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No Going Home
T. A. Chase
No Going Home★★★ summary:
馬術競技で名のある騎手であったLesは、障害飛越でのジャンプに失敗し、頭に蹄を受けて深刻な怪我を負ってしまう。彼の名声がなくなるやいなや手の平を返した恋人は彼の価値を否定し、彼を病院に残して去った。
一度は起き上がることすらできないと思われたLesはなんとか回復し、リハビリを行い、父の牧場を引き継ぐとともに自分の牧場をはじめる。彼のもとには色々な「迷子」が訪れる。それは行き場をなくした人間であったり、見捨てられた馬であったりしたが、すべてをLesは引き受け、同時に彼らが回復して去っていくのを見送ってきた。彼はいつも傍観者であって、ふたたび恋に落ちることはなかった。何かが癒やされないまま、それでもそうして怪我から6年がたった。

ロデオカウボーイのRandyは、ロデオで負った怪我のために久々に実家の牧場へ帰る。彼は父親と深刻な不和の種をかかえており、家に帰ってからもまた争ってしまう。もはやそこは彼にとっては「家」とは思えない場所だった。
そんなある日、妹が借地の代金として目の見えない馬を渡すと言うのを聞き、何か裏があるのではないかとついていった彼は、隣人であるLes Hardinとはじめて顔をあわせる。
強靭で、己の信念に満ち、人生の厳しい面を見ながらも頭をまっすぐに上げている男にRandyはすぐに惹かれるが、LesとちがってRandyは己の性癖をカミングアウトしていない。Lesの方へ一歩踏み出すことは、父との関係、自分の人生、すべてを変えてしまうことになるという予感が彼を不安にさせる。
一方のLesも、陽気で子供っぽい、そして傷を負ったRandyにすぐに興味を持ったが…



T.A.はとても好きな作家なので、ブログをはじめるなら最初の紹介は彼の作品から、と決めてました。と言ってもブログやろうかと思ったのが一週間くらい前なのですが。
わりと真正面からの恋を書く人で、キャラは皆それぞれ自分に確信と誇りを持ちながら、人生の中で傷ついたり迷ったりしている。シニカルだったり、厳しかったりしますが、どのキャラも深い誠実さと強さを持っていて、自分を偽らない感情の交錯はとてもドラマティックです。エロシーン度も高し。
基本的に結構甘めのハッピーエンドですが、彼の作品の中では必ず登場人物が「選択」をせまられます。自分が何者であるのか、何者でありたいのか、どこにいるべきなのか。
生まれ育った場所だけが「家」ではなく、血のつながった相手だけが「家族」ではない。Homeシリーズでは、誰もが自分の居場所を探し、それを互いの腕の中に見出すけれども、そこまでの間には様々な選択がある。恋は甘いが、人生は厳しい…

Lesは一度は傷つきますが、とても誇り高い、強い男です。Randyはまだ若く、強さもあるが、父親との軋轢に苦しみ、カミングアウトが自分のキャリアにもたらす影響を恐れてもいる。自分自身を否定しながら、自分に問いつづけている彼を、Lesはその影の中から出してやりたいと願う。
そんなLesに強く惹かれながらも、Randyはどこに自分の足を置くべきか迷いつづける。何を選ぶべきか。何を捨てられるか。ただ恋に落ちるだけでなく、選ぶことで彼らはその先の人生を手に入れるのだが、その一歩を踏み出すことが難しい。

「No Going Home」は「Home」シリーズの1作目で、「Home Of His Own」が2作目になります。主人公はちがいまして、No Going HomeではLesとRandy、Home Of His Ownでは一作目の脇役であったTonyと、彼の相手であるBrodyの話。この作品も好きなんだ!ブルライダー(ロデオで牛に乗るカウボーイ)のTonyが何かとても可愛い。彼もまだ少年のうちに家を捨て、家族を捨てざるを得なかった男です。
まだ出ていませんが、次作は「His Heart's Home」。やはり主人公を変えながら、この先3作(かな?)予定されているそうです。

しかしカウボーイスラの例に洩れず、ワイオミングが舞台。
何でスラッシュのカウボーイはみんなワイオミングに住むんだろう。テキサスは駄目か?

★エロ度高
★ラブラブ度高

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Home Of His Own
T.A. Chase
HomeOfHisOwn★★★ summary:
Tony Romanosはプロのロデオライダーとして各地を旅しながら、友人のRandyとLesが暮らす牧場にたびたび転がりこむ。彼らはTonyを家族のように迎え、家族のように愛した。そこはほとんど、Tonyにとって「家」と呼べる唯一の存在だった。

Tonyは15の時、家族にカミングアウトしたがそれは悲惨な結果におわり、家族が決して自分を受け入れないことを悟った彼は家を出ていく。ひとりで生きていくことを学び、ひとりで生き抜いてブルライダーとなった彼は、RandyやLesのような友人を得て幸福だったが、彼自身の家──彼だけの居場所はいまだにどこにもなかった。
そんなある日、縁を切った、彼を嫌悪している筈の家から手紙が来る。Tonyの甥にあたるJuanがどうやらカミングアウトして、実家は大騒ぎになっているらしい。来てほしいと姉に乞われるが、Tonyは一体自分に何を求められているのか、どうしていいのかよくわからない。自分が自分でありつづけるために家族を捨ててきた彼が、今さら甥に何を言えるだろう。

Brody MacCaffertyは、弟と2人で身をよせあうように暮らしていたが、ギャングの犯罪行為に関ったことからついに殺すか殺されるかというところまで追いつめられ、弟を残して故郷を去る。
LAでボディガードとして身をたて、やがて自分の警備会社を持つまでになった彼は「必ず迎えにいく」と約束した弟を探し出そうとする。だがたぐった糸は、奇妙なところでTonyと彼とを結びつけていた。

どちらも一夜の関係(one-night stand)だと思っていた。もう一度会うとは思っていなかった。
どちらも自分にとっての「家」を持たずに生きてきた。互いが互いの帰る場所になることなど、想像もしていなかった。
.....


No Going Homeに出てきたブル・ロデオのカウボーイTonyの物語です。No Going HomeはRandyとLesの話でしたが、この話では彼らが脇役になります。
この「Home of his own」は本当にとても大好きな話です。話もいいし、キャラもいい。
Tonyはしたたかでシニカルな大人ですが(煙草を吸っている様子が非常に格好いい)、ユーモアに満ちた男です。RandyやLesなどの心を許した相手のそばにいると子供のような面も見せ、Randyとは特に兄弟のようで、何かあるととっくみあったりしてもう大変。
その一方、Tonyは家族を捨ててきたことによる深い孤独の影も持っている。自分の内側に空虚な場所があることを知っていて、それが埋められる日を心のどこかで待っているが、そういう日がこないだろうとも思っている。
多分、自分の中にある影ゆえに、彼はどこか無邪気なRandyが好きなのだと思う。そしてTonyはLesにも惹かれ、LesもTonyに惹かれているが、RandyとLesの間にあるものはTonyにとって手をのばせないものだった。多分、出会うのが少し遅かった。
Randyたちと一緒にいる時間はTonyにとって楽しい時間ですが、ほろ苦くもある。

人生を生き抜くことを知り、その苦さも知りながら、煙草を吸って自分自身ごと笑いとばす──Tonyはそんな男で、BrodyはそんなTonyに強く惹かれていきますが、その一方でTonyが命がけで牛に乗っていることにも向き合わなければならない。馬のロデオ以上に牛のロデオは危険で、いつ大怪我をするか、もしかしたら命を落とすことすらあるかもしれない。
ある日ロデオサーキットで事故を目のあたりにしたBrodyは、その悲惨さを恐れる。だがそれはTonyの生き方で、Tonyと関係する限り受け入れなければならないものでもある。
一方のTonyは甥の問題に力を貸してあげたいと思うが、実家のほとんどの人間はTonyを相変わらず蛇蝎のように忌み嫌い、そこに戻る場所はもうない。Tonyがかつて一度は「Home」だと思った場所は、もはやこの地上のどこにもない。

どちらも強く、自分の力で生きてきた男たちが、よりかかるのではなくよりそうように、恋以上のものを育てていく。その日々は濃密で、ドラマティックで、時にユーモアに満ちている。
彼らは自分の「Home」を手に入れることができるのか。人にとって「Home」や「Family」というものが何であるのか、それはただ場所や血のつながりのことを言うのか。

ちなみにTonyが加わっている「PBR」はブル・ライド専門のロデオ組織で、PRCA(プロフェッショナル・ロデオ・カウボーイズ協会)におけるブル・ライドの地位の低さに不満を持った選手が設立した協会です。プロとして加わるにはいくつかの条件が必要ですが、賞金が高いことで知られ、アメリカ1のロデオ組織です(対抗組織としてCBRというのもあります)。ロデオ、それも牛を使ったブル・ライドは今アメリカでビッグビジネスになりつつあるようで、その牛の競りもすごく盛り上がるらしい。
前作の「No Going Home」ではTonyはまだPBRに加わってなかったので、その次の年に条件を満たして参加し、ブルライダーとして順調にやってきたようです。

あと、おまけとしてRandyとLesのクリスマスストーリー「Where His Home Lies」がついています。これはひたすらに甘い! 作者のT.Aは男性ですが、スラ読んでると男の人の方がロマンティックな話を書く気がします。

★エロ度高

Allergies
T. A. Chase
Allergies★★★ summary:
デザイナーのRaymond Marvelsは、仕事場にあるパソコンの不調のため、会社にエンジニアを派遣してもらう。
部屋に入ってきたエンジニアは見たこともないほどゴージャスな男で、彼らの関係はあっというまに深まるが、どういうわけか、RayはそのLou Canisがそばに来るたびに強いアレルギー反応を示すのだった。とは言え、それは彼らの関係を妨げはしなかった。

Louは、新しい職場で出会ったRayに夢中だった。このシャイで奥手なデザイナーはこれまでの彼の「タイプ」ではなかったが、Louは、行きずりや短い情事では終わらないものが2人の間にあることを感じていた。
たとえRayが、彼が半径3メートル以内に近づくたびにくしゃみを連発しようとも、この新しい恋人を離す気はない。
だが、Louにはひとつ、出会ったばかりの恋人に言えない大きな秘密があった。そしてその秘密が、Rayのアレルギーの原因なのではないかと、Louは疑っていた。
Louの家族に会ったRayは兄弟にアレルギー反応を示し、Louは確信する。恋人のアレルギーは──Louに対するものが一番ひどいとしても──Lou個人ではなく、彼らの一族に対するものなのだ。
Louの一家は、人狼の一族であった。

LouはどうやってRayに自分の秘密を言うべきかわからない。かつて人間の恋人に正体をあかして殺されそうになった姉は「本当に好きなら、まだ黙っていた方がいい」とアドバイスするし、兄は「関係が深くなればなるだけ傷も深くなる。もし駄目になっても立ち直れるよう早いうちに告白してしまった方がいい」と言う。
Rayは人間としてのLouを好きになってくれた。だが、狼としてのLouは?

いつかは言わなければならない。だが、いつ?

その一方で、見知らぬ人狼がLouの一家のテリトリー内へ断りなく入って…
.....



人狼の恋人にアレルギーになってしまった、という、全体に幸せな話。
スラには人狼ものはかなり多いですが、ここの一族は大変「狼」っぽいのがいいです。Louには8人の兄弟がいて、末っ子の彼以外は全員双子です。姉の生んだ子供すら双子。
彼らは仲がよく、荒々しく、陽気で、つねに「群れ」の中での序列を競っている。一瞬で結束し、外から見ると驚くほど喧嘩し、そして全員、「犬」に関するジョークに目がない。
Rayに対してもLouの中の狼は独占欲を見せ、命令し、支配したがる。Rayはそれを受け入れるけれども、決して弱々しく言いなりになるタイプの恋人でもない。

Rayはシャイですが、地に足がついていて、おだやかでユーモアにあふれた男です。T.A.の受けはいつもそういうところが可愛いと思う。
ちょっとあたふたしたり、及び腰だったりするんだけども、一度恋に落ちてしまえば、その中でとても幸せそうにのびのびしているのが愛らしい。
Louの秘密、Rayのアレルギー、となかなかに前途多難な恋人たちですが、それを感じさせない幸せっぷりです。

この話はT.A.が彼のブログで更新していたもので、ちょっとだけ加筆や修正があるけれども、基本的には同じものです。ブログでは毎週火・水曜日に(通常は)話の更新がされているので、興味がある人はどうぞ。今は西部劇風の連載をしています。

「Allergies」は人狼の話ですが、この後にブログでこれとつながる吸血鬼の話を書いていまして、そのうちまとめられて出版される予定になっています。それぞれ完結した別々の話だけれども、あわせて読むとまた楽しい。
誰かが「人外」を狩りはじめている。それは誰か? 人狼と吸血鬼、そしてその他の一族も、力をあわせ、新たな敵に対して戦わなければならない。その先に何があるのか、というのも楽しみなところ。

ラブラブなのが好きな人には絶対おすすめ。
あと大家族の感じが好きな人、双子萌えでもいける。

★人外(人狼)
★甘エロ

Here Be Dragons
T.A. Chase
HereBeDragons★★★ summary:
アイルランドで爬虫類の研究をしているKael Hammersonには、暴力的な恋人から逃げ出してきた過去があった。その経験は彼の中に深いトラウマとなり、今でもフラッシュバックに苦しめられている。
Kealの上司のHugh Priceは、この物静かで知性的な部下に強い興味を持っていたが、部下と関係を持つことが利口には思えずに一歩距離をあけたままでいた。

だが海に奇妙な生き物が現れはじめ、KealとHughはともにその調査にあたることになる。
巨大な海蛇か何かと思われたそれは、船舶を襲い、毒を吐く。KealとHughは目撃証言のある海域を調査中、その生き物に襲われたが、あやういところで難をのがれた。

Kealは夢の中で奇妙な世界に入りこんでしまい、大地の女神ガイアとエルフのモルドレッド、竜殺しのセント・ジョージ(聖ゲオルギウス)によって、あの「蛇」がドラゴンであること、ガイアたちの世界から人間の世界へ魔法の生き物たちを送りこんでいる勢力があることを知らされる。かつて2つの世界を隔てた幕を、引き裂こうとする者たちがいる。
ガイアたちは人間の世界にじかに力を及ぼすことはできない。Kealたちは自分の力でドラゴンを、そして続々と現れはじめる神秘の生き物たちをとめなければならない。だがKealは「異質だから」というだけの理由で神話の生き物たちが迫害されていくことには耐えられなかった。

一方でHughとの関係は急速に深まっていく。だがささいな瞬間がKealにフラッシュバックを呼びおこす。自分がいつかそれをのりこえられる日がくるのかどうかKealにはわからなかった。それまで待ってくれとHughに言うのがフェアなことかどうかも。
またKealには、ほかにも人に言うことのできない秘密があった…
.....



T.A.Chaseの現代ファンタジー。続編(完結編…だと思う)の「Dreaming of Dragons」も先日出ました。
この一作目は、KealとHughのカップルを中心に進んでいきます。

Kealは前の恋人からひどい暴力を受け、支配され、命もあぶないような状態からやっとのことでアイルランドへ逃げてきた。他人とまだ深い関係を持つ心構えができていませんが、Hughに磁力のように引きつけられていく。
Hughはとてもいい男で、Kealの事情を知って互いの関係をゆっくりとすすめていこうとするけれども、時おりKealのフラッシュバックはHughに対して向けられてしまう。Hughが何かをしたからではなく、昔の恋人と同じ位置に立ったからとか、同じ台詞を(ちがう意図でも)口にしたからとか。
その馬鹿馬鹿しさをわかっていても、Kealは反射的にフラッシュバックをおこすのをやめられない。

Kealがフラッシュバックをのりこえるには、時間の経過だけでなく、自分に対する確信を取り戻す必要がある。
Hughはそれをわかっていて、それを手伝いたいと思う。ただ真綿にくるむように守ってやりたいが、それだけでは何も解決しない。常に一歩引き、Kealに自分で立ち上がるチャンスと、自由な空間を与える。
自分を受けとめてくれるHughに対してKealは幸せと後ろめたさ、自分自身へのコンプレックスを同時に感じながら、壊れる前の自分自身を取り戻そうともがきます。
2人ともとても優しく、魅力にあふれた人間で、読んでいるとKealを応援したくなります。傷を負い、後ろ向きになることもあるが、彼はしなやかで強い男です。

その一方、彼らはドラゴンとも戦わなければならない。Kealが好むと好まないとにかかわらず、ドラゴンはこの世界に害を為し、この凶暴で強大な生き物を放置しておくことはできないのだった。
だがどうやれば、人がドラゴンを殺せるのだろう?

私はこれがはじめて読んだT.A.Chaseの本で、ドラゴンだ!とタイトルだけ見て買ったら現代ものだったので、ちょっと騙された感を持ちつつ(自分が悪いんだけど)読んでみたらすっごくおもしろかったのでした。
以来T.A.のファンですが、彼の魅力はある程度「王道」を抑えながら、その先にひろがりのある世界を描き出すところではないかと思います。豊かな情感を持つキャラクター、孤独や愛情、融和といった強烈なテーマ、わかりやすいが陳腐ではないストーリー。世界とキャラクターの中に、読む者を引きずりこむ力を持っている作家です。
その魅力が存分に味わえるシリーズです。話としては荒唐無稽なようですが、キャラクターの感情の動きがしっかりと書かれているので、現実味がないという感じはあまりなく、現代ファンタジーとしても充分に楽しめると思います。
傲慢で美しく、気まぐれで勝手なモルドレッドがまた可愛い…
KealとHugh、モルドレッドとセント・ジョージ、この2つのカプの入り組み方もなかなかエロいところがあって、味わい深い。

★竜
★トラウマ(DV)

Death Or Life
T.A. Chase
Death or Life★★ summary:
Noah Wiltsonは、静かに暮らすこと以外は何も望んでいなかった。だが大統領選挙に立候補する父のため、「理想の家族」を見せるためのキャンペーンにつきあわざるを得ない。
父親にそれ以上の興味や関心を持たれていないことを、Noahは知っていた。息子がゲイであることが明るみに出れば、自分の選挙に大きくかかわる。父が気にしているのはそれだけだ。
Noahは普段は父親や家族と距離をあけ、必要とされればキャンペーンにつきあい、父の邪魔にならないようにしてきた。

だからある夜部屋に戻ると、殺し屋が待ち受けていたこと、そしてその殺し屋から雇い主が父親であることを聞き、Noahは心の底から驚愕した。

殺し屋は、これが最後の仕事になることを知っていた。Noahの存在を誰かが邪魔にしているように、自分の存在も誰かの邪魔になっている。消される前に消えるしかない。
Noahを殺すか、生かすか。その選択は彼の手の中にある。もしもうこの仕事を続けないのなら、Noahを殺すことに何の意味があるだろう?

自分の身を父親から守るための書類を持って、Noahは母方の祖父の元へ身を寄せる。事情を呑みこんだ祖父はNoahのために護衛チームを雇った。
セキュリティのリーダーにはCain Packertがついた。かつて政府のために働いた経歴を持つというこの男にNoahは強く惹かれるが、同時に、Cainの中に、暗闇で出会ったあの殺し屋に似たものを感じていた。
.....



父親に殺されかかった青年と、殺し屋と、護衛の話。
誰と誰がカプなのかはとりあえず内緒。ていうか、途中までまさか三角関係??とびっくりしたのですが(T.A.らしくないので)、そんなこともなく、甘々カップルでした。やっぱりね。

そして内緒にするとあまり書けることがない…
相変わらずカプ的には幸せですが、今回は殺し屋やその出生の秘密などが絡んでいて、どことなくあやうい緊張感が常に張りつめています。
そしてまた、Noahの父親はまだNoahのことをあきらめていない。Noahの危険はまだ去っていない。

Noahはただの研究員であって、生死のやりとりや殺し屋の存在は彼の理解を越えている。突然の事態に翻弄されながらも、彼は彼らしくまっすぐに物事に対処しようとしています。
おだやかでありながら、芯が強いあたりは、いかにもT.Aのキャラらしい。恋人に秘密があることを感じとりながらも、それをこえた信頼を寄せる様子がなかなか愛らしいです。

殺し屋の独特な性格づけが、物語に陰影を与えています。どこか人生に無関心で、人を殺すことを何とも思っていないが、決して残酷な男ではない。現実的で、シニカルで、感情を抑えた男。
彼がNoahを助けたのは決して感傷からではない。だがそのことは、Noahだけでなく彼自身の人生を決定的に変えることにもなる。

あらすじの割にそれほど暗かったり、悲壮だったりということはなく、読みやすい作品だと思います。長さとしても一気に読めるし、わりと万人向けというか、サスペンス+甘々カプが好きな人ならさらにおすすめ。
作中に出てきたもう一組のカプ(Lordと口のきけない青年Mars)の物語がすごく気になります。T.Aによると彼らの話もそのうち書くそうなので、そっちも楽しみ!

★殺し屋

Bound By Love
T. A. Chase
Bound by Love★★★ summary:
もう故郷に戻るべき時、気まぐれな双子の兄──JTの面倒を見続けるのをやめる時だった。
Tyler Newsomeは兄とロデオサーキットに背を向け、故郷の牧場へ戻ることにする。ロデオに参加している時も、いつも彼の心は故郷にあった。
いや、故郷だけではない。故郷にいる1人の男へと。

Ren AlstonはいつでもTylerに惹かれていた。
だがアフガン戦争から戻ってからの彼はフラッシュバックに苦しめられ、人とまともな関係を持てる状態ではなかった。そんな時、Tylerの兄JTに言い寄られて一時的に関係を持ったが、ほとんど長続きしなかった。
どのみちJTときちんとした人間関係を結べるとは、Renは思っていなかったが。わがままで気性の激しいJTは嵐のようで、おだやかで辛抱強いTylerとはまるでちがった。彼らの関係は互いに一瞬の愉しみでしかなかった。

それから時間がたち、Tylerの帰還を聞いたRenはそのニュースを歓迎する。人生の安定を取り戻した今こそ、Tylerと向き合うだけの勇気が持てるかもしれない。
そして今度こそ、そこから何かをはじめられるかもしれない。

だが彼らを取り巻く環境はやさしくはない。JTは相変わらず、Tylerの周囲を引っかき回して弟の関心を取り戻そうとする。
Renには自分と同じように戦争でトラウマを追った弟がいて、ひどいフラッシュバックが彼に銃を握らせる。
そんな現実の中で、2人のカウボーイは長年秘めてきた思いを、確固とした絆に育てることができるだろうか。
.....



おだやかでまったりした性格のTylerと、年上のカウボーイ、やや支配的で傲慢なほどに強い性格のRenの話です。
全体にラブラブっとした話で、個人的にはこれ読んでると結構ほのぼのするんですが、背景は入り組んでいて、風あたりの強い現実の中で互いを求めようとする2人の姿を応援したくなります。そしてまた2人でいる時の感情の濃厚さがすごい。

一方、JTの破滅的な性格もなかなかいい味を出している。TylerとJTは子供の頃に母親をなくしていて、その時に母から「JTの面倒を見て」とたのまれたTylerはそれからずっと兄のために色々なものを犠牲にしてくる。だがそれでも──だからこそ、JTはTylerが自分から離れていくことが許せない。
Tylerは自分より兄の方が人目を引き、ロデオの才能もあり、いわば自分が影の存在であることを知っているけれども、そのことをコンプレックスにはしていません。自分は自分、JTはJT。おだやかにその状態を受けとめ、そんな地に足のついたおだやかさをRenは愛し、癒される。

Renは戦争でのフラッシュバックをかかえていて、疲れきるまで何日も眠らずにすごすような男です。強いが、その内側に深い傷をかかえている。
Tylerの存在は彼の中にある闇を少しばかり明るいものにして、彼を幸福にします。Tylerを決して手放すつもりはないけれども、Renは自分が他人とまっすぐに向き合い、正常な恋愛ができるかどうか心のどこかであやぶんでもいる。
そしてその不安を癒やすのも、Tylerの存在なのです。

色々なドラマの糸が入り組んで、濃淡の深い話ですが、一方で明解な強さのある物語です。T.Aの話はどれも読みやすく、平明なようで深いのがすごいと思う。
JTのわがままさも決してただわがままなだけではなく、彼もまたどこかに苦しみをかかえているのが見えてきます。まあどうしようもないガキですが。

非常にかわいい、相手の存在をまっすぐに求めようとする2人の話です。受け攻め固定。
甘々で濃厚な話が好きな人におすすめ。双子ネタが好きな人も(双子カプじゃないけども)。
BDSMプレイやら、カラメルソースプレイやらあって、エロシーンも濃厚です。えげつないような描写はないので、よっぽど苦手な人以外は読む人は選ばないかと。
JTの話は、続編としていずれ出るとのことです。楽しみ~。

★BDSM
★年の差

Dreaming of Dragons
T. A. Chase
Dreaming of Dragons★★★ summary:
エルフのMordredと聖騎士Georgeは、幻想界で長年に渡る恋人同士であった。何ものも自分たちの関係をおびやかすことはない。2人のどちらも、そう考えていた。

だがドラゴンや、魔法の生物たちが幻想界の領域を越えて人間の世界に現れはじめ、Georgeはガイアの命を無視して人間に力を貸すために立ち上がる。2つの世界のバランスを取り戻すために。
恋人が自分から離れていくことに、Mordredは気付いてはいたがどうすることもできなかった。人間たちに──主にKaelとHughに──力を貸してやりたいのはMordredも同じだ。
ただ恋人の高潔なほどの犠牲的精神は、Mordredは持ち合わせていなかった。
そしてGeorgeの正義を求めるまっすぐな心根を、Mordredは愛していたが、理解しているとは言いがたかった。

GeorgeはMordredから離れて別のものを守りはじめ、だが彼らの戦いを嘲笑うかのようにドラゴンは現われつづける。
Mordredは、ドラゴン出現の裏で糸を引く者の正体を暴くために最後の賭けに出た。
それは恋人のため、そして人間界にいる友人たちのための賭けであった。だがその賭けがGeorgeとMordredを大きく引きはなすことになる。

2人は世界を守るため、友人たちを守るためにどこまで自分たちを犠牲にしなければならないのか。
そしてMordredは恐れていたことを目のあたりにする。Georgeの高潔さは、彼の──彼らの──すべてを犠牲にするほど強いものであることを。
.....



Here Be Dragons」の続編。かつ、完結編(おそらく)。
KaelとHughの2人の人間を中心に語られた前作に対し、今作は幻想界の人たち、魅惑的で移り気な美しいエルフMordredと、はからずも遠い昔に彼と恋に落ちてしまった気高い聖Georgeを中心にして展開していきます。

前回に引きつづき、まだドラゴンや海蛇は人間界で暴れ回っています。KaelとHughはドラゴン狩りに追われ、Georgeはそれを影のように助ける。
Mordredは、ちょっと暇にしています。んでもって、暇になるとかまってほしくなるのが、この猫のように高慢なエルフの気質でもある。皆が駆けずり回っているこの非常時に無責任ですが、そのへんが可愛いところです。

もともと彼は、聖Georgeなんていう堅物と恋に落ちるつもりはなかった。1人の恋人とずっとつれ添うなんてことは、気まぐれなエルフにとって予想の外だった。
それでもお互い、とらわれるように恋に落ちてしまった、その遠い昔の出会いと回想が物語のそこかしこにはさんであって、「いやホントにそんなつもりはなかったんだけど」というMordredのつぶやきが聞こえてくるようで、おもしろい。

わがままを言ってばかりではなく、MordredはMordredで仕事はしてますが、忙しいGeorgeに「お前は暇でいいな」と言われてカチンとしたりする。そりゃGeorgeほど熱心じゃないけどさ、そんな言い方あるかよ、てな感じでやさぐれたりします。
いや本当、可愛いです、このエルフ。あんまりこれを1人にしちゃいかんよ、Georgeも。
実際に悪い虫が近づいてきたりするわけですが、Mordredの方が虫よりたちが悪いかも。

私は、前作を読んだ段階ではそんなにこのカプには興味が沸かなかったのですが(何か出来すぎな感じのカプだし)、いざこの2人に焦点を移して語られてみると、感情のやりとりや重ねてきた年月が鮮やかにせまってきてとても楽しめました。
一方で、Kealの問題もちゃんと書かれていて、Kaelが前作で描かれたトラウマから完全に立ち直っている様子も見てとれます。よかったなあ。なかなかにいさましくて、Keal好きならそこだけで一読の価値あり。相変わらずHughとラブラブです。

2人の人間と、エルフと騎士は、ドラゴンの出現をとめられるか。そのメインのストーリーもしっかり書かれていて、隙なく楽しめる話に仕上がっています。
そして最後に、彼らは何かを犠牲にしなければならない。命、記憶、恋。犠牲を払うのは誰なのか。
ある意味ベタな展開ですが、それが正面きって書かれていて、文句なしに最後の最後まで盛り上がります。「王道」はやはりこうでなきゃ。

前作を楽しんだ人なら絶対におすすめ。
2冊あわせて上質の「物語」でもあるので、ドラマとファンタジーと愛らしいカップリングを同時に楽しみたい人に。

★堅物騎士×移り気エルフ
★自己犠牲

★Three-Star rating system★


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