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[タグ]Z.A.Maxfield の記事一覧

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St. Nacho's
Z. A. Maxfield
StNachos★★ summary:
Cooperは故郷から逃げ出してからこの3年、バイクで町から町へと渡り歩きながらほとんど路上で眠るような生活をしていた。時おりレストランの厨房などで働き、バイオリンを引いてチップを稼いだが、少しでも居心地がよくなるとそこからまた逃げ出す。
人と話したり、必要以上に関ったりする気はなかった。いや出来なかった。もはや彼の知る人の「言葉」は音楽だけだったからだ。

St.Nacho'sという海辺の店に転がりこんだ今度も、長く滞在するつもりはなかった。
その店では耳の聞こえないShawnという美しい若者が働いていた。彼にはCooperの音楽は聞こえない。
だがどうやってか、ShawnはCooperの中にある言葉を誰よりもよく理解するようだった。

過去と向き合うことができないまま、セックスだけの関りですべてを終わらせようとするCooperを、Shawnは時に乱暴なほどの情熱で殻から引きずり出す。そして静かな海辺の店で、Cooperは自分の中にある恐れ、罪、いつも背を追ってきた混沌とゆっくりと向き合いはじめるが、過去はやがて現実の形をとって…
.....


「何かから回復する」というのはスラにはよく見られるテーマで、それは肉体的な怪我や病気だったり、精神的なダメージだったりしますが、この話もそのひとつです。
Cooperを追っているのは過去の破滅的な生活と、その時に体にこびりついた泥のような記憶で、それから逃げつづけた彼はただこの先も逃げることだけを考えている。
ジュリアード音楽院でバイオリンを学び、もっとも若い第一バイオリン兼コンサートマスターとして未来を嘱望されていた彼は、アルコールやパーティに溺れ、車の事故をおこして、すべての未来を失っています。友人は彼のせいで刑務所へ行った。親は彼を家から追い出した。
それでも音楽だけは彼の最後の「言葉」として、世界と彼を結びつける。

Shawnは耳が聞こえません。唇を読むことはできるけれども、完全ではない。天使のようにきれいな顔をしている22歳の若者ですが、結構激しい面もあって、6歳上のCooperに対しても何の遠慮もありません。(セックスはTop、かつちょっとdirtyらしい…)
彼に惹かれたCooperは関係を持ってしまうが、それを深めたくはない。Cooperが求めているのはただのセックスであって、人との関りではない。だがShawnはCooperを離そうとしないし、Cooperの内側が痛みと混乱に満ちていることがわかってからも目をそらそうとせず、その視線につられるようにCooperもやっと自分のことを見つめるようになっていく。
その日々と変化がCooperの、淡々とした一人称で語られていきます。

Shawnに音楽が聞こえないことをわかっていて、ある時、Cooperは演奏している間バイオリンにさわらせてやる。振動をShawnが感じられるだろうと思って。
音楽はCooperにとって「最後に残された人としての言葉」で、しかしそれが誰かにつたわることを彼は期待していなかった。ましてやShawnには。だがShawnがどうやってか彼の「言葉」を正しく聞きとったことを感じ、その瞬間、はげしく動揺したCooperは演奏を乱してしまう。
これはとても美しく、痛みに満ちたシーンだと思う。音楽を自分の言葉としながらも、それが人につたわるとそこから逃げ出そうとするCooper。…まあ、もちろんShawnは彼が逃げることをゆるさないわけですが。

全体に筆致は淡々としています。痛々しくはありますが、必要以上にドラマティックに盛り上げる感じはない。文学的と言ってもいいような雰囲気もあるような。
会話文が少なく、Cooperの一人称も長いセンテンスが多い上に全体の話も長いので、多少長文読むのに慣れた人向けかと。(あとメール文などがぽつぽつ文中に入ってるので、斜体を反映しないStanzaで読むにも慣れがいる)
「うちは全部18禁だから」と言いきるLooseIDから出ているものにしては、びっくりするほどエロ描写少なめだ。
特にエロ以外の部分重視の人、繊細な話が好きな人におすすめ。

★バイオリニスト/耳の聞こえない恋人
★トラウマ・恐怖症

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Crossing Borders
Z. A. Maxfield
CrossingBorders★★ summary:
結局のところ、19歳になった時、Tristanは自分がゲイだと認めざるを得なかった。ガールフレンドに会いに行って、別れの最終通告を聞くよりもそれを伝えに出てきた彼女の兄弟の股間の方が気になるとなっては、もはや自分を誤魔化しようもない。
常に行動の早いTristanは、すぐさま誰か「自分を知らないゲイ」を引っかけて、行きずりのセックスを体験してみようと試みる。同性との関係というのがどういうものなのか、彼にはどうしても知る必要があった。

だがTristanの目の前に現れたのは「見ず知らずの相手」ではなく、何年も前からTristanにスケートボード中のヘルメット着用義務を言いきかせ、彼を追い回して罰金を取っていく警官──Tristanが呼ぶところの「ヘルメット巡査」であった。

Michaelは何年もTristanを追っていた。この怖いもの知らずで、アグレッシブな少年の安全を案じて。その感情がただ保護欲というには強すぎるものであることには気付いていたが、Michaelはこの年下の少年を距離をあけて見守りつづけていた。
Tristanがゲイであり、無謀にも自分の安全をかえりみることなく男と関係を持とうとしていることを知った時、Michaelはこの少年を放っておくことができなかった。Tristanは傷つくかもしれない。
それに、それは見ないふりをするには、大きすぎる誘惑だった。

MichaelはTristanに同性同士のセックスを教えることを申し出て、Tristanはそれにとびつく。
はじめは好奇心。だがその先にあるものが自分の一生を変えることを、MichaelもTristanもまだ気付いていなかった。
.....



Tristanは19歳なんですけど、それにしちゃ表紙はちょっとショタっぽすぎると思うですよ。
それはともかく、丁寧な心理描写に定評のあるZ. A. Maxfieldの話。これもまた、全編にわたって精緻に少年と年上の警官との関係、その心の変化を書いています。

Michaelは保護欲の強い人間で、だからこそ警官になったのですが、その一方で時おり自分自身をコントロールされることに喜びを覚える。
それがSlave/Masterのたぐいの欲望だと誤認した彼は、かつてもっと若い頃にSMのシーンに入りこみ、関係を破綻させ、今でもどこかにその影を持っている。
Tristanは若い、経験の浅い恋人ですが、Michaelの内側にある欲望を正確に感じとって、セックスの中で時おりMichaelを支配します。痛みではなく、愛情で。

Tristanは無謀なところもあるものの、理知的で、とても自己犠牲の強い少年です。父が死に、傷心の母が弟妹を育てるのを助けるため、行けた筈の大学をあきらめて近くの大学に通っている。
MichaelはそんなTristanの中にある輝きに、どうしようもなく恋に落ちていく。Tristanが好奇心を満たせばどこかに去っていくのではないか、19歳のTristanにはまだ愛情と欲望の区別がついていないのではないかと迷いながら、関係が深まっていくのをとめられない。

一方でTristanは幸福を感じながら、やがて現実に気付いていく。Michaelの警官という職業が危険をともなうものであること、警官の中でゲイとしてカミングアウトすることが危険をともないかねないこと。
自分はまだ、恋に落ちる準備ができていないのかもしれない。この先の人生をMichaelと生きていきたいが、それを決心して踏みこむだけの心がまえが、Tristanにはまだなかった。なにしろまだ19歳です。
だが物事は早く、時に残酷に動く。

どちらも優しい、豊かな情感をもったキャラクターです。無謀できかん気なようで心のきめこまかい、そして揺れ動きやすいTristanの少年らしさが、物語に躍動感を与えている。
ゲイであることを気付いた19歳の少年の目覚めと、はじめてで最後の恋。そして一方ではMichaelの静かな孤独(彼自身が気付いていない空白)が埋められていく、長いけれども丁寧で美しい物語です。
エロシーンも繊細で、関係の深まりとともに変化していきます。やはりエロにキャラクターとか物語が反映されているものは、読みごたえがあると思う。

※追記。
前半、Tristanがハロウィンパーティに「剣心」の格好をしていったりするシーンがありまして、それはとっても気恥ずかしいです。その格好でのエロシーンとかね!
でもそうだよね。「仮装」っちゃあ「仮装」だもんなー。コスプレは当然ありだとは思いますが…でもそれが日本の漫画キャラだってだけで、ものすごく恥ずかしいのは何故なのだ。


★エロ多め
★庇護欲

Physical Therapy
Z. A. Maxfield
Physical Therapy★★★ summary:
Jordan Jensenはリハビリを終了して、新たな出発をするために St. Nacho'sの町へと引っ越した。無二の友人Cooperが恋人と暮らす町へ。
だが St. Nacho'sへ来たのは、そこに友人がいるからだけではない。Cooperが、3年の放浪の末ついに足をとめ、彼の中の痛みを癒やした場所。その町に興味があった。

JordanとCooperは、かつてともに酒とパーティに溺れて未来を失い、酔ったJordanが運転していた車が子供を轢き殺して、彼らはどちらも想像だにしていなかった人生の深みへと転落した。
Jordanは刑務所へ行き、同乗していたCooperはどん底の人生のうちに路上生活者となり、やがてSt. Nacho'sへとたどりついた。
そしてそこで、Cooperは自分の人生を手に入れたのだ。
友人が St. Nacho'sで何を見たのか。Jordanはそれが知りたかった。

町のスポーツジムに職を得たJordanは、最初の日にKen Ashtonに会う。Kenには、Jordanを憎む理由はあれど、好く理由はなかった。Kenの野球人生は酒酔い運転のドライバーの事故に巻き込まれて破滅し、その事故で友人を失い、彼自身、昏睡から覚めた今も自由に歩くことすらままならない。
だがKenは、Jordanのマッサージに癒やされる。Jordanにふれられていると、事故からはじめて、自分が生きていると感じる。

KenはJordanに惹かれ、Jordanはそれを恐れる。彼もまたKenに強く惹かれていたが、2人が関ることがいい考えだとは思えなかった。刑罰としては償ったとは言え、今でもJordanにあの罪がのしかかる。
誰が許しても、誰が忘れても、Jordanだけは許すわけにも忘れるわけにもいかなかった。あの子供。あの一瞬、世界が砕けちったあの瞬間を。
.....



St. Nacho's 2。
前作の「St.Nacho's」ではCooperが主人公で、彼が絶望の中でバイオリンを背負ってSt. Nacho'sにたどりつき、恋人Shawnの力を借りて人生と向き合うまでが語られました。
その中でも出てきていた、Cooperの友人であり、恋人であった男、そして共犯者とも呼ぶべき存在のJordanが今回の主人公です。

前作では、Jordanの内面が今ひとつ見えてこないところがあって、それが後半部分をちょっと弱めていたと思うのですが、今回のこの「Physical Therapy」でJordanはとても魅力的な顔を見せます。シャイで優しい。だからこそ苦しい。
痛み、絶望、罪悪感。「St. Nacho's」でCooperに責任を転嫁しようとしていたJordanはもういない。彼は再度のリハビリを経て、自分自身を立て直すすべを覚えた。それは、他人を癒やすこと。だからマッサージを覚え、St. Nacho'sへとやってくる。

一方のKenは、自分の人生が事故によって奪われた苦しみと怒りをかかえています。世界は彼の周囲でとざされてしまったかのようです。だが、彼はJordanのぬくもりを感じ、Jordanの中にある優しさ、彼からつたわってくる光へとすがりつく。
Jordanは彼を癒やしてあげたいと思うけれども、KenがJordanに向ける思いをどうしていいのかはわからない。彼は他人に与えることはできても、他人から何かを受けとることはできない。まだJordanの中には、罪や闇がこびりついたままなのです。
癒やしが必要なのは、KenだけではなくJordanの方でもある。それが、繊細な語り口からゆっくりと見えてきます。やがてKenもそれに気付く。
そこまでの、ひとつひとつ言葉や仕種を積み重ねていくような、独特の描写が味わい深い。

Jordanが他人を癒やすことで自分を立て直そうとしたように、KenもJordanを癒やすことで自分自身をも癒やしているのだと思います。彼らはどちらも苦しみ、1人では出口へたどりつけない。
でもSt. Nacho'sは癒やしの場所。奇跡のおこる場所です。
奇跡にたどりつくまでが大変だけども…

前作の主役、Cooperと恋人Shawnが元気そうにしているのも嬉しい。Shawnは相変わらずかわいいなあ~。耳がきこえないんですけれども、そのためかどうか、ダイレクトに真実を見抜き、真実を恐れない勇ましさがあります。周囲の会話をCooperが何気なくShawnに手話でつたえている様子も、2人の調和が感じられて美しいです。
あそこには希望があって、それを求めてJordanはSt. Nacho'sに来たのだろうと思う。

こうしてJordanの内面をのぞいてから前作を読み返すと、CooperとJordanの2人の友人同士がたどってきた人生や痛みが鮮やかに見えてきて、数倍楽しめます。
私はシリーズ前作は★2つをつけたのですが、2冊セットで考えると、迷わず★3つをつけますね。
しかしこれを読んでから前作を読み返しましたが、以前に手こずったこの作家の文章が、結構あっさり読めるようになっていました。
あれから50冊くらい読んだからなー。さすがにちょっとは進歩してるか。やっぱり萌えは強い。

繊細で美しい、静かな癒やしと調和の物語です。
ストーリー重視、エロ以外の部分重視の人におすすめ。「St. Nacho's」と2冊セットでね!

★贖罪
★リハビリ

Blue Fire
Z. A. Maxfield
Blue Fire★★ summary:
炎がJared Kennyの家を焼きつくした。人生の半ばをともにすごした恋人の記憶、彼の残したすべても灰になった。
何ひとつ、彼には残っていなかった。

Adam Collinsは、燃える家を見つめて茫然としていた男のことが忘れられなかった。
絶望と悲嘆で心をとざしたJaredをAdamは何度も見舞い、リハビリ施設からつれ出して、自分の故郷にあるバンガローへとつれていく。

Adamの情熱とその青い目は、Jaredにそれまでの人生で得たことのなかったものを与えた。情熱、愛情、優しさ。Jaredは、その中にたやすく溺れてしまう自分を知っていた。かつて年上の恋人に溺れ、人生のすべてをたよってきたように。そして人生のすべてを炎の中に失った。一瞬で。

恐れ、迷って、JaredはAdamのもとを逃げ出す。
自分の過去から、炎から、Adamの青い目から。

だがその青は、どれほど時間がたっても彼の心から消えなかった。ほかのすべての青よりも彼を惹きつけてやまない、冷たい、だが同時に炎のようにあたたかな青。
その青への情熱を、Jaredはガラスへと向ける。火で溶け、火の中で作られていく色と形に。
そして炎は、形を変えてふたたび彼らを結びつけようとしていた…
.....



Z. A. Maxfieldにしてはわりとあっさりとした長さの、中編くらいといった感じです。
出版社(LooseID)の企画もので、Cameron Daneが「Dreaming In Colors」で「赤」をテーマにしたように、彼女は「青」をテーマにしています。

年上(37歳)の男と年下(24歳)の消防士。
炎を通した彼らの出会いと、短いが激しい人生の交錯、時がすぎ去った後のふたたびの思わぬ出会いの物語です。人の尊厳、プライド、そして傷と回復の物語。
繊細なJaredをAdamは強く求めるけれども、当のJaredは、自分の中にそれに値するものを見つけることができない。Jaredは死んだ恋人を愛していた一方で、彼に支配される人生を嫌ってきたようです。でもいざとなると、自分の人生をどうやって確立すればいいかわからない。
恋人を失い、家を失って、彼は袋小路に迷いこむ。

その年でモラトリアムか、という感じもないではないですが、「優柔不断に落ちこんでいる年上の男を年下の若者が力まかせに追っかける」の図はなかなかいいものです。
若さゆえの情熱に引きずりこまれたい、でも怖い、というわけで、当然のように年上受け。
この作者は、基本的に年上受け萌えなんだと思います。優柔不断だったり優しすぎたりする年上男の心の安定を迷いのない年下がつっこんで叩き壊す、というのが基本。ツボにはまるとすごく楽しい。

この一編は、ちょっと短いこともあってか2人の変化が唐突に感じられるところもあるんですが、モチーフが美しいので、ビジュアル的な美しさがあって、風景や物が2人のかわりに彼らの心にうつるものを語っているようです。そのへんの行間は味わい深い。
炎によってダイナミックに変えられてしまう2人の男の対比は激しく、陰影がくっきり浮き上がってくるのはさすがの筆力です。もうちょっと長さがあればぐっと鮮やかな話になったのではないかと思わないでもないけれど、逆に話の展開はこっちの方がわかりやすいかもしれません。

この作者らしく、繊細な話で、雪やガラスのイメージが綺麗です。
消防士萌えだったら勿論、年の差やちょっとたよりない年上受け萌えなんかもおすすめ。

これはLooseIDの企画、「Flying Colors: Red White and Blue」の一環です。
我知らずとは言えもう2冊読んだので、折角なのでほかのも(m/mのは)読んでみようかなと思ってます。

★年の差
★炎

Family Unit
Z. A. Maxfield
Family Unit★★ summary:
退役軍人のLoganは、癌で死んだ恋人の家に移り住んだ。
恋人の記憶をしのんでいたハロウィンの夜、彼はRichardに出会う。

45歳のRichardには大きな過去があった。
ゲイであることを認める前の混乱、その時に生まれた息子。その息子も事故で死に、彼は8歳になる孫のNickを引き取って1人で育てていた。
Nickは、彼に残されたただ1人の家族だ。孫のためならRichardは何を捨てても惜しくはなかった。

たとえLoganにどれほど惹かれていたとしても、一瞬の情熱や恋のためには捨てられないものがある。
2人だけでも、Richardと孫のNickはまぎれもない家族として暮らしていた。

RichardとLoganは互いに惹かれながら、ただ恋人というだけではない新しいスタンスを探さなければならない。意見のくいちがい、価値観の相違、8歳の子供の存在。
そのすべてを乗り越えて、新しい家族の形を。
.....



45歳のおじいちゃんって若いよね。Loganも最初はRichardが「父親」なんじゃないかと思います。
Richardがのりこえてきた人生は楽なものではありません。若い時の性的な混乱でできた息子とは長年会えず、やっと互いの関係を修復したと思ったら事故で息子は失われ、薬物中毒の母親の手から孫を奪い返し、彼はそのNickをひたすら守って育てている。
かつて恋か子供かという選択を迫られて、RichardはNickを選んだ。それはNickが8歳になった今も同じ。

しかし勢い余ってRichardは過保護にすぎるし、すべてのものからNickを守れるわけではないということを、どこか納得していない風です。時にはNickは1人で戦わなければならない、そのことを受け入れようとしない。
Loganは彼を尊重するけれども、時おり2人の意見は大きくくいちがう。

特に暴力というか、「力」の関わるところになるとRichardは反射的な拒否を示します。
彼には何故Loganが従軍したのか理解できないし、家の中に銃を置いていると知るや彼の家に行くことも拒否する。ある種の潔癖症と言ってもいい。
Richardにはそういう、どこか理想的な完璧さを求めるところがあって、それは現実感覚に優れたLoganとはちょっと相いれない。

でもLoganはいい男だね!彼はRichardの拒否に傷つくけれども、理解している。RichardがNickのことになると過剰反応を示すことも、子供のことが第一に来ることも理解する。理解しすぎじゃないかという時もあるが、でもほんとにいい男だ。
譲歩ばかりするだけでなく、Richardにも理解して歩みよってもらおうと、Loganは色々な努力を重ねます。一方的な譲歩が2人の関係を壊しかねないことを、彼はよく知っている。

Richardの問題は他人との妥協に慣れていないことで、その深くには、「家族」を失ってきたことによる傷がある。ゲイであることが彼にその孤独を負わせた。
孫のNickに対する過保護なほどの愛情はその埋め合わせでもありますが、同時に彼はNickと自分の作った殻にこもって、他人をたやすく入れようとしません。
LoganがRichardと本当の恋人になるためには、「家族」としての信頼を得ないといけない。まあ、Loganは簡単にあきらめるような男でもないけどさ。
そういう2人の様子を書いた話です。

中年になってからの恋ではあるけれども、2人とも結構ピュアなところがあって、人と人との距離を丁寧に描いた話全体に繊細な味わいがあります。軍隊とかそういうあたりの価値観は何と言うか「アメリカン」な感じもするので、そのへんは好き好きあるかも。
ところどころRichardの名前が誤植でNickになっていて、人の名前が間違ってるのってそんなに珍しくはないんだけど、8歳の子供の名前だとさすがにこっちの萌えっとした気持ちがしぼみますね。惜しい。でも最後のオチまできちんと作られていて、いい話です。

価値観のちがう大人たち(片方子連れ)のリアルな恋模様に萌える人に。
ちょっと長めなので、じっくり楽しめます。

★元軍人×非暴力主義者
★家族

Jacob's Ladder
Z.A. Maxfield
Jacob's Ladder★★★ summary:
Jacob “Yasha” Livingstonは、ほぼ人生最悪の日を迎えていた。
まず、風邪で具合が悪い。そして家に戻った彼は複数の男が恋人のベッドにいるのを見る。
恋人はもともと口より手が先に出るような男で、だがかつてイスラエルで従軍したこともあるJacobは自分の身は自分で守ってきた。その日までは。

散々叩きのめされて血の海に残された彼は、病院を出てすぐに兄のところへ行こうと長距離バスに乗る。だがバスの運転手はJacobの咳を嫌がり、彼を途中で放り出した。
モーテルにまではどうにか行きついたが、意識を失ってしまったJacobは救急に搬送される。意識を取り戻して、迎えにきてくれと兄に電話したが、週末までは行けないという返事だった。

そんなふうに、JacobのSt. Nacho'sでの暮らしが始まった。
そこには、彼を運んだ救急隊員の男、JTがいた。JacobとJTはどちらもユダヤ人だが、Jacobはユダヤ教徒であることとゲイであることの折り合いをとうの昔につけていた。
明らかに、JTはそうではない。彼はJacobに惹かれる自分を恥じている。

ストレートであろうともがく男、ゲイであることを認められない男との関係に未来はあるだろうか?
それともそれは、Jacobの新しい傷になって残るだけなのだろうか。
.....


St.Nacho'sシリーズ3。
Jacobのイディッシュ語(移民のユダヤ人が使うらしい)での愛称が “Yasha” なんだそうです。何で?と思ったけど、Jacobは読み方によっては「ヤコブ」ですね。多分アメリカでは普通に「ジェイコブ」と発音して構わないと思うんだけど。
タイトルの「Jacob's Ladder」は日本語ではヤコブの梯子、天使が上り下りする、天と下界をつなぐ梯子のことです。

JTはさわやかで魅力的でやさしい男だけれども、いざ己のセクシュアリティのことになるとひどく混乱しています。
Jacobを求めながらも、彼は日の当たる場所ではそのことを自分自身に対してすら否定しようとする。そしてその否定がJacobを傷つけたのを見て、自分も傷つき、さらに混乱する。

JacobにはJacobの問題があり、彼は暴力のある場所に惹かれる自分をどうにかしたいと思っている。彼と兄は暴力的な父親の元で育ち、力を合わせて母親を守ろうとした。兄は結婚しながら、「自分が父親のようにはならない」ことを証明しようとし、Jacob自身はどこか母親のように暴力の被害者としての立場に入りこんでしまう。
実際に殴られたことがあるかどうかではなく、それは自分に対してどこかしら投げやりになってしまう彼の生き方の問題なのです。

そんなふうに複雑なものをかかえた2人の男の人生が、このSt. Nacho'sで交錯する。
St. Nacho'sは不思議な場所で、ここに来た人に自分の人生を立ちどまって見つめるための「隙間」を与えます。シリーズの1、2でそうしてこの町にとらえられたCooperやJordanの近況がかいま見えるのもいいですね。
Jacobを雇うことになるパイの店の女主人は、Jordanのお母さんです。彼女も多くのものをくぐりぬけて、St. Nacho'sで人生を取り戻した。

相変わらずなごやかな町の様子もいいし、今回はサブキャラがなかなか立っています。兄とか、JTの同僚とか。
Z.A. Maxfieldはここんところ書く物が今いちハマらなかったんですけど、やっぱりこのシリーズはいいな。
静謐な描写が重なり合っていく感じの小説で、静かでいながらおだやかに賑わっている町の背景と、2人の心の交錯がうまくとけこんでいます。交わされるのは愛情や情熱だけでなく、傷や痛みでもある。

これ単独で読めますが、St. Nacho'sという場所の特別感を味わいたい人は1から読むのがおすすめ。いいシリーズです。
心理描写を読むのが好きな人におすすめ。

★家庭内暴力
★立ち直り

I Heard Him Exclaim
Z.A. Maxfield
I Heard Him Exclaim★☆ summary:
Chandler Traceyは、両親の家に向かって車を運転しながら、クリスマス気分などみじんも感じていなかった。弟夫婦が交通事故に巻きこまれて死に、彼の肩には残された5歳の姪に対する責任がのしかかっていたのだ。
子供から目を離さないようにしながら、Chandlerは必死に自分の務めを果たそうとするが、その責任は彼を押しつぶしかかっていた。

Steve Adamsは、いつも家族ぐるみで派手に飾り付けるクリスマスを離れ、気晴らしと楽しみを求めてラスベガスへ向けて車を走らせていた。
今年は彼はクリスマスを祝う気持ちにはなれなかった。

彼らの運命は路上で絡み合い、SteveはChandlerと姪を自分たちの家族ぐるみのクリスマスに招待する。

姪っ子は何故だか、Steveのことをサンタと信じて疑わない。痩せたサンタであっても、彼女にとってSteveは「サンタクロースの目をしている」のだった。
そしてChandlerにとっても、Steveはまるで奇跡をおこすサンタのような存在だった。おだやかで、ごく自然に人の求めに応じ、人を助ける。
.....



HisForTheHolidays.jpg
4人の作家によるクリスマスアンソロジーの一編。
His for the Holidays」でまとめ買いできます(ちょっとお得)

この話は、子連れでくたくたに疲れた男と、本能的に彼を保護してしまう年上の男のクリスマスストーリー。

2人のロマンスである以上に、これは5歳の姪っ子の物語でもある気がします。両親が死んだ事故の時に車に乗り合わせていた彼女は、すべてを理解しているわけではないけれども、どこかで苦しんでいる。

Steveの家族が飾り付けるクリスマス!ってのがまたなかなかすごくて、家族が住んでいる家が集まる一帯が、まるでクリスマスの夢物語のようです。
子供から一瞬も目が離せずにガチガチに緊張していたChandlerは、やっとSteveの家でその責任感を手放すことができる。でもSteveによりかかってしまう自分に対しても後ろめたさを覚えていて、彼は結局、色々な罪悪感と責任感でがんじがらめになっています。

Steveはそれを助けてあげたいけれども、深く踏み込んでいいものかどうかためらっている。
大人同士が、惹かれあいながらもたじろぎ、立ちすくむ、そんな中でクリスマスを一番楽しんでいる様子の姪が可愛い。

Z.A. Maxfieldはわりとよく子連れの話を書くんだけれども、登場人物の子供に対する保護責任感がものすごく強い。過保護というか、一種の強迫観念と言っていいくらい、子供から目を離すことができなかったり、その責任感を真正面から受けとめようともがいていたり。
読んでいるとどうも、男性じゃなく「子連れのママ」を代わりに据えても違和感がないんじゃないかという瞬間があるのが、個人的には少しマイナスポイント。
子供の存在ががっつり話に絡んでくるので(責任感とか、子供を抱えた将来への不安とか)「子連れの男」に萌える人だとまた別のツボだと思うのです。

クリスマス、家族、子連れと、アットホーム感満載なので、クリスマス雰囲気に浸りたい時におすすめ。

★クリスマス
★サンタクロース

★Three-Star rating system★


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