Slash×Slash

Slash(m/m小説) レビューブログ

※万人向けの内容ではないのでご注意ください
→このブログについて

[タグ]CattFord の記事一覧

A Strong Hand
Catt Ford
A Strong Hand★★★ summary:
SMシーンの高名な写真家であるDamianは、予定していたモデルが来られなかったある日、思いついたイメージをためしてみるためにアシスタントのNickを使う。そして、Nickが完全に彼のイメージを再現していることを発見した。

Nickは学費のために仕事を必要としていた。全裸でSMシーンの写真を撮ることにもそれほどの抵抗を感じなかった。Damianはすぐれた写真家で、モデルを大事に扱っているのを見ていたし、カタログの写真はモデルの顔が判別できないよう暗い影にされていることも知っていた。
彼が知らなかったことは、自分がDamianのイメージの中で折り曲げられ、器具に拘束されることにどれほどの興奮を覚えるか──どれほど、Damianの支配の下で昂揚するか、ということだった。
彼は欲情し、驚く。Nickはゲイではなかったし、SMに対するわずかな知識も、興味もなかった。だがDamianの下で彼は服従の喜びを覚えていく。

DamianとNickは、互いの間にあるものを探りはじめ、DamianはNickを自分のSubとして様々なことを教えはじめる。
一度Nickが自分の中の性癖に気付いた以上、無自覚にその世界に入っていくことは危険をともなう。「セーフワード」の存在すら知らないNickを無知なまま放置しておくことはできなかったし、DamianはNickを支配する誘惑には勝てなかった。
だがNickの持つ好奇心が満たされた時、Nickが彼を去るだろうことも、Damianにはわかっていた。彼らは10の年の差があり、Nickを動かしているのはあくまで未知の世界への誘惑でしかない。
そう思いながらも、いつのまにか、DamianはNickに対する気持ちを無視できなくなっていく。支配と愛情の境い目で、彼は苦しみ、主人としての自信も失い‥‥
.....



わりとSMってサディズム/マゾヒズム的な観点からとらえられがちですが、スラにおける(というか欧米における、か?)SMというのは「Slave/Master」の関係性を重視するものが主で、嗜虐的な(だけの)ものは少ないように思います。
BDSM系の名作と言えば「Remastering Jerna」なんかもすごく好きなんですが、このへんを読むと「主人にもスキルが必要」ということがよくわかります。奴隷の欲望と限界を正確に読み、己を律するだけの強さがない人間は、Dom(Dominant=支配者)になる資格がない。
奴隷と主人とは言っても彼らの間には深い信頼が必要で、互いを信頼するからこそ彼らは深くシーンの中へ入っていく。奴隷の服従と屈服を得た主人には、その信頼に応える義務があります。
信頼を基礎として、彼らは互いの限界をさぐりながら、行為を深めていく。痛みや拘束具は、己を通常では感じられない世界へ解放していくための道具であって、目的ではない。

この「A Storong Hand」は、そのへんを見事に凝縮した話で、プレイの物理的な詳細だけでなく、そこにある精神的なつながりやハーモニーを書いています。
初心者で、ゲイでさえないNickを新たな世界へ導こうとしながら、DamianもまたDomとしての資質を問われる。彼は経験の深いマスターですが、Nickとの間にあるものはそれまでの彼の経験だけでは対処できないものです。
NickはDamianの支配を望んではいるが、一方で見知らぬ行為に怯え、途中でセーフワードを口走ってしまうこともある。
この場合、セーフワードを発した奴隷(ってのも何かちがうんだけど、Subをどう訳せばいいものやら…)ではなく、そこまで追いこんでしまった主人に問題がある。それが、即座に行為をやめて反省するDamianの様子からもよくわかります。
話の中でも何度か言及されますが、彼らはDomとSubの関係ではあるが、本質的にその関係を支配し、すべての力を持っているのはSubの方なのです。

Nickは迷い、惑い、Damianはいくつもの間違った手段を取ってしまう。
失敗と葛藤をのりこえ、彼らは互いを信頼することを覚え、相手のリミットを覚え、単なるプレイをこえる人間関係をつくりあげていく。そして、さらに深い感情も。

SMの話というより、信頼と人間関係の葛藤の話です。エロは山盛りですが、特にハードなプレイもなし。痛くもないし、受けもそんなにいじめられたりはしないので、SM読まない人でもおすすめ。
あと、写真を撮るシーンで紡ぎ出されるイメージがとても艶っぽくて美しい。
ラストはちょっとあっさりしすぎた感もありますが、そこまでがとてもおもしろかったし、特殊要素ではあるけれども、人間関係の絡みがよかったので★みっつ。

★BDSM

Lily White Rose Red
Catt Ford
Lily White Rose Red★★☆ summary:
Grey Randall探偵ファイル1。

1948年のラスベガス。
まだ生まれたばかりの罪の都市の裏路地で、ひとりの娘が殺された。
ダンサーと歌手を目指し、たぐいまれなる才能と容姿に恵まれていた彼女。その死の真相を探るべく、私立探偵のGrey Randallは金持ちの女に雇われた。

娘の死を調べるうち、彼は違法な秘密クラブに入るための手がかりをつかむ。
Greyは娘の足取りを追ってクラブに潜入し、そこで出会ったバーのオーナーに目を奪われる。

死んだ娘の背後から浮かび上がってきたのは、遠い昔のハリウッドのスキャンダルで…
.....



ハードボイルド風味の探偵物。舞台が1948年というのもそれを意識してるのでしょう(そのへんから1960年代を舞台にしたハードボイルドが多い)。
文章もそれを意識して、乾いた感じに皮肉をしのばせる感じで書かれています。ハードボイルド本家のチャンドラーとかより、エルロイっぽい気がする。依頼人の女性が、いかにもエルロイが書くような謎めいた美女だったせいかも。
話にも全体にエルロイのような退廃的な雰囲気が漂っています。ただし暴力描写はなし。

踊り子の卵を殺した犯人を捜し出すために、Greyは警官の友人から情報を引き出し、あちこちかぎ回ります。
作中に出てくる「Lambda(ラムダ)」の印が、大きな意味を持っています。作中では「古代ギリシアの神聖隊が使った印」とされてますが、史実なのかどうかは今いち不明。この神聖隊というのは実在した部隊で、男同士のカップルで構成されていました。
彼らの使っていた印を、ラスベガスの暗闇で、ゲイ同士の符丁として使っている者たちがいる。Greyはその秘密クラブへ潜入し、クラブのオーナーに出会います。
このオーナーが実にいい男。でも正体が謎。Greyは彼から情報を引き出そうと、かなりヤバい手まで使いますが、その方法は両刃の剣になる。

恋愛色は薄くて、Greyの捜査や皮肉っぽい考え方を楽しむ1冊です。依頼人の女性の何とも浮世離れしたハリウッド的なゴージャスさや、彼女の運転手(兼執事?)や使用人との強い結びつきとか、印象的なシーンがたくさんあります。彼女とGreyの間にある緊張感と、言葉にされない信頼感も味わい深い。
探偵物とミステリとスラを同時に楽しめておいしい!という話ですが、スラ部分に期待するとあっけないかも。いいシーンあるけどね!
互いに気持ちを見せまいとしながら主導権をつかみあう、でも実は相手にメロメロって感じのいいカプになりそうで、シリーズの続きが楽しみです。

ミステリ好き、皮肉っぽい一匹狼の探偵に萌える人におすすめ。
退廃的なモノクロ映画のような雰囲気があります。

★ハードボイルド
★探偵

★Three-Star rating system★


[カテゴリ]View ALL
レビュー (314)
★★★ (90)
★★ (190)
★ (34)
モノクローム・ロマンス (10)
電子ブックリーダー (23)
iPodTouch・Stanza (19)
nook (4)
雑談 (84)
英語 (29)
文法 (4)
読書日記 (11)
…このブログについて (9)
…書店情報 (2)
[タグリスト]

09 | 2017/10 [GO]| 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

カテゴリ一覧 最近の記事一覧 プロフィール リンク一覧 メールを送る
[カテゴリ]


モノクロームロマンス(M/M翻訳)


■公式サイト■

・2017年
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas

・ほかにも出るかも
・王子とか何か売れてくれ〜(色々軽くピンチ)
・来年はもふもふやるよ!

*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流
・夜が明けるなら(ヘルハイ3)

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター