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Fatal Shadows & A Dangerous Thing
Josh Lanyon
AdrienEnglish1★★★ summary:
Fatal Shadows(1作目)
LAでミステリ書店を営みながら小説を書くAdrien Englishは、友人のRobertが滅多刺しにされて殺された事件の嫌疑をかけられる。Adrienはゲイ、Robertはバイセクシュアルで、学生時代からの古い友人同士だったが、彼らは恋人であったことは一度もなかった。だが他人から見れば奇妙に近しい彼らの関係、そしてこの9ヶ月RobertがAdrienの書店で働いていたこと、Robertが死ぬ前に最後に会った相手がAdrienであったこと、口論をして別れたこと、Robertが何故かレストランにAdrienを探しに戻ってきたこと──などがLAの殺人課刑事、Jakeの疑いを呼ぶ。
同時にAdrienの周辺で奇妙なことがおきはじめ、本屋への侵入事件や無言電話などからAdrienは自分がストーキングされていると感じるが、刑事たちはAdrienの思いすごしか、なお悪いことに、疑いを自分からそらそうとする陽動であると思っているようだった。
Adrienは逃げ場のない状況からの出口を探すためにやむなく事件を調べはじめるが、そこには彼とRobertの学生時代にまで根を遡る、深い、深い憎悪と狂気の物語が隠れていた。
古い、自分の知らない罪と恋のせいでAdrienは命の危険にさらされる。次は自分が殺される番だと気付きながら、誰がその凶器を握っているのかわからない。それでも彼は出口を探して闇を掘るしかない。

A Dangerous Thing(2作目)
Adrienはうまくいかない恋人(未満?)との関係にいささか苛立って、祖母の遺産である牧場へと車をとばす。子供の頃から一度も帰ったことのない、今は誰も住んでいない、誰も友人のいない場所へと骨休みと執筆を兼ねて出かけたものの、そこで彼が見たのは謎の死体と、その死体の消失、そして自分の敷地に生えるマリファナの青々とした茂みや、何故か敷地の山奥を掘り返している謎の集団だった。
トラブルが次々と襲いかかり、Adrien自身の身にも危険が及んだ時、恋人が駆けつけて彼を救おうとする。だがAdrienはただ救出されるにはあまりにも頑固で、山と積まれた問題を残してその場から逃げ出す気などさらさらなかったのだが…
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Adrien Englishミステリシリーズ1&2が1冊に入っています。
このシリーズは人気作家Josh Lanyonの中でも一番人気のシリーズで、本当に何というか…いい小説です。謎解きがあり、人と人とのドラマや葛藤があり、どうにもならない運命の出会いや別れがある。
あえて言ってしまえば、これは「Adrien Engiishの人生」の断片のような話なのです。

Adrien Englishはとても魅力的な主人公で、この話は一人称で語られるのですが、Adrienがどういう人間なのか、会話や彼のややシニカルな独白の中から鮮やかにたちのぼってきます。32歳、父親はアメリカ人で母親はイギリス人、父とは早くに死別。16歳の時に生死にかかわる大病をわずらって以来心臓の弁に異常があり、薬を服用。敏感な時期をいつ死ぬかもわからないという状況下ですごしたためかやや人生にさめた視点をもっていて、他人に対してはさらりとした人づきあいをする方です。5年間暮らした恋人が去っていったことがいまだに深い影をおとしているようにも見えます。
だが人なつこくもあり、ユーモアに満ち、率直で、Adrienと話すと人はたいてい自分の内面を正直に見せる。そしてAdrienは非常にするどい目で、他人の内面を読む。ミステリ好きではあるが犯罪に関しては素人の彼が、そうして彼独特の視点から様々な断片をひっくり返しながら真相を掘り出し、実は自分のすぐそばによりそっていた狂気の存在に気付く──その瞬間まで、緊迫感のある展開が続きます。

「ミステリ風味のスラッシュ」というよりは「ミステリでもありスラッシュでもある小説」と言った方がいいか。ミステリとして充分おもしろいですが、スラッシュとして見るなら1作目はシリーズの「導入」です。本当の展開はその先にある(その2作が1冊に入っているのは、本当にかしこいと思う)。
1作目で彼は思わぬ相手と関り、2作目ではその関係が彼の予想した以上に深まる。だがそれは色んな意味において未来のない恋で、その関係のいびつさと思いの激しさがAdrienと彼の人生を悩ませつづけます。
そんな中でもがきながらも、いつもAdrienはフェアで、毅然としている。そのことが自分を傷つける時でさえ。決して声高でもなく、弱くもありますが、こんなにたたずまいの潔い男というのはあまりいないんじゃないだろうか。
ドラマティックに語られるわけではありませんが、淡々と、皮肉とユーモアをまじえたAdrienの語り口には胸にせまるような繊細さがあって、はじまってしまった関係の先にあるものをAdrienが見すえたり、目をそらしたりしている様を読むのが時おりつらい。そして彼の語り口から浮き上がってくるのは彼の人生だけではなく、望みのない恋人の、複雑で痛みに満ちた人生でもある。

駄洒落とか謎解きとかあって英語としては私の手に余るところもあるんですが、難解なわけではないので、長文読み慣れてる人なら本筋は普通に楽しめると思う。
現在はシリーズ4作目まで出ています。これがまた胸がしめつけられるような話だったりするのですが、そっちのレビューはまたいずれ。
Lanyonはミステリとはちょっと毛色のちがう暴力的なクライムサスペンスも書いていて、そっちも本当におもしろい(強い男同士のカプが好きな人にはたまらん!)。「m/m小説の書き方」というハウツー本も書いています。今度読んでみようかな。キャラクターの際立ち方が本当に強くていいのです。
彼の作品に「ホームズ&モリアーティシリーズ」ってのがあるのは心底気になる…

いろんな意味でおすすめのシリーズですが、エロ以外の部分重視の人には特におすすめ。非常に自我の強い2人の向き合う話でもあるので、「男同士の恋愛」(ガチムチって意味じゃないぞ)を求める人にも。

★ミステリ・サスペンス

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