Slash×Slash

Slash(m/m小説) レビューブログ

※万人向けの内容ではないのでご注意ください
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St. Nacho's
Z. A. Maxfield
StNachos★★ summary:
Cooperは故郷から逃げ出してからこの3年、バイクで町から町へと渡り歩きながらほとんど路上で眠るような生活をしていた。時おりレストランの厨房などで働き、バイオリンを引いてチップを稼いだが、少しでも居心地がよくなるとそこからまた逃げ出す。
人と話したり、必要以上に関ったりする気はなかった。いや出来なかった。もはや彼の知る人の「言葉」は音楽だけだったからだ。

St.Nacho'sという海辺の店に転がりこんだ今度も、長く滞在するつもりはなかった。
その店では耳の聞こえないShawnという美しい若者が働いていた。彼にはCooperの音楽は聞こえない。
だがどうやってか、ShawnはCooperの中にある言葉を誰よりもよく理解するようだった。

過去と向き合うことができないまま、セックスだけの関りですべてを終わらせようとするCooperを、Shawnは時に乱暴なほどの情熱で殻から引きずり出す。そして静かな海辺の店で、Cooperは自分の中にある恐れ、罪、いつも背を追ってきた混沌とゆっくりと向き合いはじめるが、過去はやがて現実の形をとって…
.....


「何かから回復する」というのはスラにはよく見られるテーマで、それは肉体的な怪我や病気だったり、精神的なダメージだったりしますが、この話もそのひとつです。
Cooperを追っているのは過去の破滅的な生活と、その時に体にこびりついた泥のような記憶で、それから逃げつづけた彼はただこの先も逃げることだけを考えている。
ジュリアード音楽院でバイオリンを学び、もっとも若い第一バイオリン兼コンサートマスターとして未来を嘱望されていた彼は、アルコールやパーティに溺れ、車の事故をおこして、すべての未来を失っています。友人は彼のせいで刑務所へ行った。親は彼を家から追い出した。
それでも音楽だけは彼の最後の「言葉」として、世界と彼を結びつける。

Shawnは耳が聞こえません。唇を読むことはできるけれども、完全ではない。天使のようにきれいな顔をしている22歳の若者ですが、結構激しい面もあって、6歳上のCooperに対しても何の遠慮もありません。(セックスはTop、かつちょっとdirtyらしい…)
彼に惹かれたCooperは関係を持ってしまうが、それを深めたくはない。Cooperが求めているのはただのセックスであって、人との関りではない。だがShawnはCooperを離そうとしないし、Cooperの内側が痛みと混乱に満ちていることがわかってからも目をそらそうとせず、その視線につられるようにCooperもやっと自分のことを見つめるようになっていく。
その日々と変化がCooperの、淡々とした一人称で語られていきます。

Shawnに音楽が聞こえないことをわかっていて、ある時、Cooperは演奏している間バイオリンにさわらせてやる。振動をShawnが感じられるだろうと思って。
音楽はCooperにとって「最後に残された人としての言葉」で、しかしそれが誰かにつたわることを彼は期待していなかった。ましてやShawnには。だがShawnがどうやってか彼の「言葉」を正しく聞きとったことを感じ、その瞬間、はげしく動揺したCooperは演奏を乱してしまう。
これはとても美しく、痛みに満ちたシーンだと思う。音楽を自分の言葉としながらも、それが人につたわるとそこから逃げ出そうとするCooper。…まあ、もちろんShawnは彼が逃げることをゆるさないわけですが。

全体に筆致は淡々としています。痛々しくはありますが、必要以上にドラマティックに盛り上げる感じはない。文学的と言ってもいいような雰囲気もあるような。
会話文が少なく、Cooperの一人称も長いセンテンスが多い上に全体の話も長いので、多少長文読むのに慣れた人向けかと。(あとメール文などがぽつぽつ文中に入ってるので、斜体を反映しないStanzaで読むにも慣れがいる)
「うちは全部18禁だから」と言いきるLooseIDから出ているものにしては、びっくりするほどエロ描写少なめだ。
特にエロ以外の部分重視の人、繊細な話が好きな人におすすめ。

★バイオリニスト/耳の聞こえない恋人
★トラウマ・恐怖症

アメリカのオーディション番組を見ていたら、司会者が本選参加の決定した候補者に「君がつかんだ "opportunity" をどう感じるか」というようなことを聞いていました。
opportunityは「機会」や「好機」などと訳されます。
似たような意味の言葉に「chance」があり、日本語ではよく「チャンス」がopportunityの対訳に使われますが、実は英語で言う「chance」はニュアンスが微妙にちがう。

chanceでつかむ「機会」は、「運よく」(偶然に)というような意味があり、一方のopportunityには「自分の力や意志でつかんだ」という意味がある。
常にきっぱり使いわけるわけではありませんが、基本的にこの2つは異なる傾向を持つ言葉です。(しかも日本語の「チャンス」と英語の「chance」でニュアンスがちがうからややこしい…)

つまり、オーディションのように「自分の力で勝ち抜いてきた」時には、chanceではなくopportunityを使うのが正しい、ということです。

単語の「意味」のほかにこういう「ニュアンス」のようなものを嗅ぎわけられたら、小説を読んでいてもっと楽しいだろうなあと思います。
…まあその前に肝心の「意味」にも苦労してますが。

A Fostered Love
Cameron Dane
FosteredLove★★★ summary:
Marisolは多くの子供を引き取り、里親として育て、送り出してきた。Christian Sanchezもまたその1人であり、成人して29歳になった今もMarisolともっとも近い存在だった。彼がMarisolの葬儀やその後の遺言執行を受け持つのは当然のようなものだった。
葬儀の前日、里子の一人だったJonah Robertsが、その姿をMarisolの家の戸口に見せる。
Jonah。Christianは、Marisolのこの家でわずかな時間ともに暮らした少年を、ふたたびこの目で見ることがあるとは思わなかった。
いつでも人と距離をへだて、何かに怒っていたJonahはついに破滅的な犯罪を犯し、警官に引きたてられてこの家を去った。Christianはその時に自分の心のどこかが壊れたような気がしていた。

あれは15年前。Christianは14歳、Jonahは16歳。Jonahは彼の初恋だった。

一方のJonahはChristianのことを一度も忘れたことがなかった。たとえChristianが自分を忘れてくれるよう願っていても。
少年刑務所で車の修理を覚え、今では自分の店を持つようになった彼だが、自分がほかの人間とちがうことを感じていた。彼は誰も愛したことがなかった。誰かと何かを分けあったこともなく、友人と呼べる存在すらいない。事務的なことを除いて、人とどう関ればいいのかわからず、関ることを望んでもいなかった。
だがその深い奥で、Jonahは自分がChristianを求めていることを知っていた。その感情は、Christianを目にした瞬間から無視しようもなく強まり、彼を心底怯えさせる。彼は生きのびるすべも何かに立ち向かう方法も知っていたが、Christianとどう接していいのか、どうすればいいのかはわからなかった。

Marisolの遺言にそって、彼らは協力しながら、家を売るための修理と手入れをはじめる。
再会は果たしてどこへ彼らを導くのか。15年の空白を経て自分たちの間を何がつないでいるのか、まだどちらにもわからなかった。
.....


Cameron Daneの新刊が出ていたので、読んでみました。
相変わらずとても激しく、どこか攻撃的な恋の話です。
里子の「兄弟」同士の恋。彼らはほんの2月ほど同じ部屋を分け合っただけで、その後の15年、1度も顔をあわせていない。それが里親Marisolの死によってふたたび会い、彼女の家の手入れをはじめる。
里親の思い出、Jonahとともにいた記憶のある家を片付けて人に売ることにChristianは痛みを感じており、その痛みゆえに彼は時おりJonahに攻撃的になってしまいますが、もともととても優しい男です。子供の時からどこか純粋で、ひたむきな少年だった彼を、Jonahは忘れたことがなかった。

Jonahは自分が「hell」と呼ぶような場所で子供時代をすごし、人に道具のように使われて捨てられ、ねじまげられた人生を生きてきた。それらへの怒りや傷を内に秘めたまま、だが彼は2度と道をそれずに、自分の人生をきちんと作りあげる。強い意志を持った男ですが、一方で自分が他人を愛せるような人間ではないと思っていて、他人に近づくやりかたもよく知らない。
Cameron Dane特有の「内側に脆いものをかかえこんでもがく、強い男」そのもので、彼が自分自身の魂を剥ぐように、自分の苦しみをChristianに明かしていく姿がひとつの話の核になっています。

そして相変わらずエロはとても激しい。「そこはもうちょっと理性を」とかつっこみたくなる状況もないではないですが、そこを含めて強烈な感情のぶつけあいがこの作家の魅力でもあり、互いのどちらをも呑みこんでいくような激しさの中で、彼らは相手の存在を自分に刻みつけるように確認していく。特にJonahのように心に高い壁を作りあげてしまった男には、その壁をわずかでもゆるめるにはそれだけの強い衝撃が必要なんだろうなあ、と思わせる、時に痛々しい行為でもあります。
Jonahが自分の中にある夢や人への思慕を、体に刺青として刻んでいるのはとても暗示的です。そしてまた、そうして体に刻むことでしか語ることのできない男が、やはり痛々しい。

かつて、15年前、Jonahがただ破滅への暗い道をころげ落ちようとしていた時、その人生を変える決断をさせたのはChristianの存在だった。
15年たって、彼らはふたたび、自分の人生をかけた瞬間と向かいあう。

激しいものが好きな人におすすめ。

★エロ多め(ちょっとダーティな感じ)
★再会

The One That Got Away
Madeleine Urban and Rhianne Aile
★★ summary:
記者であるDavid Carmichael はある日偏頭痛に苦しみ、転んで肩をひどく痛めてしまう。
彼の親友でありライバル紙で働く記者のTrace Jacksonは一人暮らしのDavidの面倒を見るために彼の家に泊まりこみはじめる。その時は、どちらも何も考えず、それが何よりも自然なことのように思えた。
DavidもTraceも独身で記者という共通点があったが、彼らの間には決定的なちがいがあった。Davidはカミングアウトしたゲイであり、Traceはプレイボーイとして浮名を流すことも多いストレートである。だがそのことが2人の友情に影響したことはなかった。

TraceはDavidの面倒を見、食事を作り、2人は冗談をとばしては笑いあい、映画のDVDを見た。相手の存在が心地よく肌になじむ、そんな日々の中で、Davidはいつのまにかこの「親友」に恋に落ちはじめている自分を発見するが、そこに望みはなかった。Traceはストレートであって、そして何よりDavidの一番の友である。友情を失うより恋を捨てる方がまだましだった。

だがTraceの中にもまた、Davidに対してこれまで感じたことのなかった感情が芽生えはじめていた。それが何であるのか、彼はまだ知らない。だが2人の間でテンションは高まりはじめ、ゲイの男とストレートの男はその境い目で彼らの道を探しはじめる。
果たして友情は友情のまま愛へとかわるのか、それともTraceが感じているのはただの好奇心なのか? 深く踏みこんで友情を傷つけることを恐れながら、彼らは互いへと落ちていく。
.....


ゲイの男とストレートの男、という組み合わせの恋の話です。「男は好きじゃないけどお前は別だ」タイプ。
これはその中でも非常に軽いタッチの話で、「男を好きになるなんて俺はどうかしてる!」的ネガティブな逡巡はあまりありません。TraceはDavidのことを本当に心の底から大切な友人だと思っているし、Davidが自分を同じように大切にしていることも知っている。わりといい年の大人の男たちなんですが、互いに対してもともとちょっと盲目的です。
互いの間にあるものに気付いたTraceは一瞬あわてはするんだけど、どこかで「Davidならまあいいか」的な安心感もある。この場合の「まあいいか」は「恋をしてもいいか」で「カップルになってもいいか」とはちょっと距離があるんですが。
この話のおもしろいところは、「ああ、恋に落ちた」と思ってからのステップの踏み方です。男を「好きだな」と思って、その感情を受け入れても、ストレートであるTraceはその欲望までは簡単に受け入れられない。
え、男にキスする?本気かよ。…まあ何とかなるかも。してみると意外と悪くない感じ。
しかし男のペニスにさわる?ちょっと待て、それはないだろ!絶対ない!
大体、そんな感じで話が進んでいきます。そこのところの、じれったいほどに「少しずつ」な進み方と丁寧な描写がおもしろい。

もともとゲイであるDavid側にはそっちのためらいはないんですが、Traceが足踏みしているのはよくわかる。彼を強いたくはないし、友情にひびを入れたくもない。Traceよりちょっと年上で、とても優しい男です。恋がうまくいかなかった場合はどうにかしてTraceと友人に戻る道も残しておきたい。Traceの嫌がることをするとか弱味につけこむとかは死んでも嫌だ。…でもやっぱり欲しいぞ、と。
そんなふうにちょっとぐるぐるしながら、少しずつTraceの了解を得て、少しずつ互いの肉体的な距離をつめていく。ふれればふれるだけ、ほしくなるのもまた事実。果たしてDavidはTraceを安心させながら「最後」まで導くことができるのか。

洒落た会話とユーモア、それに優しさがちりばめられた、楽しい一冊です。どことなく映画っぽい雰囲気も漂う。
最後まで安心して読める感じで、親友同士のカプとか、おだやかなハッピーエンドが好きな人におすすめ。

★ゲイ/ストレート
★友情からはじまる恋


※2010年1月、15000語書き足した新バージョンがここで発売されました。気になる…

Under My Skin
M. L. Rhodes
★★ summary:
Sebastian Kellerは「The smart guy」という、自分に貼られるレッテルが嫌いだった。だが人はいつでも彼をそういうふうに見る。
幾度かの手ひどい破局のあと、他人と関係を持つことに自信を失った彼は自分の経営する旅行ガイド書店でそれなりに幸福にやっていた。
ある日、隣のテナントにタトゥの店が入るまでは。

彼らが大ボリュームでかける音楽、彼らへの客で商店街の駐車場が占拠されてしまう状態、それがSebastianを苛立たせる。かつて彼を甘い言葉でだまし、すべてを彼から絞りとって消えた以前のボーイフレンドはタトゥを入れ、大型バイクに乗っていた。二度とそういうタイプの人間とはかかわるまいとしていたのに、隣にそういう「信用ならない」連中が出入りしていることが彼の怒りをかきたてる。

何よりも嫌なのは、「Rad Tattoos」というその店のオーナー、Dylan Radamacherを見るたびに自分自身の心が乱れることだった。自分がまだ凝りていないということにSebastianは心底うんざりし、距離をおこうとするが、DylanはDylanでSebastianとどうにかして和解したいと思っていた。
.....


短編~中編くらいの長さですが、おもしろかったです。
「過去に傷ついている男、その心をひらこうとする男」というテンプレですが、やっぱり普遍的なドラマだからテンプレになるわけで。そのへんの葛藤、自分自身への苛立ちや過去を振り払おうとしながら振り払えず、傷ついているがゆえの怒りを他人に向けて相手を傷つける──そんな入り組んだ気持ちがドラマティックに凝縮されている。

Sebastianは、「他人が自分に貼るレッテル」は嫌っているのに、自分自身がDylanにレッテルを貼りつけていることには気づいていない。過去ばかりをのぞきこんで、どうしても一歩を踏み出すことができない。
Dylanを過去の恋人とまとめて「こういう"タイプ"には二度と近づかない」と切って捨てようとするSebastian、「チャンスをくれ」というDylan。だが、あらゆる不幸や破綻が訪れるのをひたすら待って、すべての物事に悪い面を見ようとするSebastian。
ほんの一瞬のささいなことから、感情は修復できないほどにもつれる。

続編の「Under My Skin II」も出ていまして、最初は似たような感情の交錯のくりかえしの「後日談」風味かと思ったんですが、こっちも予想外の事件がおこっておもしろかったです。
相手を気づかって押すまいとする男、その曖昧な態度から悪いサインばかりを拾いあげてしまう男。過去はのりこえたようでいて、何もおわっていない。過去を手ばなしていないのは自分自身でもある。
感情的な悪循環の物語ではありますが、短編だからこそ読む方も繰り返される悪循環に食傷せず、一気に楽しめるタイプの話だと思います。
IIの中で、電話で「一緒に朝日を見ようか」と言うシーンは、とてもロマンティックで綺麗だった。

まあ短編でも2つ買うと7ドルこしちゃうんですけどね。それでもおすすめ。

★短編

Home Of His Own
T.A. Chase
HomeOfHisOwn★★★ summary:
Tony Romanosはプロのロデオライダーとして各地を旅しながら、友人のRandyとLesが暮らす牧場にたびたび転がりこむ。彼らはTonyを家族のように迎え、家族のように愛した。そこはほとんど、Tonyにとって「家」と呼べる唯一の存在だった。

Tonyは15の時、家族にカミングアウトしたがそれは悲惨な結果におわり、家族が決して自分を受け入れないことを悟った彼は家を出ていく。ひとりで生きていくことを学び、ひとりで生き抜いてブルライダーとなった彼は、RandyやLesのような友人を得て幸福だったが、彼自身の家──彼だけの居場所はいまだにどこにもなかった。
そんなある日、縁を切った、彼を嫌悪している筈の家から手紙が来る。Tonyの甥にあたるJuanがどうやらカミングアウトして、実家は大騒ぎになっているらしい。来てほしいと姉に乞われるが、Tonyは一体自分に何を求められているのか、どうしていいのかよくわからない。自分が自分でありつづけるために家族を捨ててきた彼が、今さら甥に何を言えるだろう。

Brody MacCaffertyは、弟と2人で身をよせあうように暮らしていたが、ギャングの犯罪行為に関ったことからついに殺すか殺されるかというところまで追いつめられ、弟を残して故郷を去る。
LAでボディガードとして身をたて、やがて自分の警備会社を持つまでになった彼は「必ず迎えにいく」と約束した弟を探し出そうとする。だがたぐった糸は、奇妙なところでTonyと彼とを結びつけていた。

どちらも一夜の関係(one-night stand)だと思っていた。もう一度会うとは思っていなかった。
どちらも自分にとっての「家」を持たずに生きてきた。互いが互いの帰る場所になることなど、想像もしていなかった。
.....


No Going Homeに出てきたブル・ロデオのカウボーイTonyの物語です。No Going HomeはRandyとLesの話でしたが、この話では彼らが脇役になります。
この「Home of his own」は本当にとても大好きな話です。話もいいし、キャラもいい。
Tonyはしたたかでシニカルな大人ですが(煙草を吸っている様子が非常に格好いい)、ユーモアに満ちた男です。RandyやLesなどの心を許した相手のそばにいると子供のような面も見せ、Randyとは特に兄弟のようで、何かあるととっくみあったりしてもう大変。
その一方、Tonyは家族を捨ててきたことによる深い孤独の影も持っている。自分の内側に空虚な場所があることを知っていて、それが埋められる日を心のどこかで待っているが、そういう日がこないだろうとも思っている。
多分、自分の中にある影ゆえに、彼はどこか無邪気なRandyが好きなのだと思う。そしてTonyはLesにも惹かれ、LesもTonyに惹かれているが、RandyとLesの間にあるものはTonyにとって手をのばせないものだった。多分、出会うのが少し遅かった。
Randyたちと一緒にいる時間はTonyにとって楽しい時間ですが、ほろ苦くもある。

人生を生き抜くことを知り、その苦さも知りながら、煙草を吸って自分自身ごと笑いとばす──Tonyはそんな男で、BrodyはそんなTonyに強く惹かれていきますが、その一方でTonyが命がけで牛に乗っていることにも向き合わなければならない。馬のロデオ以上に牛のロデオは危険で、いつ大怪我をするか、もしかしたら命を落とすことすらあるかもしれない。
ある日ロデオサーキットで事故を目のあたりにしたBrodyは、その悲惨さを恐れる。だがそれはTonyの生き方で、Tonyと関係する限り受け入れなければならないものでもある。
一方のTonyは甥の問題に力を貸してあげたいと思うが、実家のほとんどの人間はTonyを相変わらず蛇蝎のように忌み嫌い、そこに戻る場所はもうない。Tonyがかつて一度は「Home」だと思った場所は、もはやこの地上のどこにもない。

どちらも強く、自分の力で生きてきた男たちが、よりかかるのではなくよりそうように、恋以上のものを育てていく。その日々は濃密で、ドラマティックで、時にユーモアに満ちている。
彼らは自分の「Home」を手に入れることができるのか。人にとって「Home」や「Family」というものが何であるのか、それはただ場所や血のつながりのことを言うのか。

ちなみにTonyが加わっている「PBR」はブル・ライド専門のロデオ組織で、PRCA(プロフェッショナル・ロデオ・カウボーイズ協会)におけるブル・ライドの地位の低さに不満を持った選手が設立した協会です。プロとして加わるにはいくつかの条件が必要ですが、賞金が高いことで知られ、アメリカ1のロデオ組織です(対抗組織としてCBRというのもあります)。ロデオ、それも牛を使ったブル・ライドは今アメリカでビッグビジネスになりつつあるようで、その牛の競りもすごく盛り上がるらしい。
前作の「No Going Home」ではTonyはまだPBRに加わってなかったので、その次の年に条件を満たして参加し、ブルライダーとして順調にやってきたようです。

あと、おまけとしてRandyとLesのクリスマスストーリー「Where His Home Lies」がついています。これはひたすらに甘い! 作者のT.Aは男性ですが、スラ読んでると男の人の方がロマンティックな話を書く気がします。

★エロ度高

The Dark Horse
Josh Lanyon
The Dark Horse★★★ summary:
ハリウッドの俳優Sean Fairchildは1年にもわたってストーキング行為を受けていたが、ストーカーPaul Hammondは車の事故で死んだ。少なくともそれが、護衛を担当していた刑事Daniel MoranがSeanに繰り返し信じさせようとしていることだった。
Danと一緒に暮らすようになり、Seanは危機は去ったという恋人の言葉を信じようとするが、またもや彼にポストカードが届きはじめる。Hammondが彼に送ってきたものとそっくりなカード。「miss me?」「soon…」見なれた独特の文字と短いメッセージ。

Hammondは死んだ、とDanは言いつづけ、Seanはそれを信じられなくなっていく。
Hammondが死んだのなら、何故警察は彼の死体を見つけることができないのか? 彼が死んだのなら、誰が一体ポストカードを送ってきているのか?
そしてある日、SeanはついにHammondを見た──少なくとも見たつもりだった。だがそれはSeanの恐怖がつくりあげた幻影なのか? 
Danは彼を守ろうとしている。だが誰から? Hammondからか、それとも少しずつ正常な認識を失っていくSean自身から…?

不安、不信。さまざまな感情が彼とDanの間を蝕んでいく。彼はDanに依存しすぎているのだろうか。友人が言うように、Danに操られはじめているのだろうか。
.....



「Adrien Englishシリーズ」のJosh Lanyonのクライムサスペンス。

Seanはかつて、ゲイである自分とそれに失望する家族や周囲との軋轢にたえかね、自分自身を責めた結果、自殺をこころみたことがあり、そのため自分の心の安定に対して不安をもっている。
そしてその不安を誰かに見せること、見すかされることを恐れています。自分自身の欠陥を人に見せること、人の判断に自分をゆだねることを恐れ、恋人のDanが自分を守ろうとすることに対してもほっとすると同時に、怒りを感じる。自分のテリトリーを侵害されているような怒り、それを許す自分への怒り。
Danの態度に対して不信をもちながら、まず彼は「自分自身が信頼にあたいするのかどうか」をつねに問いつづけなければならない。それは痛みに満ちた問いであり、その不確かな世界でSeanの気持ちは揺らぎ、彼はDanを、自分を恐れるようになる。

なんたって一人前の男ですから、男にたよりきったり守られたりすることに対して当然の反発があるわけで、Lanyonはそういう男の葛藤を書くのがとってもうまいです。どんなに繊細でも基本的に男らしい。
Seanの葛藤を見ているDanの方はちょっと苛々してて、「たよってくれよ!」って思ってるのも何となくつたわってくるんですが(あくまで彼はSeanの意志を尊重しようとしますが)、他人と距離をおくことに慣れているSeanには、Danと近づきすぎていること自体が落ちつかない。近づきすぎていると思う、でもそばにいるのは心地よい、そのへんのぐらぐらしている感じがなかなかに可愛い。
口論や怒りの発露。そういうものの中で、それでもSeanはDanと確実なものを築きあげようともがく。しかしそのやりかたがわからない、みたいなもどかしさがあります。

それでもやがて、彼は自分の本当の望みに気付く。その時にはもう遅すぎたかもしれないけれど。
心情が丁寧に書かれていて、Seanに共感したり苛々したりしつつ、惹きこまれて一気に読んでしまった。Lanyonはやっぱりいいなあ。そしてこの人の書く警官はどうしていつも、こうも格好いいのだ…!

中編なので、わりとさらっと読めるかと。でも読みごたえはあります。「包容攻め×繊細な受け」好きには特におすすめ。

★クライムサスペンス
★トラウマ持ち

Walk Among Us
Vivien Dean

WalkAmongUS
★★ summary:
ニューヨークに住んでいる画家のCalvin Shumacher は、10年以上前に縁を切った父親の葬儀のために、故郷に戻ってくる。父親は彼がゲイであることを許さず、家を逃げるように出たCalvinは自立して生きていくことを学ばざるをえなかった。
父の死にほとんど何も感じることなく、ただ人から「冷たい息子だ」と言われるのをさけるためだけに墓場に立っていたCalvinだが、しめやかに行われる筈の葬儀の最中に銃声が鳴り響く。

参列者のひとりが倒れ、皆が逃げまどう中、Calvinは霊廟の屋根にいる射撃手の姿を見ていた。その男のまなざしは静かで、Calvinの心を射抜くほどの哀しみに満ちていた。
すぐ立ち去るかに思えた殺人者は墓場にとどまり、Calvinは彼に相対する。何も悪いことはしていないという男の言葉に、Calvinは驚く。
“You shot someone.”
だが男から返ってきた答えは予想だにしないものだった。
“No. I shot something.”
.....



前にEPPIE受賞の記事とかしれっと書きましたが、あれ本選じゃなくて「カバー」のカテゴリみたいですね。いつもいかに適当に見てるかバレようってもんです。
受賞作はこっち
それはともかく、ちゃんと受賞作の1つ「Walk Among Us」を読んでみました。たまたま買ってあったものなので、ただの偶然だったりしますが。

謎めいた男、謎の死体、故郷に戻ってきても父の死を嘆くことができず、孤独なCalvinはその謎に惹かれていく。男の謎掛けのような言葉はどこまで真実なのか、彼は何者なのか。そして“Walk among us”は一体何なのか。
アンソロ・短編部門なので、短めです。それなりに読みごたえやオチもありますし、気楽に段落のつくものを読むにはとてもいいと思う。

ちなみに同カテゴリの候補作の「If All The Sand Were Pearl」も読んだことありますが(たまたま。あれ表紙がかわいいので買ってしまったのです)、こっちは古風な感じの、ちょっと耽美っぽい雰囲気が好きな人は楽しめるのではないかと。
家の借金のために知らない男の夫になることを決めた主人公──という、すごくBLっぽい話なんですが、時代ものなのかファンタジーなのか判然としない(多分ファンタジー)、そんな貴族的な慣習にしばられた社会の話です。
…扉の外に立っているお世話係とくっつくのではないかと思いながら、読みおわってしまったのは内緒。

両方Samhainから出ていて、「A Calling of Souls story」ってキャッチがついてますが、Samhainは何にでも(シリアスなら)このキャッチをつける気がしないでもない。

GLBTカテの受賞作は「Orientation」
これはレビューで激賞されているのを見たことがあるので、今度読んでみようっと。25% Discountのうちに買うべしか。
「Historical/Western Erotic Romance」カテの候補作「Stealing Northe」と「Stealing West」もスラみたいですね。「Stealing Northe」はM/M/Fって書いてあるけど、まあ。読んでみるかな、カウボーイ。別にそんなに執着してるつもりもないのですが、どんどんカウボーイものがふえていく。
あまりにも氾濫しているパラノーマルやシェイプシフターものにも、そろそろ手を出すか…

★短編

The Tin Star
J.L. Langley
TinStar★★ summary:
テキサスの牧場「Tin Star」の経営者であるEthan Whitehallには、古くからの無二の親友、John Killianがいた。
Johnは長男としてKillianの家に生まれ、牧場経営を小さな時から叩きこまれてきた。父親はほとんどJohnばかりを可愛がり、弟と妹は母の愛情のもとで育っていた。そんな母も3年前死に、妹は家を離れて看護師として働く一方、年の離れた弟Jamesは牧場に残って働いている。

その弟Jamesがある日Johnと父親に「自分はゲイだ」とカミングアウトし、父親は即座にJamesを家から追い出した。
狼狽したJohnからその話を聞いたEthanは、Jamesを放置できず、行き場を失った彼に自分の牧場で働くようすすめる。Jamesを保護すればJohnの父親は怒り狂うだろうが、ためらいはなかった。
ただどうしてJamesが黙っていられずにカミングアウトしたのか、そのことにはEthanは賛成できなかった。小さな、そして保守的な町でゲイだとカミングアウトすることは、人から石を投げつけられることを意味する。それもずっと自分を知っている、小さな頃から馴染んできた人々から。
父親の拒否や嫌悪以外に、Jamesはもっと多くの人々からの敵意や妨害を受けなければならないだろう。若いJamesには、自分が向きあわなければならないものがまだわかっていないように、Ethanには思えた。

若く、溌剌としてユーモアにあふれたこの親友の弟を、Ethanは深く心にかけるようになる。
だが悪い予感はあたり、Jamesへの敵意はさまざまな形をとってあらわれる。時にそれは現実の暴力であり、そして、ついにEthanにまで襲いかかる。
また、Jamesには、当人の知らない出生の秘密があった…
.....



J.L. Langleyはすごくしっかりとしたというか安定した筆力の作家で、SFのシリーズの「My Fair Captain」とか「Englor Affair」のレビューを書こうと思ってたんですが、そっちを読み直す前に「Tin Star」シリーズの1作目を読んだので、レビュー。
表紙がちょっと…だったのでこれまで買ってなかったんだけど、SFがおもしろかったんで、がんばって表紙をのりこえてみた。

カウボーイものですが、なんと舞台がテキサス。ほんとずーっと「ワイオミングのカウボーイもの」ばかりにあたってきて、テキサスはこっちがイメージするほどカウボーイの州じゃないのか?って思いかかってましたが、やはりちゃんとテキサスのカウボーイものもあるわけだ。

Jamesが非常に愛らしい。あまり父に愛されず、牧場で働く男から牧場の仕事を学び、母から掃除や料理を学んできた彼ですが、とてもまっすぐな性格をしています。だからこそ「自分を偽ることができず」にカミングアウトに至るわけですが、父から家を追い出されたこと、その後の父からのさまざまな妨害行為に大きなショックを受ける。
そんな中でも頭を上げ、持ち前のユーモアを発揮して、周囲をなごませていきます。
Jamesの兄のJohnも結構ふざけた性格で、EthanがJamesに車を買ってやることを聞くや「いっそお前、俺の恋人にならないか」とか平気でEthanに言っちゃう。「セックス抜きだけど」とか言われて、Ethanはちょっと頭をかかえたりするわけですが、ここの友人同士の仲のよさは笑えます。
ほかにもたくさん笑いどころがある。
全体に重いテーマを扱ってはいますが、楽しい小説です。

家族との葛藤、Ethanとの関係、町の人々の反応や実際の妨害行為など、Jamesは多くのものに向きあわなければならない。
彼は戦うことにためらいはありませんが、自分の愛する者たちにまで害が及んだ時、ついに揺らいでしまう。町を出ていけばすむのかもしれないが、ここで逃げたら一生逃げつづけなければならないのかもしれないと。

この作者の作品の特徴として、「下唇を噛むのが受け」という規則があります。こだわりだ…
受けと言ってもリバ表現もないことはないですが、エロだけでなく、基本的に攻め受けの役割分担がしっかりついている感じです。庇護者と被保護者というような。
攻めは格好よく、強く、たくましく、常に受けのことを一番に考えて溺愛していて、ラブラブ。
格好いい男×素直な受けが好きな人なら、とてもおすすめ。受けっぽいとは言っても、ちゃんと男らしい受けです。
あと、犬がかわいい!!

Ethanが何故わざわざ毎年とても醜いクリスマスツリーの木を買うのか、それが気になる…のですが、クリスマスの続編があるようなので、今度読んでみようと思ってます。

★溺愛系
★エロ多め

このブログは、M/M小説のレビューブログです。
男性同士の恋愛小説についての感想ですので、苦手な方はご注意下さい。

★本来ならスラッシュではなくM/M小説が正しいのですが、Slash(二次ジャンルの男×男創作)の方が単語として認知度があるのでそう付けたのでした。M/Mの翻訳が出るなんて数年前には想像もせず。もうこの際ブログの名前はこのまま行くー。

##リンク先が大人向けなことがあります。


・ブログ主(冬斗)について
英語苦手なまま、ノリと萌えだけでM/Mにつっこんで、日本語とはちがう独特の何かがたぎる世界にハマってはやウン年。電子書籍で読んでます。最初はiPodTouch、後にnook、kindle、koboと今は色々あってリーダー3台もち。
何故か最近は、冬斗亜紀名で翻訳などもしております。驚きです。
星の数ほどあるM/M小説の、当たりもあれば外れもあるラインナップの中から、個人的な判断による「当たり」を紹介していければいいなーと。最近、刊行点数が本当に多くて読むのが追いつかない!
基本的にネガティブレビューなしで、おすすめ品のみピックアップしています。

ご意見ご感想などはメルフォから、もしくはメール(winterあっとまーくbeige.plala.or.jp)で。

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読んでみたい本の記事とか、読んでみておもしろかった本とかには気軽に拍手を入れていただけるとうれしいです。カウントが表示されるので、ブログ読者の方に自分一押しの本を「オススメ」することもできます。

※タイトルのリンク切れを発見された方はお知らせいただけると助かります。たまに書店サイトが仕様変更するので…


GoodreadsにM/M好きの人のコミュニティがありますので、同好の士の方は是非!超マッタリですが〜。
M/M,BL大好き

iPhone/iPodTouchを使ってStanzaで小説を読む場合、章分けされているのが大変に便利です。章ごとに読みこむのでロードも早いし、アプリの動作が安定する。

prcファイル(mobiPocketファイル)、Litファイル(MicrosoftReaderファイル)、ePubファイルなどを書店から買うと大抵そのまま章分けされて読みこまれます(たまに変なところに章があることはあるが…)。
が、「アンソロジー」系はこれが何故がうまくいかない。ことが多い。あと1冊に2作入ってるやつとかも。

そこで物を言うのが、編集可能なHTMLフォーマットです。


続き...

Fatal Shadows & A Dangerous Thing
Josh Lanyon
AdrienEnglish1★★★ summary:
Fatal Shadows(1作目)
LAでミステリ書店を営みながら小説を書くAdrien Englishは、友人のRobertが滅多刺しにされて殺された事件の嫌疑をかけられる。Adrienはゲイ、Robertはバイセクシュアルで、学生時代からの古い友人同士だったが、彼らは恋人であったことは一度もなかった。だが他人から見れば奇妙に近しい彼らの関係、そしてこの9ヶ月RobertがAdrienの書店で働いていたこと、Robertが死ぬ前に最後に会った相手がAdrienであったこと、口論をして別れたこと、Robertが何故かレストランにAdrienを探しに戻ってきたこと──などがLAの殺人課刑事、Jakeの疑いを呼ぶ。
同時にAdrienの周辺で奇妙なことがおきはじめ、本屋への侵入事件や無言電話などからAdrienは自分がストーキングされていると感じるが、刑事たちはAdrienの思いすごしか、なお悪いことに、疑いを自分からそらそうとする陽動であると思っているようだった。
Adrienは逃げ場のない状況からの出口を探すためにやむなく事件を調べはじめるが、そこには彼とRobertの学生時代にまで根を遡る、深い、深い憎悪と狂気の物語が隠れていた。
古い、自分の知らない罪と恋のせいでAdrienは命の危険にさらされる。次は自分が殺される番だと気付きながら、誰がその凶器を握っているのかわからない。それでも彼は出口を探して闇を掘るしかない。

A Dangerous Thing(2作目)
Adrienはうまくいかない恋人(未満?)との関係にいささか苛立って、祖母の遺産である牧場へと車をとばす。子供の頃から一度も帰ったことのない、今は誰も住んでいない、誰も友人のいない場所へと骨休みと執筆を兼ねて出かけたものの、そこで彼が見たのは謎の死体と、その死体の消失、そして自分の敷地に生えるマリファナの青々とした茂みや、何故か敷地の山奥を掘り返している謎の集団だった。
トラブルが次々と襲いかかり、Adrien自身の身にも危険が及んだ時、恋人が駆けつけて彼を救おうとする。だがAdrienはただ救出されるにはあまりにも頑固で、山と積まれた問題を残してその場から逃げ出す気などさらさらなかったのだが…
,,,,,


Adrien Englishミステリシリーズ1&2が1冊に入っています。
このシリーズは人気作家Josh Lanyonの中でも一番人気のシリーズで、本当に何というか…いい小説です。謎解きがあり、人と人とのドラマや葛藤があり、どうにもならない運命の出会いや別れがある。
あえて言ってしまえば、これは「Adrien Engiishの人生」の断片のような話なのです。

Adrien Englishはとても魅力的な主人公で、この話は一人称で語られるのですが、Adrienがどういう人間なのか、会話や彼のややシニカルな独白の中から鮮やかにたちのぼってきます。32歳、父親はアメリカ人で母親はイギリス人、父とは早くに死別。16歳の時に生死にかかわる大病をわずらって以来心臓の弁に異常があり、薬を服用。敏感な時期をいつ死ぬかもわからないという状況下ですごしたためかやや人生にさめた視点をもっていて、他人に対してはさらりとした人づきあいをする方です。5年間暮らした恋人が去っていったことがいまだに深い影をおとしているようにも見えます。
だが人なつこくもあり、ユーモアに満ち、率直で、Adrienと話すと人はたいてい自分の内面を正直に見せる。そしてAdrienは非常にするどい目で、他人の内面を読む。ミステリ好きではあるが犯罪に関しては素人の彼が、そうして彼独特の視点から様々な断片をひっくり返しながら真相を掘り出し、実は自分のすぐそばによりそっていた狂気の存在に気付く──その瞬間まで、緊迫感のある展開が続きます。

「ミステリ風味のスラッシュ」というよりは「ミステリでもありスラッシュでもある小説」と言った方がいいか。ミステリとして充分おもしろいですが、スラッシュとして見るなら1作目はシリーズの「導入」です。本当の展開はその先にある(その2作が1冊に入っているのは、本当にかしこいと思う)。
1作目で彼は思わぬ相手と関り、2作目ではその関係が彼の予想した以上に深まる。だがそれは色んな意味において未来のない恋で、その関係のいびつさと思いの激しさがAdrienと彼の人生を悩ませつづけます。
そんな中でもがきながらも、いつもAdrienはフェアで、毅然としている。そのことが自分を傷つける時でさえ。決して声高でもなく、弱くもありますが、こんなにたたずまいの潔い男というのはあまりいないんじゃないだろうか。
ドラマティックに語られるわけではありませんが、淡々と、皮肉とユーモアをまじえたAdrienの語り口には胸にせまるような繊細さがあって、はじまってしまった関係の先にあるものをAdrienが見すえたり、目をそらしたりしている様を読むのが時おりつらい。そして彼の語り口から浮き上がってくるのは彼の人生だけではなく、望みのない恋人の、複雑で痛みに満ちた人生でもある。

駄洒落とか謎解きとかあって英語としては私の手に余るところもあるんですが、難解なわけではないので、長文読み慣れてる人なら本筋は普通に楽しめると思う。
現在はシリーズ4作目まで出ています。これがまた胸がしめつけられるような話だったりするのですが、そっちのレビューはまたいずれ。
Lanyonはミステリとはちょっと毛色のちがう暴力的なクライムサスペンスも書いていて、そっちも本当におもしろい(強い男同士のカプが好きな人にはたまらん!)。「m/m小説の書き方」というハウツー本も書いています。今度読んでみようかな。キャラクターの際立ち方が本当に強くていいのです。
彼の作品に「ホームズ&モリアーティシリーズ」ってのがあるのは心底気になる…

いろんな意味でおすすめのシリーズですが、エロ以外の部分重視の人には特におすすめ。非常に自我の強い2人の向き合う話でもあるので、「男同士の恋愛」(ガチムチって意味じゃないぞ)を求める人にも。

★ミステリ・サスペンス

Eppie2009
EPPIE2009受賞作決定だそうです。
The Electronically Published Internet Connection (EPIC)の賞で、電子出版物を対象にしています。今回が第9回。
スラだけではなく、多くのカテゴリがあります。

つーかどれがスラか候補作の時からさっぱりだったんですが。
「Category 15 - GLBT」はともかくとして、他にもちらほらあるような気がします。
「Category 7 - Anthology - Single Title Story/Novella (Romance/Erotica)」のNo Fear In LoveやWalk Among Usなんかスラのようだし。

GLBTカテでの受賞作は「My Father's Lover」(D.J.Manly)My fathers lover※カバーのカテゴリ受賞でした。本選受賞作は「Orientation」

殺害されたドラッグクラブの女装マスターの遺書は、疎遠になっている息子マイケルに対してクラブの経営補佐として働くか、遺産を放棄するかのどちらかを選ぶよう要求していた。

マスターの「心の息子」アンソニーは、マイケルが遺書を読むために訪れると聞いて、今さら金目当てにやってくる息子を侮蔑していた。
一方のマイケルはアンソニーが誰なのかまったくわからなかったが、アンソニーが父親によって通りから引き取られ、彼らが恋人同士であったことを知ると、父親につけいった若い恋人だと思いこむ。
互いへの嫌悪はありながら、彼らは互いに激しい欲望を覚える。父親の意志によって、彼らは協力して働かねばならない…


今度読んでみようかな。スラだけじゃなくて、ファンタジーカテとかもおもしろそう。

しかし出版社っていっぱいあるなあ…

iPhone及びiPodTouchで「読書の雰囲気を出す方法」。
iPhoneを加工

「カフェでエスプレッソを飮みながら本を読むようなロマンティックなイメージを、PDA(iPhone)によってぶちこわしにしたくない人」向けらしい。
後ろから見たらもっと大変なことになるじゃない
、とかはとりあえず留保。
まあ自分もiPodTouchで電車内で本を読みながら「メール読んでるように見えるだろうなー」と思うことはあるので、気持ちはわからなくもない。
スラ読んでるな」と思われることを考えれば、全然何の問題もないですが。

詳しい加工法はこちら。…詳しすぎるだろ。
まだappStoreが出来る前なので、リーダー自体はJailBreakというハックを使って入れてますね。
モレスキンの手帳使ってやがります。

「新しい(3Gの)iPhoneだと大きすぎてできない」ってコメントもあるので、今のiPodTouchでもちょっとでかいかな。1センチくらいしかちがわない筈なんで、写真見るかぎりいけそうですが。いきたいかどうかはまったく別問題ですが。

Kindleと言えばAmazonの出している電子書籍リーダー。
Amazonはいずれ、自分のサイトで売っている電子書籍を全部Kindleファイルだけにしたいそうで、徐々にその動きもはじまっています。
このKindle対応のiPhone/iPodTouch対応リーダーが本家Amazonから出ました。無料。
これは凄い~。
…が、日本のappStoreでは売っていません

入手方法はありますので、とりあえずメモっておきます。

※※※09.12月、ついに日本のappStoreでも発売しました! 次は和書対応を‥‥※※※


続き...

Hawkins Ranch: Falling
Cameron Dane
★★★ summary:
Hawkins3兄弟(Conner、Cain、Caleb)は牧場の経営者としてその町に落ち着いていたが、彼らはじつは兄弟ではない。それどころか、人間ではなかった。
人より古くから地上に生きていた太古の一族──悪魔──、それが彼らの正体である。
一族との暮らしを捨て、それぞれイギリスをさまよううちに3人は出会い、自分たちの人生を求めてともにアメリカに渡ってきたのだった。血のつながりはなく、そして悪魔としても種族の異なる彼らであったが、3人をつなぐものはまさに「家族の絆」としか言いようのないほど強く、あたたかな気持ちだった。
だが、今ではConnerは悪魔ではない。愛する女性の力によって人間となっていた(1作目「Demon Moon」)。
そんな兄を、Cainは心の底から羨望していた。Cainは男性を好んでいたが、彼の種族は種の繁栄のために決して同性愛を許さず、もし同性と関ったことが知られたら即座に処刑が待っていた。そのため、Cainはその長い人生の中で一度も、そして誰とも関係を結んだことがなかった。
兄夫婦が暮らす家から出たCainは自分の家と厩舎を建て、虐待され傷ついた馬を引き取って訓練する牧場を1人で切り回していた。孤独には慣れていたし、彼は馬たちを心の底から愛していた。

そんなある日、Cainは兄から呼び出される。兄の妻Cassyの幼馴染、Lukeがひどい怪我を負って前の牧場を追い出され、退院した後も行き場がなく、そのまま兄の家の居候となっているというのだ。Cassyのそばに男がうろうろするのが許せない、という兄の子供っぽさに少々あきれつつも、Cainは仕方なく自分の牧場でLukeを引き取って働かせることを承知する。
だがそれがひどく危険であることも、わかっていた。彼は3年前にLukeと顔をあわせた時から、ずっとLukeに惹かれ、そんな自分の気持ちを恐れていた。もしLukeに対する気持ちが抑えられなければ、その先には破滅しかない。
それを肝に命じながら、それでもCainはLukeとともに働く毎日を楽しみはじめる。彼らはどちらも馬に対する深い愛情をもっていた。明るく、繊細で、だが時に驚くほど頑固なLukeの存在は、それまで孤独しか知らなかったCainにとってかけがえのない存在になりはじめていた。

長年の孤独と自制が作りあげた心の壁と、そして処刑への恐れ。さらにはその先に必ず訪れるであろう、処刑そのもの。Cainが乗り越えなければならないものはあまりに大きい。それは望みのない道に見えたが…
.....



Hawkins Ranchシリーズ。とりあえず今回は「Falling」を。
これシリーズ2作目なんですけども、1作目の「Demon Moon」はノマカプものです。結構あっちのスラ作家さんは、男女ものとスラの両刀書きだったり、男女ものをずっと書いてる人がスラに参入してきたりしますね。シリーズの中でまざってると微妙に困ったりしますが。
男女ものと混ぜて読むのはなあ、という人は1作目を読まなくてもいけると思います。

Cameron Daneはとにかく何もかもドラマティック!な作品を書く人で、登場人物は痛いほどむき出しに自分をぶつけあい、時に削るように互いを変えていきます。ちょっとテンションとしては昼ドラめいたところすらある。何というか、まさに「ハーレクイン」って感じもします。
力技なところもあるんですが、その「力」が半端ではなくキャラも皆魅力的なので、一度入りこむとそのまま最後まで話の中に引きずりこまれる。

「Falling」のCainは、とにかく「落ちまい、落ちまい」としながらLukeの存在に落ちていく、もがく男です。もがく悪魔というか。
誇り高く、自分の存在に自信を持っている、孤高な男ですが、彼の世界はLukeの存在に完全に揺さぶられてしまう。時に怯え、時に反発し、それでもCainはLukeに対して誠実であろうとする。
そんな力強い、苦しげな存在に、Lukeも否応なく惹かれていく。彼にはCainのかかえている問題が見えていないが、Cainの誠実さと優しさを愛し、そのぎこちなさの向こうにある痛みに手をさしのべたいと願う。
時に2人はただ感情に押し流され、時に混乱し、それでも魂は痛みや傷をこえてただまっすぐに相手を求める。

エロはかなり激しいです。Cameron Daneの書くエロシーンは当人によると「人の心と体がどちらももっともむき出しになる瞬間」という位置付けがあり、感情的なぶつかりあい、融合、心の変化にともなう体の反応などなどストーリーそのものを投影するエロです。非常に濃密な感情があふれています。喜び、痛み、怒り、相手への思い、時に拒絶など、意志と感情が互いへまっすぐに向かい、激しい反応を引きおこす。その中で、相手のもっとも深いところにふれ、さらに深くを求める。そういうエロです。なんか「情事」って感じがよくあてはまるような。
最中によくしゃべるのはご愛嬌。

色々な意味で「激しい」とか、「溺愛」路線が好きな人におすすめ。家族の絆とか、そういうあたりもしっかり押さえられている。
カウボーイものって、わりとよくホームドラマ要素もつきますね。牧場は家族経営が多いからかなあ。

★エロ度高
★人外(変身エロあり)

未だに英字新聞が読めないくらいの英語力なので(小説読解の半分は補完能力でしのいでるからなー)、結構知らん単語とか言い回しとかにあたって、スルーしたり右往左往したりしてます。
そのへんで出会ったもののメモがわり。

birthday suit
 ...「生まれたままの服装」=「裸」のこと。

これ可愛い言い回しで好きなんですけど、あんまり回数見たことはないですね。「birthday suitを着ていくぞ!」という冗談まじりの脅しのセリフで見たのはとても愛嬌があった。
birthday suitをWiktionaryで見ると、同じ意味の外国語がならべてあるんだけども、
>Japanese: 素っ裸 ja(ja) (suppadaka)
てのがあって笑った。そうか、「裸」じゃなくて「素っ裸」なんだ。「すっぽんぽん」とかそういうくだけた響きを含むのかなあ…

skinny dipping(skinny dip)
 ...裸で泳ぐこと

最初「skinny」だけ電子辞書で調べたら
 1 骨と皮ばかりの, やせた.
 2 皮の;皮質の.
 3 けちな.
 4 〈ひも綱が〉細い.
となってて、ちょいと混乱しましたが、skinny dippingで探せばよかったのな。「skin」で「dip」するってことでしょう。
dipは液体(水)につかることなので、何かこう、肌からぽたぽたっと水が垂れているさまが連想されて、何かおもしろい言葉です。
しかしこんな言葉ができるほど裸で泳ぐやつがいるのか、という気分になるのもまた事実。

と思ってWikipediaで見てみたら(skinny dippingの項目がある…)
>Prior to the mid-19th century, skinny dipping was the only method of swimming. Swimming suits had not been invented or had not come into common use
と書いてあり、要するに「昔は水着なんか一般になかったからみんな裸で泳いでたんですよ」って話みたいです。日本はふんどしあるから、全裸で泳いでたって印象はあんまりないなあ。


日本語も大好きですけど、英語は英語でいい言い回しとか、日本語にはない響きとかあって、そういうのに出会うとちょっと幸せ。使役のhaveとかmakeとか好きなんだ。まあそのへんは機会があったらおいおい萌え語っていきたいです。

Ransom
Lee Rowan
Ransom★★★ summary:
18世紀、フランスと戦争中(フランス革命戦争)のイギリス海軍が舞台。
その時代、同性愛は禁忌であるだけでなく、死に値する罪であった。海軍においては吊るし首となる。
1796年、Titanに着任した士官候補生William Marshallは、その一週間後に決闘で上官を撃ち殺す。上官が仕掛けてきた淫らないたずらに、彼は誰の味方もないまま敢然と立ち向かったのだ。Davidの長年の苦しみの元は、Willの放った一発の銃弾で倒れた。
多分その瞬間、士官候補生David Archerは、William Marshallに望みのない恋をしたのだった。

3年後、ともにCalypsoに任官してからもDavidの思いはかわらなかったが、彼らは互いにかけがえのない友人となっていた。DavidのWillへの思いは決してかなわないものだった。同性愛は罪であり、それ以上に、Willは二度と、彼を友人としてすら近づけなくなるだろう。真面目で融通のきかない、そして誇り高いこの友人を失うことは、恋を秘めることよりも耐えがたいことだった。
Willはすでに任官試験に合格して士官となり、後ろ盾がいないにもかかわらず、未来もほぼ約束されていた。Davidの任官試験も目の前にせまっていた。2人で士官となってともに働けば、いつか──それも遠くない未来に──Willが自分の艦を持った時、きっと親友のDavidを副官として伴ってくれるだろう。それが今のDavidのひそかな夢だった。

だが上陸時間の間に、彼とWill、そして彼らの艦長Smithの3人は馬車ごと誘拐されてしまう。つれていかれた先は海賊の船で、艦長と引き離されたDavidとWillは2人だけで小さな船室に閉じ込められ、海賊の首魁であるAdrianはDavidにひとつの条件を出してきた。SmithとWillの安全と引き換えに、Davidの体をさし出せという。

事情を知らないまま、憔悴していくDavidをWillは案じていた。その思いが単なる友情と言うには深すぎることに、彼はまだ気付いていなかった。
........


船やら海軍やらの用語はちょっと難しかったんですが、とてもおもしろかった。わからない単語は大体スキップしても話は何とかなるんじゃないかな?と思います。船の描写なんかも詳しいので、そのへんが好きな人にはいろいろな意味でおいしい。やはり帆船ものはこのあたりの時代が多いですね。
かつては上官の気晴らしに体をもてあそばれ、今また海賊の首魁にいいようにされ、とかなり大変なDavidですが、本人はユーモアあふれる前向きな男で、決して運命にただ流されるタイプではない。ちょっとやんちゃな感じもして可愛いんだよな。融通のきかない、やや石頭のWill(しかも聖職者の息子…)とはとてもいいコンビ。
頭で考えるWillと、感覚で判断するDavid。互いを案じたりからかったりはげましたりと、恋とか抜きにしてほんとにかけがえのない友人なんだなー、という感じがいいです。

異様な状況の下で、彼らは互いに相手を守ろうともがき、脱出の手段を探そうとする。そんな中でついに思いを通わせながらも、すぐには近づくことができない。禁忌でもあるし、さらに、自分たちの艦に戻った先のこともある。船には秘密を保つだけのプライバシーなどないし、自由時間もなく、上陸することも滅多にない。仮に思いをとげたとして、彼らの関係には未来がない。

この2人もいい感じなんですが、海賊の首魁のAdrianもちょっと気になった。貴族階級の雰囲気を漂わせる彼だが、金のために誘拐をくりかえしながら、手元にひきよせた被害者たちを蹂躙する。Davidが無反応でいようとする、その抵抗を打ち砕くために薬を盛ったりしますが、何となく彼の行動の底には切羽つまったものがある気がします。
もともとは相棒と一緒に誘拐仕事をやってたようなんだけど、その相棒はAdrianについていけなくなって去った…とかそういう一文もあって、何か色々想像が(いや妄想か)ふくらむところです。勝手に。

DavidとWillの話はつづきが出てまして(「Eye of the Storm」と「Winds of Change」)、彼らの波瀾万丈な恋と、歴史の大きなうねりを書いています。フランスとイギリスで休戦が結ばれて陸に上がるWillとか、船を降りようかどうか悩むDavidとか、フランスへ潜入する任務とか。
エロシーンは少なめですが、ある時は濃厚。とにかく人目をさけなければならないので、我慢したり飢えている感じがなかなか味わいぶかい。
心の変化の描写も繊細で、「ロマンス」というテイストの言葉がよく似合う話です。「Eye of the Storm」の最後の方にある、滝の裏でのエロはとっても美しいシーンだった…

わりと受け攻め分かれてる感じ(あくまで傾向)なので、BLっぽい雰囲気もあり、そういうの好きな人にもおすすめ。

※リンクはLinden Bay Lomanceに貼ってありますが、My Book Storeからも買えます。MBSではちがうフォーマットのファイルを落としなおすことができるので、MBSの方がおすすめ。Lindenのファイルはちょっと作りが甘いので、使ってるリーダーの種類によってはきちんと読めないかもしれない…


★歴史もの
★サスペンス

iPhoneとiPodTouchは読書用リーダーとしてもなかなかに優秀です。
日本語だと基本的に青空文庫くらいしか読むものは用意されてませんが、英語では色々な電子書籍が出てます。

なんせあっちの電子書籍は書籍版より安い&送料がいらない、待ち時間なく一瞬で海の向こうから買える。
iPhoneなら持ち運びが軽い、片手で読める、音楽も聞けると、まさにいいことずくめです。風呂で読めないのが痛いですが、携帯用の防水袋を使えば読んで読めないこともない。かもしれない。
実際、どこにでも持っていけて少しの空き時間で読みすすめられるので、読む量もふえると思います。私は携帯で小説読むのは視線の移動が激しくてちょっと苦手なんですが、iPhone/iPodTouchの画面は表示のきめが細かくて縦横の比率がペーパーバックくらいなので、わりとアナログな感覚で読めます。

しかし欠点やらリスクやらもないではないので、そのへんを含めてぼちぼちレポしていけたらなーと。


続き...

テスト的に★評価導入してみました。

★★★…全力でおすすめ
★★ …ふつうにおすすめ(ジャンルが好きなら絶対おすすめ)
★  …そのジャンル、カプ、作家が好きならおすすめ


レビューするのは少なくとも何かピンとくるもののある作品ですので、どれもおすすめなんですけどね。「すっっげえおもしろかった!」と「おもしろかったよー」の区別がついた方がわかりやすいかなあと。
無論、独断と偏見に基くものですので、そのへんはご愛嬌。

No Going Home
T. A. Chase
No Going Home★★★ summary:
馬術競技で名のある騎手であったLesは、障害飛越でのジャンプに失敗し、頭に蹄を受けて深刻な怪我を負ってしまう。彼の名声がなくなるやいなや手の平を返した恋人は彼の価値を否定し、彼を病院に残して去った。
一度は起き上がることすらできないと思われたLesはなんとか回復し、リハビリを行い、父の牧場を引き継ぐとともに自分の牧場をはじめる。彼のもとには色々な「迷子」が訪れる。それは行き場をなくした人間であったり、見捨てられた馬であったりしたが、すべてをLesは引き受け、同時に彼らが回復して去っていくのを見送ってきた。彼はいつも傍観者であって、ふたたび恋に落ちることはなかった。何かが癒やされないまま、それでもそうして怪我から6年がたった。

ロデオカウボーイのRandyは、ロデオで負った怪我のために久々に実家の牧場へ帰る。彼は父親と深刻な不和の種をかかえており、家に帰ってからもまた争ってしまう。もはやそこは彼にとっては「家」とは思えない場所だった。
そんなある日、妹が借地の代金として目の見えない馬を渡すと言うのを聞き、何か裏があるのではないかとついていった彼は、隣人であるLes Hardinとはじめて顔をあわせる。
強靭で、己の信念に満ち、人生の厳しい面を見ながらも頭をまっすぐに上げている男にRandyはすぐに惹かれるが、LesとちがってRandyは己の性癖をカミングアウトしていない。Lesの方へ一歩踏み出すことは、父との関係、自分の人生、すべてを変えてしまうことになるという予感が彼を不安にさせる。
一方のLesも、陽気で子供っぽい、そして傷を負ったRandyにすぐに興味を持ったが…



T.A.はとても好きな作家なので、ブログをはじめるなら最初の紹介は彼の作品から、と決めてました。と言ってもブログやろうかと思ったのが一週間くらい前なのですが。
わりと真正面からの恋を書く人で、キャラは皆それぞれ自分に確信と誇りを持ちながら、人生の中で傷ついたり迷ったりしている。シニカルだったり、厳しかったりしますが、どのキャラも深い誠実さと強さを持っていて、自分を偽らない感情の交錯はとてもドラマティックです。エロシーン度も高し。
基本的に結構甘めのハッピーエンドですが、彼の作品の中では必ず登場人物が「選択」をせまられます。自分が何者であるのか、何者でありたいのか、どこにいるべきなのか。
生まれ育った場所だけが「家」ではなく、血のつながった相手だけが「家族」ではない。Homeシリーズでは、誰もが自分の居場所を探し、それを互いの腕の中に見出すけれども、そこまでの間には様々な選択がある。恋は甘いが、人生は厳しい…

Lesは一度は傷つきますが、とても誇り高い、強い男です。Randyはまだ若く、強さもあるが、父親との軋轢に苦しみ、カミングアウトが自分のキャリアにもたらす影響を恐れてもいる。自分自身を否定しながら、自分に問いつづけている彼を、Lesはその影の中から出してやりたいと願う。
そんなLesに強く惹かれながらも、Randyはどこに自分の足を置くべきか迷いつづける。何を選ぶべきか。何を捨てられるか。ただ恋に落ちるだけでなく、選ぶことで彼らはその先の人生を手に入れるのだが、その一歩を踏み出すことが難しい。

「No Going Home」は「Home」シリーズの1作目で、「Home Of His Own」が2作目になります。主人公はちがいまして、No Going HomeではLesとRandy、Home Of His Ownでは一作目の脇役であったTonyと、彼の相手であるBrodyの話。この作品も好きなんだ!ブルライダー(ロデオで牛に乗るカウボーイ)のTonyが何かとても可愛い。彼もまだ少年のうちに家を捨て、家族を捨てざるを得なかった男です。
まだ出ていませんが、次作は「His Heart's Home」。やはり主人公を変えながら、この先3作(かな?)予定されているそうです。

しかしカウボーイスラの例に洩れず、ワイオミングが舞台。
何でスラッシュのカウボーイはみんなワイオミングに住むんだろう。テキサスは駄目か?

★エロ度高
★ラブラブ度高

★Three-Star rating system★


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