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The Layover
Goodreads-icon.pngRoe Horvat

layover.jpg★★☆ summary:
8年前、Ondro Smrekは決してゲイと公表できない故国スロバキアを逃げるように去り、スチュワードとして世界中を旅してきた。
だがうつろな心をかかえたまま、彼は選挙結果次第ではゲイが激しく弾圧されそうな状態の故国へ帰ることにする。

理想などではない。ただ後悔があるだけだ。

乗り継ぎのスイスの空港で、飛行機が遅れてホテルに滞在になった夜、彼はやはり飛行機待ちのJamieという若いアメリカ人と出会う。純粋で脆さを漂わせる彼にOndroは強く惹かれるが、どうせ一夜しかない関係だ。
その筈だった。
.....



作者さんはチェコスロバキアで生まれ、それがチェコ共和国となったのちにそこを去って、ドイツとスペインに住んだ後スウェーデンに住んでいるそうで、その視点が色濃く投影された中編だと思います。
結構評価に悩むところがあるお話で、それはもう読んだ時の気分次第かもしれない。始めのうちの、空港での最終便逃しから相手の存在に気づくあたりなんかはちょっとリズム悪いかなと思うんですが、後半のOndroの気持ちやどうしてスロバキアに帰るのかの本音がむき出しになっていくあたりはひりひりしていて読みごたえがあります。

そしてなにより、普段アメリカやせいぜいイギリス辺りの話を読むことが多いので、スロバキアという正直なじみの薄い国の事情を読むのは非常に新鮮だった。開かれていない国、宗教というものの存在が濃密で閉鎖的。その息苦しさが、逃げ出したOndroの視点から密に描き出されていきます。
色んな国でゲイの権利が確立され(少なくとも制度の上では)ていく今、それでも世界のすべてがそういう場所ではない、ゲイとして生まれたこと自体が呪いのように人生を支配してしまう場所がたくさんあるのだということは、こうして物語として読むと余計に鮮烈に染み込んでくる気がします。
そして、それこそが物語という形のもつひとつのパワーなのではないかと。人に違う世界の見方を分けてくれる。この話は、たしかにそういう話でした。

痛みや閉塞感を出しつつも、全体には希望のある話です。
タイトルのLayoverという言葉は「乗り継ぎ」とか「乗りかえ」という意味ですが、実際に空港で飛行機便を乗りかえようとしていた二人という以上に、この出会いが彼らにとっての人生の乗り継ぎポイントだったんじゃないかと思います。

一夜の運命の出会い(ちょっとリアルバージョン)ものスキーとか、異国の雰囲気を感じたい人にオススメの一本。
あとみんなOndroの名前が発音できなくて「Andrewでいいよ」と言ってるのに、正しい発音にこだわるJamieがかわゆす。

★帰郷
★一夜の関係

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Runner
Parker Williams
runner.jpg★★☆ summary:
Matt Bowersの人生は16歳の時に崩壊した。それ以来、人を信頼することも近づけることもできずに、彼はひとりきりで屋敷の中に住んでいる。家族すら寄せ付けず。
彼だけの世界、すべてのものがあるべきところにある世界。

だがそんな時、一人の男が彼の敷地近くまで毎日ジョギングしてくるようになり、Mattはパニックに陥る。
弟の保安官にどうにかしてくれと電話で泣きつくが、相手がなにもしてこない以上無理だとはねつけられる。ただひとつ、Mattが外に出てその男の名前を聞けたなら、打つ手を考えてもいいと。

日常。世界。注意深く築き上げてきた彼の世界。
ジョギングランナーはそれをおびやかす存在なのか、それとも……
.....



トラウマもの、引きこもり主人公。
この手の話はそこそこ成り行きが読めたりするんですが、ある意味で「予想外」な話でもありました。

Mattは彼の世界に入ってきた一人のランナー、Charlieに惹かれていきます。彼のそばにいると怯えずにすむ自分を知って、驚きながらも少しずつ心を開くようになっていく。
Mattは非常にナイーブで、それは16歳の時に人への信頼を打ち砕かれたことからきているのですが、こわれた世界を自分なりに寄せ集め、人から見れば「異常な」世捨て人の生活をしながらも、彼は少しずつ自分を癒してきた。そのたくましさが意外でおもしろい。
人と会いたくないからって野菜を自分で育て、釣りに出かけて魚を釣る。冬の間は雪に閉ざされて雪かきもこない場所で、たくわえた食料でひとり冬をこす。
なかなかたのもしいじゃないか主人公!

一方で、彼は他人という存在にひどく過敏です。16歳の時に起きたことに対して、その後の彼の反応はちょいと行きすぎな感じもあるんですが、たぶんあれは行為そのものよりもその後の他人や家族との食い違いがもたらした自分への拒否感なのだと思う。
家族はMattを支え、「いつか正常に」なる日を待つのだけれど、Mattにとって世界も自分ももう壊れてしまったものであってそれを「いつか正常に」「元通りに」と期待されることは重すぎることだった。
彼にとって必要だったのは「変わってしまった」自分を見て、受け入れてくれる存在だった。それを自分でも気がついていない。まだ。

特に弟Clayとの関係はおもしろい。兄を大事にしているあまりちょっとやりすぎたりもするんだけど、いい弟です。
うまく兄の支えになれなかったかもしれないけれど、彼の存在なくしてMattは世界の存在を感じつづけることはできなかったと思うよ!世界に残してきたもやい綱のような存在でしょう。ブラコンすぎる。

Mattのトラウマ重すぎないかとか甘すぎないかそれでいいのかとかで評価が分かれているみたいなんですが、それはわかるなあ。私も最初そう思いながら読んでいたけど、でもやっぱり壊れた世界を取り戻すっていうのは大変なことなんだと思う。もっとうまくやることはできただろう、でも最善の道なんてその時にはわからない、それも読んでいるうちに感じられたことでした。
なので、個人的にはとても優しくよく描かれた世界だと思うよ!
それはそれとして、金の心配せずにあんな生活できるMatt超うらやましいじゃないか……と少々のやっかみは感じましたけどもな。あれはうらやま。

きつすぎないトラウマもの好きな人なら是非。悪人いないので、色々あるけれども優しい世界です。

★PTSD
★ブラコン

Vanished
Carter Quinn
Vanished.jpg★★☆ summary:
HenryはTomと結婚してもう20年になる。二人は9歳だった少年を見つけて養子にし、血を分けた我が子のように可愛がった。息子のCJはもう大学へ行き、HenryとTomは幸せに暮らしていた。
だがある朝、目覚めたHenryはTomの姿がないのに気づく。仕事ですれ違いかと思ったが、いつまで経ってもTomは帰ってこない。
異常を感じたHenryはTomを探し始める。
しかし、友人たちは皆非協力的で、Henryをののしる者までいるのだった。
一体、何が起こっているのだろう?
.....


全三巻。
ミステリ仕立ての三部作になっていて、2からのレビューを書くとその時点で前の巻のネタバレになるという素晴らしく困った仕掛けがあるので、ここで3までのレビューをまとめて書きますよ(ネタバレできないのでそこは遠回しに…)!

主人公は熟年カップル。の、片方。理性的でやや考えすぎる気配もあるHenry。
目を覚ましたら愛する夫がいきなり消えていてわけのわからない彼は、追憶を抱きしめるようにしながら必死に夫を探そうとするけれども、なぜか友人たちの誰からも拒否され、罵倒され、憐れまれ、嫌がられる。
なんでだ!

まあ途中で「これやばい物件か…」と薄々読んでいる方も気がつき始めますが、うまいことちょこちょこと愛を感じる回想が入ってくるので、ハッピーエンド頼む!という気持ちもあって結構手に汗握ります。

で…先が書けないんですけど、1巻、「ああやっぱり」と見抜けた感を味わった瞬間、ラストでどん!と展開がひっくり返されます。2巻も同じく。それぞれの巻で伏線を回収しつつしっかりクリフハンガー!を味わわせてくれます。なかなか舌を巻くうまさ。
途中にいい感じに周囲の人間関係も織り交ぜてきていて、当人のロマンスは少なめですが、そこそこ甘い雰囲気はあります。特に2巻以降。そのあたりもスリリング。

クリフハンガー感を味わいたい人、よくできたドラマみたいな展開を読みたい時にぜひおすすめ。おもしろかったです。

★謎の失踪
★ストーカー

Rescued
Felice Stevens
Rescued.jpg★★☆ summary:
Ryder Danielsは心に傷をかかえていた。
愛したはずの男は、彼よりも、ドラッグを選んだ。
今のRyderにとって、弁護士として関わる闘犬の保護活動と、弟の存在だけが支えであった。

だが母親は、Ryderがゲイであることを憎み、Ryderが弟に会うのを許そうとしない。
残ったものは仕事だけであった。

Jason Malloryはもう何年も付き合ってきた女の恋人にうんざりしていた。結婚するか別れるか、と迫られた時、Jasonは初めて自分が彼女を愛していないことに気づく。
別れてさっぱりしたJasonは、しばらく恋などするつもりはなかった。仕事だけで充分だ。
だがある日、工事現場に残されていた傷ついた闘犬たちを保護グループに通報した彼は、応じて駆けつけてきた男に目を奪われていた。

Jasonは一匹の犬の里親となり、それをきっかけにして、彼とRyderは心を許し合った親友になっていく。
親友以上のものになれるはずがないと、Ryderは知っていた。ストレートの男に恋をして何になる?
だがある夜、Jasonは自分がRyderに対して欲望を持っていることに気づき……
.....



犬(ピットブル)の保護活動をしている弁護士と、建設会社の社長(ストレート)の男の話。
カプだけでなく周囲のキャラの感情もよく書かれていて、それぞれの大きな人生の転機をうまく描き出した話です。

闘犬はもちろん違法なんですが、やはり地下で行われているという話は聞いたことがある。また闘犬に使われやすいピットブルは人気の犬種な一方、大きくなると持て余して捨てる飼い主も多いのです。そうすると野良になり、中には人間に対して凶暴になる犬もいる。
そんな、見捨てられた犬たちを保護するのがRyanの属するボランティア組織。Ryan自身も里親のひとりです。

Jasonも、自分の建築現場にいた犬の一頭を飼うことになり、「犬同士がとりもつ縁」で二人の距離が近づいていく。犬かわいいし、犬にめろめろな男たちはいいね!
Ryderは前の男との別れ方がよくなかったので、恋に対しては及び腰です。誰かをまた信じる気にはなれない。犬は裏切らないから、と犬に愛情を注いでいるふしもある。
だからJasonと恋(のようなもの)が芽生えはじめても、どこか信じきれない。ストレートだと思って生きてきたJasonが、家族に、兄弟に、社員に、社会に対して自分の恋人は男だと言えるのか、認められるのか。そしてそれを、Jasonの家族は受け入れてくれるだろうか?

ゲイ×ストレート話のお楽しみ、「カミングアウト」は今回もドラマティックで盛り上がります。でもJasonはいい男だからな!新しい経験にちょっとうろたえたりしつつも、何が自分にとって大事なのかを見失うような男ではない。
だからといって、すべてがうまくいくわけでもないですが。でもこの二人なら乗り越えられそうな雰囲気が話全体に漂っていて、ちゃんといい感じに「大人の恋」なお話です。

Ryderが愛する、でも母から会うことを禁じられた弟との仲も、ちゃんとJasonが取り持ってやる。この「お前の問題は丸ごと俺の問題だ」という包容力というか、地にどっしりと足がついている感じが読んでいて安心できます。
この作家さんは去年デビューなのかな?なんだか新しい人らしいのですが、キャラクターが愛情深くて、ちょっとほっこりしていて、この先も期待大。
大人の、ほろ苦いけれども甘い恋物語(犬つき)を読みたい時に。


★闘犬
★ストレート

Fish and Ghosts
Rhys Ford
FishandGhostsLG.jpg★★ summary:
Hellsingerシリーズ1。

Hoxne Grangeホテル、それは叔父がTristanに残してくれた遺産だった。
何故叔父が、その財産をTristanにだけ残したのかは親戚の間でもさまざまな憶測と、非難を呼んでいた。ある者は不公平だと言い、あるものはTristanを狂人だと言う。
Tristanはそのホテルを「幽霊たちが泊まりにくるところ」と主張していた。

Wolfは超自然現象を研究し、時にでっちあげの幽霊話の正体を暴いてきた。
今回はTristanの親戚に雇われ、幽霊たちの存在を、あるいは非実在を、証明しにホテルへと向かう。

嘘つきだ、とWolfに言われたTristanは刺々しく彼らに対応する。
人がどう思うかなどどうでもいい。Tristanの望みは、幽霊たちを迎え、送り出すことだけだ。
だが、すべてはひとつの指輪から崩れていく…
.....



幽霊ホテルのオーナーと、超自然現象の研究者(っていうか、イカサマ暴いて回ってる感じ?)のお話。シリーズものの1冊目。
舞台は昔のお屋敷、今はホテル。オーナーのTristanはそこを「幽霊が、最後の三日間だけ泊まるところ」と主張している。その3日が過ぎると、皆、どこかへ行く。
あの世かどうか、そこまではTristanにはわからない。
「幽霊も魚も三日たつと古くなるから」と言っているのがかわいい。

そんなホテルに「幽霊がいるかどうか観測します」とWolfたちが乗りこんでくる。彼らは、Tristanが「正気じゃない」と証明して財産を取り上げたい親戚に雇われているので、実質、敵だな。
Wolfは「客観的に検証する」と言い、いろいろな機器での観測を開始しますが、彼自身はきわめて偏見の塊という感じがします。Tristanを嘘つき呼ばわりしてるし、まったく信じようともしていない。
研究者とか名乗るわりに、そこのところがかなり引っかかったのですが、あとからわかるWolfの家庭事情からして無理もないのかなあ。わりと屈折しているぞ、Wolf。そしてその屈折ぶりを複雑な形でTristanに向けているのだと思う。

あちこちどうも話に「つっこみどころ」があって、最初はマイナス面にとらえていたんですけど、途中から「これはそういう話だ」と思って読んだら楽しかったです。しっとりした幽霊ホテルの話じゃなくて、ドタバタ系ゴーストバスターズなんだな!もうみんなドジというか考えなし。Tristanくらいでしょう、致命的なミスをしてないの。
そこで「貴様ら専門家だろ!」とマイナス点つけてると評価低くなりますが、この話はきっとギャグっぽいテンションで読むのが正しいんじゃないかなと…まあ、文章からそういう雰囲気がいまいち感じられなかったので自信はないんですが、ドタバタ系に分類すると楽しい。そのわりにキャラがちょっと重いので、そのあたりの調和は続編に期待かな。

うっかりと、連続殺人鬼の幽霊を呼び覚ましてしまった皆は、大ピンチ!
一方、その間にもしっかりと恋に落ちていくTristanとWolf。「そんな場合じゃねえだろ」ってシーンもありますが、そこはテンション軽く楽しむべし。この二人の組み合わせはめっちゃかわいい。なんかどっちもどこかしらピュアなところがあって、一緒にいると生き生きしているのがいい。一人でいるより二人でいる方が似合うカプです。
後半に出てくるWolfのママが強烈で、幽霊退治のあたりはもうしっちゃかめっちゃかで愉快。もー色々つっこみたい!

幽霊ホテルとか、ドタバタ系ゴーストバスターズとか、そういう軽いパラノーマルが読みたい人に。
続編も出てます。読むぞー。
でも表紙ほどTristanはオタクっぽくないと思うよ!

★幽霊ホテル
★ゴーストバスターズ

The Royal Street Heist
Scotty Cade
RoyalStreetHeist.jpg★★ summary:
南北戦争時代の高価な絵画が二枚、美術館から盗まれる。
そして、後には死体が転がっていた。

ニューオーリンズ警察の班長Montgomery "Beau" Bissoneは、その事件の捜査にとりかかる。
そこに現れたのが保険会社ロイズから派遣されてきたTollison Cruzだった。

捜査に口出しされるのを嫌うBeauはCruzに冷たくあたる。だがCruzが美術品業界に精通していることは間違いなく、二人は失われた絵の手がかりを追って、美術館を運営する一家の周囲を調べていくのだが…
.....



強面の腕利刑事と、保険調査員の顔をした過去のある男のお話。

刑事のBeauは、実はまっすぐでいい奴なんですが、とある刑事と恋仲になって同棲した挙句、浮気されて別れ、その傷心から立ち直ってない。しかも悪いことに、その相手と同じ現場で働かなければなりません。毎日気まずいなんてもんじゃない。
そんなわけで、どんどん冷たく、どんどん厳しく剣呑な男になっています。

そこに颯爽と現れた保険調査員。当然のようにBeauはこの男の口出しが気に入らないし、相手のCruzはBeauの見下したような態度が気に入らない。
いいですねえ。二人の男がツノ付き合わせて捜査。私の大好物です。
ことあるごとに文句を言い、ことあるごとに反感を抱いて、それでも感情的に二人は段々と近づいていくのです。嫌いな相手のことって四六時中考えてしまうからね。何かと気になるからね。
恋とよく似てるよね!っていうか恋じゃねえか、それ。

そのあたりの反発の感じはよく書かれていて、とてもおいしい。
あとBeauの、過去の恋へのあれこれがグダグダ並ぶのですが、ここも真面目で誠実なBeauの性格がにじみ出ていてよかった。彼は決してパートナーを裏切るタイプではないから、裏切った相手を許すことができない。どんなにその相手が後悔していても、その傷を忘れられない。誠実だけど、その誠実さが今は彼を不幸にしている。でももしパートナーが裏切ったのだとしても、関係の破綻は片方だけの責任なのだろうか?

BeauとCruzは反目の挙句、案の定、なんだか勢いあまってベッドインしますが、簡単にはうまくいかない。
実はCruzには、美術品窃盗の過去があった。今回あまりにも都合よく彼が美術品盗難の現場に現れたのは、偶然なのか、それとも保険調査員の顔こそが偽物なのか。

Cruzとの関係が深まるにつれ、Beauが過去の傷と向き合い、その痛みを手放していく経過がひとつ物語の大きなターニングポイントを作っています。そのあたりも楽しみながら読むと話がちょっと広がる感じ。

捜査の展開も無理がなくて、おもしろかった。
あとは少し、第三者の視点が入ってくるバランスが気になったかな。それとBeauがもう少しCruzの過去に悩んだりしてもいいんじゃないか、あいつ真面目だしさー、もっと良心の問題を問うてもいいと思うよ!とかその辺、私の好みとしてはもう一歩つっこんでほしかった。つっこんだらおいしかっただろうに!
お洒落というか薄味というか、好みで分かれるところかもしれません。でも全体にこなれていて読みやすかったし、楽しかったので、シリーズの次の話も楽しみにしてます。あとこの作家さんのほかの本もちょっと読んでみよう。

真面目で強面の刑事と美形の有能保険調査員の恋、という言葉でときめく人におすすめ。

★美術品盗難
★過去のある男

Listening To Dust
Brandon Shire
listening to dust★★☆ summary:
Stephenは傷心からフランスに逃げ帰っていた自分をふるいたたせ、アメリカへとやってきた。
ロンドンで出会い、愛した男を自分の元へ連れ帰るために。

Dustinは振り払えない影を背負っていて、自分がゲイだとも認めていない男だった。彼とStephenはロンドンで出会い、Dustinは激しい憎しみをStephenにぶつけるが、二人は恋に落ちていく。
だが結局Dustinはアメリカへと戻っていったのだった。
知的障害のある弟を、暴力的な父親のところに残しておくわけにはいかずに。

だがやっとStephenが町にたどりついた時、すでに悲劇は起こっており…
.....


出口のない物語。

ネタバレになってしまうのであまり詳しいあらすじは書けないのですが、ストーリーはDustinの弟のRobbieが語るシーンから始まる。
とても無邪気な、愛らしい口調で話す彼ですが、その言葉遣いも理屈もまるで子供のもので、読み手は段々と違和感を覚えていきます。あっけらかんと語られるその話が、実はとてつもなく重いものなのではないかと。何か、とりかえしのつかないことが起きてしまったのではないかと。

その重さ、そしてRobbieの明るさとのやりきれない対比が、物語の最後までずっしりとのっかってきます。

もうねえ、切ないっていうか苦しいっていうか、つらい。
途中で「何が」起こったのかは大体わかるのですが、それがもうやりきれない。Dustinたち兄弟が育ってきた背景が切れ切れに語られる中、浮かび上がってくるのはほんとうに悲惨な、傷つけ合うしかなかった人々の物語です。
そんな中、事故でRobbieは知能を損ない、そのことに兄のDustinは責任を感じている。暴力的な父親の元から二人で逃げようとも思ったようですが、Robbieは「パパを置いていくわけにはいかないよ」という。

ほんとにねえ、Robbie、お前は…!
その愛情にあふれた、無邪気で優しい言葉は全編を明るく支えてくれるのだけれども、彼のその愛がなにをもたらしたものか。
そして、Dustinを愛し、ついに迎えにいったStephen。彼の愛が、なにをもたらしたのか。
愛は決して、明るい運命へと続くわけではない。愛や情熱は、時にその純粋さゆえに重い鎖となる。

読んでいる間もしみじみ苦しかったんですが、読み終わってからも「もし」や「何故」につきまとわれてしまう話です。
何がDustinたちをそこまで追いつめたのか。出口はどこにもなかったのか。

タフな一冊ですが、悲劇好きならこれは読むといいと思う。この重さと緊張感は読みごたえがあります。
過去と現在の語りに、途中から手紙の中身も織りこまれてきて少しだけ語り口が入り組んでいますが、話全体の流れはわかりやすいので難易度は高くはないです。
Robbieはthemとtheirを間違えたり、areを使うべきところにisを使っていたりと、典型的な子供の語り口をしています。かわいいんだけど、いや、Robbieのことを考えるのもやりきれない。
胸がぎゅっとなるお話でした。この作者の話を読んだのは二冊目ですが、閉塞感に満ちていて、気になる作家さんです。

★切ない
★自己否定

★Three-Star rating system★


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・2017年
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・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
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*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
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