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Amor en Retrogrado
A. M. Riley
Amor en Retrogrado ★★ summary:
Robert Lemosの15年ともに暮らした恋人、JD Ryanが路地で撃たれて発見される。彼の連れは死に、JDは病院に運びこまれ、保険の書類からRobertに連絡がいく。
Robertは1年前、JDと破局していた。

病院に駆けつけたRobertは、JDが彼のことを記憶していないこと、おそらくは外傷性のショックによって部分的な記憶喪失に陥り、出会う以前の彼に戻っていることを知る。どうすればいいのかわからないまま、Robertは退院したJDを自分の家へとつれて戻る。
自分たちがすでに別れていることを、どうしても彼はJDに告げられない。何より、彼はまだJDを愛していた。
この15年ずっと、愛しつづけていた。
だがJDとの関係は悲惨なものだった。彼らは常に争い、JDはRobertを傷つけ、Robertが仕事に没頭するとJDは酒を飲んだ。JDは誇り高い男だったがいつもどこかに怒りをかかえていて、そんな彼をRobertが守ろうとする、その行為すらJDを傷つけた。
愛はあった。それはまちがいなかったが、彼らの間に信頼はなかった。

記憶を失ったJDはいつになくおだやかで、Robertへの愛情を素直に見せる。もしかしたら彼らはまたやりなおせるだろうか。
そう思いながら、また痛みをくり返すことにRobertは臆病になっている。
そしてまた、JDとその連れを撃った犯人への捜査が進むにつれ、疑いはRobertへと向けられ…
.....



これはおもしろい展開の小説で、「JDが撃たれた→Robertの家へ→事件の捜査進行」という現在の時間軸の間に、フラッシュバックのようにRobertとJDとの関係が挿入されていきます。それによって、彼らの痛みに満ちた日々が浮き彫りになっていく。その構成が非常に巧みです。
JDはもともとゲイではない(というか、気付いていない)。だが彼はRobertに出会って恋に落ち、しかし混乱し、己のセクシュアリティを否定しようとしてできず、怒りに満ちる。その怒りが、後々まで彼に影響を及ぼしていたように見えます。

陽気で美しい恋人を得て、Robertは生涯ではじめて「幸福」というものを味わう。
だがJDは時にシニカルに彼らのことを「セックスにすぎない関係」と言ってのけ、彼らが結婚してからも、「その関係に意味があるのか」と問う。彼はどこか暗いところへ目を向けているようなところがあって、やがてその怒りや、Robertの独占欲が彼を喰いはじめる。そしてJDは酒に逃げ、Robertは仕事に逃げる。
その日々が、エピソードの挿入によって次第に明らかになっていきます。
2人の関係がRobert視点から描かれるため、はじめのうちJDは勝手なふるまいのわがままな恋人に見えますが、段々と、Robert側にも問題があることがわかってくる。
彼らはどちらも弱く、どちらも相手を信頼していない。愛はあるけれども、傷つけあう武器のようにそれを振り回してもいる。
その過去の様子と、今の(記憶を失った)JDのやけに素直な様子との対比が悲しい。
果たして彼らは、思いもかけない形で新しい絆を作れるか。それともただ、かつての失敗をくり返すのか。


小説としてはいくらか弱いところもあって、捜査する側のエピソードがちょっとわかりにくかったり(ていうかあれ必要か?)、いらんところでキャラ視点の移動があったりします。私は視点固定じゃない(同じ章の中で視点があちこち移動する)小説って嫌いじゃないですが、この作者は「固定」のように見せておいて、たまにふらっと視点を動かすので語り口として不安定なのです。
ただ、それを補ってあまりあるほど、2人の感情のほとばしりは見事だと思います。Robertの視点から見ているにもかかわらず、JDの中にある痛みはあきらかで、ねじれていくしかない関係のどうしようもなさが切ない。特に中盤から非常に読みごたえがあります。
スペイン語があちこちに散見されまして(わからなくても読める、つか読んだ)、巻末にスペイン語スラング辞典があるのがちょと楽しい。
タイトルの「Amor en Retrogrado」は機械翻訳だと「後退するiの愛」とか出てくるので(英語だとLove in I Retrogradeとか)、「巻き戻された愛」とかそんな感じ…で、いいのかなあ。

★記憶喪失
★破局した恋人との再会

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