や愛情を否定するつもりはない。
だが、彼は「ゲイ」として世間からレッテルを貼られたくはなかった。
そのこと──度重なる否定が、Mattを傷つけていることには気付いていたが、Evan自身にもそれはどうしようもなかった。

愛はある。だがそれだけで、2人の人間が新しい人生を作り上げていくことは可能だろうか。
.....



「Faith & Fidelity」は親父ふたりが人生下り坂だと思っていたら、いきなり男と恋に落ちてびっくり!な話でしたが、今作ではくっついた2人の「その後」を語っています。
これがなかなか、一筋縄ではいかない話。

そもそもEvanが一筋縄ではいかない男です。考えすぎるし、それを自分でわかっていてもどうしようもない。世間に対して身構えて、身構える必要があるのかどうか悩みながら、自分の中で新しい価値観を落ちつかせようとしている。
Mattはそんな彼のことはわかっていて、無理に彼の考え方を変えさせようとはしていない。けれども、時おりEvanが自分たちのことを否定しようとしているのではないかと思って、彼はこっそり傷ついている。
EvanはMattと──男と恋に落ちたくなどなかったのではないだろうか。

そんな些細な悩みの積み重ねがなかなかリアルで、それは彼らの気持ちをゆるがせるほどのものではないけれども、積み重なる小さな傷も痛いものです。
そしてそこに、「Love & Loyalty」でのJimの存在もある。一度だけMattと寝た男。今でも彼らは仲良しで、電話で語りあう。
Evanは彼に対して嫉妬している。そしてその嫉妬に、Mattは当惑します。

彼らと、Jimとその恋人(Griffin)と4人で食事をするシーンがあるのですが、まずEvanは人目のあるレストランでMattに近づきすぎるのを恐れている。そしてJimとGriffinとの隠さないスキンシップに居心地の悪い思いをしている。そんな彼の態度にMattは小さく傷ついて、でも仕方ないと流していて、それを見ているJimとGriffinは2人のために苛々している。
ぎこちなくなった雰囲気を救おうとGrifinが一生懸命場を取り持ってしゃべり続け、それを見るJimが「ああ、努力してるな」と心を痛めている、その様子が何だか可哀想です。4人ともに。

愛情ははっきりとそこにあって、彼らは彼らなりに幸福で、でも傷ついている。
そこから抜け出すにはどうすればいいのか。それとも、愛があるのにそれ以上のことを言うのは贅沢だろうか。

40すぎた男たちが自分たちの道を探していく、そんな様子が独特のリアルさで語られていきます。ひとつずつ、彼らはのりこえていかなければならない。

親父好きなら鉄板。「Faith & Fidelity」からね。できれば「Love & Loyalty」も読んどこう、というわけで、これ三部作なのかな。

★親父
★ストレート同士

★Three-Star rating system★


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