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Tigers and Devils
Sean Kennedy
Tigers and Devils★★★ summary:
フットボールの熱狂的なファンであり、FFFフィルムフェスティバルの総責任者のSimon Murrayは、ゲイとしてカミングアウトしてはいるが社交的な人間ではない。親友とその妻に無理矢理パーティにひっぱり出されても、居心地が悪いだけでしかなかった。
そんな時、客の何人かがフットボールについて話しているのを小耳にはさむうち、何故かSimonはフットボールスターのDeclan Tylerについて弁護する羽目になる。膝の負傷と手術によってゲームに出られないDeclanの、過去の功績までが侮辱されるのを彼は許せなかった。
「彼は傲慢なろくでなしかもしれないが、選手として素晴しいのはまちがいない」
そう言い切ったSimonの背後では、まさにDeclan Tylerその人が自分への賞賛と罵倒を同時に聞いていたのだった。

SimonとDeclanは彼らのぎこちない出会いをのりこえ、確かな関係を築きはじめる。少なくとも、当人たちはそうしようとした。
だがそれは簡単なことではなかった。Declanはオーストラリアで一番有名と言っても過言ではないフットボールプレーヤーであり、それは彼がスーパースターとしてメディアに扱われることを意味した。Declanはカミングアウトしておらず、Simonは2人の関係を隠そうと必死になる。自分のためではなく、Declanのために。
時にそれはSimonをいたたまれない気持ちにさせ、Declanを傷つける。

Simonの親友はそうした関係についてDeclanを責め、Simonは友人と大喧嘩をしてしまう。
人前でのスキンシップを避け、フットボールのパーティに出席するためにDeclanが女性のパートナーをエスコートする間、Simonは1人で待つ。そうして多くの犠牲を払いながら、それでもいつまでも彼らの気持ちを隠しとおせるものではなく…
.....



物語は、SimonとDeclanの関係の深まりと、そのたびごとに彼らが直面しなければならない様々な試練を中心にして展開していきます。
「スーパースターと一般人の恋」というテーマも、「カミングアウトしていないスポーツ選手の恋」というテーマもわりとよくあるんですが、この小説はSimonの視点から、彼らがくぐりぬけていく出来事と気持ちの揺らぎをとても丁寧に書いていて、読んでいるとどんどん彼らの人生に引きこまれます。
なんせSimonがいい。彼はシニカルで、正直で誠実、口が悪く、短気で、頑固で、そしてとても殻にこもった人間です。繊細な部分をもっているからこそ、時おり攻撃的に皮肉屋になるようにも見える。Declanはおだやかで包容力のある人間で、Simonの刺刺しいところを楽しんでいるふしもあります。
ひとつひとつの物事にSimonは傷つき、動揺し、それをDeclanがつなぎとめる。しかしDeclanの中にも迷いがある。あまりに多くをSimonに犠牲にさせること、そしてSimonがいつか自分を責めるのではないかと、彼は恐れている。

秘密、葛藤、そしてやがてはメディアからの注目、中傷。Simonの世界は、Declanとつきあうことによって何もかもがひっくりかえされてしまう。それでもSimonはDeclanと一緒にいたいが、どうしても未来を信じられない時もある。
問題は外部だけでなく彼らの間にもあって、むしろそちらから、2人は時おりどうにもならなくなって行きづまってしまいます。きっかけは些細なことだったりもするんですが、1本ずつ藁がつまれていって、小さな物事が最後の藁になる感じが苦しいほどにつたわってくる。
傷ついて、相手を守ろうとして、道を踏みちがえる。どちらもすまないと思っていても、あやまれずに問題をこじらせる。

読んでいて、こうまで気持ちをこめて主人公を応援した小説は久しぶりです。
Simonは決してよくできた人間でもなく、傲慢だったり、意地悪だったりもするんだけど、そこも含めてとても愛すべきキャラクターだと思う。周囲の友達が文句を言いながらもSimonをサポートする気持ちがよくわかる。
そしてSimonを愛でるDeclanの気持ちがとてもよくわかります。とは言え、Declanの包容力と忍耐には頭がさがる。ハリネズミを手の平でころがしてるようなもんです、ほんと。

嵐のような日々の中で、それでもDeclanといる時のSimonは幸せで、彼は少しずつかわっていく。本当に少しずつですが。どうにかして心をひらこうとする時もあるけれど、まだまだ孤独な人間でもある。
果たして彼らは嵐のような日々をのりこえて、共に未来を築いていくことができるのか。

私はフットボールは全然わからないんですが(あとオーストラリアの地理も)、そこのところは踏まえなくても楽しめます。
メロドラマ的ではなく、どちらかと言うとシニカルな感じに書かれている話なので、じめじめした恋愛ものはちょっと、という人でもおすすめ。Simonのえげつないユーモアのセンスはとってもおもしろい。「そこでそんなこと言わなくても!」と思いながら何度も笑わされました。

これはSean Kennedyの最初の長編なんだそうです。
で、かなり長い。相当な長さがあると思いますが、おもしろいです。
エロシーンはほとんど直截的な表現はないのですが(キスシーンはとってもエロティックですが!)、それでこれだけの長編を一気に読ませる力量はすばらしい。今後が注目の作家です。

★スーパースター/一般人

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