Slash×Slash

Slash(m/m小説) レビューブログ

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Seducing Stephen
Bonnie Dee
Summer Devon
Seducing Stephen★★★ summary:
1856年、夏。
裕福な友人の家に招待されたケンブリッジの学生Stephenは、夜中に目を覚まして仰天する。
見知らぬ男が自分のベッドに入ってこようとしていた。

寝室を間違えたその男こそ、Stafford伯爵 Peter Northrupであった。

Stephenは、年上のPeterの遊び慣れた様子に惹かれた。
彼はこれまで同性に興味を持つ自分自身をどうしても許容できずにいたが、Peterのような男ならば、これまでどうしても恐ろしくて入りこめなかった世界を彼に見せてくれるかもしれない。体の欲求に導かれた先にある世界を。

2人は合意の上で、週末だけの行きずりの関係を持つ。
StephenはPeterに強く惹かれるが、Peterにとって、Stephenとの関係は楽しみ以上の深い意味を持たなかった。少なくとも自分にそう言い聞かせていた。
だが、シャイですぐ口ごもるくせに快活で、橋の設計に打ち込んでいるひたむきな若者の存在は、思うより深くPeterの内側に入りこんでくる。

2人の間にあるものを拒否しようとするPeterは、自分が予期したよりも強くStephenを傷つけてしまう。
別れは一瞬ですむ。すぐ互いに忘れ去る。その筈だ。
そう思いながら、夏から時が経ち…
.....



味わい深い歴史物です。
キャラがすごくいい。若く、自分に確信が持てないStephen。彼は厳格な家庭に育ち、自分が同性に惹かれることを後ろめたく思っている。左利きであることもそれと関係あるのではないかと疑い、右利きのふりをしているほどです。
たとえば、どもっていた彼が、段々と確信を持ったたたずまいになっていくところとか、Peterへ気持ちを込めた手紙をいつもの右手ではなく情熱のままに左手で書くところとか、そういう描写からStephenの姿がしっかりと浮かび上がってくる。

Peterも素敵な男で、皮肉っぽい彼は自分のことを「ただ裕福に日々を食いつぶしていくだけ」の男だと思っているけれども、その内側には押し隠してしまったやわらかなところがある。
Stephenの存在が深くくいこんでくるのを快く思わないPererは、とりあえず全力で逃げる。大人って仕方ないねえ。

でも逃げつつ、逃げられないわけで、どうしても気持ちはStephenに戻る。
出会った時には余裕がありあまっていたPeterが刻一刻とその余裕を失っていく姿が、非常に楽しい。
彼は自分がStephenの中に何を見ているのか、何を求めているのか気付き、価値観がひっくり返される。遊び人ですが真摯でいい男だ。

19世紀のイギリス、同性の関係は罪であり、表沙汰になれば未来は閉ざされる。
そんな中で、自分たちなりの真実を探す2人の物語。
青春のような甘さと大人の世界が入り交じった苦さが出ていて、気持ちが引き込まれる話です。

惹かれあったり、拒否したりと、物語もドラマティックで起伏がしっかりしています。
描写もくどくないけれども美しくて、歴史物好きは勿論、「純情で奥手な受けと年上攻め」にぐっとくる人におすすめ。

★遊び人×純情
★イギリス貴族

The Elegant Corpse
A.M. Riley
The Elegant Corpse★★☆ summary:
Roger Corsoは警官として働きながら、ゲイであることは隠していなかった。
だが、彼がBDSMのシーンに深く関わっていること、根っからの「Master」であることまでは明かしていなかった。

長年のパートナーを失い、馴染んだクラブの相手とたまの楽しみを共有する日々が続く中、誰かがRogerの秘密に土足で踏み込む。
何者かが、美しく布に包まれた死体を、Rogerの家のソファに安置したのだ。その死体は革の鞭を手にしていた。
明らかに、Roger個人に当ててのメッセージ。
誰が、何のために?

殺人事件として捜査にかかったRogerは、被害者の弟に会う。
Sean。どこか落ちつかない若者は何かを隠していたが、Rogerに話そうとはしない。

Seanの何かが、Rogerをひどく苛立たせた。青年の中にある混沌、ためらい、怒り。欲望。
彼は自分が何者か、何を求めているかわかっていない。
Rogerは自分ならその答えを彼に与えられると知っていた。だが、Seanはそれを望むだろうか?
そしてRoger自身は?
.....



BDSMシーンを中心としておこる連続殺人事件と、その中で翻弄される、迷えるDomとSubの話。
警官のRogerは愛したパートナーを失い、迷っている。
被害者の弟Seanは自分の中にあるものを凝視できず、無視もできず、揺れている。

彼らは相手の中に、今の自分に欠けているものを見るけれども、どちらも最後の最後まで迷いを振り切れていない。
その迷いどころ、支配しながらためらうRogerと、反発し、怒りを見せながら切迫した欲望に揺らぐSeanとの、切れ切れの交錯が鮮やかに書かれています。

捜査はBDSMのシーンにも深く入りこみ、Rogerの知り合いたちが大勢顔を見せる。クラブで働いている友人、Domとして高名だが今は車椅子で闘病生活を送る男(でも根っからの「主人」。Rogerですら頭を低くしなければならないほどに)、道具のコレクター。
アングラな社会が、都市の日常に薄くかぶさるように、すぐそこに横たわっている。そのあたりの雰囲気もおもしろいと思う。

ちょいっと捜査の部分は冗長かなーと思わないでもないんですが、実はこの作者はどの作品もそういうきらいがあるので、作者的萌えなのでしょう。それはもう仕方ないな。つまらないわけじゃないんですが、個人的にはバランスがもうちょっと。
その一方で、2人の人間が見つめあう時の、いびつで濃密なテンションの高さはさすがです。一瞬の温度がすごく高い。誰でもいい相手を好きになったわけではない。この相手でなければ駄目で、それゆえにそこには純粋な痛みがある。

迷い、憤るSeanと、彼に揺さぶられるRogerの対比は強烈で、何回か再読するにつれ、そこにある感情の駆け引きがより深く見えてくるのがおもしろい。噛めば噛むだけ味が出てくる話でもある。
Seanは誰かに支配されたいのだけれども、そんな自分が異常ではないかと思い、もがいている。自分を否定するのも、認めるのも苦しい。その苦しみにRogerは惹きつけられ、動揺する。
彼らの痛みはもつれあっていて、それが複雑な感情の形を描き出す。

最後の最後、彼らが自分たちの壁を越えようと2人でもがく、そのシーンは本当に美しかった。
2人で鏡をのぞきこみ、そこにふたつ頭のある怪物──自分たちの姿──を見る瞬間は、BDSMものの中でも屈指の印象的なシーン。

BDSMというシーンの裏にあるもの、そこで己の存在を模索する人と人の心のかかわりの形。そういったものがシャープに書かれています。
このジャンルに興味のある人や、強気な態度と裏腹に心が揺れ動く、口の悪い受けが好きな人におすすめ。攻めもパワフルでいい男です。

★シリアルキラー
★支配的な攻め×強気受け

数字を使った言い回しの中から、よく出会うものをちょいっと。

one-night stand
コレは見た目あんまり迷わないでしょうが、とにかくよく出る。「行きずりの関係」とか、一夜の気楽な遊びのこと。一夜限りの公演とかのことも言うらしい(てかそっちが元か)。

One Four Three
俳句を文字数から「5・7・5」と言うのと同じで、1・4・3。つまり「I love you」。
「I love you」には色んな隠語があって、「the L word」と曖昧にぼかしたり、「the three word」(単語3つからなるので)と言ったりします。One Four Threeよりはそっちのが多いかも。

twentyfour-seven
日本でいう「四六時中」

six pack
ビールの6本パック。「ビールを持っていく」のかわりに「six pack を持ってくよ」と何気に出てくる。何の6本パックか言わなくてもわかるくらい基本らしいので、six pack=ビール と即変換してしまいましょう。
ちなみに「割れた腹筋」をさすこともある他、わりと色々なスラング表現に使われている。

five o'clock shadow
直訳すると「5時の影」。
夕方になってうっすらのびているヒゲのこと。色気があっていい言い回しだー。


ついでに。「one-third」で1/3。a thirdとも言います。
分数って慣れないととまどいますが、2つ目の数字が、threeじゃなくてthirdなあたりがポイント。
threeだとそこに「3つ物がある」状態ですが、thirdだと「3つに分かれてる」感じなんですかね。

Soothe The Burn
T. A. Chase
Soothe The Burn★★☆ summary:
宇宙船のパイロットAlvixには秘密があった。彼の存在を、自由をすべて奪いかねない深い秘密が。
追っ手から逃れ、宇宙港を移動しつづけた彼は、あやういところを銀河軍の大尉Cooperに救われる。

Cooperは、全身を金属で覆われた兵士であった。彼と隊の兵士は科学者の作った生体金属アーマーの実験に志願したが、体を覆う生体チタンは予想を超えて増殖し、彼らが傷を負うたびにその組織に入りこんで体の表面を金属に変えた。
彼らは常に危険な任務に投入されてきたが、炎の生命体が支配する惑星でついに罠にかかり、仲間を置き去りに脱出した。

必ず戻る。仲間を残してはいかない。
それがCooperの誓いだ。

だがその危険な惑星に戻って仲間を救出するには、船とパイロットが必要だった。
パイロットAlvixに輸送の依頼を申し出た時、それがどれほど彼らの運命を変えるか、Cooperは知らなかった。

炎を内側に持つ男と、金属に覆われた男。
果たして彼らは互いの心の壁を通して相手の気持ちにふれることができるのか、それともすべては手が届く前に灰と化してしまうのだろうか?
.....



SF、かつパラノーマルもの。
Alvixは長年路上で暮らし、彼の特異体質をおもしろがる男にペットとして弄ばれる人生を送り、逃げ出して輸送船で働き、パイロットになった。
送ってきた人生の割に陽気でいいやつですが、彼は物事を深く考えず、誰にも何も期待しない。
Cooperが部下のために戻るのを見て「俺のためには誰も戻ってきてくれたことがないな」と思うけど、それは自分を哀れむためではなく、事実を事実として呟いているだけ。彼の中はすっかり乾き、体内に抱えこんだ炎でいつも苦しんでいる。

Cooperは冷静な兵士で、立派な軍人で、部下から慕われている。
彼らの隊は全員がチタニウムの生体アーマーを植え付けられ、侵食されていて、そのことについてCooperはいささかの罪悪感を持ってもいるようです。それくらいの堅物。
常に隊のことや任務のことをすべてに優先させる男で、感情を見せない。コントロールを失わない。
Alvixのこと以外には。

お互いに異形であって、お互いにそれを望んでいるわけではない。
でもAlvixの中にある炎を静められるのはCooperの冷たい肌だけで、Cooperの気持ちを揺らすのはAlvixの存在だけなのです。
そういう「運命の相手」っぷりと、それに気付かない双方が、何とももどかしい。

彼らは互いに惹かれるけれども、互いを信頼しないまま、ある程度の隙間を残して、互いの周囲をぐるぐると回っている。
AlvixはCooperとのふれあいはただの「楽しみ」であっていずれ過ぎ去っていくものだと思っているし、CooperはAlvixの正体がわからずに、仲間を見えない敵から守る方法を探そうともがいている。
2人はすれちがい、たまに正面からぶつかって火花を散らし、そしてまた一歩引いてみる。
だから、どう見ても運命の相手だというのに!

隊の連中も生き生きと書かれていて、しまいには実はCooperの知らないうちにあちこちカプができてたんだよ!というのがわかりますが(そっちのカプで続編あるのかも)、いかにも「一緒に死線をくぐってきた」強い絆で結ばれた仲間たちです。
そういうのもまた萌える。

SFとしての設定もきちんとできていますが、それほど深入りせずさらっと書かれていて、わかりやすい。ストーリーにも色々な趣向がちりばめられていて、気持ちをそらさない、楽しい読書です。
パラノーマルものが好きな人、色々な意味でちょっとずつすれちがう2人が好きな人におすすめ。

★金属の兵士
★SF

Seb's Surrender
Carol Lynne
Seb's Surrender★★☆ summary:
Bodyguards In Loveシリーズ 2

Jared Grantは人生のほぼすべてに渡って、様々な虐待を受けてきた。
自殺を試みて入れられた病院では看護人からの性的虐待を受け、退院してからも、その男につけこまれてみじめな暮らしをしていた。
警備会社で働くBrierが、裁判の証言者として彼を探し出し、説得してそこから連れ出すまで。

そして今、Jaredは警備会社の寮に世話になっていた。周囲をボディガードの男たちに囲まれ、Jaredにとって、それは人生で初めて安全な時間であった。
だがそれも、逮捕されている筈の彼の虐待者から脅迫の手紙が届くまでだった。

ボディガードのSebastian Jamesは、Jaredのくぐり抜けてきた虐待について、自分自身の過去の経験から多少の想像がついた。
心身ともに傷ついたJaredを守ってやりたいと思うのは、共感からだろうか。
Sebは弟を失ってから、誰かに気持ちをよせたことはない。必要以上な関わりは避けてきた。だが長い年月で初めて、JaredはSebの心の奥のやわらかな部分にふれる存在だった。

SebはJaredを守ろうとするが、Jaredは深い傷をかかえていて、簡単に気持ちをひらこうとしない。
彼には学ぶことがたくさんあった。自立して生きること、誰かをたよること、酒を飲んだからといって誰もが人を殴るわけではないということ。
そしてSebもまた、Jaredに信頼してもらうためには、長年自分を覆ってきた殻をひらかねばならない。誰も知らない過去の自分を、見せなければならないのだった。
.....



前作はBrierとJackieの話でしたが、そのラストでBrierが救い出した同じ虐待の被害者Jaredと、ボディガードの会社で働くSebの話。
こういうちょっと弱い感じのキャラを書くと、Carol Lynneはうまい。
ただ深刻に書くのではなく、深刻な一面を切り取りつつ多少の軽みも加えて読みやすく仕立てているあたりが、さすがだと思います。

長年の虐待の被害者であるJaredの様子が、またよく出ている。
誰かにたよることを知らず、何かが起こっても立ち向かうのではなく、ただそれが過ぎ去っていくのを待とうとする。
意見の食い違いからSebが怒った時に、思わず頭を抱えこんでその場にうずくまるJaredの様子は、その象徴でしょう。Jaredにとっては当然の行動ですが、Sebは自分に殴られるのを恐れるかのようなJaredの行為にショックを受ける。

2人ともに、心に壁があります。
Jaredは被害者としての殻にこもっているし、Sebはかつて弟を失った時のつらさから、誰かに心をひらくのを拒んでいる。
どちらも、もしかしたら恋に落ちる準備はできていないのかもしれないけれども、彼らはわりとおだやかに、何だか相手の存在に気付くように関係を深めていきます。
実のところ、色々なトラブルがあって、そんなにのどかに構えてはいられないのですが、染みこんでいくような恋の展開はなかなか素敵だ。

うまく色々なことを盛り込んであって、読んでいる間に気持ちをそらさない、切なくも前向きな話です。ほのぼのだけじゃない色々なおっかないエピソードもこみですが、そこもいい味。

たよれる男がトラウマからひっぱり出してくれる、とかその手の話が好きな人におすすめ。このボディガード会社はほんとにでっかい家族みたいなので、「仲間」という感じが好きな人にもおすすめです。
今は金持ちの男をたぶらかしてる遊び人Ravenの話とか、そのうち読めるかな。読みたいなあ。

★虐待
★立ち直り


ここの会社の経営者たちの話は別のシリーズにも出てきますので、もしBrierの兄のBramや下の弟の話が読みたい人は、この「Reunion」ものぞいてみるといいかと。BrierとJackieがはじめてくっつく時のエピソードも楽しい。
こっちはやたらとキャラが多いので、多少人間関係の基礎知識つけてから読んだ方がおもしろいと思います。

The Ghost and Mr. Moore
Ryan Field
The Ghost and Mr. Moore★☆ summary:
元ハリウッドの有名子役Dexter Mooreは、長年のパートナーとの破局を機に、娘をつれて小さな町の屋敷に移り住んだ。
噂によれば、その屋敷には幽霊がいるという。
何人もの持ち主が立て続けに変わったいわくつきの屋敷だったが、Dexterは気にしなかった。一目でその屋敷を気に入ったし、噂のおかげで破格の値段で買えたのだ。
ハリウッドを離れ、娘のそばにずっといても暮らしていける。何も心配はない。その筈だった。

だが彼は間違っていた。
第一に、その屋敷には本当に幽霊がいたのだ。
若い船長、Lang。この屋敷の最初の持ち主。彼はDexterの前に姿を見せる。
第二に、Dexterの元パートナーが投資に失敗し、彼らが築き上げてきた財産をすべて失ったのだ。

Dexterは幽霊と恋に落ちながら、どうにか金を稼ぐ方法を探し出そうとする。彼はもうハリウッドには戻りたくなかった。少なくとも、フルタイムでは。
生活密着のリアリティショーの取材を受けることにしたものの、それだけでは足りない。

意外にも、彼に答えを与えたのは幽霊であった。
.....



能天気なエロもの、というほどには能天気でもエロでもないんですが、何故かそういう印象の残った一冊でした。いい意味で。
Dexterの呑気さというか、おっとりしたところがそういう雰囲気を醸し出しているのかなあ。
ハリウッドの子役上がりで、かつては知らない者がいないほどのスター、その財産でパートナーとともにのんびり暮らして娘(養女でしょう)を育てているが、そのパートナーが19歳の青年に走って破局、娘と家政婦をつれて隠居。
嫌みなプロフィールなのに、非常になごむキャラです。
ゲイであることを自然に受けとめ、ゲイの多いビーチを散歩しつつ、「そう言えばストリッパーに憧れてたんだよな」と砂浜で彼ら相手にプライベートなストリップショーをしてみせたりする。それも毎日。おさわり禁止。
馬鹿なのか呑気なのか!でもかわいいんですよ。

幽霊が出てきた時も、Dexterは一度は否定するんですが、それにしても船長って格好いいなあと、あっさりエロっといってしまう。相手は幽霊だぞ、よく考えろ。
「金稼がないと」でリアリティショーの取材を受けたものの、「自分の日常なんてつまらないよな」と考え、どうにかならないかと相談した友人によって町の政治的な反対キャンペーンに巻き込まれ、「やるなら頑張らないと」でせっせとインターネットで発信したり、スピーチを暗記。ハロウィンでは気合いを入れて子供のために魔法の大釜(中にドライアイスを入れている)を用意し、自分は海賊の仮装にハイヒールブーツ。
真面目で、呑気で、愛らしい人だと思う。
そんな彼がふらふらと幽霊と恋に落ち、お互いを楽しくたぶらかしている(としか何だか言いようがない)のは何ともかわいい光景です。

もうちょっと幽霊のLangの方に性格とかエピソードがついた方がいいなあと思いますが(海でのエピソードとか聞きたかったな)、紋切り型でも「船長」というだけでとても格好いいし、Dexterにほれ込んでいるのも伝わってきます。
全体に嫌みがなく、楽しく読める話。最後はちょっとほろりときますが、やっぱりどこかおとぎ話っぽくて、後味もきれいでした。
重い話ばかり読んでいるとたまに息が詰まるので、こういう話は大好きだ。やや短めなのでさらっと楽しめます。

★幽霊
★元ハリウッドスター

A Red-Tainted Silence
Carolyn Gray
A Red-Tainted Silence★★★ summary:
Brandon AshwoodはNicholas Kilmainに出会った瞬間のことを忘れられなかった。
青い瞳、黒髪、舞台の上で他を圧するたたずまい、そしてその歌声──
Nicholasと一緒なら、夢見た音楽を作れる。どこまでもいける。そう思った17の時。

だが、彼らにはその時予想もしなかった困難な道が待っていた。
出会い、再会、恋、そして失望と、やっとつかんだ成功。
その裏でBrandonはNicolasを守るためなら何でもした。彼から離れることすら。

10年以上に及ぶ彼の苦しみは、Nicholasの誘拐と拷問という無残な形ではね返る。それでもついにNicholasを取り戻したBrandonは、これですべてが終わったと思っていた。
Nicholasを傷つけ、周囲の人間を傷つけつづけた日々は終わるだろうと。もう一度、彼らはやり直せる。

しかしそれはまだ、すべてのはじまりにすぎなかった。
.....



31歳のBrandonが病院でNicholasの看病をしながら、17の時にNicholasをはじめて見た時の回想をするシーンからはじまります。
彼は、自分がくぐりぬけてきたもの、何故愛していながらNicholasを傷つけたのか語るために、回想録をパソコンで書き始めるのです。

現在と回想の過去が折り重なる形で進むので、最初は「過去のもつれをといて、めでたしめでたし」という話かと思いましたが、もっとずっと複雑でした。Brandonの中には彼自身も押し殺している(と言っても時おりそれが表層に出ているような描写もあるのですが)暗い記憶があって、それは彼を離さず、さりとて彼自身が語る回想の中にもなく、その空白がぽっかりと物語の中に口を開けている。
やがてNicholasも気付く。Brandonがその闇に呑み込まれそうなこと、それに自分で気付いていないことにも。
Brandonが誘拐されたNicholasを救い出したように、今度はNicholasがその闇を探して、Brandonをそこから救い出さなければならない。でもNicholasにはBrandonを苦しめている物が何なのか、そもそも何を探せばいいのかがわからない。

いくつもの現実が折り重なった構成がなかなか見事で、読んでいて驚きました。
最初は彼らの置かれた状況が全然見えてこないのですが、Brandonのつづる過去と同時に、彼らのいる現在が見えてくる。
同時に、10年以上に渡ってBrandonを苦しめつづけていた悪意が、ふたたび彼に襲いかかります。誰がその牙の持ち主なのかわからないまま、2人はもがき、現在の苦しみに過去の苦しみが折り重なるようにつづられていく。
しかしその「過去」もあくまでBrandonによって語られる過去で、そこにちょっとしたトリックというか錯誤があります。あれはうまい。

BrandonもNicholasも繊細な青年で、夢を追いかけながら互いを見つけ、スターダムにまで駆け上がった。
物静かでシャイなBrandonに対してNicholasは活力にあふれ、人々の称賛や注目を必要とする、根っからのスター気質。わがままなところもありますが、飴を欲しがる子供のような純粋さは彼の魅力でもある。
2人は強く惹かれあっているけれども、Brandonは段々とNicholasの影にひきこもるようになり、Nicholasはそれに気付かない。2人の距離は離れていきます。
そんな過去が、Brandonの回想録には痛々しく記されている。その様子が読む側に少しずつ見えてくるもどかしさは、登場人物のもどかしさとシンクロしているようで、ここにも叙述のうまさが光ります。

たまにNicholasには腹が立つけれども、でもいい子なんだよなー。Brandonを自己否定や自己嫌悪から引きずり出せるのは彼の愛の力だけ!というのはよくわかる。あそこはほんとに2人でひとつだ。
2人ともかなりささいなことに悩んだり、怒ったりして、しばしば足元をあやまる。自分の視点にとらわれて、どれほど間違っていてもそこから抜け出せなくなったりする。
そんな愚かさとか、悪循環の怖さなんかもあったりして、とても「人間らしい」2人の様子がくっきりと描き出されている話です。

いくつか設定に甘いところもなくはないし、私の好みとしてはちょっとキャラ泣きすぎ!と思ったりもしましたが、そんな細部はさしおいて、骨太なテーマに貫かれた非常にいい作品だと思います。久々に横っ面を張られたような気分。
21万語とかなり長いですが、最後まで緊張感が持続していて、その分の読みごたえはあります。(一般に長編=Novelで4万語から5万語以上)

心理が繊細に描かれた話が好きな人に特におすすめ。苦しんだり蹂躙される主人公に萌える、という人にもおいしい一冊だったり。
それにしてもいいタイトルだ。

★トラウマ
★自己犠牲

Crimson
Ethan X. Thomas
Crimson★☆ summary:
Polisの警察官BenとAdamはドラッグディーラーのTazuを追っていたが、罠にかかってチームの2人以外は全滅した。
どうにか生きのびた2人は、快楽の町Granatasへの潜入捜査を命じられる。

Adamには言っていないが、Benは性的に奴隷の嗜好を持ち、かつてTazuのクローンの1人と「奴隷」として性的な関係を結んでいた。麻薬ディーラーの男を知らずにベッドに招き入れた過去を、彼は強く悔やんでいた。
そのBenをGranatasで待っていたのは、Tazuの別のクローン。
このクローンはBenを知っているだろうか? Benの中にある欲望を?

Adamはstarlingという奴隷種族の出で、成り行きからsymbiotという高性能の寄生体を首の後ろに埋め込まれ、警官となったのだった。彼はBenに強い憧憬を抱いていたが、彼らの関係が、Granatasへ来て緊張感を持ったものに変わったのを感じる。
やはりstarlingの種族は、Benの目には低いものとして見えているのだろうか?

Granatasでの捜査はあやしい地下クラブに及び、BenとAdamは主人と奴隷としてクラブに潜入する。
Adamが奴隷役だ。当然、それしかない。starlingは奴隷種族であって、主人にはなれない。
その筈だった。
.....



Men in Space シリーズ。
ほかをまだ読んでないのですが、作家も主人公も違うようで、別にシリーズとしてのつながりはないのかな。シェアワールドかもしれないけど。
この作者名は2人の合同ペンネームみたいですね。

話はおもしろかったんですがわかりにくいところが多くて、Adamの種族についてとか(羽毛が生えてるみたい)、Benと麻薬ディーラーのTazuの関わりについて、またGranatasの町の様子とか、はっきり説明されないのでいささかめんどくさい。
でも上に書いたあらすじくらいの前提を把握していれば、わりとスムーズに読めるかもしれません。

やや迷いのある読書ではありましたが、色々と印象深い瞬間があります。麻薬Crimsonのもたらす酩酊の中で2人が落ちていく感情的なもつれ、彼らのパワーバランスが崩れる瞬間のダイナミズム。
歓楽街であり、巨大なリゾートビルディングのGranatasはとても魅力的な舞台だし。街のルールとして、感情を色にして映し出すブレスレットをつけさせられるところもいい。
設定はすごくよくできてると思います。つうか、設定でお釣りが来るほど萌えたかもしれない。

BDSMが重要なテーマの一部ではあるけども、掘り込みはちょっと浅いかなあ。それは全体にこの話の問題点でもあり、何つーか「惜しい」という感の話ではあります。寄生体symbiotのおかげだと思うが、2人がテレパシーでやり取りできるあたりとか、Benの背中の翼のタトゥとか、もうちょっとエロ的に使ったらおいしいと思うんだけどな!

好きなテーマで、好きな雰囲気なので、つい「もうちょっと」という気分になるけれども、話としては充分楽しめた一冊でした。
SFが好きだとか、ちょっと凝った設定が好きな人におすすめ。

★SF
★奴隷種族

Aspen Mountain Pressが売り上げの5%をハイチの義援金として送るキャンペーンをしています。
同時に、2/14まで、チェックアウト時に出る黄色いクーポンボックスに「BMYVAL2010」を入れると5ドル以上の買い物は割引してくれるそうです。(14%引き?)
クーポンは何度でも使えます。

しかし私、前にここで買い物しようとしてクーポンの使用を失敗したことがあるのだ。
>enter coupon code BMYVAL2010 at check-out in the yellow box on the view your basket page
だとのことです。
うまくこのクーポンボックスが出なくて、うっかり備考欄(だってこれも黄色かったんだー)に入れたら駄目だったという。。何でだか今でもわからん~

この出版社での一押しはMen Of Smithfieldシリーズ
感情が色鮮やかで楽しくて、とても好きなシリーズです。ここの攻め受け大好きだ。
シリーズだけどどれも単独で読めるので、この機会に是非! クーポンに成功して!

★Three-Star rating system★


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