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Slash(m/m小説) レビューブログ

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Death of a Pirate King
Josh Lanyon
Death of a Pirate King★★★ summary:
Adrien English Mysteriesシリーズ4。

ミステリ書店を営むAdrien Englishは趣味でミステリを書いていたが、デビュー作がハリウッド俳優Paul Kaneの目に留まり、映画化の話まで舞い込んできた。
Adrienは招待されたパーティに出かけて、ハリウッドの人間を映画化の味方につけようとする。

だがそこで殺人事件が起こり、その捜査にやってきたのはJake Riordan──Adrienの昔の恋人だった。
2年ぶりの再会は、Adrienの気持ちをかき乱す。

Adrienをパーティに招待した俳優Paul Kaneは、どうやらJakeと古い知り合いらしい。Adrienが事件に首をつっこんできた話も知っている様子の彼は、Adrienにこの殺人事件を調査してくれないかと依頼してきた。
驚いたことに、Jakeまでそれに同意したのだった。かつて、Adrienが事件に関わることを何より嫌がった男が。
Adrienは気が進まないが、Paulは映画化の話を彼の鼻先にちらつかせ、仕方なくAdrienはJakeと協力して事件を調べ始める。

それはいい考えではなかった。2年たってもAdrienとJakeの間にあるものは何も変わっていなかった。
そしてAdrienは、JakeとPaul Kaneの間に秘密があることを知る。ずっと前、まだAdrienがJakeに出会う前からの暗く深い秘密は、Adrienへ闇のようにしのびよって‥‥
.....



Adrien Englishミステリシリーズ4作目(3冊目だけど)。
Adrienは相変わらずシニカルで、独特のユーモアセンスから世の中を斜めに見ていますが、「Jakeと別れてからますます孤独に、ますますきつくなった」と母親やみんなに言われてうんざりしている。
新しい恋人とはなじんでいて、特に相手に不満はない。だが何かが足りないような気がしてならず、どこか決定的なものが欠けたまま、そんな日々の中で彼はJakeに再会します。

この話はとてもきつい話で、読んでいる途中に何度か読みすすめられなくなったりしました。Adrienは傷つくだろう、という予感がひしひしと物語の中から押し寄せてきて、つらい。彼は勇気があるけれども、とても繊細で孤独です。人にたやすく心をひらくたちではない。
かつてJakeだけはAdrienの深いところまで入りこんできた。だが彼らの関係は、かなり衝撃的な形で、前作で終わっています。

その傷がまだAdrienの中に生々しく残っている。そのことを自分からも隠すように、Adrienはシニカルに振る舞ってJakeと捜査を進めるけれども、すぐそばに奈落が口を開けているようなひやひやする展開です。
Jakeが苦しんでいるのもわかる。まだAdrienを求めていることも。それはわかるが、この男は本当に困ったもんだと思います。「また友達になれないか」とかさ。
ゲイであることを隠し、「ノーマル」な生活の為に色々なものを犠牲にして、心に多くを抱えこんだ本当にいい男なんだけど。つらい。

もっともAdrienも傷ついてばかりではなく、人を傷つけたり、まちがった判断をしたりする。彼には彼の弱さがあります。
誰もが弱さをかかえ、誰もがもがいている。

捜査は、古い時代の不審死まで遡り、Adrienは犯人にたどりつくのです。
ラストの方でAdrienが犯人に仕掛ける罠はちょっと陳腐で無茶じゃないかと思いますが、それもAdrienがJakeを守ろうとするからの無謀で、それが切なくもある。ドラマティックで、最後の最後に裏切られたと感じるAdrienの痛みが鮮やかです。
痛みと恋と、AdrienとJakeの人生の交錯が見事に描き出されていて、時おり息苦しくなるほどの緊張感が味わえます。
恋は人の価値観を、その人間がしがみついて守ってきたものを変えることができるのか。Jakeは、Adrienのために変われるのか。彼らの人生はどこへ向かって行くのか。

やっぱりこのシリーズは名作だと思う。この中には人生がある。
というわけで、「小説」をがっつり読みたい人におすすめ。シリーズの頭から読まないとなりませんが。
気楽な読書ではありませんが、プラスにもマイナスにも気持ちを揺さぶられる、それは読書のひとつの醍醐味だと思います。

★病弱
★再会

Blood and Roses
Aislinn Kerry
Blood and Roses★★★ summary:
娼館で働くArjenは、その娼館をある美しい吸血鬼が訪れた時に、何ひとつ感銘を受けなかった。
たしかに皆はその美しさをあがめ、誰もが彼のベッドに入りたがった。吸血鬼に噛まれた時に感じる快楽は、娼婦たちの間でも噂となっていた。
だがArjenは、吸血鬼に興味などなかったし、そのことを態度であからさまにしていた。
だからその吸血鬼──Maikel van Trietが彼を指名した時、わけがわからなかった。

MaikelはArjenの手首から血を吸うと、彼を部屋から追い出して、1人で眠った。その次の訪問の時も、その次も。
彼への不快感を隠そうとしないArjenを面白がってか、Maikelは来るたびにArjenの気持ちを確かめた。私を嫌いだろう、と。
そしてArjenは嘘をつかなかった。そう、好きではない。

吸血鬼は、何故かArjenの話を聞きたがった。昼の生活や、他愛もない日々の出来事など、何ひとつ話すことがなくなっても、まだ彼はArjenの話を求め続けた。
Arjenには彼が何を求めて訪れているのかわからない。

そんなある日、Maikel van Trietは何故かぱたりと娼館を訪れなくなり‥‥
.....



吸血鬼と人間の、ダークでエロい、情熱的な物語です。ファンタジーだと思うけども、特に世界観が入りこむところはないので(ほとんど話が娼館の中で展開するため)、ファンタジーを意識することはあまりない。
Arjenは強気で、体を売ってはいますが、独立心の旺盛な若者(だと思う)です。
彼は吸血鬼を恐れない。金の為に、求められれば血をさし出す。だが繰り返し訪れるMaikel van Trietが自分に何を求めているのか、彼にはわからない。

2人の間には濃密な感情の交錯があって、それは時につれて少しずつニュアンスを変えながら深まっていきます。
吸血鬼はArjenを求めてはいるけれども、宙ぶらりんの関係に苛立ったArjenが性的なサービスをさし出すと、それを拒もうとする。その一線を越えれば戻れず、Arjenに向かって落ちていくしかないことを恐れているように見えますが、その恐れも、Arjenの決心の前には脆い。

彼らは、互いがただの客と男娼でないことをわかっている。それをこえる何かがあることを知っている。MaikelはそれをArjenに言うことができないし、Arjenは自分がただの「食事である」こと以外を否定しているけれども。
彼らは時に互いから距離をとろうとしてあがき、まるでもがいた場所から膿が出てくるように、強い痛みや感情があふれ出してくる、そういう関係です。
美しいし、痛々しい。

全編、濃厚な描写に満ちていて、張りつめたテンションの向こうからキャラクターの感情が匂い立ってくるようです。読んでいると、繊細な感情の変化に引き込まれる。
エロはそれほど多くないんですが、でも全部がエロい。ついにMaikelがArjenの首を噛む時の描写なんて、普通のエロよりずっとエロい。
痛み、怒り、拒否、渇望。色々なものが深く、激しく渦巻いている。そして後戻りの出来ない恋。

吸血鬼エロが好きだとか、娼館ものが好き、火花の散るような関係が好きな人だったら買いの1作。おすすめ。
Arjenの意地の張り方も半端じゃないので、意地っ張り受けが好きな人も。

★吸血鬼×人間
★中編

Blood Slave
Kim Dare
Blood Slave★☆ summary:
Keatsは吸血鬼がいないということを認めたくなかった。友人のLelandに、超自然的な存在を探してうろつき回ったり変なパーティに出たりするのはやめると約束したものの、彼はまだそういうものに惹かれていた。
吸血鬼のふりをした人々が集まる、無害なパーティ。それに出るのは約束破りにはならないだろう。
そう思って参加したパーティで、彼はまさに、ばったりと友人のLelandに出会う。

Lelandはもう何ヶ月も、Keatsを噛みたい欲求をこらえてきた。
だが、ハロウィーンの夜、まさに吸血鬼たちが獲物をむさぼろうとするその宴の場所で、好奇心のまま呑気にさまよっているKeatsを見た時、その自制心も吹き飛びそうだった。
Keatsは何を考えているのだ? Lelandが彼を下僕として認めなければ、Keatsは多くの吸血鬼の欲望のままにむさぼられる。だが下僕として宣言すれば、Keatsを自分の物として保護はできるが、それは完全にKeatsがLelandに従わなければならないと言うことを意味した。

吸血鬼と人間は、主人と下僕。それ以外のものではあり得ない。
だが陽気で不屈で、度し難いユーモアのセンスを持つKeatsを、この愛しい友人を、Lelandは下僕として慣らすことが出来るのか?
.....



吸血鬼もの、そしてBDSM、というカテゴリにもかかわらず、ユーモア小説です。
なんつーか、Keatsがかなりぶっとんでるというか、肝が据わりすぎていて、自分を守ろうとしているLelandの鼻っ面を引き回しているようなところがあって、それが度をすぎると笑えてきます。
いやもう、奔放というか、欲望に忠実というか。

Lelandはいい男で、吸血鬼としての風格も、主人としての威厳も備えていますが、Keatsはそんなものには縛られません。言いたい放題、やりたい放題。
それを上から押さえつけようとするLeland。LelandはKeatsを守りたいのです。だが、Keatsはしたたかに、彼の支配をやり返す。

Keats自身はBDSMが好きで、Lelandが好きで、Lelandと主従の関係になるのに否やはありませんが、それが自分の人間性を無視した一方的な関係になるのは受け入れられない。彼はただLelandと楽しみたい、そしてそのためならわりと恥を知らない男でもあります。

シチュが耽美で、吸血鬼と人間の支配関係なのに、内面は「もう勘弁してくれ」の主人と「わああ楽しい」の下僕の話。結局ラブラブだけど。
わりと短くテンション高め、ややトンデモ。
ユーモア系が好きで、何か困ってる主人とか見ると萌える!の人におすすめです。

★吸血鬼×人間

Aidan And Ethan
Cameron Dane
Aidan And Ethan★★★ summary:
Aidan Morganは13年ぶりにRedemptionの町へ、新しい消防署長として戻ってきた。
彼の生まれ故郷、学生の時に恋に落ちた相手がいる場所、そしてその恋を裏切って彼が背を向けた場所へ。

Ethan Ashworthは親友がずっと好きだった。
高校の卒業式の時、その親友とはじめてのキスをして、彼は恋がかなったと信じる。だがその次の日には、相手が町から跡形もなく消えていた。
手ひどい失恋から逃れられないまま、13年がたち、Aidanが彼の目の前に帰ってきた時、古傷は昨日のことのように激しく痛み出した。

Aidanは、13年かけて自分の義務を果たし、弟と妹をそばに取り戻し、やっと自由に動き回れるようになった今、Ethanの存在を彼の人生の中に取り戻したかった。
たしかにAidanは13年前にEthanを裏切った。
だがそれは理由があってのことで、話せばわかってもらえる筈だ。少なくとも、彼はそう思っていた。

頑固でプライドの高い2人の男は、13年の空白を経て真っ向から向かい合う。
13年の孤独、憎しみ、傷、そして消えることのなかった火のような愛情。彼らのどちらも、強烈な感情の交錯の中で平静ではいられない。
再会は互いの傷をえぐるだけなのか、それとも彼らは1度は灰と化した誓いから、今度こそ何かを作り上げて行くことが出来るのか。
.....



Cameron Daneらしく、強烈で激しい愛憎の物語。
しかも消防士同士なので(片方は消防ボランティアですが)、肉体派で、描写も色っぽくごつごつしています。

Ethanは13年の間、ずっとAidanの裏切りをのりこえられずにいた。学生時代の彼らの、互いを思いあう様子が愛らしいので、もうその次の日にAidanがいなくなっていた!というEthanのショックの強さは、読む方に鮮やかに伝わってきます。
Aidanにも事情があって、それは読むにつれわかるのですが、それにしても何とかならなかったのかと。こっそり手紙を出すとかさ。13年、ただ何もなく、孤独と痛みの中で宙ぶらりんにされていたEthanはやっぱり可哀想ですよ。
でもAidanが後に言う、「自分たちは子供だった。今ならもう大人だから色々なことが見えてくるけれども、あの時には冷静に考えることもできなかった」というのは、たしかにリアル。

13年の孤独は、Ethanを分厚い殻にこもった男にしています。誰にも弱みを見せない、いつも動揺せず、冷静に物事を受けとめる。
そんな彼を、家族も友人も心配している。
だがEthanは、Aidanと向かい合うと、18歳の時の情熱や傷つきやすさまで、すべて自分の中に鮮やかによみがえってくるのを感じる。そしてそういう弱さを見せてしまったことに怒り、Aidanを突き放す。
だがそんなEthanが抱えこんだものにこらえきれず、崩れ落ちそうな時には、いつもAidanがそこにいてEthanを抱きしめる。

彼らは近づいては互いを押しはなし、惹かれあってはぶつかりあう。
そのコントラストと、感情のローラーコースターのような上下動の激しさが読みどころです。
Cameron Dane節というか、何と言うか、昼ドラの濃密さと感情表現の激しさがあって、勢いのままに読める一冊。エロは濃いし。ちょっとエロ妄想走ってるところもありますので、ノリノリで読むのがいいと思います。楽しいぞ。
情念の濃い話が好きな人、とにかく勢いに飲まれてみたい!な時に大変におすすめ。

★再会
★エロ多め

Skin Deep
S. W. Vaughn
Skin Deep★★☆ summary:
Will AmbroseはNYのラジオ局の人気ジョッキーで、ゲイ向けのラジオ番組でリスナーからかかってくる質問に答え、時に相談を聞き、助言を与えていた。
だが彼自身の恋愛関係は悲惨なものだった。何故かいつでもサディスティックな恋人を引き当ててしまう彼は、一番最近の恋人の暴力に悩んでいた。暴力は段々エスカレートしてきていたが、警察には行けない。恋人は警官であった。

そんなある日、彼は友人に連れられてタトゥショップに入る。
そこにいたのは、Cobaltという通り名のタトゥアーティスト。彼の何かがWillに親近感を感じさせたが、どこでこの美しい男と自分に接点があったのか、Willにはわからなかった。

Cobaltは、Willのラジオに一度相談を持ちかけたことを、後悔していた。
ばかげたことだ。恋人が死に、あるいは気が狂ったと言っても、人間がそれを偶然だと思うのは当たり前だ。彼が関わった人間は皆不幸になるのだとも、Cobal自身が人間ではないことも、告げられるわけがなかった。

Cobaltは「Fae」という種族の一員だったが、許されない相手と関係を持ち、追放された。
その相手は何故か人間界までCobaltを追ってきて、彼にいまだに執着している。半ば狂気に陥りかかった彼を避けるため、Cobaltは結界を張った店にこもっていたが、孤独だった。

Willをその目で見た彼は、この人間に惹かれるが、二度と過ちをくり返してはならないとも思う。二度と、誰も苦しめたくはない。
だがWilの恋人の暴力はさらに悪化して‥‥
.....



パラノーマルとかタトゥとかDVとか、色々盛りだくさんの話です。異種エロあり。現代ファンタジー。
Willのキャラがいいですね。DV男をひきあてちゃう受けは弱々しいのが典型ですが、Willはなかなかにしぶとい。なら何故にそういう男にひっかかる、というのはありますが、彼はどうやら微弱なエンパスの能力があるらしく、そのあたりが貧乏くじを引く原因になっているのではないかと思われる。
Cobaltはもう格好いい攻めそのものなんだけど、たまに子供っぽいところが可愛い。Willが絡むとすぐ気持ちが弱くなるし。

この2人がなかなかくっつかず、好きだ、でもどうしよう!を延々やっている様子も楽しいですが、Cobaltの過去の絡みや、彼のもとに逃げ込んできた同種族の男との複雑な関係、段々と明かされていく秘密など、ファンタジー部分の骨子がすごくしっかりしています。
最後のクライマックスに入っていくところは、脇キャラにすごく萌えてしまった。いや、骨肉の争いとか、近親憎悪と裏腹の愛情とか、そういうの好きな人はたまらんと思う。

scarificationという言葉が出てきますが、これは傷で体に模様を描くもので、もともとアフリカの部族などが行っていたもの。今ではピアスやタトゥなどの身体改造の一ジャンルです。
タトゥーショップを舞台にし、scarificationを話題にするわりに、話の中でのそのへんの掘り込みは薄いかな。WillはDVを受けながら、自分にそういう痛みを好む性向があるのかと悩みますが、そのへんからBDSMに入っていくということもなく、最後までエロはわりとノーマルな感じ。
異種エロがあるので「ノーマル」じゃないかもしれませんが、でも全体に恋愛はほのぼのしていて、純で可愛いです。
エロとか、カップリングの感じは、ちょっとBLっぽいかも。

クライマックスで意外にも無力だと思われた人間(Will)がお役立ちするところとか、最後にWillがラジオで受ける相談とか、話の締めがとても鮮やかで、読みごたえがあります。話を読んだ!という手応えがある。
ファンタジーが好きな人、異種ものが好きな人におすすめ。

★現代ファンタジー
★異種

Leftovers
Treva Harte
Leftovers★★ summary:
感謝祭は家族のものだ。
Emersonにとって、その日は家族に等しい古い友人たちと集まる、年に一度だけの日だった。

大学時代からの友人、PaulとLiz。
PaulとEmersonはかつて恋人同士だったが、ミュージシャンとしての成功を求めるPaulとEmersonの距離は広がり、今はこうして時おり会い、その時だけ情熱的な夜をすごすような、付かず離れずの関係になっていた。

だが今年は、Paulは物事を変えようと決心していた。
他人と距離を置き、いつも冷静で感情を表に出さないEmersonをどうにか説得し、彼らが恋人同士としてやっていけることをわかってもらおうと。

EmersonはPaulを愛していた。感謝祭の一日のために彼がどれほど心血を注いだか、Paulにわかるだろうか?
もしまた恋人同士になったとして、Paulが前のように一年中ツアーに出ているようなことに耐えられるとも思えない。
それに、EmersonにはPaulにも誰にも言っていない秘密、心に抱く恐怖があった。
.....



感謝祭に集まる友人3人、そのうち2人には過去あり。
感謝祭やクリスマスは普段会わない人も一斉に集まって顔合わせをしたりするので、色々な焼けぼっくいに火がついたりして、ロマンス的には大変おいしい頃合いとなっています。

その中でもクリスマスと感謝祭が違うのは(プレゼントやらクリスマスツリーやらはおいといて)、食べ物。アメリカ人は感謝祭にすさまじい量の食べ物を作るよね!いやヨーロッパのことは知らないだけだけど。
勿論ターキー、ところによってはマッシュポテトとか。デザートはパイ。なにもかも山盛り作ります。
この話での感謝祭のホスト役、Emersonも相当な量の食べ物を用意し、入念に準備をするのですが、彼にとってこの一日がどれほど大事な日なのか、Paulと会えるこの日だけが人生で意味のある日なのだとわかってくると、その準備の様子が痛々しい。

Emersonはきわめて痛々しい人間です。冷静沈着、知的で物静か。でも彼は見た目よりはるかに不安定で、その不安定さを人に見せないようにふるまっている。そして孤独です。
そんな彼に対するPaulは生き生きとして、成功したミュージシャンとしてあちこちとびまわりながら人生を楽しんでいる感じがある。でも彼も、Emersonがそばにいないことにはもう耐えられなくなっている。
彼らはかつて一緒にすごし、一緒に曲を作った。その曲がPaulをスターダムに押し上げた。でもPaulが去ってからずっと、何年もEmersonは曲を書いていない。
今年こそ。すべてを変えようとPaulは決心するのですが、Emersonの中には彼も知らないものがある。

Emersonの、ちょっと神経質なほどの繊細さを読む話です。彼は誰かの助けを必要としているのだけれど、Paulや誰かが助けようと手をのばすと後ろに下がってしまうようなところがあります。
PaulはもうそんなEmersonを手放すまいとしていてがんばるが、そのがんばりがPaul自身をまた限界までおいつめてしまう。

失われた絆を、とにかくもう一度やり直そうとする、新しい生き方を探すためのひとつひとつのステップが書かれています。どちらの気持ちもひたすら相手へ向かっている、その様子が切羽詰まっていて、読んでいると静かに引きこまれる感じ。
話としてはそう長くもなく、地味な感もありますが、そのあたりの心理の揺れが濃い。Emersonって、多分第三者から見ると能面みたいな人だけど、内心の感情はすごく豊か。そしてPaulはそれを読み取るのが誰より上手です。
そういう組み合わせに萌える人、繊細でプライドの高い受けが好きな人におすすめ。

★再会
★恐怖症

Full House
Carol Lynne
Different Suits★★☆ summary:
Marco De Le Santoの人生は決して優しくはなかった。母親が死に、ドラッグの商売をしていた父親を家から追い出してからずっと、彼は身ひとつで弟達と妹を養うべく働いてきた。
16歳だったMarcoは、18で高卒だと嘘をついてKent Bakerの会社に雇ってもらった。
それが8年前。やっと上の弟が就職できる年になり、妹の面倒もかわって見てもらえるようになり、Marcoは夜学に通って高卒の資格を取った。

ポーカーの仲間たち、その中でも特に雇い主でもあるKentが、Marcoのことを遊び歩いている不真面目な男だと思っていることは知っていた。寝不足や、常に忙しくしている様子など、彼らの誤解をMarco自身も解こうとしなかった。
からかわれ、苛つかれるのはいい。同情され、見下されるのに比べればはるかにその方がいい。
だが高卒の資格を得、弟を無事育て上げた今、Marcoは友人達にすべてを話そうと思っていた。特にKentに。

Kentは、Marcoが雇ってくれと言ってきた8年前から、ずっとMarcoを見ていた。Marcoが19になった時、Kentは彼をデートに誘おうとしたのだ。
だがその時、ちょっとした偶然でMarcoがまだ17だと知り、彼はひどい自己嫌悪とともにあきらめた。
8年の間、気持ちはいつもMarcoへ向かっていたが、忙しそうな彼が遊び歩いているのだと思いこんで、ついMarcoにきつくあたってしまう。

8年、友人達の冗談のネタになるほど、MarcoとKentはお互いの周囲を回ってきた。
彼らの間をつなぐ強い感情に、気付いていないのは当人たちだけだった。
.....



Poker Nightシリーズ5。
最終巻かな?

1からずーっと、ことあるごとに言いあう様子が「こいつらは」という感じで描かれていた、MarcoとKentの話。ついに。
それと同時に、いささか身の上や暮らしぶりが謎めいていたMarcoの事情が描かれます。
弟2人を育て、とじこもりがちの幼い妹の面倒を見て、金のやりくりをして、プレイボーイ風の見た目と裏腹に苦労人です。
そのことを知っているのはポーカー仲間内でもAngeloだけで、誰にも言わないと約束した通り黙っているけれども、KentがやたらとMarcoに当てこすりを言うのを見ながら、Angeloは苛々している。
17歳の子供をひっかけようとしてしまった!と8年前の一件がKentにとってショックだったのはわかりますが、それを引きずって、ちくちくと相手を苛めるなんてお前こそ子供か。
でも、そのへんの不器用さがKentのよさでもある。

Marcoの父親がまた金をせびりに現れて騒動になり、MarcoとKentは長年の誤解を解きますが、まだまだとても障害が多い。
13歳の年の差はともかく、Marcoの父親のことも解決してないし、Marcoは弟妹のことを何より優先しなければならない。そしてMarcoはKentの豪邸を見て、互いの境遇の差にひるむ。金銭感覚が違いすぎる。

2人は障害をのりこえ、話し合い、お互いに妥協しながら新しい関係を作っていかねばなりません。
たとえば、買い物はMarcoがクーポンを切り抜くから必ずそれを持っていくこと、とかね。

ここまで4冊分、ずーっと顔を合わせれば憎まれ口を叩き、Marcoが「Kentは俺を嫌ってるから」とへこむほどの関係だった2人が、やっと相手に手をのばす様子がほのぼのしていていいです。何となく、読んでいるこっちも(4冊分の)感慨があるのが、シリーズ物の良さでしょう。
相変わらずポーカー仲間はみんな仲がいい。
ここまでの4冊で、ZacにはEric、BobbyにはJules、TreyにはCole、AngeloにはMoodyと、カプが成立してくるたびに「仲間」の数が増え、ついに10人のポーカー仲間は団結して、ハッピーな未来へ向けて歩き出す。
(しかし地の文に「11人が幸せに」って書いてあるんですが、あと1人って誰だ。うっかりかな?)

5冊まとめて、幸せな感じのシリーズですので、楽しく読書したい人におすすめ。

★ハッピーエンド
★家族連れ

スラ的に抑えておこうな言い回し

Above
前置詞として「上に」とよく訳されますが、行為・行動にかかるとまたちょっとイメージが変わる。
「そういうものの上にいる(超越している)」とか、否定形では「上にいない(平気でやってしまう)」というニュアンスになります。

辞書の例文によれば


He is above trickery.
(彼はごまかしなどできない人だ)


これを否定形にすると、


He isn't above trickery.
(あいつはごまかしとか平気でやるんだよ)


という意味になる。

スラ的によく見かけるのは、
He wasn't above begging.
ですね、やっぱ。「beg」してしまう、するしかない、そんくらい追いつめられているという感じ。エロの最中にこれが出たら萌え萌え。
「beg=乞う」ですが、なかなかぴたりとくる日本語訳がない単語のひとつ。「せがむ」とかそういう感じでもいいと思うが、それにしても文章全体にハマる訳がないなあ。
「我慢できずにねだった」とか、超訳して萌えるという手もありか。

Different Suits
Carol Lynne
Different Suits★★★ summary:
Angelo Pilatoは貧しい家で育ちながら、そこから抜け出してセールスマンとして成功した。
いつも上等のスーツに身を包んで高いビールを飲み、仲間からは気取り屋のように見られることもあったが、彼は見た目ほどやわな男ではなかった。

ポーカー仲間のTreyを守ろうとして、Angeloはアンチゲイの教会のリーダーと対立してしまう。
嫌がらせが始まったのは、その直後だった。彼は仕方なく、最近知りあった刑事のMoody Torranceに相談する。
MoodyはAngeloがそれまでつきあってきたタイプとはまるで違っていた。大柄で、強靭で、頑固で、荒々しく、支配的。惹かれるところなどかけらもない。
その筈だった。

Moodyは、このイタリア男が臆せず彼の前に立ちはだかった時から、Angeloが欲しくて仕方なかった。
Angeloの中にある強さは彼を揺さぶり、苛立たせ、惹きつける。
Angeloの固い殻を砕いて、その向こうにある男を手に入れるためにはどうすればいいのだろう。彼を守りながら、彼の守りを崩すためには、何が必要なのだろう。
.....



Poker Nightシリーズ4。
スノッブだが実際には修羅場を何度もくぐり抜けてきたイタリア男と、誰もが一目で恐れるたくましい刑事の話。

前作のTreyの裁判で出会ったAngeloとMoodyは、互いに反発し、対立しながら、強く互いに惹きつけられています。
その緊張感と、たまにMoodyが見せる優しさにうっかりめろっといってしまいそうになるAngeloの揺らぎ方が、なかなかたまらない感じです。
Moodyは37歳で、Angeloも30代だと思うんだけども、2人とも自分の力で自分の地位を作ってきた男で、己に誇りを持っている。
そして互いの強さに惹かれていく。

Angeloにとって「人に頼る」のはほとんどはじめてのことで、Moodyに優しくされるのが気持ちがいい一方、そんな自分にとまどい、苛立ってもいる。
彼は、嫌がらせが自分の手に負えなくなった時、遠くに引っ越して新しい仕事を始めようとします。それは勿論嫌がらせから逃れるためであると同時に、きっとMoodyから距離を置いてみようという気持ちが働いたのでしょう。
好きだ、もしかしたら愛しているかもしれない、でもそんなものに全部よりかかってしまって後悔しないだろうか。
ずっと1人でいて不自由を感じたことなどない筈なのに、Moodyにたよってしまう自分に落ち着かない。

その様子を、いつもはAngeloを容赦なくからかう友人達も、少しはらはらしながら見ています。
彼らだって本当はAngeloに幸せになってほしい。Moodyだったら、Angeloが友人達にさえひらいてみせない心の奥へと入りこめるかもしれない。
「Angeloは、本当は見た目どおりの(スノッブでやわな)男じゃないんだ」と友人達は口をそろえて言う。「じゃあどんな男なんだ」とMoodyが問うけれども、Angeloの奥にあるものを、誰も知らないのです。
そのさりげない距離を保った友人たちの思いやりがいい。

この話の中ですごくいいのは、嫌がらせをとめるためにMoodyが考え、Angeloが実行した解決手段ですね。力づくでもなく、弱腰でもない。
あれはすごく小気味のいい、洒落た対応だったと思います。

これまでシリーズ3冊であまり輪郭の見えてこなかったAngeloが、実に魅力的に書かれている話です。
強気×強気とか、強引な包容攻め×意地っ張り受けにぐっとくる人におすすめ。

★強気同士
★エロ多め

Pocket Pair
Carol Lynne
Pocket Pair★★ summary:
高校教師Trey Hugginsは、この3年、ずっと校長のCole Hardingを見ていた。
だがColeがゲイかどうかもわからないし、たとえそうだとしてもTreyのような男には興味を持たないだろう。それはよくわかっていた。

毎週ポーカーをする友人たちはいたが、Treyは孤独だった。
ネット上で知りあった相手とブラインドデートにこぎ着けるが、相手はTreyの家に押し入り、レイプした上、彼を刺す。
体の傷と同時に、Treyはいかに自分が愚かでつけこまれやすかったか、自分を責め、傷ついていた。

Coleはこの職について25年、仕事とプライベートライフを完璧に分けてきた。
同じ職場の部下、Treyの物静かでおだやかな物腰に惹かれ、彼がコーヒーに砂糖を3つ入れて飲んでいることまで知りながら、ColeはTreyへと1歩を踏み出すことが出来なかった。
だがTreyが刺されたと聞いた時、自制を振り切ってほとんど反射的に行動する。もっと早く手をのばすべきだった。Treyに、彼は孤独ではないと知らせていれば、起きなかった事件でもあった。

Treyを刺した犯人はデート強盗の常習者で、警察はTreyに裁判の証人になってほしいと言う。
ゲイのレイプ殺人まで絡んだその裁判は大きなスキャンダルとなり、マスコミや、ゲイを糾弾するグループが大挙して町へ押し寄せて、Treyは追いつめられ…
.....



Poker Nightシリーズ3。週末のポーカー仲間の1人、Treyの物語。
Treyは1話の「Texas Hold 'Em」でもZacの買い物につきあって料理のレシピを丁寧に教えてくれたりと、とてもいい人です。でもその時も「自分のような人間とつきあいたい男なんてあまりいない」的に、少し自虐的なところも見せている。
この人は「shit」とか「damn」とか毒づかない。丁寧な物腰と口の聞き方の人のようで、それを友人からからかわれたりしています。

そんな奥手で繊細な彼なので、ブラインドデートで男に殺されかかって、かなりの自己嫌悪に陥る。
友人たちが彼を助け、Treyは「Slow-Play」のカプであるBobbyとJulesの家に滞在して、面倒を見てもらう。
今回は本当にみんなが団結してTreyを助けよう!としている様子が鮮やかに出ていて、友情模様がなかなか素敵です。
誰も、Treyの心の中がそれほど孤独だとは思っていなかった。だから今回の事件はTreyだけでなく、彼ら全員を揺さぶる。そして彼らは全員で、そこを乗り切ろうとします。

ColeはTreyに惹かれるが、自分が25年もかけて築き上げてきたキャリアをそこに賭けていいものかどうか悩む。
しかもTreyは今や時の人で、裁判の渦中にいる。
証人として証言を求められ、追いつめられるTreyをColeは支えたいと思う。恋人が一番苦しい時にそばにいることもできず家で待つしかないなんて、それはどんな男だろう?

繊細なTreyが傷つけられる姿が痛々しくて、保護欲とためらいに揺れるColeとの関係がいい。
この話では、ポーカー仲間でありながらこれまでちょっと仲間と距離をあけていたAngeloが、Treyを守ろうとしてがんばる図がすごくけなげでいいです。Angeloはよく仲間のからかいの種にされているんですが(洒落た高いスーツとか、スニーカーフェチとかまあ色々あって)、Treyは繊細なので、Angeloがからかいで本当に傷ついた時がわかる。そういう時に助け船を出してあげてきた。
その恩返しと言うわけではないけれども、今回、AngeloはTreyをほとんど体を張って守ります。スーツをびしっと着込み、でかい刑事に恐れず強い口をきいたりとか、萌えるぞAngelo。

TreyとColeの恋模様もいいですが、やはりこのポーカー仲間の団結ぶりが見ものです。
Treyはいくつなのかなあ。30歳くらいじゃないかと思うんだけど、Coleは大体47、8歳らしいので、実のところ年の差カプっぽいような気もする。

傷ついた繊細受けが好きな人、友達同士の団結ものにぐっとくる人にお勧め。

★奥手受け
★レイプ裁判

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/091217/biz0912171337012-n1.htm

 NECビッグローブは17日、米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載し7インチディスプレーを備えた新型情報端末でマンガや書籍、動画を楽しむことができる新事業を始めると発表した。携帯電話以外でアンドロイドを搭載した端末は、世界で初めてという。



引用先、画像あり。
まあなかなか日本に波及するには、タイムラグがありそうですが。

>マンガや書籍、動画を楽しむことができる新事業
というのが気になるんだけど、書籍のAppStoreみたいなのを作るということかなあ?

アンドロイドがのってるってことは、ただの書籍端末じゃなくてアプリも動くってことだよね。
アンドロイドの利点とかはよくわからんのですが、アップルのAppStoreとちがって審査がない(らしい)のは知っている。

これはもしかして…エロ本配信の天国になるだろうか。

Slow-Play
Carol Lynne
Slow-Play★★ summary:
Bobby Quinnはチャータークルーズの船長という仕事と、まかされた船を愛していた。この船は彼が手に入れ、すみずみまで修復し、美しく磨き上げた。人生そのもののように愛した相手だった。
だが義理の兄はBobbyからその船を奪い、ただの雇われ船長として彼を働かせ続ける。かつてあれほど愛したこの船が、今はBobbyをつなぎとめる鎖となっていた。
家族からなるべく距離を置き、誰かと付き合うこともなく、Bobbyが遊びに出かけるのは友人たちとのポーカーだけであった。

Jules Petersは、孤独に慣れ、そして孤独に疲れていた。
目指した医者になり、大きな家に住みながら、彼のすることと言えば古い車を買い取り、パーツをひとつひとつ集めて元のように美しい姿に直すことだけだった。そんなことでもしていなければ、あまりにその家は孤独すぎた。

サンフランシスコ湾でのクルーズをプレゼントされたJulesは、船長のBobbyと出会う。
この若い男にかつてないほど強く惹かれながら、Julesはためらっていた。彼はもう孤独に慣れきっていて、その殻から出るのには勇気を要したし、Bobbyの若さは、Julesが望むような長い関係を求めていないように見えた。

BobbyもJulesに惹きつけられていたが、何より、今のBobbyには他人と付き合う余裕がなかった。
兄との関係はますます悪くなり、Bobbyは追いつめられる。自分を曲げて兄のために働き続けるか、それとも心から愛した船を捨てて別の人生を探すか。だがそれは、自分の体の半分をもぎ離すようなものだった。
.....



Poker Nightシリーズ2。

ポーカー仲間の1人Bobbyと、前作「Texas Hold 'Em」のEricが働いている病院の医師Julesとの話。
気付かぬままに人生の壁に行き当たり、疲れている2人の男が出会って、それぞれに新しい道を見出す話です。

40代前半あたりのJulesは、その年になるまで1人しか恋人と呼べる相手がおらず、そしてその関係は相手の死によって悲劇的な結末を迎えている。
彼はおだやかな人間ですが、用心深く、他人を自分のテリトリーにすぐ招き入れたりしない。
Julesの心には死んだ恋人が、もう20年近くも住みついていて、苦しんだ記憶はたやすく彼の心を離さない。

Bobbyは自分の金持ちの家族が道具のように人を使う様子を見て育ったため、金のある人間を信用しない。Julesのこともすぐには信用できない。彼もやはり、Bobbyを道具のように使っているのではないだろうか。死んだ恋人からのリバウンドで、手近に来た若い男に傾いているだけなのではないだろうか。
互いの悩みや、行き違いが、ストーリーを通してくっきりと浮き上がってきます。

ちょっと子供っぽく、一本気なところがあるBobbyと、慎重でおだやかなJulesとの組み合わせがいいコントラスト。
JulesはBobbyと付き合いはじめて、否応なくほかのポーカーの仲間とも関わりあっていく。JulesとBobbyだけではなく、友人全員が力を合わせ、Bobbyの窮地を救っていくのです。
「友人達+Jules」ではなく、全員まとめて友人になっていく様子がいい。前作のEricもごく自然にメンバーの中に馴染んでいて、相変わらず忙しいようですが、彼とZacもうまくやっているようです。

いったん壁を越えるとやたらとエロエロな関係になるので、たまにおいてけぼりの感もあるほどですが、それもCarol Lynneの作品の楽しい部分。
体の関係を作るのも、気持ちよさに溺れたり誤魔化されたりするのもいいけれども、それを支える信頼の土台を2人は作らなければならない。
そうやって向き合い、もがき、互いの大切さに気付いていく様子がかわいいです。

タイトルの「Slow-Play」はポーカーの戦略で、強い手を持っているのに逆に振る舞い、相手が賭けにのってくるよう仕向けるやり方。
シリーズ1と同じように「仲間で結束してがやがや」というのが好きな人におすすめ。「死んだ恋人の記憶から逃れられない年上の男」が好きなら、さらにおすすめ二倍です。

★船乗り/医者
★仲間

Texas Hold 'Em
Carol Lynne
Texas Hold 'Em★★☆ summary:
Zac Graingerの人生は至っておだやかなものだった。高校のフットボールチームのコーチをしながら、友達と毎週土曜に集まってポーカーを楽しむ。
ある夜、ポーカーの途中でデリバリーピザを受け取りに出たZacは、配達の青年を見て、呆然とした。見たこともないほどゴージャスな男が、そこにいた。

Eric Stantonはサンフランシスコの大病院でインターンとして働きながら、少ない時間を縫って叔父のピザ屋の配達の仕事をしていた。
ただでさえインターンのシフトは厳しい。眠る時間を作るのも難しかったが、彼は懸命に働き続けていた。

Zacはふたたびピザの配達を頼み、現れたEricを誘惑しにかかる。だがEricは気乗りがしなかった。
Zacに魅力を感じなかったわけではない。逆だ。それでも、人と関係を結べるほどの時間の余裕が自分にあるとは思えなかった。
Zacの腕は暖かく、気持ちがいい。だがただ居心地がいいからと言って、この男に甘えていいものだろうか。

ぎりぎりのところにあるEricの生活は、彼の心の余裕も奪い、医者を目指す仕事の中でEricは大きな壁に突き当たってしまう。
ZacはEricを助けたかった。
だが、Zacがさしのべようとする手をただ握りしめるには、Ericのプライドは頑固すぎるものだった。
.....



Poker Nightシリーズの1作目。
このシリーズは、サンフランシスコに暮らす6人のゲイたちの友情を中心にして書かれています。にぎやかで、たまにほろりとする、「大家族」的なノリのシリーズです。
6人は仕事も性格も趣味も生い立ちも、何もかも異なっているけれども、数年前から集まってポーカーをする。友人同士、何かがあればすべてを投げ打ってでも駆けつけて、力を貸します。

このシリーズは、冊数を読んだ方がおもしろい。一冊だけだとまあ普通に楽しいスラなんだけど、シリーズが進んで1人ずつの内側が描かれていくにつれ、彼らの強固であたたかな友情にぐっときます。

1冊目であるこの「Texas Hold 'Em」は、ポーカー仲間の1人Zacの話で、友人たちは顔見せ程度ですが、仲良くポーカーをやっている様子がかわいい。Zacがピザの配達人に恋をするやそれを容赦なくからかい、でもZacの幸せを願ってる様子がよくわかる。
ひとりひとりは立派な大人なんだけど、集まるとどこか子供のようで、その中にこっそりと恋模様もまざっていたりして(それはまたの話ですが)、じつに彩り豊か。ちょっとかしましいですが、いい友達です。

ZacとEricは互いを深く思うようになり、互いが自分の運命の相手だと悟りますが、Ericの生活の無茶苦茶な時間帯とともに、彼の経済状況の悪さが互いの障壁になる。
Zacはあまり気にしていないけれども、Ericが気にしているんですね。独立心が高く、家族の反対を押し切って医学生となった彼は、奨学金を早く返そうと、もがくようにして毎日働き続ける。

過干渉になってしまうZac、必要以上にかたくなに拒否するEric。
彼らは自分たちの主義を曲げてでも、お互いうまくやっていく方法を探さないとなりません。

適度なアップダウンもあり、スパイスのきいたラブラブ話。キャラの輪郭がきちんと立っていて、気持ちよく読めます。
基本的にラブラブでえろえろっと楽しい。イメクラみたいなプレイもあるでよ。
「spin-cycle」の上にEricを座らせるようにしてエロってるシーンがあったのだけど、どうも腰高くらいの洗濯乾燥機みたいですね。ハイパワーっぽい。

タイトルのTexas Hold 'Em(テキサス・ホールデム)はポピュラーなポーカーのルールのひとつで、各プレイヤーに2枚ずつ配られた手札と、場の中心にオープンされた5枚のカードを合わせて勝負するのが特徴です。
少しずつ登場人物が重なったシリーズ物が好きな人とか、大勢でわやわやっとドラマしているものが好きな人におすすめ。色々あってもみんなで楽しそうにしていて、読むのも楽しいです。

★エロ多め
★過保護

「俺のようなpod personが」というセリフが出てきたのでウィズダムで検索してみたけど、ヒット0だった。
とりあえず読み流した後で、ふと口語に強いUrban Dictionaryを引いてみた。


1. なりすまし、あるいは詐欺師
昔のエイリアン侵略映画で、pod(繭?)に入ったエイリアンが地上にやってきて、人間に化けて社会に入りこんだというエピソードが元らしい。

2. 自分の考えを持たない、影響されやすい、意志薄弱な人間

3. 教義や他人の主義に、考えなしに従う者


だそうです。
pod personて見た瞬間にはこう、壺の中に入っている人の図を想像してしまったので、「引っ込み思案」とかそういうものかと推測したけど、見事に外れたぜ。


★★★Kindle for iPhoneが日本のAppStoreでも発売!祝!!★★★

The Englor Affair
J. L. Langley
The Englor Affair★★★ summary:
Regelenceの王宮から武器が盗まれた事件はNateたちによって解決されたが、より大きな陰謀の存在をも明らかにした。
誰が裏にいるのか確かめるため、Nateは惑星Englorへと向かう。

Regelence王の第二子Paytonは、ハッキングの腕前をたよりにされてNateに同道した。
身分は明かせない。慎みが求められる未婚の王族が自由に動き回っていることがばれれば、Paytonの名誉は地に落ちるだろう。

一介の従卒としてNateにつき従ったPaytonは、Englorの海兵隊大佐Simon Hollisterに出会う。
Simonはただの軍人ではなかった。彼はEnglorの女王の一人息子であり、王位の継承者だ。

Simonに惹かれながら、Paytonは迷う。この関係が明るみに出れば彼の名誉は地に落ちる。
だがもし任務を終えて故国に戻れば、Simonとは二度と会えまい。
ただ1度の恋。見つからなければ、誰にもわからない。それに手をのばして何が悪いだろう。

Paytonの身分を知らないまま、Simonはこの小柄で、活発で、勝ち気な年下の青年をどうにかしてそばに置けないものだろうかと思っていた。
そんなことはこれまで1度もなかった。誰と関係を持っても、遊びに飽きればきれいに別れる。それがSimonの楽しみ方だ。
だが、Paytonには何かがあった。王族としての人生を送る限り決して見つけることがないだろうと、Simonがあきらめていた何か。彼の心をわしづかみにする、何かが。
.....



前作「My Fair Captain」のAidenのひとつ違いの兄、ハッキング帝王のPaytonの話。
やはり弟と同じように活発で、不屈で、純粋で、なかなかに保護欲をそそる可愛い受けです。Regelenceの遺伝子の問題だと思うけど、みんな小柄で強靭。

Simonの国(というか惑星)Englorは、同性愛は違法でこそありませんが、表向きにできない後ろ暗い関係です。
そんなEnglorの王位継承者、SimonはPaytonと恋に落ちてしまう。

Simonがまたさわやかで強い。理想を通そうとして退廃の王宮に背を向け、自らの力で人生を切り開いてきた。傲慢なところもあるけれども、自信に満ちた態度と相まって美しい男です。キリリとして、じつに輪郭が強い。
彼はPaytonの正体を知って仰天するけれども、決してそこでびびったりしない。逆に好機とばかりに、Paytonとの関係を公式のものにしてしまう。
でもそれで恋がかなった筈のPaytonは、自分たちの関係が純粋なものではなく、政略的な計算の結果ではないかと思って、思い悩むのです。幸せなのに苦しい。純情だから仕方ないな!

Paytonをめろめろに溺愛しながら、あまりの忙しさにPaytonの迷いに気付かないSimon。
Simonのために尽くそうとして、ひとつひとつの言葉に傷つきながらもそれを隠して働くPayton。
鉄板の傲慢攻めとけなげ受け。

前作より笑いの要素は影をひそめていますが、その分Paytonのけなげさが際立って、カプとしてすごくおいしい話になってます。
好きだけど、こんなことしていいわけがない!とか、好きだけど、こんなに好きなのは自分だけかも!とか、ぐるぐるしてる様子がすごく可愛い。
勿論、陰謀を追うストーリーもきちんと書けていて、おもしろいです。

余談だけど、これがJ. L. Langleyを読んだ最初でした。
読んだきっかけは、「読者が選ぶ表紙大賞」みたいなのに選ばれていたから。…正直、そんないい表紙には見えなかったので、それで大賞を取っているならきっと内容がおもしろいにちがいない!と思って買ってみたのでした。で、大当たりを引いたんだけども。今でも表紙大賞についてはよくわからない。
しかし胸毛好きだよね、あっちの人は。

前作を楽しく読んだ人には勿論、絵に描いたような「格好いい攻め×けなげ受け」がツボな人におすすめ。
単独でも読めないことはないけど、キャラ名がわからなくなるので前作読んでおく方が楽しいです。

★甘エロ
★政略結婚?

My Fair Captain
J. L. Langley
My Fair Captain★★★ summary:
銀河空軍の艦長であるNathaniel Hawkinsは、家を捨てて軍に入り、二度とその家には戻らなかった。
だが提督は、彼にその「家」の名前と伯爵としての身分を使って潜入任務を果たすよう指示する。奪われた武器の行方と相手の正体を探るために。
Nateはその任務を引き受け、惑星Regelenceに向かった。

潜入先のRegelenceでは、完全に生殖がコントロールされ、貴族社会は男性のみで構成されていた。
そこにはかつて地球文明に存在した宮廷の作法がいまだ息づき、未婚の、25歳以下の男性はかつての「令嬢」たちのように純潔を求められ、誰かと関係を結ぶことはおろか、つきそいなしで出かけることすら許されない。

王の三男、19歳のAiden Townsendの望みはただ絵を描くこと、絵書きになることだけだった。伴侶を得ることなど考えたこともない。
ある日、木の上でいつものようにスケッチに没頭していたAidenは、木から落下した自分が年上の男にかかえられているのを発見する。Deverellの伯爵、Nathaniel Hawkins。抗うにはあまりにも魅力的な男。

NateもAidenとの間に惹かれあうものを感じていた。
だがそれは許されるものではない。彼には仕事があるし、Aidenはまだ19歳で、しかもオフリミットな存在だ。

そんな時、何故かAidenのスケッチパッドが盗まれ始め、ついに彼は命を狙われる。
一体誰が、何の目的で? そしてそれはNateの任務と関わりがあるのだろうか?
.....



階級社会が厳然として生きている(ヴィクトリア朝あたりがモデルかなあ)惑星Regelenceの物語。
生活も服装も古風ですが、技術は非常に進んだ社会です。

Regelenceの王と伴侶(この人がまた格好いい。元殺し屋らしいのだ!)の間には、5人の子供がいる。遺伝子技術で2人の遺伝子を継いだ実子です。
Regelenceの人々はかなり活発な気質で、いざとなると恐ろしい戦士になると銀河でも恐れられていますが、この5人の子供──のうちの4人──も、とてもやんちゃでトラブルメーカー。何しろ王宮のセキュリティをハッキングして、システムを全部落として脱走とかしてしまう。
5人のうち長兄は責任を重んじる性格ですが、あとの4人はつねに親や周囲を引きずり回している。
その三男がAidenです。

J. L. Langleyらしい、不屈で明るいAidenと、強く何物にも曲げられない誇りを持つNateの組み合わせが、ぐっとツボ。
Aidenは箱入りで、外界のことを知らず、ただ絵を描くことだけを望んでいる。絵を描き始めると周囲のことなどまったくおかまいなしになってしまう彼を、両親はいつかとんでもないトラブルに巻き込まれるのではないかと心配しています。
Nateは多分40ちょっと前くらい(探して読み返したけど年が見つからなかった)。18年前に故郷を逃げるように去って、軍で自分の地位を作り、様々な武功を経て己の艦を手に入れた、まっすぐ見据えられると誰もが震え上がるような、鋭く強靭な男です。

そんなAidenとNateは一目で恋に落ちるけれども、どちらもそれぞれの理由で関わりをさけようとする。でもどちらも、互いへの気持ちを抑えようがない。

エロも熱々で、Nateの支配欲がそのままBDSMという形に向かうのを、Aidenはどこまでも受けとめる。Nateが求めれば求めるだけ、許す。無垢で純粋な筈のAidenがNateのもたらす熱の中に落ちていく様がじつにエロティック。
ほいでもってそんなAidenに、Nateはどんどんめろめろになってしまうわけです。

恋と、盗まれた武器の捜索と、その裏にある大きな陰謀が絡み合って、割と長い話ですがどこも飽きさせない。笑いどころも多いです。
周囲のキャラも生き生きしていて、彼らの様子もすっごく楽しい。
Nateの養子であり頭痛とトラブルの元でもある「Trouble」と、王の長子のRexleyのふれあいなんか、笑えるけどじんとくるなあ。
あと、Aidenの父親2人の話が読みたいんだよね。あちこち拾ってつなげるに、当時王位後継者であった少年が殺し屋と恋に落ち、自分の婚約を破棄してその恋をまっとうしたらしい。何て萌えシチュだ!
5人の子供がそれぞれに情熱的なのは、親の血からくるものなんだろうな。全員、キレると怖そうだし。

ラブラブでめろめろな話が好きな人、年の差保護者攻めが好きな人におすすめ。

★軍服萌え
★甘エロ(軽いBDSM)

Deceived
Lexie Davis
Deceived★☆ summary:
Matthew Vaughnは警官としての職に満足し、パートナーのShayne Lewisとの絆にも満足していた。
Shayneは物静かで考え深く、Matthewとはまるで正反対であったが、Shayne以上のパートナー、Shayne以上の恋人などMatthewには考えられなかった。

だがそんな毎日は、一瞬で瓦解する。

誰かがMatthewをはめたのだ。証拠品のドラッグを動かし、Matthewの痕跡を残し、Matthewの家にそのドラッグを隠した。
有罪とされたことだけではなく、Shayneが1度も会いに来なかった、そのことが何よりMatthewを苦しめた。ただ1人の恋人は彼を信じず、彼を見放したのだ。

Shayneは事件以降、誰かとパートナーを組むことも、同じ仕事を続けることもできなかった。
彼は部署を移り、誰とも親しくなることなく、ただ乾いた毎日をすごしていた。

そんなある日、刑務所にいる筈のMatthewがShayneの目の前に現れる。
2年ぶりの再会。
脱獄を果たしたMatthewは、自分の無罪をはらすためにShayneの力が必要だと言う。

Shayneは法を破ったMatthewをかくまって、彼に力を貸すべきだろうか。彼を信じていいのだろうか。もし失敗したら、彼はまたあんな痛みをくぐりぬけることができるだろうか。
.....



刑事×刑事、かつ受刑者×刑事という、なかなかおいしいカプです。
静のShayneと動のMatthew。コントラストがいい。

再会した彼らの間はぎくしゃくしています。
Matthewは、Shayneが裁判の途中で消えたことや1度も刑務所に面会に来てくれなかったことに裏切られた気持ちでいるし、ShayneはMatthewを失った痛みがあまりに大きくて、Matthewの存在をまっすぐ見ないようにしてきた。裏切られたと感じていたのはShayneも同じです。
でも2年たって脱獄したMatthewが行くのはShayneのところしかないし、ShayneはそんなMatthewを見捨てることはできない。

Shayneのジレンマと、2人の間に横たわる生々しい傷と、それにもかかわらず彼らを引きつける欲望の衝動──
濃密な一瞬が痛々しい。

おいしい設定でおいしいキャラで、楽しく読めますが、背景がちょっと甘いのは難ですね。Matthewの脱獄もほとんど「脱獄してきた」という一言で片づけられるとか、細部のつめは甘いです。Matthewをひっかけたトリック自体も、無理がある気がするし。
そういうところを流して、キャラとシチュを楽しむ話。
Matthewの荒々しさとShayneの慎重さはとてもいい組み合わせで、読んでいて引き込まれます。Matthewの暴走をとめられるのはShayneだけで、Shayneの壁を打ち破れるのもMatthewだけという感じがいい。

警官物が好きな人におすすめ。

★脱獄
★濡れ衣

On a Bruised Road
Pepper Espinoza
On a Bruised Road★☆ summary:
Edwin Mastersはカーマニアではなかったが、人生の半ばを特定の車を探しながら生きてきた。
1962年型アルファロメオ2600 スパイダー。
世の中で一番早い車というわけでも、一番希少な車というわけでもない。だがEdwinはその車を愛していた。

かなりの値ではあったが、ついに彼は念願のスパイダーを手に入れる。
その車は彼の人生を根底から変えることになった。まるで予期していなかった方向へ。

Edwinが車を買った時に知らなかったことがあった。
この車は47年前に事故を起こし、運転者の若者Cooper Jamesは車内で死んだ。
そして今も、Cooperは車の中にいるのだ。
ゴーストとなったCooperはEdwinに手をのばし、しがみつき、抗えない力で彼をどこかの深みへ引きずり込もうとする。

自分のレストランを持つことを夢見る若い男、Carson Hestonだけが、EdwinがCooperに抗うための力であった。死んだ男ではなく生きた男との未来を選ぼうとEdwinはもがくが、そのたびにCooperはより強い力で彼にしがみつく。
Coorerの中にある孤独、怒り、傷。長い時間をかけて彼を凍りつかせてしまった、父親からの憎悪。
そこからどうやってEdwinが自由になれるのだろう。Edwin自身の中にも深い孤独や怒りがある、この時に。

そしてCooperの怒りはCarsonにまで向けられる。Carsonの命を助けるために、Edwinは幽霊の願いを受け入れるべきなのだろうか。
.....



幽霊とビジネスマンと、若い料理人の話。
かなりセクハラな幽霊です。

Edwinは幽霊のCooperを恐れつつも、それだけではなく、共鳴するものも感じている。彼らの間には同じ、深い孤独があって、だからCooperはEdwinに手をのばしたのかもしれません。
そしてEdwinにふれているとCooperは自分の死や孤独を忘れられるらしい。しがみつき、抱きしめてかきくどく幽霊の青年と言うのは、なかなか可哀想な姿です。Cooperは害を為したいわけではなくて、誰かと一緒にいたいだけなんですね。
Cooperがふれて温度を感じることができるのは、車とEdwinだけなのです。

もしCarsonがいなければ、Edwinは幽霊のひたむきさに落ちていたかもしれない。Edwin自身、深い闇を見て、1度は底に落ちたこともある人間です。
だが若く希望にあふれたCarsonの姿は、Edwinにとって人生の大事なものを見せてくれる。生きること。あきらめないこと。そして、人の肌の温度。

幽霊エロでもあるので、ちょっと背徳的な雰囲気があって、EdwinとCarsonがベッドにいる最中に幽霊のCooperが入りこんできたりもします。3Pあり。
そりゃCarsonも怒るよ。というか不気味だ。
しがみつくCooperの手を振りほどけないのはEdwin自身の問題でもあって、Carsonはそれをどうにかしてわからせようとするけれども、EdwinとCooperとの間をつなぐ奇妙な感情は彼を悩ませる。だが恋人を見捨てることなど出来ない。Edwinは、ひとりではCooperから逃れることが出来ない。

キャラはしっかりとしていて、それぞれの背景もよく書けている(Edwinが何故その車に執着するのか、など)。そのわりにやや型通りなところもありますが、逆に奇をてらわないまっすぐなキャラという印象も受けます。
幽霊に執着されてその快楽に翻弄されつつ、若い恋人とともに人生を生きていこうともがく親父、の図は大変においしい。

ゴーストストーリーとか三角関係とか年の差とかが好きな人におすすめ。

★幽霊
★三角関係

Paul's Dream
Rowan McBride
Paul's Dream★★ summary:
Paul Grahamの人生はくっきりとして、シンプルであった。弁護士として働きながら、さらなるキャリアを目指す。
誰とも深い関係を結んだことがなかったが、興味もなく、彼は自分の今の人生に満足していた。

淫魔のKianは魔道士にとらえられ、下僕となっていたが、ある時その牢獄を1人の人間が訪れる。
人間はあっさりとKianの鎖を解き、彼を解放して、消えた。
自由になったKianはその男を探し、人間界へと入りこむ。あの男はとてつもなく強力なDream walkerだ。なのに自分が夢の中を歩いているということすらわかっていないようだった。

Paulは、いきなり目の前に現れた美しい男にとまどう。Kianを救った覚えなど、彼にはない。
一方のKianは、Paulが彼になびこうとしないことに仰天する。人間はインキュバスの力には抗えない。だがPaulは、Kianの魅力にまるで気付きもしない様子だった。
──KianがPaulにふれるまでは。

Kianの情熱はPaulの心の壁を押し崩し、情熱に火をつける。
Paulは人生の新たな面を味わっていた。喜び、欲望、そして幸福。そして彼の炎は、Kianにもそれまで知らなかった充足を与える。
だが、Paulの奥に秘められた謎も、忘れられた夢も、彼らを放っておいてはくれなかった。
.....



現代ファンタジーというか、舞台は現代で、夢と魔法をテーマにした話。
その中でもちょっと変わっていて、夢をどう解くかがポイントです。
あとはインキュバスと人間の甘エロな関係が、じつに濃くて楽しい。

Paulは覚えていないけれども、彼は眠っている間、人の夢の中で色々な謎を解きながら生きている。他人の謎を解き、その問題を解決するのが彼の人生です。
たとえば、そんな夢のひとつで、Kianを解放したように。

Kianはただ、自分を解放してくれた人間に一時の快楽を与えようとしてPaulに近づくけれども、予期せず恋に落ちていく。
インキュバスは恋をしない。する筈がない。そういう生き物ではない。
ならこの気持ちは何だろう?と、彼は彼なりに考えこむ。
一瞬の快楽を求めながらとんでもないほど長い時間を生きてきたくせに、意外と純情なインキュバスです。

うわべは冷ややかで、何にも心を動かすことのないPaulの壁をKianの情熱が溶かして、ラブラブになっていく様子がかわいい。その絆はPaulの人生に光を当て、その光でPaulははじめて自分のことを見ます。欠けた記憶。欠けた夢。そしてなおもPaulの中にある、凍りついた壁。
Paulの中には大きく欠けた部分があって、それを見つけ出していくのが物語のひとつの核となっています。Paulは人の謎を解くけれども、Paul自身の謎はこれまで手付かずだった。

全体にドラマティックで、魔力の存在とストーリーがうまく絡み合っています。
Kianは恋に落ちて幸せだけれども、一方でPaulの存在は彼の弱みとなる。Paulにも、恋はそれまで知らなかった苦しみや痛みを味わわせます。Kianの姿を見失うたびに、彼は苦しむ。
恋は幸福なことばかりではない。それでも2人でいることには深い喜びがあって、そのためなら弱さも痛みもその価値がある。
Paulの心の謎を解くことは、彼を殺しかねないけれども、Kianのために彼はそれを乗り越えなければならないのです。

シリーズ化するみたいな感じですね。
エロありドラマあり魔法ありで、キャラも一風ユニークですがしっかりと強い輪郭を持って書かれています。ニューヨークの守護者、天才魔道士Asherの話が読みたいな。
ちょっと変わった話が読みたいとか、人間にめろめろのインキュバスに萌え!という人におすすめ。

★謎解き
★現代ファンタジー

これまでジャンルとシリーズと作家名をタグに表示してましたが、キャラとキーワードという項目をふやしてみました。
警官が出てくるものにタグ付けできないのがずっと気になってて、でも「ジャンル:警官」というのもおかしいよなーということで、登場人物の項目を作ってみた。
軍人やカウボーイもそっちにうつしました。あとボディガードとか教師とか。消防士物って結構読んだつもりでいたけど、レビュー書いたのが1本だけというのは意外。掘り出して書くか。「911」とか。

タグのツリー化に使ってるプラグインの仕様で並べ替えが出来ないので微妙なカオスになってますが、たとえば読む物を探したい時はキャラやキーワードのリストから、読んだものと同じ作家やシリーズの作品が知りたい時は紹介記事の下に表示されるタグをクリックして抽出、という感じで使うといいんじゃないかなあと思います。

キーワードは気まぐれなんで、どこまでどうなるかは不明。
何か追加してほしいキャラとかキーワードがある人は、お知らせ下さい。

FC2はタグのツリー化を公式でサポートしてほしいぞ。

それはそうと、ついでにリンクも改造しました。ちょっとはわかりやすくなったんじゃないかな。

Bring The Heat
M. L. Rhodes
Bring The Heat★★ summary:
Riley Ellisonはコーヒーショップに立ち寄って飲む1杯のコーヒーを楽しみにしていた。
そこで見かける若く美しい男の姿も最近の楽しみのひとつだったが、何かがおこると思っていたわけではなかった。
だからある時、ショップで渡されたカップにその男からのメッセージと電話番号が書いてあるのを見ても、それをすぐに信じることが出来なかった。

いかにも派手で綺麗な顔のあの男が、地味な自分に興味を持つことなどあるだろうか。
結局彼はその番号に電話も出来ず、コーヒーショップに足を向けることも出来なくなっただけだった。

そんな時、男性ストリップ劇場の裏の路地でストリッパーが殺され、Rileyは捜査を担当する。
被害者の同僚のストリッパーの事情聴取に向かったRileyは、ドアを開けて出てきた相手を見て愕然とした。
彼だ。

Dane Scottは華々しいモデルの生活をやめて静かな暮らしをしながら、楽しみのためにストリッパーとして働いていた。
彼はずっとコーヒーショップでRileyを見ていた。誠実で、おだやかで、シャイで、折り目正しい男。どうしてもその男が欲しくて仕方なかったが、強く押せばRileyが逃げ腰になるのもわかっていた。考えた揚げ句のコーヒーカップのアプローチも裏目に出たのだ。
そのRileyをついに目の前にして、Daneはこのチャンスを逃すまいとする。

刑事とストリッパー。
Rileyはうまくいくはずがないと思い込み、DaneはそれでもRileyの手を離すつもりはない。
だが事件の夜、現場近くでDaneを目撃したという証言があり…
.....



ここのところ重めのレビューが多かったので、軽いものを。
M. L. Rhodesらしい、控えめでシャイで地味な自己嫌悪を持つ及び腰の男と、積極的にアプローチしてくるゴージャスな男の話。こんな組み合わせがこの人は好きですね。真面目と奔放とか。実際、そこからラブラブになっていく様子は萌える。

話は短めでそれほど複雑な要素はないですが、2人が惹かれあう様子と、Rileyの抗いと、色々な手段を駆使したDaneの誘惑が楽しいです。ごはん作るのがプロ級にうまいのは反則だと思うよ!
Daneはのびやかで奔放に見えるけれども、彼には彼の過去がある。華やかなモデルの世界を離れ、父親を一人で看取り、きらびやかな虚像の世界に愛想をつかして背を向けた。
そんな彼は、Rileyを見つけた時、これこそ自分の求めてきたものであると思う。
虚像ではない本当の自分を分かち合える相手、一瞬の情熱をこえた深い感情を預けられる相手を、Rileyの中に見つけたのです。

でもRileyはやはり「こんな綺麗で、何でも手に入れられるような男が自分に興味を持つはずがない」という場所からなかなか抜け出せない。
抜け出せないまま、Daneとにっちもさっちもいかなくなってしまい、強烈に惹かれる。惹かれながら、信頼できない。「Daneのようなタイプ」のレッテルの向こうにあるものをまっすぐに見据えることが出来ず、ただうわべにあるものに惑わされる。
それはDaneの問題ではなく、Rileyの問題なのです。

困ったなあ、と思いながらもちゃんと引くところは引いてあげるDaneが大人で可愛い。傷ついたり怒ったりするRileyの一挙一動にくらくらしている様子が、本当に好きなんだ!という感じでぐっときます。

Rileyの本能はDaneを求め、理性は抗う。
そんなぐらぐら具合と、駆け引きと、エロがよみどころ。
楽しく萌えっと読める1本。軽めの読書におすすめ。

★エロ多め
★短い


nosy
  …詮索好き、おせっかいなこと。I'm sorry to be so nosy.(ごちゃごちゃ言ってごめんね) などのように使う。


のですが、私、これを「noisy」だとずっと思ってました。
「noise」の方じゃなくて「nose」の方だったのかー!

「鼻をつっこむ」ってことですね。そうかあ。
単語の意味は色々脳内で補完しながら読むけど、勝手にスペルの補完まですることはないのにな。


最近読んだ本が立て続けに微妙に日本をテーマにしてて、「oto-sama」とか書いてあると思わずつまずく。
スラの中にはたまに「遊廓で…」とか「抜け忍同士が…」とか昔の日本を舞台にした物がありますが、ほとんど読んだことがないです。
チャレンジしたら面白そうな気もするし、ついつい茶化して作者に失礼な気もする。

★Three-Star rating system★


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モノクロームロマンス(M/M翻訳)


■公式サイト■

・2017年
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas

・ほかにも出るかも
・王子とか何か売れてくれ〜(色々軽くピンチ)
・来年はもふもふやるよ!

*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流
・夜が明けるなら(ヘルハイ3)

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター