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Payback
Jordan Castillo Price
Payback★★ summary:
Scary Maryはデトロイトのゴスクラブで行方不明となり、死体となって発見された。

Michaelは、親友が吸血鬼に殺されたと知っていた。
その存在をあからさまにされることはないが、吸血鬼たちは都市の闇に息づき、「吸われたがる」若者たちなどをその餌食にしていた。だがそのことを警察や家族に言うことはできない。
Michaelは家を去り、様々な事件の新聞記事などをもとに吸血鬼を追い、2年かかってその中の1人を発見する。

杭や槌、十字架、聖水、そしてドラッグまで用意して、吸血鬼が立ち寄るバーに出かけたMichaelは、体良くその吸血鬼、Grayとともにバーを出ることに成功する。
だが彼にとって計算ちがいだったのは、Wild Billという男も一緒についてきたことだった。タトゥを入れ、レザージャケットをまとったセクシーな男。
もし狩りに心を取られていなければ、Michaelがデートしたにまちがいない男。

3人の生々しいセックスの最中、Wild Billは何故か、吸血鬼に薬を盛ろうとするMichaelに協力する。
彼は何者なのか。何が目的なのか。そしてMichaelはうまくGrayを「狩る」ことができるのか…

.....


Jordan Castillo Priceによる「Channeling Morpheus」のシリーズ1作目。
短編と言ってもいいような短さですが、シリーズ全体を通して濃厚でおもしろいです。この1作目は導入編という雰囲気がありますが、まずつかみとしても成功している。

Michaelはゴスメイク(主にアイライナーのようです)をしている美しい青年で、まだ若い。21歳。友人の仇の吸血鬼を1人で追っています。
退廃的で、少し疲れたような雰囲気を漂わせる青年だけれども、その内側は親友を失った痛みに満ちています。吸血鬼が元凶だと知った彼は、杭を手にしてそれを追わずにはいられない。勇気があり、向こう見ずでもある。世を投げた厭世的なところも見せる一方で、妙に純情なところもある。
吸血鬼たちは、彼の痛みと孤独に惹かれます。
そしてMIchaelは今回の狩りを通して、自分が持っていた「吸血鬼」の悪鬼のようなイメージをくつがえされることになる。それはScary Maryの死と同じように、彼の人生を変えていきます。

作中に出てくるRohyrnolというのは催眠鎮静薬で、デートドラッグ(レイプドラッグ)としても使われる。
吸血鬼はこれに弱くて「夢の世界へ行ってしまう」そうですよ。シリーズ名の「Channeling Morpheus」というのも、「Morpheus(モルペウス:ギリシア神話の夢の神)とチャネリングする」という意味かと。

このシリーズは、同じようにやや短めの連作で続きまして、今5作目まで出ています。MichaelとWild Billについて書かれたその先の話がおもしろいというか、やはり濃厚で、独特の香りがあります。
話もおもしろいシリーズなんですが、特筆するべきはその雰囲気のような気がする。
Jordan Castillo Priceの文章には不思議な雰囲気があります。ダークで、湿り気がある。かと言って饒舌ではなく、むしろ淡々とした筆致。
たとえばCameron Daneの文章は「温度が高い」といつも思うんですが(…70度くらいかな?)、Jordan Castillo Priceは「温度の低い」作家ですね。温度が低く、耽美な湿り気と、コンクリートの打ちっ放しのようなざらつきとストイックさが同居しています。
この先のシリーズで書かれる2人の道行きもまさにそういう、ダークなものがまとわりついた、どこに行くかわからない不安定さと、互いを求めてしまう激情とがどろどろに入りまじった話です。

吸血鬼ものが好きだとか、ダークっぽいものが好きな人におすすめ。まずは好みにあうかどうか、このシリーズ1を読んでみるというのもいいと思います。

★吸血鬼
★短編

Vertigo
Jordan Castillo Price
Vertigo★★ summary:
Channeling Morpheusシリーズ2作目。

MichaelとGrayとの邂逅から2ヶ月。Wild Billは吸血鬼の集団とともに、吸血鬼グルーピーの連中の血を吸い、セックスし、それなりに平和にすごしていた。
だがそこに、ついに彼の居場所をつきとめたMichaelが現れる。
Michaelはここに「吸血鬼を狩りにきたわけではない」と言う。彼はWild Billに会いに来たのだ。「杭のことは心配しなくてもいい」と言われるが、Wild Billが心配しているのは杭のことなどではなかった。

彼はMichaelに惹かれていた。強烈に。
だがMichaelは吸血鬼を狩る人間で、Wild Billはもう何十年も前に人間であることをやめ、吸血鬼となっている。どれほど惹かれても、Michaelに近づくのがいい考えだとは思えなかった。

そしてMichaelは、Wild Billの思った通り、その手の中にひとつふたつ、巧みな仕掛けを準備していたのだった。
.....



前作「Payback」に続く、今度はWild Billの視点から書かれる再会話です。やはり短編。
退廃的で、重く湿った、その一方でストイックなJordan Castillo Priceの雰囲気は健在。

MichaelとWild Billとをつなぐものは、そういう重く湿った「何か」であるように見えます。欲望なのか、それともそれが欲望以上のものなのか。互いにそれがわからないまま、Wild Billは逃げようとするが、Michaelは彼を追う。
2人の関係は、「Payback」の出会いからはじまり、この「Vertigo」で決定的な変化を迎えます。

ひどく微妙な、闇のふちをMichaelは歩きはじめているようにも見える。彼をつき動かすものはきっと孤独で、Wild BillもまたMichaelの孤独に惹きつけられる。
深い、暗い予感を含んだ物語です。
「Payback」を楽しんだ人なら絶対におすすめ。

★吸血鬼×人間
★短編

Channeling Morpheus: Manikin
Jordan Castillo Price
Channeling Morpheus:★★☆ summary:
Marushkaという女の吸血鬼が、Michaelに永遠の命を囁いて彼女の部屋へと誘う。レースやベルベット、磁器、真珠──陽光の入らない一室はそれらのものであふれていた。
「人形」たちに美しい衣装を作ることに情熱を注ぐこの女吸血鬼は、Michaelを新たな獲物にしようとしていた。
見目のよい、ちょっとした小物をふやすように。もう一体の人形をふやそうと。

Michaelは吸血鬼たちが長く生きれば生きただけ性質が悪くなるのではないかと疑ってはいたが、彼らがどれほど常軌を逸脱するのかまではわかっていなかった。自分がどんなことに足をつっこもうとしているのかも。

吸血鬼を眠らせることには成功したものの、にっちもさっちもいかない危機に陥ったMichaelの最後の希望は、Wild Billだった。吸血鬼の男。
彼はMichaelを救ってくれるだろうか。それとも、2人の間に「何か」が存在すると思っているのはMichaelだけなのだろうか。セックスよりも、血よりも深い何かが。
.....



Channeling Morpheusシリーズ」3作目。
前2作ではキャラクター同士の邂逅と関係の深まりを書いていましたが、このあたりからまさにJordan Castillo Priceの本領発揮というか、暗い、湿った、ざらついた世界を思うさま楽しむことができます。
年経たヴァンパイアの暗い部屋でBillとMichaelは再会し、Michaelは浴室の床に倒れたままのヴァンパイアの首を切り落とさなければと思いながら、闇の中でBillの愛撫を受ける。暗い情熱が2人をつないでいる。

Wild Billは生きていくために人の血を吸わなければならず、彼が誰かを殺しているわけではないと知りつつも、彼とのキスに他人の血を味を感じたMichaelの感情は乱れる。BillがMichaelだけの血で生きていけるわけはない。だが、それでもMichelは耐えられない。それは嫉妬です。
恋人というわけでもなく、名前のつけられない関係に溺れるように、2人は互いを求めていく。未来がそこにあるのか、多分2人のどちらもわからない。

吸血鬼の血で血まみれになったMichaelをBillは抱きしめ、MichaelはBillの口の中にある他人の血の味を消そうと、自分を噛むようせがむ。
2人をつなぐ不気味なほどの情動と、そのテンションが見事です。長さとしてはちょっと長めの短編という程度ですが、色々なものが凝縮されていて濃密に楽しめると思います。

ダークな雰囲気が好きな人に是非おすすめ。

★吸血鬼×人間
★吸血プレイ

Hemovore
Jordan Castillo Price
Hemovore★★☆ summary:
およそ10年前、「Human Hemovore Virus」が世界に大感染を巻き起こした。感染すると生き残る者はまれで、生き残った者は日光にアレルギーをおこし、栄養源として血液を求めるようになる。

非感染者Mark Hansenは、感染者の画家Jonathan Vargaに雇われて働いていた。非接触、手袋、消毒。Jonathanは自分のアトリエにこもり、Markはそこへは足を踏み入れない。
あらゆる潔癖な手段を使いながら、2人は決して近づくことも、ふれあうこともない。

Jonathanのため、Markは猫の血液を売る女から血を買い、絵の売買の交渉を行った。
Jonathanの絵は、Markには真っ黒なカンバスにしか見えない。だが感染者たちの闇に慣れた鋭敏な視覚には、そのカンバスに塗りこめられた様々な色や形が見えるのだった。非感染者には決して理解できない絵。
その絵を高値で買い取ろうと言う申し出がふってわき、Jonathanは顧客に会いに彼のスタジオから外へと踏み出す。

だが彼らを待ち受けていたのは、Jonathanの過去からの追手であった。
.....



Jordan Castillo Priceらしい、とても独特なスタイリッシュさを持った吸血鬼ものです。
ウイルス名の「Human Hemovore Virus」の「Hemovore」というのは、血液嗜好の人間のことをさすようで、その点からいくと感染ポジティブの人はあくまで「感染者」であって「吸血鬼」ではないのかもしれませんが、ストーリーとしては吸血鬼ものに分類しちゃってまちがいないでしょう。

現代物で、後天的吸血鬼化の小説は色々ありますが、この話では完全に「病気」として扱われ、感染者と非感染者が互いに互いを隔離しながら生きている、その孤独が味わい深い。
幾度も消毒するMarkの手の神経質さ、何重にもする手袋、感染者用と非感染者用に別々に売られる飲み物、Jonathanの飲む不思議なフレーバーのついた水──そんなふうな、色々なディテールから孤独が色濃く浮き上がってきます。
Markは非常に潔癖にJonathanを避け、JonathanもMarkを避ける。
彼らは、やむなく2人での逃亡生活に出るのですが、その先で出会った人々は彼らなりの「感染者・非感染者」の壁を持っている。それはMarkとJonathanのものより薄い壁ですが、そこに厳然として存在する。
距離はいくら近づいても、孤独はなくならない。
Markはその「近づいた距離」を見ますが、Jonathanはそこに残ってしまう「孤独」を見る。どうやってもMarkにふれることはできないのだと。

そして、その「孤独さ」こそが物語の鍵でもあります。MarkとJonathanだけでなく、追ってくる者の根にあったものも、拭いがたい孤独であり、その孤独から生まれた残酷さであった。
Jonathanの後悔が鮮やかにくつがえされる、あのオチはいいですね。

何しろ、感染してしまうと最後のステージまでたどりついて生きのびる人間はとても少ない。ふれたが最後、きっとその先にはMarkの死が待つ。
MarkとJonathanの間にあるテンションは無視できないものですが、そこには常に死の匂いがつきまとう。
ダークでクールな雰囲気が、とても独特。静かですが、緊張感に満ちている。表紙のスタイリッシュさがそのまま最後まで書ききられる感じです。

変わった吸血鬼物を読みたい人におすすめ。

★吸血鬼感染
★逃亡

★Three-Star rating system★


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