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Slash(m/m小説) レビューブログ

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The Vanguard
T.A. Chase
Vanguard★★ summary:
Launiocの王子Rathianは「Vanguard」の隊長でもあった。
Vanguardの兵士は国と王子のためだけでなく、互いのために苛烈に戦う。その起源は国の歴史を古く遡り、かつて悪魔にさらわれた王子とそれを取り戻した将軍との伝説にはじまる。
彼らは互いの献身と愛情によって国へ帰りつき、闇から愛する者を守るために、Vanguardを作ったのだった。

そして今、Vanguardは敵国Viliousと長い戦いの時代を迎えていた。
兵士は次々と過酷な戦場に送られ、あやしげな魔術の前に倒れた。部下を失うたびにRathianは苦しんでいたが、彼はリーダーであって弱さを誰かに見せるわけにはいかない。
痛みを分かちあう相手が、Rathianにはいなかった。

Stakelは敵国Villiousの戦士であり、女王の慰み物でもあった。彼はVanguardによって捕虜とされ、Rathian王子の前に引き据えられる。
Rathianは敵である筈のこの男に、何故か敵意を感じなかった。Stakelは女王に何の忠誠心もなく、ただ生きのびるために苛烈な日々を耐えてきていた。彼の中に、Rathianは純粋な生命のかがやきを見る。
そしてSkatelは、敵の王子であるRathianの中に、真実を見ていた。
.....



Vanguardは単純に言うと「ホモの軍隊」で、男同士の関係が公然と奨励されております。

古代ローマにあった「神聖隊」がモデルではないかと思う。男同士のカップルだけが入ることを認められたという隊です。
ギリシア・ローマの頃のホモってのは大体がお稚児さんものというか「庇護者」と「美青年」の組み合わせになりますが、これで軍を組むと、庇護者はいいところを見せようとしてはりきるし、美青年も庇護者の名に恥じまいと、死に物狂いで戦う。
大変に強い軍隊で、当時とても恐れられたという話です。…ネタじゃなくて史実だから世界は広いです。

そんなわけで、結構トンデモっちゃあトンデモな感じもあるのですが、大変に楽しいです。前提が割とはじけていて、全体にもところかまわずエロエロだったりしますが、やはりTAは筋立てがうまいのでおもしろい。
Vanguardの隊員たちに熱烈に慕われつつも、1人ですべてを背負わざるを得ない孤高の王子Rathian。彼はStakelを信頼することを覚え、はじめて他人に弱さを見せられるようになる。
そしてStakelは──故郷をさらわれて拷問に近い訓練を生きのびてから──誰も信頼したことのなかった彼は、心の深いところにRathianのための場所を作る。
両方とも強くていい男です。

2人の関係も甘くて強烈ですが、一方、Vanguard設立の時の昔語りなんかがすごくいい。
闇にさらわれた王子、そして変わりはてた帰還と、そのために払われた犠牲。あれだけで1本話になりそうな、とてもいいエピソードです。
その時の悲劇が原因でVanguardは作られ、そして時はめぐり、Rathianの時代に至ってすべてが決する。歴史に一区切りがつく、そのスケールがなかなかでかい。

エロエロでラブラブなファンタジーが好きな人に是非おすすめ!

★エロ多め
★ファンタジー(軍隊)

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Many Roads Home
Ann Somerville
Many Roads Home★★ summary:
Sardelsa大公の息子Yveniは、父親の死後、義理の兄の罠を逃れて命からがら故国を離れる。
あと2年たって19歳になれば、彼は法定年齢に達し、その時こそ国に戻って自分の継承権を主張し、簒奪者である義兄と対決することができる筈だった。
それまで身を隠し、力をたくわえるしかない。

姿をやつし、身分を偽り、密輸業者とともに船に乗ったYveniは、船の難破で連れを失って一人ぼっちになってしまう。
たよれる者がいる国まではまだ遠い。どうにか商隊とともに旅に出るが、道中でさらわれ、奴隷として売られる羽目に陥った。

Paoleは子供の頃に奴隷業者にさらわれ、売られてからずっと奴隷として生きてきた。いい主人も、悪い主人もいた。
だが最後の主人は思いやりがあり、Paoleに人の治療をする能力が生まれつきそなわっていることを知ると、彼に教育を施した。そして自分の死とともに、Paoleを解放した。
自由になり、村から村へと治療の旅を続けながら、だがPaoleは自分の内側に埋められない孤独を感じていた。
長い冬を1人の小屋でこす前に、彼は市場で奴隷を買う。1人でも、苛烈な運命から救い出せればいいと思ってのことだったが、その相手が本当の奴隷ではなくSardelsaの世継であると知り、Paoleは怒りにかられる。

YveniとPaole。2人の運命は奇妙な形で絡み合い、その中で、Yveniは国に戻って使命を果たそうともがくのだったが…
.....



作者のAnn Somervilleはサイトで素晴しいエンパスのシリーズを書いていて、彼女が商業デビューしたことが、私が商業スラッシュを買って読むようになったきっかけでした。
相当な筆力のある作家で、芯の通った設定とストーリー、キャラの間にあるテンションや、時に相手を傷つけずにはいられないほどの価値観のせめぎあいが読みどころです。
なかなか商業では彼女独自の持ち味を発揮できずにいるように見えましたが、「Many Roads Home」では2人の登場人物の生き方を、ファンタジー世界を舞台に鮮やかに描き出しています。(電話とかあるんで、ファンタジーと言ってもまたちょっと毛色がちがう感じですが)

Yveniは姉や妹を故国に残して、遠い国で奴隷として売られる。Paoleは奴隷を助けて、ついでに旅のつれになってくれればいいと思って大枚はたきますが、Yveniは彼にとって憎い国の人間だった。そして、奴隷ですらなかった。
なかなか本当のことを言わないYveniをPaoloは信頼できず、YveniはPaoleからどうにか逃れようとする。
2人のいきちがいと、激しい対立、やがてわかりあうまでに至る日々が丁寧に書かれています。

国を逃げた時にはまだ弱々しい、我侭で高慢な部分もあるYveniは、色々な苦難の中で自分の知らなかった世界を知り、成長していきます。
Paoleは彼を厭いながら、その中にあるしなやかな強さに惹かれていくけれども、いずれYveniが国へ戻り、自分の手の届かない存在になってしまうだろうこともわかっている。
故国からさらわれ、奴隷として異国に育ち、Paoleには戻る場所がない。そんな彼にしてみれば、Yveniの中にある理念や理想が、ひどくまぶしく見えるのです。

この作者の作品はディテールが細かいこと、設定が非常に骨太であることが特徴で、ファンタジーとかSFとか、非常にうまい。
今回もPaoleの(Yveniと出会う前の)村から村への旅と、その中で感じる孤独や、Yveniの逃亡の日々が細部に渡って書かれています。
スラとしての2人の関係というよりは、他の登場人物も含めたそれぞれの生き様と選択、それが交錯するさまがメイン。

そういう、ファンタジー世界のディテールを読むのが好きな人におすすめ。
作者のサイトではかなりの量のフリーストーリーが読めますので、こちらもおすすめです。とりあえず「Darshian Tales」を読むのがいいかな、と。

★ファンタジー

Gaven
J. C. Owens
gaven★☆ summary:
Gavenは敗北に打ちのめされていた。
Masarianの軍勢の前に彼らの民は破れ、友であるMichaelも死んだ。

自分自身も殺されることを予想していた彼は、突然現われたMasarianの将軍によってとらえられ、彼の「父親」であるという人間の前につれていかれる。
その「父親」はMasarianの権力者であった──
Gavenが敵だと信じて疑わなかったMasarianは、彼自身の生まれ故郷だったのだ。

人生の変化を拒み、彼らの元から逃げ出したGavenは、Michaelを埋葬するために故郷へと走る。

だが彼の力では及ばないほどの荒々しい力が、Gavenを追ってきていた。彼をとらえたあの男、年をとらず、人の血を呑む戦士──Vlar。
.....



BLにあって商業スラにないもの、というのは色々ありますが、「無理矢理」カテゴリってのが基本的にない。ネット上では見かけるので、嗜好というよりモラル的なもんなのだろうかと思ったりしてます。
でもファンタジーだとたまにそんな話があったりして、「ファンタジーだからちょっとガイドラインがゆるくなるんだろうな」とも思ったりもしてます。

で、この話が「敵につかまって、父親と名乗る男によって別の男に身柄を与えられる」みたいなあらすじだったんで、こりゃまずまちがいなく無理矢理系かと思ったら、かなりちがいました。ううむ。そんなところに文化差を感じたり。

基本的に、Gavenの成長ストーリーです。ファンタジー部分がしっかりしていて、描写も丁寧なのでファンタジー好きなら読んでいて楽しい。
Gavenが何度も逃げ出そうとしてもがくところや、自分の非力さに打ちのめされる心の動きもよく書かれていて、世界に自然に入りこめます。
Gavenの価値観は根底からくつがえされ、彼は傷つき、追いつめられる。自分を疑い、世界を信じることができない。選択は目の前に2つあって、そのどちらを選ぶこともできない。
そういう気持ち、そしてGaven自身の変化が、脱走や身にふりかかる苦難を通して描き出される。

どちらかと言うと、スラ部分よりはそういう「ファンタジー」の部分を楽しむ話だと思います。私はファンタジーが好きなので、かなりよかった。
人外が出てくるんですが、そんなに人外っぽくもなく、そこはちょっと惜しいかなあ。前半がすごく丁寧に書かれてる分、逆にあっさりと終わったのも勿体ない。人外がいるならもうちょっとエロエロしてもいいだろう!「儀式」だってあるんだしさ。…とかまあ、それはこっちの勝手なイメージですが。
でもエロが1つもなくても成り立つような、ちゃんとしたファンタジーです。
Gavenは苦しみ、孤独の末に、最後に自分の帰る場所を発見する。

ファンタジージャンルが好きな人におすすめ。

★敵
★ファンタジー

「Windows In Time」を読了。いい話でした。ラストにじーんとしちゃったよ。
ゴーストストーリーとして秀逸だったと思うので、そのうちレビュー書きます。

しかし、カプの片割れ(若い方)が送るメールの文面がすごい。たとえば
"ur evil. dont tell me. cmng ovr aftr wrk 2nite."
(You are evil. Don't tell me. Coming over after work tonight.)←多分
とか。ネトゲか。
「ちゃんとした英語で送ってくれ」ともう片方に言われたりしてました。

今はCatt Fordの「The Long Way Home」。アンソロの一本のようですが(どうやってかわからんがバラで買ってるんだけど…)、裸の男がサンタのコスプレしてる表紙がかなりヤバい。ちなみにコレ
話はおもしろいんだけど割に普通なので、このままだったら表紙が一番インパクトあるということになりかねないかも…

現在読書中
M. Jules Aedinの「Windows In Time」
Jordan Castro Priceの「Sweet Oblivion」シリーズ(「Channelingl Morpheusz」の続編シリーズ)

Jules Aedinのは現代と50年前の2つの時代で進行する話で、なかなかおもしろいです。2つのカプのどっちも先行きがすごく気になる。
エロ描写がぬるめなのが、また雰囲気あっていい感じ。

Jordan Castro Priceのは…シリーズが新しくなってますますダークになってる。
Michaelどうなっちゃうのだ、ほんとに。3Pとかやってるし。

※読書日記カテゴリを作ってみました。ぼちぼち読書中に呟きます。

Fair Winds
Chrissy Munder
FairWind★★☆ summary:
Rudy Haasは船とレースを何より愛していた。
だが、何とかやりくりしてレースの参加費分担を払い、ヒッチハイクで湖にたどりついてみると、仲間のクルーは彼が船に乗るのを拒否した。
Rudyは信じられなかった。5年もともにレースをしてきた仲間が、Rudyがゲイだというだけの理由で、彼をこれほど嫌うとは。

帰りの金もなく、船で寝るつもりだったので夜眠る場所もない。
だが何より、レースに出られないことがつらかった。
どうにかして船に乗るため、Rudyはクルーの募集を探してバーをのぞき、コルクボードに留めてあった紙を見て驚く。Devlin's Due。その船の名を、彼は知っていた。腕のいい連中だ。

Devlin's DueのクルーをたばねるIke Ujarkaは、口数が少なく謎めいた男だった。
Rudyは一目でIkeに惹かれる。それも強烈に。

だがとにかく今の彼は、ヨットマンとしてクルーたちからの信頼を、そしてIkeからの信頼を得なければならない。船を、新たな居場所を得るために。
.....



レースヨットの話。と言っても、まだレースに入る前までの話ですが。
Rudyがいかに海を愛しているかがつたわってくるので(舞台はでかい湖だけど)、彼が船を下ろされた時のショックや、次の船を探すための切羽つまった気持ちがよくわかります。
彼の人生は船のためにある。その居場所をいきなり奪われた、失望はでかい。
でもレースは待ってくれないので、新しい船を探さなければならない。そして彼はDevlin's Dueの連中に出会うのです。

Rudyがころがりこんだ新しい船「Devlin's Due」のクルーは、実に「チーム」感があふれていて、読んでいて楽しい。何だか家族みたいです。互いにののしりあったかと思うと一瞬で結束する。
そしてリーダーのIke。(「アイク」じゃないかと思うんだけど、どうしても「イケ」と脳内でローマ字読みにしてしまう…)
大柄で物静かで、独特の雰囲気をたたえた彼が、至るところで格好いい。彼のセリフは数えるほどしかない気がしますが、それでも格好いい。

Rudyは彼らにクルーとしての適性をテストされる短い日の中で、色々なことを体験します。容赦のないしごき、Ikeへの恋、船の上でのキス、湖上の嵐、事故…
そのすべてがRudyを強く揺さぶる。前の船を下ろされたからというだけでなく、彼の人生はその日々で大きく変わっていくのです。
スラではあるけれども、カプがどうとかと言うよりむしろ、Rudyの成長話という趣が強いですね。それがテンポよく、色々な人生のドラマを散りばめられながら語られます。筋は複雑ではないんですが、うまくできた話で、かなり手練な作者かと思う。

クルーとして迎えられることができるのか、不安ながらも、全力を尽くすRudyの懸命さがなかなかいじらしくて、応援しつつ読んでいました。
IkeとRudyだけでなく(このカプもなかなか味わい深いんですが。…Rudyはちょっと苦労しそうな気がする)、Devlin's Dueのクルーの話の続きが読みたいなあ。
微妙に書き残されたこともあるし。話はきっちり完結してますが、設定がもうちょっと深めに設定されている気配があって、作者側も続きを書くことを前提にしているのかもしれない。
楽しみです。
みんなでレースに出て、Rudyの前の船をけちょんけちょんにしてくれたらすごく嬉しいんだけどな!

スポーツもの、海もの、船ものが好きな人。「仲間」感があるものが好きな人におすすめ。

★ヨットレース

Don't Look Back
Josh Lanyon
Don't Look Back★★★ summary:
博物館で働くPeter Killianは、奇妙な男の夢から目覚めると、病院にいた。
何があったのか。誰かに殴られて脳震盪をおこし、運びこまれた筈なのだが、何があったのかPeterには理解できない。思い出せない。
記憶障害だと医者は言った。

ロサンゼルス警察のMike Griffinという男が姿を見せるが、何故か彼はPeterの記憶障害が偽装であると思っているようだった。「都合がよすぎる」とGriffinは言う。
そして博物館からは以前から少しずつ物が盗まれていたこと、それに気付いたPeterが警察に届け出たこと、Peterがその泥棒に殴られた可能性があることを告げた。盗みの現場に行きあたってしまったのだと。
だがGriffinも、周囲も、まるで悪いのはPeterであるかのように振る舞っている。
何かがおかしかった。

自分が疑われていることに気付いたPeterは、身を守ろうとするが、記憶は戻らない。
脳に問題はなく、医者によればPeterは何か思い出したくないことがあるようだった。自分で自分の記憶をブロックしているのだ。
病院に来てくれる身内もいない。泥棒の疑惑をかけられたままでは職を失う。馴染みのない自宅に戻ったPeterは、自分がこの半年、抗鬱剤を飲んでいたことを発見する──

記憶にない自分は、一体どんな人生を生きてきたのだろう。何をそんなに苦しんでいたのだろう。Griffinは何故Peterをあそこまで嫌うのか。殴られた夜、Peterが見たのは何だったのか。
何もわからない。
ただひとつだけ、Peterがわかるのは、自分が決して博物館から物を盗んでいないこと──自分が無実であるということだけだった。だがそれを証明する方法はどこにもなかった。
.....



Josh Lanyonは「記憶喪失」ものに萌えるんだ、と言っていました。「White Knight」でもやっぱり記憶喪失ものをやってましたね。
実際、うまい。Peterの視点から見た世界は最初のうち、ひどく狭くて、一方的です。人を見た時に感じる第一印象は薄っぺらだし、深みがない。
やがて彼が情報を集め、色々な角度から物を見て、自分の記憶のかけらとつなぎあわせるにつれ、世界は形を変えていく。そのパースペクティブの変化がなかなかの読みどころです。
そしてPeterは、自分が仕掛けられた大きな裏切りに気付いていく。

それは長い時間をかけた裏切りで、Peterにとって「記憶を取り戻す」のは、その長い時間に対する「気付き」のプロセスでもあります。自分のことを他人のように外側から見て、自分がどう生きてきたのか、あらためて彼は見つめ直す。フェアでなかったいくつかの出来事、かつては見えてこなかった物事の裏。過去の自分が目をふさいでいた真実。
犯罪の謎解きと同時に、そのPeterの目覚めが物語の大きな軸になっています。
そして、彼が忘れてしまった──心の奥底に封印してしまった、ひとつの恋。

結構そのへんが痛々しくて、読みながらしみじみしていました。
気がついたら病院だわ、刑事(Griffin)にはよくわからんことでやたら怒られるわ(そのうちそのへんもわかっていくんですが)、泥棒の濡れ衣は着せられてるわ、仕事は解雇されそうで、友人が紹介してくれた弁護士は「さっさと罪を認めよう」と言ってPeterの無実の主張をまるでとりあわない。
そんな中ではよくやってますよ、Peter。どちらかと言うと物静かな感じの人なんだけども、とにかく追いつめられているので必死。

謎解きもおもしろいです。すごく手がこんでいるわけではありませんが、人と人の間にある暗い歴史のことを考えさせられる、ちょっと怖い部分のあるエピソードでした。
スラとしてもちゃんと盛り上がってます。Peterはエロティックな夢を見るけれども、恋人の顔がわからない。だが少しずつ、気付いていくのです。
記憶喪失ものなんであんまり書くとおもしろみが減りますが、なかなかドラマティック。

Lanyonの書くカプはいつも、2人の間にあるテンションが強くていい。優しかったり甘かったりばかりではなく、時に傷つけあうほどの緊張感なんだけれども、それもすべて、相手にまっすぐ心を向けているからこそ。その強い視線に引きこまれます。

謎解き、記憶喪失、ちょっと入り組んだ話が好きな人におすすめ。話の構成は素直なので読みやすいです。

★記憶喪失
★濡れ衣

Convincing Arthur
Ava March
ConvincingArthur★★★ summary:
1821年、イギリス、ヨークシャー。
Leopold Thorntonは、ヨークシャーの屋敷でArthur Barringtonの到着を待っていた。ついに。10年待ってついにこの機会が訪れたのだ。
この週末を、Arthurは彼と共にすごすと承知した。滞在の間にどうにかしてLeopoldの気持ちをつたえ、それが真摯なものであることをわかってもらわなければならなかった。

10年続いた関係の末に不実な恋人と別れ、傷心のArthurは息抜きを求めていた。
Leopoldはその相手にぴったりであるように思えた。遠い昔の友人であったが、いつのまにかLeopoldはロンドンの虚飾の中に溺れ、Arthurとは離れた。だが噂はいつも耳にしていた。父親からの信託財産によって富裕な彼が派手なギャンブルや酒に身を浸し、男も女もかまわず不実な遊びを続け、高級売春宿でもよく知られた顔だと。
週末のちょっとした楽しみ。遊び。今のArthurに必要なのはそれだった。
日常から離れ、自分を傷つけた恋人を忘れること──ほんの一瞬だけでも。

Arthurは、その恋人とずっとより添っていけると信じていた。信じこもうとしていた。相手が彼の心を破るまで。
このまま孤独に生きていくことには耐えられない。ともに様々なことを分かちあい、ともに老いていく相手がほしかった。そばにいない時も、彼のことを思ってくれる相手。体だけでない、何かを分かちあえる相手。パートナー。
この週末、Leopoldとともにすごす時間で過去の傷を拭った後、ロンドンに戻れば、Arthurはそういう相手を探すつもりだった。

LeopoldとArthurは強く相手を求める。だがそれが一瞬の遊びであると疑わないArthurに、Leopoldは彼の心の内を見せることができるのか…
.....



Ava Marchは相変わらずイギリスの貴族ものを書いています。ありがたいことです。貴族とか身分とかロンドンの退廃とか大好きだ!
端正な文章なので、雰囲気があります。表紙に描かれてる家も素敵。

Leopoldは確信に満ちた、傲慢で美しく裕福な男だが、Arthurのことに関してはてんで駄目です。まだ少年の時に出会い、恋をして、言い出せないでいたらいきなり横からかっさらわれ、それから鬱々として10年を遊び暮らしてきた。
Arthurはその姿をただの遊び人としか考えていませんが、その10年、LeopoldはどうにかしてArthurを忘れようとしてきた。そのことを当人だけが知っている。

Arthurが恋人と別れたことを知った彼は、今しかない!と根性を入れてArthurを誘うわけですが、とにかく10年分の気持ちがあるので、それをつたえるのは生半可なことじゃありません。ただでさえ、他人に内心を見せずに10年のらりくらりと遊んできた男です。
自分の心を剥き出しにしてArthurに見せるということは、拒絶や嘲笑によってとりかえしがつかないほど傷つく恐怖と背中あわせです。それが怖い。でも手に入れられないのはもっと恐しい。
じゃあとりあえずさわっちゃえ(←短絡的)。とか、体の関係から気持ちよくなって、Arthurが逃げ出せないようにしてしまえ(←ちょっと黒い?)とか、幾分レールを外れがちなところも見受けられますが、それも愛ゆえにだな。多分。

ArthurはLeopoldが心の奥に秘めてきた思いのことを(ちらちらヒントは出てるんですが)まったくわかっていない。Leopoldのそばにいると予想より居心地がいいことに安心して、それから彼は不安になる。
Leopoldに馴染んで、この週末が終わった後、使い捨てのように背を向けられるのはつらい。この不実で多情な男に心を向けるのはまずい。
週末の気楽な遊びのつもりが、ちょっと予想とは軌道が外れつつあって、彼は怯えます。

彼らのテンションが段々に高まり、やがて破綻を生む──そのクライマックスが痛々しいと同時にとてもロマンティックで、胸にせまるものがある。

ちがう理由で相手を求め、ちがう理由でそれぞれに怯えている2人の男。
彼らのすごす週末が静謐な文章で情感こまやかに綴られています。
中編くらいの長さかな。
貴族やヒストリカルものに萌える人なら鉄板。すれちがい好きにもおすすめ。

余計なことですけど、この作者の作品はタイトルはもうちょいひねりがあってもいいかも、と思う。苦手なんだろうか…

★ヒストリカル
★放蕩/真面目

Somebody Killed His Editor
Josh Lanyon
Somebody Killed His Editor★★ summary:
Holmes & Moriarityシリーズ1

40歳のミステリライター、Christopher Holmesは作家人生の岐路に立たされていた。彼が長らく書いてきたシリーズの売り上げが落ち、エージェントから「もっと時代に即した、売れるものを書かないと」と強く言われる。
エロティックなものや吸血鬼やらが出てくるもの。一体どうやって?

エージェントのすすめで、彼はとある作家の集会にしぶしぶ参加する。そこに来る出版社の人間に新しいシリーズのアイデアを買ってもらわなければ、作家としての彼のキャリアは行き詰まったも同然だった。
問題は、彼にはまるで新しいシリーズのアイデアがなかったこと、さらに切迫した問題は、集会のあるロッジにたどりつく前に女の死体に行きあたったことだった。

橋が落ちて、誰もそのロッジから──嵐がやむまで──出ていけない。まるで推理小説の舞台のようなその状況で、Holmesは思わぬ男と顔をあわせる。
J.X. Moriarity。元警官のベストセラー作家。
10年前、週末をともにした相手。ただ1人、彼を「Kit」と呼ぶ男。
そしてJ.X.は、Christopherを殺人の容疑者として部屋に軟禁すると言う…
.....



Moriarityと言えばモリアーティ教授かと思いきや、あっちの綴りは「Moriarty」らしい。でも当然、あの2人を念頭にしたキャラですね。性格はかけらも似てない(似せてない)と思うけど。
古典のミステリのスタイルを踏まえつつ、それを使って現代のスラにしてみた、というユーモアミステリです。

外界から閉ざされたロッジ、嵐、正体不明の殺人者、2つ目の死体、主人公にかけられる嫌疑──と、古典的なミステリの要素がたっぷりつめられています。作者のLanyonは非常にテクニカルな作家なので、色々とほかにも計算されているにちがいないと思いますが、私はミステリの原書を読んだことがほとんどないのでどこまで何を踏襲しているかわからないのがちょっと残念。
あと時事ネタとか、実在する人の名前とかが散見されますね。「セーラームーンのフィギュアか」とか、そういうツッコミしかわからない自分がちょっと切ない。わかる人なら10倍は楽しめるでしょう。
でもそれはそれとして(得意技でスルーしつつ)、おもしろく読んだ一冊です。

主人公のChrisはかなり悲惨な状況です。ずーっと書いてきたシリーズが打ち切りになるかもしれない。古典的なミステリというのはもう求められていないのかもしれない。
マーケティング、すべてをひっくるめた「パッケージ」の問題なの、とエージェントは言う。小説そのものはもはや問題ではないのだと。
それで嫌々、作家の集会に出てくるわけですが、落ちていく橋を命からがら走りきり、死体を見つけ、うっかりJ.X.とよりを戻したと思えば「気の迷いだった」と言われる。挙句に新シリーズの話なんかそりゃもう、砂上の楼閣です。ていうかこの人がでたらめに話す新シリーズネタが、実際無茶苦茶なんですが。

踏んだり蹴ったりの状況下、Chrisは持ち前のユーモアで周囲をさらに苛々させていく。それも、主にJ.X.を。Chrisは繊細だけど相当に図太い。
J.X.はどうもChrisを守りたいと思っている様子ですが、10年前の逢瀬の時の出来事を許してもいないし、でもChrisに惹きつけられる自分を否定もできない。
J.X.のChrisに対する人あたりにも、相当にきついものがあります。

この2人の関係がなかなかいい。J.X.は5つ年下で、かつてはChrisを憧れの目で見ていた新人の後輩だったのに、久々に会ってみたらえらい皮肉屋で悠然としたベストセラー作家になっていて、Chrisは正直落ち着きません。そりゃそうです。それにしてもJ.X.は魅力的。
作家と元警官、というのは同作者のAdrien Englishシリーズにも似た流れですが(あっちは作家志望の本屋と警官ですが)、あれほどヒリヒリした、さわると怪我しそうな切迫感はありません。J.X.はゲイである自分を否定してないしね。
それだけに、反発しあいつつも、ひとつ転がれば2人で幸せになれそうな感じがあって、読んでいるとじれったくも楽しい。

J.X.はずっとChrisが好きだったんだろうなー、それで怒っているんだろうな、というのがあちこちに滲み出ているのに、当のChrisが鈍いのもかわいい。セックスなら別に平気だけど、それ以上のところに話が及びそうになるといつも慌ててはぐらかそうとするし。
そういうつもりはないのについつい事件をつっついてみるChrisを、J.X.は本気で心配し、苛立っている。でもそんなJ.X.をChrisは助けたり、最後のしっぺ返しをしてのけたりする。いい組み合わせの2人です。

ミステリ部分も、やはり古典ミステリへの敬愛をこめてだと思いますが、基本パターンにのっとっているのでわかりやすい。
わりと軽めに楽しめる一冊。
古典ミステリやユーモアミステリが好きなら勿論、「10年ぶり」とかに萌える人にもストライクだと思います。

作中に「Elementary, my dear..」という決め台詞がありますが、これはホームズの「Elementary, my dear Watson」(初歩だよ、ワトソン君)からのものです。
ほかにもそういうのいっぱい隠れてるんだろうなー。
しかしdearとか入ってたのね、ホームズの台詞。萌える。

★ミステリ(古典系)
★再会

Blue Fire
Z. A. Maxfield
Blue Fire★★ summary:
炎がJared Kennyの家を焼きつくした。人生の半ばをともにすごした恋人の記憶、彼の残したすべても灰になった。
何ひとつ、彼には残っていなかった。

Adam Collinsは、燃える家を見つめて茫然としていた男のことが忘れられなかった。
絶望と悲嘆で心をとざしたJaredをAdamは何度も見舞い、リハビリ施設からつれ出して、自分の故郷にあるバンガローへとつれていく。

Adamの情熱とその青い目は、Jaredにそれまでの人生で得たことのなかったものを与えた。情熱、愛情、優しさ。Jaredは、その中にたやすく溺れてしまう自分を知っていた。かつて年上の恋人に溺れ、人生のすべてをたよってきたように。そして人生のすべてを炎の中に失った。一瞬で。

恐れ、迷って、JaredはAdamのもとを逃げ出す。
自分の過去から、炎から、Adamの青い目から。

だがその青は、どれほど時間がたっても彼の心から消えなかった。ほかのすべての青よりも彼を惹きつけてやまない、冷たい、だが同時に炎のようにあたたかな青。
その青への情熱を、Jaredはガラスへと向ける。火で溶け、火の中で作られていく色と形に。
そして炎は、形を変えてふたたび彼らを結びつけようとしていた…
.....



Z. A. Maxfieldにしてはわりとあっさりとした長さの、中編くらいといった感じです。
出版社(LooseID)の企画もので、Cameron Daneが「Dreaming In Colors」で「赤」をテーマにしたように、彼女は「青」をテーマにしています。

年上(37歳)の男と年下(24歳)の消防士。
炎を通した彼らの出会いと、短いが激しい人生の交錯、時がすぎ去った後のふたたびの思わぬ出会いの物語です。人の尊厳、プライド、そして傷と回復の物語。
繊細なJaredをAdamは強く求めるけれども、当のJaredは、自分の中にそれに値するものを見つけることができない。Jaredは死んだ恋人を愛していた一方で、彼に支配される人生を嫌ってきたようです。でもいざとなると、自分の人生をどうやって確立すればいいかわからない。
恋人を失い、家を失って、彼は袋小路に迷いこむ。

その年でモラトリアムか、という感じもないではないですが、「優柔不断に落ちこんでいる年上の男を年下の若者が力まかせに追っかける」の図はなかなかいいものです。
若さゆえの情熱に引きずりこまれたい、でも怖い、というわけで、当然のように年上受け。
この作者は、基本的に年上受け萌えなんだと思います。優柔不断だったり優しすぎたりする年上男の心の安定を迷いのない年下がつっこんで叩き壊す、というのが基本。ツボにはまるとすごく楽しい。

この一編は、ちょっと短いこともあってか2人の変化が唐突に感じられるところもあるんですが、モチーフが美しいので、ビジュアル的な美しさがあって、風景や物が2人のかわりに彼らの心にうつるものを語っているようです。そのへんの行間は味わい深い。
炎によってダイナミックに変えられてしまう2人の男の対比は激しく、陰影がくっきり浮き上がってくるのはさすがの筆力です。もうちょっと長さがあればぐっと鮮やかな話になったのではないかと思わないでもないけれど、逆に話の展開はこっちの方がわかりやすいかもしれません。

この作者らしく、繊細な話で、雪やガラスのイメージが綺麗です。
消防士萌えだったら勿論、年の差やちょっとたよりない年上受け萌えなんかもおすすめ。

これはLooseIDの企画、「Flying Colors: Red White and Blue」の一環です。
我知らずとは言えもう2冊読んだので、折角なのでほかのも(m/mのは)読んでみようかなと思ってます。

★年の差
★炎

futon」という単語を最初に見たのは多分、Lee Rowanの小説だった(まだレビューしてないやつ)と思いますが、T.A.Chaseの「Finding Love」にも出ていました。
読んだ感じ、ふとん、とはちょっとちがうらしい。

ゲストに向かって「ベッドもあるし、futonで寝てもいい」みたいな表現があったので、最初はソファベッドみたいなものかと推測しました。友人同士でfutonに座ってお菓子食べながらテレビを見る、とか書いてあるし。
しかし引っ越しのシーンで「折りたたんだfutonをかついで階段をのぼる」とか「いくらたたんでもひろがってきて大変」とか書いてあるのにつきあたり、座れるマットレスみたいなもんかな?と脳内方向修正。
そしたら別件で「futon-couch」なるものまで出現する始末です。

ここに至って、やっと調べる気になる。

どうも「kimono」が「着物」とは異って「前あわせのナイトガウン・やや異文化風味」をさすようになったように、futonはfutonで英語圏で進化をとげているらしい。

ふとん
↑通販サイトの「futon」  $249.95

Wikipediaによると、これは「Western futon」というもので、日本式の布団をベースにして変化したものだそうです。大抵がフレームの上にfutonをのっけたもので、大抵ジョイントの部分がのばせて、ベッドになるものです。(2階に運ぼうとして苦労したのはマット部分ではないかと)

普通のソファベッドとちがうのは、多分、フレームとfutonとが分かれてるあたりじゃないかと思います。んで結構安いみたいです。
そう思って見ると、これなかなか便利そうだな。

うろうろしてたら、exite ニュースに小ネタとしてのってるのを見つけました。
>英語の「Futon」は布団じゃなかった!
ここには「futon」の名称の由来を「コットンマットレスだから」と書いてありますねえ。ううむ…

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