Slash×Slash

Slash(m/m小説) レビューブログ

※万人向けの内容ではないのでご注意ください
→このブログについて

[タグ]CameronDane の記事一覧

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Hawkins Ranch: Falling
Cameron Dane
★★★ summary:
Hawkins3兄弟(Conner、Cain、Caleb)は牧場の経営者としてその町に落ち着いていたが、彼らはじつは兄弟ではない。それどころか、人間ではなかった。
人より古くから地上に生きていた太古の一族──悪魔──、それが彼らの正体である。
一族との暮らしを捨て、それぞれイギリスをさまよううちに3人は出会い、自分たちの人生を求めてともにアメリカに渡ってきたのだった。血のつながりはなく、そして悪魔としても種族の異なる彼らであったが、3人をつなぐものはまさに「家族の絆」としか言いようのないほど強く、あたたかな気持ちだった。
だが、今ではConnerは悪魔ではない。愛する女性の力によって人間となっていた(1作目「Demon Moon」)。
そんな兄を、Cainは心の底から羨望していた。Cainは男性を好んでいたが、彼の種族は種の繁栄のために決して同性愛を許さず、もし同性と関ったことが知られたら即座に処刑が待っていた。そのため、Cainはその長い人生の中で一度も、そして誰とも関係を結んだことがなかった。
兄夫婦が暮らす家から出たCainは自分の家と厩舎を建て、虐待され傷ついた馬を引き取って訓練する牧場を1人で切り回していた。孤独には慣れていたし、彼は馬たちを心の底から愛していた。

そんなある日、Cainは兄から呼び出される。兄の妻Cassyの幼馴染、Lukeがひどい怪我を負って前の牧場を追い出され、退院した後も行き場がなく、そのまま兄の家の居候となっているというのだ。Cassyのそばに男がうろうろするのが許せない、という兄の子供っぽさに少々あきれつつも、Cainは仕方なく自分の牧場でLukeを引き取って働かせることを承知する。
だがそれがひどく危険であることも、わかっていた。彼は3年前にLukeと顔をあわせた時から、ずっとLukeに惹かれ、そんな自分の気持ちを恐れていた。もしLukeに対する気持ちが抑えられなければ、その先には破滅しかない。
それを肝に命じながら、それでもCainはLukeとともに働く毎日を楽しみはじめる。彼らはどちらも馬に対する深い愛情をもっていた。明るく、繊細で、だが時に驚くほど頑固なLukeの存在は、それまで孤独しか知らなかったCainにとってかけがえのない存在になりはじめていた。

長年の孤独と自制が作りあげた心の壁と、そして処刑への恐れ。さらにはその先に必ず訪れるであろう、処刑そのもの。Cainが乗り越えなければならないものはあまりに大きい。それは望みのない道に見えたが…
.....



Hawkins Ranchシリーズ。とりあえず今回は「Falling」を。
これシリーズ2作目なんですけども、1作目の「Demon Moon」はノマカプものです。結構あっちのスラ作家さんは、男女ものとスラの両刀書きだったり、男女ものをずっと書いてる人がスラに参入してきたりしますね。シリーズの中でまざってると微妙に困ったりしますが。
男女ものと混ぜて読むのはなあ、という人は1作目を読まなくてもいけると思います。

Cameron Daneはとにかく何もかもドラマティック!な作品を書く人で、登場人物は痛いほどむき出しに自分をぶつけあい、時に削るように互いを変えていきます。ちょっとテンションとしては昼ドラめいたところすらある。何というか、まさに「ハーレクイン」って感じもします。
力技なところもあるんですが、その「力」が半端ではなくキャラも皆魅力的なので、一度入りこむとそのまま最後まで話の中に引きずりこまれる。

「Falling」のCainは、とにかく「落ちまい、落ちまい」としながらLukeの存在に落ちていく、もがく男です。もがく悪魔というか。
誇り高く、自分の存在に自信を持っている、孤高な男ですが、彼の世界はLukeの存在に完全に揺さぶられてしまう。時に怯え、時に反発し、それでもCainはLukeに対して誠実であろうとする。
そんな力強い、苦しげな存在に、Lukeも否応なく惹かれていく。彼にはCainのかかえている問題が見えていないが、Cainの誠実さと優しさを愛し、そのぎこちなさの向こうにある痛みに手をさしのべたいと願う。
時に2人はただ感情に押し流され、時に混乱し、それでも魂は痛みや傷をこえてただまっすぐに相手を求める。

エロはかなり激しいです。Cameron Daneの書くエロシーンは当人によると「人の心と体がどちらももっともむき出しになる瞬間」という位置付けがあり、感情的なぶつかりあい、融合、心の変化にともなう体の反応などなどストーリーそのものを投影するエロです。非常に濃密な感情があふれています。喜び、痛み、怒り、相手への思い、時に拒絶など、意志と感情が互いへまっすぐに向かい、激しい反応を引きおこす。その中で、相手のもっとも深いところにふれ、さらに深くを求める。そういうエロです。なんか「情事」って感じがよくあてはまるような。
最中によくしゃべるのはご愛嬌。

色々な意味で「激しい」とか、「溺愛」路線が好きな人におすすめ。家族の絆とか、そういうあたりもしっかり押さえられている。
カウボーイものって、わりとよくホームドラマ要素もつきますね。牧場は家族経営が多いからかなあ。

★エロ度高
★人外(変身エロあり)

スポンサーサイト

A Fostered Love
Cameron Dane
FosteredLove★★★ summary:
Marisolは多くの子供を引き取り、里親として育て、送り出してきた。Christian Sanchezもまたその1人であり、成人して29歳になった今もMarisolともっとも近い存在だった。彼がMarisolの葬儀やその後の遺言執行を受け持つのは当然のようなものだった。
葬儀の前日、里子の一人だったJonah Robertsが、その姿をMarisolの家の戸口に見せる。
Jonah。Christianは、Marisolのこの家でわずかな時間ともに暮らした少年を、ふたたびこの目で見ることがあるとは思わなかった。
いつでも人と距離をへだて、何かに怒っていたJonahはついに破滅的な犯罪を犯し、警官に引きたてられてこの家を去った。Christianはその時に自分の心のどこかが壊れたような気がしていた。

あれは15年前。Christianは14歳、Jonahは16歳。Jonahは彼の初恋だった。

一方のJonahはChristianのことを一度も忘れたことがなかった。たとえChristianが自分を忘れてくれるよう願っていても。
少年刑務所で車の修理を覚え、今では自分の店を持つようになった彼だが、自分がほかの人間とちがうことを感じていた。彼は誰も愛したことがなかった。誰かと何かを分けあったこともなく、友人と呼べる存在すらいない。事務的なことを除いて、人とどう関ればいいのかわからず、関ることを望んでもいなかった。
だがその深い奥で、Jonahは自分がChristianを求めていることを知っていた。その感情は、Christianを目にした瞬間から無視しようもなく強まり、彼を心底怯えさせる。彼は生きのびるすべも何かに立ち向かう方法も知っていたが、Christianとどう接していいのか、どうすればいいのかはわからなかった。

Marisolの遺言にそって、彼らは協力しながら、家を売るための修理と手入れをはじめる。
再会は果たしてどこへ彼らを導くのか。15年の空白を経て自分たちの間を何がつないでいるのか、まだどちらにもわからなかった。
.....


Cameron Daneの新刊が出ていたので、読んでみました。
相変わらずとても激しく、どこか攻撃的な恋の話です。
里子の「兄弟」同士の恋。彼らはほんの2月ほど同じ部屋を分け合っただけで、その後の15年、1度も顔をあわせていない。それが里親Marisolの死によってふたたび会い、彼女の家の手入れをはじめる。
里親の思い出、Jonahとともにいた記憶のある家を片付けて人に売ることにChristianは痛みを感じており、その痛みゆえに彼は時おりJonahに攻撃的になってしまいますが、もともととても優しい男です。子供の時からどこか純粋で、ひたむきな少年だった彼を、Jonahは忘れたことがなかった。

Jonahは自分が「hell」と呼ぶような場所で子供時代をすごし、人に道具のように使われて捨てられ、ねじまげられた人生を生きてきた。それらへの怒りや傷を内に秘めたまま、だが彼は2度と道をそれずに、自分の人生をきちんと作りあげる。強い意志を持った男ですが、一方で自分が他人を愛せるような人間ではないと思っていて、他人に近づくやりかたもよく知らない。
Cameron Dane特有の「内側に脆いものをかかえこんでもがく、強い男」そのもので、彼が自分自身の魂を剥ぐように、自分の苦しみをChristianに明かしていく姿がひとつの話の核になっています。

そして相変わらずエロはとても激しい。「そこはもうちょっと理性を」とかつっこみたくなる状況もないではないですが、そこを含めて強烈な感情のぶつけあいがこの作家の魅力でもあり、互いのどちらをも呑みこんでいくような激しさの中で、彼らは相手の存在を自分に刻みつけるように確認していく。特にJonahのように心に高い壁を作りあげてしまった男には、その壁をわずかでもゆるめるにはそれだけの強い衝撃が必要なんだろうなあ、と思わせる、時に痛々しい行為でもあります。
Jonahが自分の中にある夢や人への思慕を、体に刺青として刻んでいるのはとても暗示的です。そしてまた、そうして体に刻むことでしか語ることのできない男が、やはり痛々しい。

かつて、15年前、Jonahがただ破滅への暗い道をころげ落ちようとしていた時、その人生を変える決断をさせたのはChristianの存在だった。
15年たって、彼らはふたたび、自分の人生をかけた瞬間と向かいあう。

激しいものが好きな人におすすめ。

★エロ多め(ちょっとダーティな感じ)
★再会

ReneCade
Cameron Dane
ReneCade★★★ summary:
Cade McKennaは過去を忘れるため、モンタナの小さな町へ副保安官として赴任してきた。彼の顔の半分は傷で覆われているが、誰もその理由は知らない。Cadeは誰にも自分のことを語らない。仕事を黙々とこなし、社交的なやりとりは好まず、孤独で厳しい男であった。
保安官の息子Ren BooneはHawkins' Ranchで働きながら、牧場の仕事を何でもこなす日々が好きだった。父親と2人だけで暮らし、明るくふるまう彼は誰にでも好かれていたが、彼は自分がゲイであることを、2人の親友を除いて周囲に押し隠していた。父親にさえも。
だがCadeの、周囲を拒否するような殻の下に強い情熱と痛みを見て、RenはCadeに磁力のように惹きつけられる。CadeもまたRenの存在に心を乱され、彼らは秘密裏に関係を持ちはじめる。
Renは望み、Cadeは抗いながらも抗いきれない。いびつなものをかかえながら、それでも彼らは心を剥き出しにするように向きあい、少しずつ、2人の関係はうまくいきはじめたように思えた。
だが彼らの関係は最悪の形で崩壊する。Renの裏切り。

はたして、2人はその裏切りの裏にあるもの、Renの中にある深い痛みを明らかにできるのか。Cadeは傷の痛みを呑みこんで、ふたたびRenを腕に迎え入れることができるのか。
それは望みのない道のようにRenには思えたが、それでもRenはCadeをあきらめられない。裏切ったのは自分で、傷つけたのは自分だが、Renはその崩壊の中で自分の本当の気持ちに気付いていた。

一方、牧場の魚の養殖池に毒が入れられ、犯人探しがはじまる。その悪意は思わぬ形でCadeへと襲いかかり…
.....



Hawkins Ranchシリーズですが、他の作品とは関係なく独立して読むことのできる話です。Hawkins兄弟はちょっとした脇役で、ここでは彼らの牧場で働く若者Renと、保安官助手のCadeの話に焦点があたっている。

このCadeがじつに強烈で複雑な男です。顔に傷をもち、笑わない副保安官。何事にも厳しく、何より己を律して揺らぐところがありませんが、その内側にはまだ過去からの生々しい傷が残っています。Renの裏切りは、その傷をかきむしり、中から膿みのような痛みがあふれ出してくるのをどうすることもできない。彼が誰にも立ち入らせなかった深みへと、Renはやすやすと入りこんできて、挙句にそこに痛みを残した。
Renの裏切りは本当に馬鹿げたものですが、RenにはRenの暗い部分がある。少年時代、今の町に引っ越してきた時に切り捨ててきた筈の暗い痛み。彼はそのすべてを捨て、過去の自分を捨て、今の「明るく人なつっこい」自分をこの場所で一から作りあげてきた。だがCadeに向かう感情は彼を根っこから揺さぶり、怯えさせ、判断を歪めるほど強烈なものだった。
互いに衝動につかまれ、どうしようもないほど惹かれていますが、裏切りの痛みが2人を分かちつづける。

ただひとり、信頼できる家族である父親へのカミングアウト(Renの実の父ではありませんが)、昔からの親友との腐れ縁な関係、古い過去から追いかけてくる捨てた筈の「家族」。Renの痛みはあざやかで、それとクロスするCadeの苦痛もまた鮮烈なものです。
Cadeは自分を切り捨てて、ただ「副保安官」として立派につとめを果たそうと、自分の感情や痛みをどこかへ埋めてしまおうとするが、Renの存在は彼をつらぬくような傷となる。
2人は互いを求めずにはいられない。だが求めながら、そこにある痛みに息をつまらせる。そんな関係が痛々しく書かれています。

Renはとても若々しくて、のびやかでいい若者なんですけども。自分でした裏切りとは言え、彼が打ちのめされ、必死になる姿は胸にくるものがあります。
望みのないものを、人はいつまで待ちつづけていられるか。許しとは何か。そんなものが圧巻の迫力で書かれています。RenやCadeだけでなく、人と人の感情の交錯には時おり息がつまるような気がする。
がっつりボリュームもありまして全編激しいので、とにかく激しいものが好きな人におすすめ。

ところでこの「ReneCade」というタイトル、RenとCadeの名前をつなげたものでもありますが、「Renegade」(裏切り者)とのダブルミーニングでもあります。最近になってやっと気がついた…
個人的に、Hawkins Ranchシリーズで一番好きな話です。ほんとにキャラがいいし、まるで異なる2人が傷つけあいながら惹かれあう、その対比が荒々しくも美しいのです。

★エロ多め
★裏切り

Grey's Awakening
Cameron Dane
Grey's Awakening★★ summary:
たたみかけるように幸せな報告が続き、投資会社の経営者Greyson Coleはうんざりしていた。彼が周囲の幸福をことさら嫌っているというわけではない。だがもう充分だった。
ついに従業員から結婚の報告がまた届き、Greyは何年もやったことのない、いや一度もやったことのない行動に踏み切る。
2週間の休暇を取り、山にある小さな別荘へと出かけたのだ。持ってはいるが、一度も行ったことのなかった場所へ。世間から逃げ出すように。

だが自分の小屋の扉をあけた瞬間目にとびこんだものは、見知らぬ男の半裸であった。

Sirus WilderはGreyの小屋から川をへだてた向かいの小屋に暮らしていた。少なくとも、トラック運転手の仕事がない時には。
だが配水管のトラブルから小屋の水が出なくなり、困った彼は、Greyの双子の妹から小屋を使っていいと言われる。
彼はありがたくその申し出を受けた。長年顔を見せなかった小屋の主が、まさかいきなりやってくるとは、誰も知らなかった。

互いに対する第一印象は最悪であった。
Greyは自分の妹がSirusをわざと送りこんだのではないかと疑い、警戒する。Sirusは人をすげなくあしらうGreyの態度にムッとする。
だがそれでも、Greyはあくまで理性的な人間であって、水がなく困っているSirusを放り出すことはできなかったし、SirusにとってGreyの小屋を使えるのは助かる。
2人は互いに妥協して小屋を共有することにした。2週間たてば、Sirusは小屋の配管工事を終えて戻り、Greyは休暇を終えて仕事に戻る。

2週間。
周囲の浮かれ騒ぎにうんざりして孤独に引きこもりたいGrey、手ひどく終わった過去の関係から立ち直っていないSirus。どちらも誰かと感情的にかかわるつもりはない。
2週間で、2人の間に何もおこる筈はなかった。
......



はからずも、同じ小屋を共有することになってしまった男2人の物語。
ありていに言って、全編エロです。エロの中にストーリーがあるというか。これはこれで潔くて、好きですが。

読みどころは、Greyの強烈なキャラクターと、2人の間を行きかう磁場のような強い力、それによって揺さぶられる2人の男。どちらも恋になど落ちたくはない。だが相手の存在を無視することができず、2週間で終わるただのセックスの関係ということで自分を納得させながら、相手に溺れていく。
Greyはいつも、自分と他人の間に一線を引いて、その線の内側に踏みこんできた者は恋人だろうが誰だろうが、容赦なく切り捨ててきた。他人のことを知りたくも、他人に自分の内側をのぞかれたくもない。
彼は孤独で、そしてそのこと自体に気付いていない。それほどに孤独です。
だがSirusの存在は火のように彼を惹きつける。すべてが手遅れになるほど。

Sirusは、Greyがひどく固い殻をまとっていることに気付きます。そしてそれを、Grey本人がどうすることもできないでいることも。
その殻の内側へ手をのばしたいと願い、だがGreyが肉体以上のものを求めていないことも感じ、Sirusは行きづまる。
Sirus自身もまた、二度と、未来のない一方的な関係にはまりこむつもりはなかった。
だがGreyの存在はあまりにも強烈に、彼を情動の渦に引きずりこむ。

体からはじまる恋なのか、恋をしたから欲しいのか。その境い目が曖昧になるような、激しく、情熱的な話です。
エロエロですが、エロ表現がかなり露骨で、ある意味「男性向」のような笑っちゃうほどの表現もまざってますので、そのへんが苦手な人は避けた方が無難。それもまたCameron Daneの味だとは思いますが、正直数回笑ってしまいました。
それにしてもGreyはかわいい。ちょっとSirusが踏みこんできただけで硬直したり、「きたきた、こいつもか」みたいに過剰反応したり、Sirusは何だか野生の獣をなだめているみたいです。
脆い内面を冷たい殻で覆おうとしている男、地に足がついた包容力のある男。なかなか鉄板カプだと思います。
そういうとりあわせが好きな人、暑苦しいほど激しいものが読みたい人におすすめ。もちろん、読むならやっぱりエロだ!という人にも。

★エロエロ
★鉄面皮/情熱男

Dreaming in Color
Cameron Dane
Dreaming in Color★★☆ summary:
この2年、Colin Baxterは赤いドアのある家の夢を見ていた。
そして、その家に住む男の夢を。

男の顔はいつも見えない。だが男の中にある痛みや悲嘆はColinに鮮やかにつたわって、いつも彼はそれを癒やしたいと思うのだった。夢の中で男とくり返し体を重ねながら、彼はいつか現実にその家を、そして家の主人を見つけたいと願っていた。それはそれほどリアルな夢だった。

友人の結婚式のためにフィジーを訪れたColinは、ボートの上から小さな島に建つ家を見て呆然とする。
あの家だった。幾度となく夢で訪れた家。
だがその家に赤い扉はなく、家に住む男はColinの夢など見たこともないと言う。

己のあやまち、そして死んだ恋人の記憶から逃げるようにフィジーへ渡ってきたMarek Donovanの望みは、ただそっとしておいてもらうことだけだった。そのために人里離れた島に家を買ったのだ。それから2年、彼は望み通り孤独に暮らしてきた。
だがいきなり現れたColinの姿、そして彼がこの家と赤い扉の夢を見ていたという話を聞いて、Marekは凍りつく。
Colin Baxter。忘れる筈もない、彼の高校の同級生。過去から現れた男。
これは何かの罠か、復讐なのだろうか。Colinは、Marekが何をしたのか知っているのだろうか。Colinの体に残る傷、その痛みをもたらして彼の人生を変えたのがMarekであったことを。彼は知っていて、現れたのではないだろうか。
.....



夢の話です。
「あなたの夢を見ていたんだ」というのはよくある恋物語ですが、「家の夢を見ていた」というのは、スラというよりホラーっぽいパターンですね。
これも超自然現象が(ほんのちょっと)からんできて、見方を変えるとちょっと怖い。いや、話はハッピーエンドで情感のあふれるいい話ですが。あの家はこの先もずっとこうやって自分の好きな住人を呼びよせていくのかなーとか、余計なことを考えると涼しくなれます。

Marekは幾度もあやまちを冒してきた男で、Colinに対しても強い罪悪感をもっている。彼らは互いに惹かれていくけれども、惹かれれば惹かれるだけ、Marekは過去にあったことを言い出すことができません。
Colinは自分を許さないだろう、そう思いながら、それが怖くて口をとざし、Colinを抱きしめる。彼の痛みが物語の焦点になっています。

大人になってからの再会の話もおもしろいんですけども、学生時代の追憶がパワフル。そんなにその部分のボリュームはないんですが、少年の罪悪感や情動、羨望、焦りや虚勢で混沌とした心や、それに追いたてられるように最悪の選択をしてしまう、その一瞬の怖さがよく出ていると思います。
そして今でもMarekはそのあやまちに背を追いかけられている。向き合わないから抜け出せないんですが、1人で向き合うことができないMarekの気持ちもよくわかる。

Colinも頑固でかわいいですが、Marekの複雑で痛みをかかえたキャラクターがいい。はじめは冷たくColinをあしらおうとするけれども、結局それができない。強い男のようでいて、あちこちにやわらかな部分をかかえている、それが見えてきます。
この話は、Colinが夢によって「家」を見つけ出し、Marekを悲嘆や孤独から引きずり出すまでの話ですが、決してColinや偶然の力だけではなく、Marekが自分の決断で闇から抜け出そうとする、その部分が美しい。

あとJordan(Colinのルームメイトの女性)が、なかなか魅力的。
「ゲイに理解のあるお節介な女性」ってはよくあるサブキャラですが、あまりにも無個性だったりいたたまれないような振舞いをしたりするケースが少なくない。あれはキツくて苦手です。
その点、Jordanは個性的で、彼女自身も色々な問題をのりこえてきた(Colinのおかげで)様子が、うまいこと見え隠れしています。びっくりするほど口が悪いが。

Cameron Daneにしては色々地味な話だけど(エロも結構あるけど、わりとそこも地味)、それだけにいつもより万人向けかも。おとぎ話のようなフィジーの美しい自然、超自然的な夢、10日間のバカンスなどの「非現実」的な部分と、痛みや苦しみのある「現実」の世界をうまくつないで織りあげた、佳作だと思います。

運命とか、あやまち、贖罪など、そういうキーワードが好きな人におすすめ。

★過去のあやまち
★夢

Aidan And Ethan
Cameron Dane
Aidan And Ethan★★★ summary:
Aidan Morganは13年ぶりにRedemptionの町へ、新しい消防署長として戻ってきた。
彼の生まれ故郷、学生の時に恋に落ちた相手がいる場所、そしてその恋を裏切って彼が背を向けた場所へ。

Ethan Ashworthは親友がずっと好きだった。
高校の卒業式の時、その親友とはじめてのキスをして、彼は恋がかなったと信じる。だがその次の日には、相手が町から跡形もなく消えていた。
手ひどい失恋から逃れられないまま、13年がたち、Aidanが彼の目の前に帰ってきた時、古傷は昨日のことのように激しく痛み出した。

Aidanは、13年かけて自分の義務を果たし、弟と妹をそばに取り戻し、やっと自由に動き回れるようになった今、Ethanの存在を彼の人生の中に取り戻したかった。
たしかにAidanは13年前にEthanを裏切った。
だがそれは理由があってのことで、話せばわかってもらえる筈だ。少なくとも、彼はそう思っていた。

頑固でプライドの高い2人の男は、13年の空白を経て真っ向から向かい合う。
13年の孤独、憎しみ、傷、そして消えることのなかった火のような愛情。彼らのどちらも、強烈な感情の交錯の中で平静ではいられない。
再会は互いの傷をえぐるだけなのか、それとも彼らは1度は灰と化した誓いから、今度こそ何かを作り上げて行くことが出来るのか。
.....



Cameron Daneらしく、強烈で激しい愛憎の物語。
しかも消防士同士なので(片方は消防ボランティアですが)、肉体派で、描写も色っぽくごつごつしています。

Ethanは13年の間、ずっとAidanの裏切りをのりこえられずにいた。学生時代の彼らの、互いを思いあう様子が愛らしいので、もうその次の日にAidanがいなくなっていた!というEthanのショックの強さは、読む方に鮮やかに伝わってきます。
Aidanにも事情があって、それは読むにつれわかるのですが、それにしても何とかならなかったのかと。こっそり手紙を出すとかさ。13年、ただ何もなく、孤独と痛みの中で宙ぶらりんにされていたEthanはやっぱり可哀想ですよ。
でもAidanが後に言う、「自分たちは子供だった。今ならもう大人だから色々なことが見えてくるけれども、あの時には冷静に考えることもできなかった」というのは、たしかにリアル。

13年の孤独は、Ethanを分厚い殻にこもった男にしています。誰にも弱みを見せない、いつも動揺せず、冷静に物事を受けとめる。
そんな彼を、家族も友人も心配している。
だがEthanは、Aidanと向かい合うと、18歳の時の情熱や傷つきやすさまで、すべて自分の中に鮮やかによみがえってくるのを感じる。そしてそういう弱さを見せてしまったことに怒り、Aidanを突き放す。
だがそんなEthanが抱えこんだものにこらえきれず、崩れ落ちそうな時には、いつもAidanがそこにいてEthanを抱きしめる。

彼らは近づいては互いを押しはなし、惹かれあってはぶつかりあう。
そのコントラストと、感情のローラーコースターのような上下動の激しさが読みどころです。
Cameron Dane節というか、何と言うか、昼ドラの濃密さと感情表現の激しさがあって、勢いのままに読める一冊。エロは濃いし。ちょっとエロ妄想走ってるところもありますので、ノリノリで読むのがいいと思います。楽しいぞ。
情念の濃い話が好きな人、とにかく勢いに飲まれてみたい!な時に大変におすすめ。

★再会
★エロ多め

Knowing Caleb
Cameron Dane
Knowing Caleb★★★ summary:
Hawkins兄弟は本当は兄弟ではない。彼らはそれぞれ悪魔の種族の出であり、今は一族から離れ、アメリカで牧場を経営しながら新たな人生を送る仲間であった。
そのうちの2人が恋人と出会い、それぞれ苦難を経て人間になった今、Caleb Hawkinsだけが残されていた。

だがCalebは、自分が決して兄たちのような真実の恋を見つけることはないだろうと、わかっていた。
彼の過去を誰も知らない。彼が背負わなければならない罪を、兄たちですら知らない。悪魔だとばれるよりも、その罪が暴かれることの方がCalebにとっては恐ろしかった。

Jake Chaseは6年前に最愛の妻を失ってから、生きる希望を取り戻せずにいた。
Calebは悲嘆に暮れているJakeを見つけ、牧場に雇い入れる。
特に何も問題はないはずだった。

だが2人は互いに強く惹きつけられるのを感じ、2人ともに愕然とする。
どちらもゲイではない。
それなのに、どちらも相手を無視できず、拒否できない。感じたことのない飢えや欲望に流されるように相手に手をのばしながら、どちらも、もがくようにそこから逃れようとしていた。

果たしてストレートの2人の男は、それぞれの過去を乗り越えて2人をつなぐものを直視できるのだろうか。そしてCalebは、自分の罪をJakeに見せることができるのだろうか。
.....



Hawkins Ranchシリーズ。最後に残った3人目の兄弟の話なので、もしかしたらシリーズ最終巻かもしれません。
これまであまり正体というか、本当の性格がよく見えていなかったCalebの話です。

Calebは陽気で、女好きで、これまでのシリーズでも実にいい男です。「Falling」でCainが人間になれる方法やその他あやしげな魔法を探し出してきたのも彼だし、「ReneCade」でRenの理解ある雇い主として気を配っていたのも彼。
でもその中で、Caleb自身がどういう人なのか、いまいち見えてきていないのも確かです。どこかつかみどころがない。

それが何故なのか、彼は本当は外に見せかけているほど「この世に悩みなき」明るい人ではないのだということが、この話の中でかかれています。

そして、いまだ妻の喪失から立ち直れないJake。彼の痛みも深く、その悲嘆は読んでいるこちらが息苦しいほどです。
それぞれ、強い輪郭を持つ男2人にフォーカスが強く当てられた話で、彼らをつなぐ性的な欲望も含め、強烈な話運びになっています。
やっぱとにかく激しいぞ、Cameron Dane。この人はこの牧場シリーズが一番強烈な気がする。
その中でも、「男と男」という感じでがんがんぶつかりあい、傷つけあったりしていくのがこの話。とにかくまっすぐぶつかりあい、はらわたを引きずり出すように互いの内側をのぞきこむ。
何と言うか、本当に力技な話だと思う。うっかり引いたりしないで一気に盛り上がって読んでいきましょう。いやもうほんと激しくて、Calebが本当は悪魔なんだ!ということなんか、ささいな問題な気がするくらいです。

話としては、彼らの関わりの他、Calebが何度も狙われる謎の狙撃事件などが起きたりして、そちらもなかなか相手の正体が見えずにおもしろいです。
そんでやっぱり、兄弟の絆がいいですね。色々なものをくぐり抜けてきた彼らが幸せに暮らしている様子を見ると、ほのぼのします。この話の中での数少ない息抜きポイント。

もう、台風かなんかの夜に読んだ方がいいんじゃないだろうかというくらい、激しくドラマティックな話。
激しいもの好き、ストレート同士がもがく話が好き、あとは苦しんでるキャラに萌えるんだよねという人におすすめ。

★ストレート×ストレート
★悪魔

★Three-Star rating system★


[カテゴリ]View ALL
レビュー (310)
★★★ (88)
★★ (188)
★ (34)
モノクローム・ロマンス (10)
電子ブックリーダー (23)
iPodTouch・Stanza (19)
nook (4)
雑談 (84)
英語 (29)
文法 (4)
読書日記 (11)
…このブログについて (8)
…書店情報 (2)
[タグリスト]

04 | 2017/05 [GO]| 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

カテゴリ一覧 最近の記事一覧 プロフィール リンク一覧 メールを送る
[カテゴリ]


モノクロームロマンス(M/M翻訳)


■公式サイト■

・2017年
・7月 ヘルハイ3巻
・夏 雑誌短編
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas
・冬 雑誌短編
・ほかにも出るかも
・不甲斐なくてごめん

*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター

 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。