Slash×Slash

Slash(m/m小説) レビューブログ

※万人向けの内容ではないのでご注意ください
→このブログについて

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Border Roads
Sarah Black
Border Roads★★ summary:
イラクから、アメリカ国境へ──
彼らの道はどこまでも険しく、苦難に満ちていた。

イラクでともに戦った分隊の仲間が、故郷近くのアメリカとメキシコ国境付近に集まっていた。
密輸、ドラッグ、密入国。国境には様々な風が吹く。

Chrisは仲間の元を目指しながら、途中の町で買った若い娼婦をともなった。
彼女がいればよく眠れる気がした。そして彼女も、Chrisのそば以外にいる場所がなかった。この世界のどこにも。

国境警備の仕事をしながら、ClaytonはLukeのことを思っていた。Luke。イラクで恋に落ちた、彼の戦友。
だがその恋がLukeをあやうく殺しかけた。不注意になった彼はテロリストの爆弾に吹きとばされ、顎のほとんどを失い、声を失ったのだ。

まだLukeが自分のことを求めてくれるか不安に思いながら、Claytonは彼の元へと出発する。
イラクから帰ってきてからの日々は、彼にとってもう一つの地獄のようであった。もしLukeが彼を拒否したら、Claytonは自分が生きていけるかどうかわからない。
.....



かなり重い話です。
帰還兵たちのそれぞれの暮らし、それぞれの葛藤がえぐられるように書かれている。
エイズにかかった少女娼婦、爆弾の傷を負った兵士、ドラッグの密輸に手を染める弟に銃を向ける兄、国境をこえて密入国した自閉症の子供、「物語」を求めてやってきながら目にした風景に衝撃を受ける記者。
様々な苦痛がその中にある。

いくつか物語があるのですが、ChrisとMelody、ClaytonとLukeが主な中心かな。
Melodyは女の子なので、男女絡みもあり、正直あまり嬉しくないサプライズでしたが(男女が混ざる時は警告がほしいよ)、いい話です。
帰還兵と娼婦。切ないような、どこかピュアな気持ちの交錯がそこにある。

ClaytonとLukeはイラクで熱烈な恋に落ちる。
爆弾による負傷という、Lukeを襲った運命も苛烈ですが、Claytonの中にある嵐のような葛藤にも、彼が魂を削るようにしてギリギリのところを生きているような、剥き出しの悲惨さがあります。
彼の心を救えるのはLukeだけで、彼が求めるのもLukeだけ。
彼らが互いを求めあう激しさと、2人の間に立ちはだかるプライドや怒り、恐れ。殺伐とした国境ぞいを背景に、2人の思いが鮮やかに浮き上がる。
ともに生きていくための道を探そうともがく彼らの様子も、重い。

一方で、国境を越えてきた自閉症の子供Juan(ホアンって読むんでしょうね)の話も切ない。母親に必要とされず、故郷を出て国境をこえるトラックに乗るがそこから落とされ、善意の女性に拾われて牧場につれていかれる。
だがそこにも自分の居場所がないと感じ、人々に迷惑をかけていると思った彼はまた歩き出してしまうのです。

ClaytonとLuke以外はカプと呼べるほどのカプはなく(疑いがあるのはいるけど)、スラ風味は薄い。ClaytonとLukeだけで充分濃くて、萌えますが。
殺伐とした世界がえぐり出されるように描写されています。でもその奥からは暗いことばかりではなく、時おりほのかな明るみがさしてくる。

苦しげなカプとか、群像劇とか、重い話が読みたい人におすすめ。
萌えもあり、心の奥が圧迫されるような何とも言えない気持ちにもなります。読後感はわりとさわやか。

★帰還兵
★負傷

スポンサーサイト

Brier's Bargain
Carol Lynne
Brier's Bargain★★☆ summary:
Brier Blackstoneは数年前まで、生涯のほとんどを病院ですごしてきた。
まだ幼児の頃、父親の虐待で頭に傷を負ったため彼は知能の発達が標準よりも遅れ、感情のコントロールが難しい。虐待から保護するために、政府は彼を家族と離した。
ほんの十年前まで、双子の弟すら彼の存在自体を知らなかった。

その弟の尽力によって、Brierは病院から出て人並みの生活を営むことが出来るようになり、ボディガードの会社の事務として働くまでに回復した。
そして、その会社で想像もしてなかった素晴らしい相手と出会った。
Jackie Benoit──会社のボディガードスタッフの一人。
Brierの恋人。

そのJackieが中東の任務でひどく負傷し、片足を失って帰ってきた。

Jackieはこの無垢でひたむきな恋人を愛していた。彼が乗りこえてこなければならなかった過去も知っている。かつて病院を脱走し、感情のままに罪を犯したこと、収監された病院で性的虐待を受けていたこと。
それをのりこえ、ハンディキャップを持ちながらフルタイムで働き、様々なことにチャレンジし始めたBrierの姿は、Jackieが自分の傷と向き合うための力でもあった。

だがまだBrierの心は脆い。
そんな時、性的虐待の加害者が捕まったとFBIから連絡があり、JackieはBrierにどう話したものか悩む。FBIはBrierの調書を取りたいと言うが、ふたたびあの体験を思い出させるのは気が進まない。

しかしBrierの覚悟は決まっていた。Jackieや、双子の弟が思う以上に。そしてきっと、彼らが望む以上に。
.....



Brierは軽い知能障害があるけれども、きちんとまっすぐに物事を考える人です。彼なりの筋道を立て、人のことを思いやりながら生きている。36歳。
Jackieは彼の初恋。
そのJackieが中東へ仕事へ行ってしまっている間、淋しさのあまり感情的にめちゃめちゃになって双子の弟を心配させたりしてしまいます。

でもJackieが負傷して帰ってきてから、Jackieの世話をし、そばで暮らしながらBrierの気持ちも落ち着いていく。
そんな彼のひたむきな様子と、彼にめろめろのJackieの様子がかわいらしい。また実際、Brierの弱いながらも凛としたたたずまいが綺麗で、Jackieの気持ちがまっすぐ彼に向かっているのもつたわってくる。
JackieがBrierの面倒を一方的に見ているわけでも、子供のように扱っているわけでもなく、彼らは互いに支えあう対等な恋人同士なのです。そこがいい。

周囲の人間はBrierを守ろうとするけれども、Brier自身は段々と自分の頭で物事を噛みしめ、自分の足で歩こうとしていて、その覚悟は時たま周囲とぶつかる。
そのBrierの気持ちの変化と、それを受け入れていかざるを得ない周囲との変化が書かれています。

読み始めて、知能障害というのはあまり好きなテーマではないので迷ったのですが、とてもおもしろかった。読んでいる間も、読後感もいい。兄に罪悪感を感じながら過保護にふるまう双子の弟もかわいい。
作者のCarol Lynneは前にも下肢の障害がある人の話を書いたりしていたので、何らかのハンディキャップ(精神的な弱さとかも含む)をかかえたテーマが好きなのかもしれない。うまくツボを押すエピソードが重なっているけれども、決してお涙ちょうだい系でもありません。
この作者のキャラは根がポジティブでたくましいので、重いテーマでも話が暗くならないのかな。性格はわりと乙女っぽかったり繊細だったりするんだけど、それでもどこか前向きで、世界を信じている感じがします。

Brierが過去をのりこえ、自分の新しい一歩を世界に刻んだことが、最後の騒動からもよくわかる。
世界は彼にとって優しい場所ではないけれども、彼はまだその世界を信じ、人間の善意を信じている。Jackieが、Brierの視点を通して見える世界が美しいと思うのも無理はない。

この「Bodyguards in Love」は作者の新しいシリーズで(まだ全部読んでないんだけど、代表作のCattle Valleyシリーズが終わったのかな?)、このボディガード会社を舞台に進んでいくと思う。
見るからにゲイばっかりの会社ですが、まあそれもよし。先が楽しみです。

ある意味かなり極めた「包容攻め×けなげ受け」なので、そういうシチュ萌えの人に特におすすめ。エロも多めで、全体に楽しく読めます。

★障害
★保護欲

Shades of Gray
Brooke McKinley
Shades of Gray★★★ summary:
FBI捜査官のMiller Suttonは、有能で、非情であった。犯罪者を追いつめ、利用し、すべての物事を白黒はっきりつけながら生きてきた。
だが麻薬組織の幹部のひとり、Dannyと向き合った時、Millerのクリーンな世界は崩壊を始める。

FBIの罠にかけられたDannyは、ボスを裏切って裁判で証言するという取引を呑む。
それがどれほど危険なことか、彼は知っていた。裏切り者は楽には死ねない。地の果てまでも、追われるだろう。
FBI捜査官のMillerは身の安全を保障し、証人保護プログラムを組むと言ったが、Dannyはそれを信じていなかった。
だがそれが彼の運命なのかもしれない。泥水を飲むようにして生きてきた。麻薬のディーラーに拾われ、友人を組織に引きずりこんで死なせ、刑務所に入り、そして裏切り者としての死を迎える。
彼にふさわしい最後かもしれなかった。

MillerとDanny。FBI捜査官と情報提供役の犯罪者。
光の当たる場所ですべてに白黒をつけて生きてきた男と、暗い世界で多くの泥にまみれてきた男。
お互いが理解できるはずもない2人だった。だが彼らは互いに惹かれ、Millerははじめて白と黒だけでは解決しない世界の存在をつきつけられる。

生きのびるために。愛するものを守るために。時には暗い選択をし、重荷を背負わなければならないこともある。
その選択を、はたしてMillerはできるだろうか。そしてそんな自分に耐えられるだろうか。
.....



正義を盾に犯罪者を道具のように扱う捜査官と、泥の中で生きのびてきたしたたかな犯罪者。
しかもいずれ証人保護プログラムがはじまれば、彼らは二度と会うことも、連絡を取ることもできない。
こういうシチュは萌える!

MillerとDannyの価値観、2人の変化や融合が丁寧に書かれていて、緊張感のある話になっています。
Dannyがいいですね。減らず口を叩き、癇癪をおこしながらも、彼の中にはひどくやわらかい部分がある。これまで自分が気持ちをよせた2人の相手──古い友人と元妻──の人生を台無しにしてしまったのを見て、もう誰とも深く関わるまいとする。
ボスに対しても、恐れや憎しみもあるが、その一方で時おりに示される信頼や優しさに、心の深くで忠誠をおぼえてもいる。
弱さと強さが複雑に絡み合った様子がリアルで、とても強烈なキャラです。

Millerは、Dannyの中にある繊細な痛みに惹かれますが、その一方で自分が「FBI捜査官」であるということにしがみつこうとして、Dannyを傷つけることもある。
彼にとっては、白黒のつく世界がすべて。
だがDannyは彼を惹きつけ、彼の世界を揺さぶる。これほどまでに誰かを求めたことはない。これまでの白黒のついた美しい世界がすべて色あせて見えるほどに。

過去の追憶と現在の展開がうまい具合に混ざり合っていて、Dannyの中にある深い傷が徐々にあらわれる構成が巧みです。Dannyの人生が明らかになっていくにつれ、Millerとの対比がより際立つ。
彼らはまるで違う世界を生きてきた。まさに白と黒。
そしてDannyは、自分の生きる混沌の世界にMillerを引きずり込みたくはない。たとえMillerがそれをよしとしたとしても、状況はあまりにも絶望的で、彼らに道はない。
そんな中でのDannyの葛藤と荒々しさ、Millerへの愛しさ、そして暗い人生を生きのびてきた男のしたたかさが文章の中に凝縮しています。


Danny wanted to howl and rage like a wounded animal, demand that they find a way to make it work. But there was no point in that. Danny had learned early that sometimes there was nothing to do but suffer through.


Danny視点で、まだ知らないはずのMillerのファーストネームが地の文に書かれていたり、Millerの婚約者の存在感があまりにも薄いことなど、気になる点もありますが、でも全体に骨太で、最後まで緊張感を失うことなく書ききられた話です。
こういう、「心理の成り立ちと変化を詳細に描写した作品」って英語の方がいい気がしますね。日本語でひとつひとつ語られたらかなりループになると思うけど、英語は言葉の輪郭がくっきりしているので、読みやすいというか入ってきやすい。

FBI捜査官と犯罪者とか、マフィアに追われる明日のない2人、とかそういうシチュに萌える人ならまず買いの1作。

★FBI×犯罪者
★密室

米グーグルの電子書籍、10年に日本で有料サービス」だそうで、「検索大手の米グーグルは、パソコンなどで書籍を一冊丸ごと読めるようにする有料サービスを2010年中に日本で開始する」とか。

これって谷川俊太郎さんたちが和解案を拒否した奴だよねえ。
4月のニュースなので古いですが、ちょっと探してみた。


米グーグル社が進める書籍検索サービスについて、日本ビジュアル著作権協会の会員174人が、著作権侵害に対する同社との和解案を拒否することが、25日明らかになった。

グーグル社は、世界中の書籍を全文検索出来るサービスを準備しているが、米の作家らが著作権侵害に当たると集団訴訟を起こし、昨年10月、収益の63%を著作権者に支払うことなどを条件に和解した。

米の集団訴訟制度の規定により、この和解案の効力が日本にも及ぶため、日本の作家が和解案を拒否する場合、5月5日までに回答することが求められていた。


これは単純にまとめると、GoogleがGoogle上での書籍配布について、アメリカで著者たちと和解したんですね。で、「二ヶ月以内に異議がなければ日本の作家も和解に同意したと見なして配布するよ」という通告があって、ムカついた作家さんたちが拒否したと言うもの。
このあたりのGoogleのやり口は、正直気に入らない。
まあGoogleも随分と折れまして、「無言は同意とみなす」というスタンスは取り下げたはず。
今回も、出版社と著者に了解された物のみを配信するそうです。当たり前だが。

日本の出版社と取次がべったりとくっつき、電子書籍に対して間口をほとんど開こうとしない状況に風穴が開くのは、いいことかもしれない。…いいことだといいなあ。
さて、どうなるか。

でもGoogleに言えるものなら言いたいが、同人小説を取り扱えば一気に市場がでかくなると思うよ!(版権ものは難しいか…)

The Happy Onion
Ally Blue
The Happy Onion★★ summary:
Thomas Stoneにはひとつ、絶対のルールがあった。雇い主とは、つきあわない。
過去の苦い経験から、彼はその一線だけは決して踏みこえまいと決心していた。

クラブの支配人の職を打診されてやってきた新しい町で、だが職も住処もしばらく保留ということになってしまい、Thomは頭をかかえる。
見知らぬ町で途方にくれたが、どうにか小さなレストランにバーテンダーの職を得ると、息抜きに出かけたバーで、彼は年上の男をひっかけて熱い一夜をすごす。

だが、連絡先も交わさぬままに別れた男が新しい職場のボスだとわかるまで、時間はかからなかった。

Philip Sorrellsは、一夜の相手を忘れられなかった。
金髪で、小柄で美しい顔の、Topを好む男。彼がレストランの新しい従業員だと知って、Phillは運命的なものを感じる。
だがThomが職場恋愛を拒否していることを知り、その意志を尊重して、無理強いはすまいと決めた。

問題は、彼らのどちらも、相手のそばにいると情熱を抑えきれないところだった。

惹かれあい、反発しあいながら、2人は互いの存在に落ちていく。Thomは踏み込むことを恐れ、PhillはThomの中にある火のような激しさに引きつけられて、ついついThomを挑発してしまう。
彼らはベッドの中ではパーフェクトなカップルだが、いざ向き合うと、対立してばかりでもあった。
.....



好きなのに、政治的信条とか自分の主義から対立してしまう2人の男の話です。
Thomは本当に可愛い顔をしていて、女の子扱いされたりもするようですが、それなのにと言うかだからこそと言うか、そう言われるのを激しく嫌っています。
人から甘く見られるのを嫌う。独立心が強く、ちょっとしたことで内側の激しさに火がつく。そうなるともう、手に負えない。

そんな年下の男にハマったレストラン経営者Phillは、町の急速な開発に反対していて、仲間と抗議活動をしています。彼もまた信条の男ですね。
優しくて、包容力があるが、許せないものは許せない。その点においては彼も頑固。
強情 vs 頑固。

PhillはThomに自分の信条に合わせてもらおうとは思わないし、そういう政治的なものを嫌う人がいることもわかっているので、あえて自分の活動の説明はしない。
でもある日、そのことがThomに知られて、Thomは怒る。Phillが何も言ってくれなかったことに、まるで子供扱いされたような気持ちになるのです。
その一方で、Phillが抱く開発企業への疑惑は、Thomにとっては噂をかき集めた言いがかりのようにしか見えない。何より、そこはThomに新しいクラブの支配人のポジションをオファーした会社でもある。

そのクラブで働きたいThomと、Thomを説得しようとするPhillは、勿論また対立します。
Thomは感情に流されて話を聞かないし、Phillは聞く耳を持とうとしないThomの頑固さを理解できない。結局彼らは怒鳴りあうか、激情のままにベッドにもつれこむかで、まともな話し合いに至りません。
どちらも相手が好きで、相手の存在が自分の人生を変えてしまう予感を持っている。でも、どちらもいざ向かい合うと、独立心やプライドの高さが邪魔をする。
その様子がもどかしくて、ちょっと笑えます。

恋人としてならいい、でも人間関係としては未熟。
そんな中で、もがきながら互いを、そして自分を見つめようとする2人の話が、ユーモアをまじえて描かれています。
激しい自我が対立し、恋心と情欲に引っかき回される。キャラは魅力的で、噛み合わない様子がなかなかにリアル。喧嘩して、怒鳴りあって、プライドをぶつけ合い、うんざりして、それでも互いが恋しい。
ぶつかり合いながら、少しずつ、彼らは信頼を覚えていく。
恋を通してお互いに変わっていく話というのはいいですね。自分を変えるだけの決心をするのは、とても勇気のいることだと思う。

可愛い強気な年下攻めが好きな人、強気同士が好きな人におすすめ。

★年下攻め

Immortality is the Suck
A. M. Riley
Immortality is the Suck★★☆ summary:
犯罪者とつるみ、潜入捜査の内に薬物に手を染め、潜入捜査官のAdamの身辺は、決してきれいなものではなかった。
そんな彼をいつでも暗闇から引きずり出そうとするのが、友人のPeterだった。

Peterは模範的で優秀でクリーンな警官だった。
ただひとつ問題があるとするなら、彼がAdamと寝ていること──このどうしようもない男に、恋をしているということ。
自分の腕の中で血まみれのAdamが息を引き取った瞬間は、Peterにとって人生最悪の時だった。

だが、Adamは死んではいなかった。いや、死んではいた。しばらくの間。
死体安置所で目を覚ました彼は、自分を「殺した」犯人を捜し出そうと動きはじめる。

何故Adamは生き返ったのか。何故こうまで空腹なのに、普通の食べ物で腹を満たせないのか。
何故、血の匂いを甘く感じるのか。何故、陽の光で火傷をするのか──

闇の中をもがくように、血と死体の跡を残しながら、Adamはこの混乱の元を探して戦う。
暴力、殺人、裏切り‥‥何もかもがめちゃくちゃだった。
自分の人生の闇と混乱がPeterを引きずり込んでしまうことを恥じながら、AdamにはPeter以外に頼る相手がいない。

だが彼らの絆にも、そしてPeterの忍耐にも限界があった。
.....



殺されて、起きたら吸血鬼になっていた悪徳刑事の話です。
最近この手の現代吸血鬼もので、「後天的に吸血鬼化した」話が流行ってるような気がするなあ。

Adamは悪い奴なんだけど、破天荒な魅力があって、彼と離れられないPeterの気持ちもよくわかる。
どんなに無謀でも、身勝手でも、たとえ犯罪者すれすれのモラルしかなくても、PeterはAdamが好きですが、このどうしようもない友人が今回はまりこんだ悲惨な状況を、さすがの彼もどうしたらいいかわからない。

Peterはすごくいい人で、もう彼の欠点といったらAdamを好きなことくらいでしょう。
最大にして最悪の欠点ですが。
Peterの中には、かつて自分が栄転の誘いに乗ってAdamとのコンビを解消しなければ、もしかしたらAdamの転落をとめられたのではないかという思いがあるんじゃないかなあ。
Adamを救おうとして、救えない。その歯がゆさが彼の心を侵食していく。

一方のAdamの中にも、Peterに関してだけはやわらかな部分があって、時おりAdamはそんな自分から逃げ出そうとする。Peterと決定的な何かを築くまいとしている。
Peterを求めながら、彼はどこかで自分がそれに値しないとも思っています。愛しいと思いながら離れようとする。
Adamは傷ついた孤独な獣のようで、そういうAdamの姿も切ない。Peterがいくら手をのばそうとしても、Adamは時にその手を振り払うしかない。

あれだけしたたかで、人を疑い、利用するAdamが、とある男にだけは手もなくだまされてしまうシーンがあります。理由をAdamは語りませんが、Peterがその男を信じているからAdamもただ信じた、そうとしか思えない。
切ないなあ。
A. M. Rileyの小説には読んでいると心臓を絞られるような切ない瞬間があって、それがたまらない。
主人公たちの行き場のない感情が複雑に交錯してどちらも動けなくなる、どうしようもなさというか、やるせなさが満ちていて、読んでいるととても痛い。

話としてはクライムサスペンスで、暴力と流血に満ちています。
前半は色々な名前を追っかけるのがちょっと面倒かもしれませんが、そのへん読みとばしても後半にちゃんとまとまってくるので大丈夫。
あとスペイン語がとびかってますが、これもまあ流して問題なし。巻末にスペイン語解説ありです。

複雑な痛みをかかえた絆の話。
悪い男にぐっと心をつかまれてしまった身ぎれいな男、というシチュが萌えならすごくおすすめ!
後日談として短編の「What to Buy for the Vamp Who has Everything」があって、こちらはPeterの視点からの短いクリスマスストーリー。やはり甘さと痛みが絡み合った、気持ちの奥に入ってくる話です。

★吸血鬼(後天性)

As You Are
Ethan Day
As You Are★☆ summary:
Julian Hallowellは常に「運命の相手」がどこかにいると信じていた。きっと出会うべき相手が、この世界のどこかにいる。
そしてそれが、ルームメイトのハンサムなDanny Wallaceではないかと感じたこともあったが、Dannyはいい友人ではあっても、それ以上の興味をJulianに示すことはなかった。

今でもDannyに恋をしている気はする。だがあの手この手で仕掛けても駄目だった以上、運命の相手はほかにいるのかもしれない。
Julianは友人から紹介された男とデートを始め、うまくいきそうな予感を感じる。
政治信条の違い? 宗教観の差?
きっと何とかなる。きっと。もし彼が「運命の相手」なのだったら。

だが、そんなに簡単にDannyをあきらめられるだろうか?
.....



ロマンスコメディですね。
で、主人公のはじけっぷりが往年のラブコメ漫画を思わせるようなドジっ子乙女系なので、そこが好きかどうかが分かれ目だと思います。
好きな人は好きだが、そうでない人には割と地雷な話だと思う。

キャラクターは(性格もふるまいも)普通に男性なんですが、属性は乙女入ってます。
「いつか王子様が」と現実が見えていないままそろそろ27歳、あれ、何かまちがえたかな?と思いながらもまだ元気いっぱいに我が道を邁進しようとして友人たちにあきれられ、面倒を見られている。
デートの相手といい感じになっても「やっぱり初デートじゃ駄目」と途中でお開き。簡単にセックスなんかしません。自分のことを好きなら、その価値観も尊重してくれるはず。
今回の相手はうまくいきそう。
でももしかしたら、まだ近くの男(この場合は同居人)が好きかもしれない‥‥!

と、まあこんなテンション。文章もテンション高くて、ノリがいい。

Julianは溌剌としたエネルギーの塊で、純情なところと口の悪さが同居しています。
ルームシェアをしているDannyへの嫌がらせのためだけにいかにもなゲイ風ファッションで一緒に出かけたりと、どぎついユーモアの持ち主ですが、Dannyがたまに言うように、優しいところもある。
この作者を読むのは2冊目ですが、やはりこういう、ちょっと度し難いテンションで乙女の入った受けと、それを支える絵に描いたように格好いい攻め、という組み合わせが好きらしい。

本当に攻めは格好いいし、乙女受けのロマンスコメディが好きならオススメ。ちゃんと山あり谷ありだし、趣味が合えばとても楽しい1本です。
「それでもやっぱりママはお前が好きよ」みたいな家族要素も入れるのは、やはり幸せ系のスラの基本ですね。

★ラブコメ系
★ルームメイト

現在、LooseIDへのリンクが何故かエラーで開けないという現象がおこってますので、もし本のタイトルをクリックして開けない時は、右クリックでリンクをコピーして、ブラウザにペーストして開いて下さい。
直に開けば大丈夫です。

うちのサイトのリンクだけの問題ではないので、LooseIDが何かしてるんだと思いますが。
ここはたまにシステムエラー起こしたりとか、システム周りがちょっと弱い印象‥‥
早く治るといいなあ。

直った模様。めでたし!

Bound and Determined
Jane Davitt & Alexa Snow
Bound and Determined★★☆ summary:
もうじき21歳になる大学生、Sterling Bakerはたまたまパーティで見たBDSMシーンに衝撃を受け、それこそが自分の求めるものであると感じる。
彼は支配的な父親に常に反感を覚えてきた。それは、自分が支配する側になりたかったからではないだろうか。

だが初めて行ったクラブで、大学の教授Owen Sawyerの姿に行きあたって、Sterlingは自分の考えが間違っていたことに気付く。
彼が求めているのは、支配することではない。支配されることだ。
Owenのような、強い、確信に満ちたDomに支配され、コントロールされるSubに、彼はなりたいのだった。

Owenは、何のスキルも経験もない、しかもかつての教え子を自分のSubにするつもりはなかった。
長い間、彼はどんなSubにも満足できなかった。多くの者が彼の名を求めてすり寄ってきたが、誰もがあまりにわかりやすく、あまりにも平凡で、常に誰もがOwenを失望させた。

だがSterlingは不屈だった。ついにOwenから手ほどきを受けることに成功し、それが思っていたほど単純でたやすいものではないと悟りながら、彼は引かなかった。
彼の中にある強さ、しなやかさ、そして複雑な痛みはOwenを引きつける。
ふたりの関係はいつしか単なるDomとSubの域を越えていたが、どちらもそれを言い出せず、いつしか生まれた亀裂はSterlingをより破滅的な行為へと押しやり…
.....



Sterlingは、父親の支配によって精神的に傷つき、自分の中に高い壁を作っています。常に他人にチャレンジしたがり、挑戦的で、高慢。
Owenが最初に見て、拒否したのはそういう「外側」のSterlingですが、その内側には脆い、優しい、誰にも手をふれさせない部分があります。
Owenは支配とコントロールによってSterlingの思考を吹き飛ばし、壁を崩し、SterlingはOwenにだけはすべてをさらけだす。それはOwenが彼を知り、彼の限界を知り、決して傷つかないよう守ってくれると信頼しているからです。
Sterlingには、支配される必要がある。信頼する相手、自分のすべてを預けられる相手に。そしてOwenは己のすべてでそれに応える。
それはほとんど、そのまま恋のように見えます。
支配と被支配、関係としてはいびつなようでもありますが、彼らの間ではそれは健全で、純粋で、必要なことなのです。

Owenはとても強い、卓越したDomです。
彼はSterlingの中にあるものを引きずり出し、Sterlingの欲するものをあたえ、そうすることに喜びを感じる。
どんなSubも──かつて別れたただ1人を除いて──彼を満足させることはなかった。だがSterlingの不屈さ、それと対をなす心の底からの服従、Owenを喜ばせようとする姿はOwenを揺さぶっていく。

プレイそのものも色っぽくてよいですが、DomとSubという特殊な立場を踏まえた上での感情の変化が非常に微細に書かれていて、読みごたえがある。
BDSMの話ってプレイの物理的な描写以外は単調になりがちな傾向があるんだけども、これはプレイの中で起こる葛藤や、2人の互いに対する理解が、そのまま彼らの人間関係に投影され、互いへの感情を深めていく。とても繊細に書かれた話だと思います。
生き生きしたSterlingも、彼を支配して愛でるOwenの強さも、とても魅力的です。

BDSMを中心とした人間関係、そして「初心者のSub」と「それを導くDom」の物語と言うと「A Strong Hand」に近い構成ですが、あれがプレイそのものよりは主人公同士の感情的な絆を中心に据えていたのに対して、この「Bound and Determined」はプレイの比重がとても大きい。
ので、がっつりとBDSMが読んでみたい、という人向け。
BDSMって日本のSMとはちょっとちがう(ものが多い)ので、「SMって何がいいのかわかんない」という人でもためしに読んでみるといいんじゃないかなーと思います。苦痛や拘束は「手段」であって、その先にあるものにたどりつくには、何よりも信頼が必要で、その信頼の存在が、この話のテーマにもなっています。

苦痛や、公開プレイも(一部)含んでいます。(強烈なものではないので、すごく苦手な人以外は大丈夫かと)
公開プレイってあまり好きじゃないんですが、この話の中での位置づけはよかったですね。何故人はBDSMを求めるのか、何故クラブ内で公開プレイをするのか、という「何故」のあたりがきちんとしたフォーカスで描き出された話です。

★支配
★焦らし

Maritime Men
Janey Chapel
MaritimeMen★★☆ summary:
SEAL(アメリカ海軍特殊部隊)の志願者、Cooper FitchとEli Jonesは限界を超えるような厳しい訓練を受けていた。世界から隔絶され、体と精神をいじめ抜き、時おりのわずかな予備時間でバーにいる女をひっかけて、一瞬の楽しみの中に鬱屈を吐き出す。
CooperとEliは一緒のチームとなり、チームの人間は訓練をくぐりぬけていくうちに、まさしく兄弟のような絆を作り上げていた。

Eliはチームの人間を束ね、配置を考え、課せられた訓練を彼らは一丸となって乗り越えていく。
Cooperは、Eliの中にある確信や強さを尊敬していた。Eliのためなら命も捨てるだろう。
Cooperだけでなく、チームの全員が深い忠誠でEliにつながっている。そしてまた、Eliが彼らのために命を惜しまないことも、彼らは知っていた。

そんなある日、疲労や酒、女とのセックスの余韻──そんなものが彼らを肉体的に結びつける。
何が起こっているのか、Cooperにはわからなかった。ただ彼にわかるのは、Eliにふれていると気持ちがいいこと、そしてそれがごく自然に感じられることだった。

彼らは強い絆を足がかりとして、地獄の訓練に耐え抜いていく。
だがEliにさえ、限界は訪れるのだった。
.....



軍隊ものです。
Eliは確信に満ちた静かな男で、Cooperはどちらかと言うとやんちゃっぽい。
Eliは彼をひっぱり、訓練を乗り越えさせる。そしてCooperはEliの弱さをカバーする。彼ら2人だけでなく、チームの人間は全員そんな風に互いをフォローしあっています。それがつたわってくるのがもうひとつの萌えどころ。

色恋沙汰!というほど色々そっちであるわけではなく、「何で男と」という葛藤もほぼなく、むしろCooperとEliは肉体的にあっさりと馴染んでいきます。ですがその裏にあるのは男同士の固い絆で、そういうものに萌える人なら、むしろこの淡々とした描写がたまらないのではないかと。
CooperのEliに対する盲目の信頼が、またたまらない。高空からの降下訓練で、生理的に怯えて正常な判断ができなくなるCooperですが、Eliの命令だけは聞こえる。それにたよって、ただ彼は繰り返し空へ飛び出していきます。どんな恐怖も、彼のEliへの信頼を消し去りはしない。

短めの文章で、内容とよくあった硬派な雰囲気。そんな中に、時おりはっとするような描写があります。
Eliとはじめて最後までセックスをした時のCooper視点の描写(話はすべてCooper視点です)で、Eliを受け入れる時の描写もよかった。

...and let Eli in, and in, and in.



軍人に萌える人はもちろん、たとえば「チーム」とか「忠誠」というキーワードに反応する人におすすめ。
彼らがSEALに配属されてから後の続編が読みたいです。

★軍隊
★訓練生

★Three-Star rating system★


[カテゴリ]View ALL
レビュー (310)
★★★ (88)
★★ (188)
★ (34)
モノクローム・ロマンス (10)
電子ブックリーダー (23)
iPodTouch・Stanza (19)
nook (4)
雑談 (84)
英語 (29)
文法 (4)
読書日記 (11)
…このブログについて (8)
…書店情報 (2)
[タグリスト]

10 | 2009/11 [GO]| 12
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -

カテゴリ一覧 最近の記事一覧 プロフィール リンク一覧 メールを送る
[カテゴリ]


モノクロームロマンス(M/M翻訳)


■公式サイト■

・2017年
・7月 ヘルハイ3巻
・夏 雑誌短編
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas
・冬 雑誌短編
・ほかにも出るかも
・不甲斐なくてごめん

*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター

 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。