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No Going Home
T. A. Chase
No Going Home★★★ summary:
馬術競技で名のある騎手であったLesは、障害飛越でのジャンプに失敗し、頭に蹄を受けて深刻な怪我を負ってしまう。彼の名声がなくなるやいなや手の平を返した恋人は彼の価値を否定し、彼を病院に残して去った。
一度は起き上がることすらできないと思われたLesはなんとか回復し、リハビリを行い、父の牧場を引き継ぐとともに自分の牧場をはじめる。彼のもとには色々な「迷子」が訪れる。それは行き場をなくした人間であったり、見捨てられた馬であったりしたが、すべてをLesは引き受け、同時に彼らが回復して去っていくのを見送ってきた。彼はいつも傍観者であって、ふたたび恋に落ちることはなかった。何かが癒やされないまま、それでもそうして怪我から6年がたった。

ロデオカウボーイのRandyは、ロデオで負った怪我のために久々に実家の牧場へ帰る。彼は父親と深刻な不和の種をかかえており、家に帰ってからもまた争ってしまう。もはやそこは彼にとっては「家」とは思えない場所だった。
そんなある日、妹が借地の代金として目の見えない馬を渡すと言うのを聞き、何か裏があるのではないかとついていった彼は、隣人であるLes Hardinとはじめて顔をあわせる。
強靭で、己の信念に満ち、人生の厳しい面を見ながらも頭をまっすぐに上げている男にRandyはすぐに惹かれるが、LesとちがってRandyは己の性癖をカミングアウトしていない。Lesの方へ一歩踏み出すことは、父との関係、自分の人生、すべてを変えてしまうことになるという予感が彼を不安にさせる。
一方のLesも、陽気で子供っぽい、そして傷を負ったRandyにすぐに興味を持ったが…



T.A.はとても好きな作家なので、ブログをはじめるなら最初の紹介は彼の作品から、と決めてました。と言ってもブログやろうかと思ったのが一週間くらい前なのですが。
わりと真正面からの恋を書く人で、キャラは皆それぞれ自分に確信と誇りを持ちながら、人生の中で傷ついたり迷ったりしている。シニカルだったり、厳しかったりしますが、どのキャラも深い誠実さと強さを持っていて、自分を偽らない感情の交錯はとてもドラマティックです。エロシーン度も高し。
基本的に結構甘めのハッピーエンドですが、彼の作品の中では必ず登場人物が「選択」をせまられます。自分が何者であるのか、何者でありたいのか、どこにいるべきなのか。
生まれ育った場所だけが「家」ではなく、血のつながった相手だけが「家族」ではない。Homeシリーズでは、誰もが自分の居場所を探し、それを互いの腕の中に見出すけれども、そこまでの間には様々な選択がある。恋は甘いが、人生は厳しい…

Lesは一度は傷つきますが、とても誇り高い、強い男です。Randyはまだ若く、強さもあるが、父親との軋轢に苦しみ、カミングアウトが自分のキャリアにもたらす影響を恐れてもいる。自分自身を否定しながら、自分に問いつづけている彼を、Lesはその影の中から出してやりたいと願う。
そんなLesに強く惹かれながらも、Randyはどこに自分の足を置くべきか迷いつづける。何を選ぶべきか。何を捨てられるか。ただ恋に落ちるだけでなく、選ぶことで彼らはその先の人生を手に入れるのだが、その一歩を踏み出すことが難しい。

「No Going Home」は「Home」シリーズの1作目で、「Home Of His Own」が2作目になります。主人公はちがいまして、No Going HomeではLesとRandy、Home Of His Ownでは一作目の脇役であったTonyと、彼の相手であるBrodyの話。この作品も好きなんだ!ブルライダー(ロデオで牛に乗るカウボーイ)のTonyが何かとても可愛い。彼もまだ少年のうちに家を捨て、家族を捨てざるを得なかった男です。
まだ出ていませんが、次作は「His Heart's Home」。やはり主人公を変えながら、この先3作(かな?)予定されているそうです。

しかしカウボーイスラの例に洩れず、ワイオミングが舞台。
何でスラッシュのカウボーイはみんなワイオミングに住むんだろう。テキサスは駄目か?

★エロ度高
★ラブラブ度高

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Ransom
Lee Rowan
Ransom★★★ summary:
18世紀、フランスと戦争中(フランス革命戦争)のイギリス海軍が舞台。
その時代、同性愛は禁忌であるだけでなく、死に値する罪であった。海軍においては吊るし首となる。
1796年、Titanに着任した士官候補生William Marshallは、その一週間後に決闘で上官を撃ち殺す。上官が仕掛けてきた淫らないたずらに、彼は誰の味方もないまま敢然と立ち向かったのだ。Davidの長年の苦しみの元は、Willの放った一発の銃弾で倒れた。
多分その瞬間、士官候補生David Archerは、William Marshallに望みのない恋をしたのだった。

3年後、ともにCalypsoに任官してからもDavidの思いはかわらなかったが、彼らは互いにかけがえのない友人となっていた。DavidのWillへの思いは決してかなわないものだった。同性愛は罪であり、それ以上に、Willは二度と、彼を友人としてすら近づけなくなるだろう。真面目で融通のきかない、そして誇り高いこの友人を失うことは、恋を秘めることよりも耐えがたいことだった。
Willはすでに任官試験に合格して士官となり、後ろ盾がいないにもかかわらず、未来もほぼ約束されていた。Davidの任官試験も目の前にせまっていた。2人で士官となってともに働けば、いつか──それも遠くない未来に──Willが自分の艦を持った時、きっと親友のDavidを副官として伴ってくれるだろう。それが今のDavidのひそかな夢だった。

だが上陸時間の間に、彼とWill、そして彼らの艦長Smithの3人は馬車ごと誘拐されてしまう。つれていかれた先は海賊の船で、艦長と引き離されたDavidとWillは2人だけで小さな船室に閉じ込められ、海賊の首魁であるAdrianはDavidにひとつの条件を出してきた。SmithとWillの安全と引き換えに、Davidの体をさし出せという。

事情を知らないまま、憔悴していくDavidをWillは案じていた。その思いが単なる友情と言うには深すぎることに、彼はまだ気付いていなかった。
........


船やら海軍やらの用語はちょっと難しかったんですが、とてもおもしろかった。わからない単語は大体スキップしても話は何とかなるんじゃないかな?と思います。船の描写なんかも詳しいので、そのへんが好きな人にはいろいろな意味でおいしい。やはり帆船ものはこのあたりの時代が多いですね。
かつては上官の気晴らしに体をもてあそばれ、今また海賊の首魁にいいようにされ、とかなり大変なDavidですが、本人はユーモアあふれる前向きな男で、決して運命にただ流されるタイプではない。ちょっとやんちゃな感じもして可愛いんだよな。融通のきかない、やや石頭のWill(しかも聖職者の息子…)とはとてもいいコンビ。
頭で考えるWillと、感覚で判断するDavid。互いを案じたりからかったりはげましたりと、恋とか抜きにしてほんとにかけがえのない友人なんだなー、という感じがいいです。

異様な状況の下で、彼らは互いに相手を守ろうともがき、脱出の手段を探そうとする。そんな中でついに思いを通わせながらも、すぐには近づくことができない。禁忌でもあるし、さらに、自分たちの艦に戻った先のこともある。船には秘密を保つだけのプライバシーなどないし、自由時間もなく、上陸することも滅多にない。仮に思いをとげたとして、彼らの関係には未来がない。

この2人もいい感じなんですが、海賊の首魁のAdrianもちょっと気になった。貴族階級の雰囲気を漂わせる彼だが、金のために誘拐をくりかえしながら、手元にひきよせた被害者たちを蹂躙する。Davidが無反応でいようとする、その抵抗を打ち砕くために薬を盛ったりしますが、何となく彼の行動の底には切羽つまったものがある気がします。
もともとは相棒と一緒に誘拐仕事をやってたようなんだけど、その相棒はAdrianについていけなくなって去った…とかそういう一文もあって、何か色々想像が(いや妄想か)ふくらむところです。勝手に。

DavidとWillの話はつづきが出てまして(「Eye of the Storm」と「Winds of Change」)、彼らの波瀾万丈な恋と、歴史の大きなうねりを書いています。フランスとイギリスで休戦が結ばれて陸に上がるWillとか、船を降りようかどうか悩むDavidとか、フランスへ潜入する任務とか。
エロシーンは少なめですが、ある時は濃厚。とにかく人目をさけなければならないので、我慢したり飢えている感じがなかなか味わいぶかい。
心の変化の描写も繊細で、「ロマンス」というテイストの言葉がよく似合う話です。「Eye of the Storm」の最後の方にある、滝の裏でのエロはとっても美しいシーンだった…

わりと受け攻め分かれてる感じ(あくまで傾向)なので、BLっぽい雰囲気もあり、そういうの好きな人にもおすすめ。

※リンクはLinden Bay Lomanceに貼ってありますが、My Book Storeからも買えます。MBSではちがうフォーマットのファイルを落としなおすことができるので、MBSの方がおすすめ。Lindenのファイルはちょっと作りが甘いので、使ってるリーダーの種類によってはきちんと読めないかもしれない…


★歴史もの
★サスペンス

The Tin Star
J.L. Langley
TinStar★★ summary:
テキサスの牧場「Tin Star」の経営者であるEthan Whitehallには、古くからの無二の親友、John Killianがいた。
Johnは長男としてKillianの家に生まれ、牧場経営を小さな時から叩きこまれてきた。父親はほとんどJohnばかりを可愛がり、弟と妹は母の愛情のもとで育っていた。そんな母も3年前死に、妹は家を離れて看護師として働く一方、年の離れた弟Jamesは牧場に残って働いている。

その弟Jamesがある日Johnと父親に「自分はゲイだ」とカミングアウトし、父親は即座にJamesを家から追い出した。
狼狽したJohnからその話を聞いたEthanは、Jamesを放置できず、行き場を失った彼に自分の牧場で働くようすすめる。Jamesを保護すればJohnの父親は怒り狂うだろうが、ためらいはなかった。
ただどうしてJamesが黙っていられずにカミングアウトしたのか、そのことにはEthanは賛成できなかった。小さな、そして保守的な町でゲイだとカミングアウトすることは、人から石を投げつけられることを意味する。それもずっと自分を知っている、小さな頃から馴染んできた人々から。
父親の拒否や嫌悪以外に、Jamesはもっと多くの人々からの敵意や妨害を受けなければならないだろう。若いJamesには、自分が向きあわなければならないものがまだわかっていないように、Ethanには思えた。

若く、溌剌としてユーモアにあふれたこの親友の弟を、Ethanは深く心にかけるようになる。
だが悪い予感はあたり、Jamesへの敵意はさまざまな形をとってあらわれる。時にそれは現実の暴力であり、そして、ついにEthanにまで襲いかかる。
また、Jamesには、当人の知らない出生の秘密があった…
.....



J.L. Langleyはすごくしっかりとしたというか安定した筆力の作家で、SFのシリーズの「My Fair Captain」とか「Englor Affair」のレビューを書こうと思ってたんですが、そっちを読み直す前に「Tin Star」シリーズの1作目を読んだので、レビュー。
表紙がちょっと…だったのでこれまで買ってなかったんだけど、SFがおもしろかったんで、がんばって表紙をのりこえてみた。

カウボーイものですが、なんと舞台がテキサス。ほんとずーっと「ワイオミングのカウボーイもの」ばかりにあたってきて、テキサスはこっちがイメージするほどカウボーイの州じゃないのか?って思いかかってましたが、やはりちゃんとテキサスのカウボーイものもあるわけだ。

Jamesが非常に愛らしい。あまり父に愛されず、牧場で働く男から牧場の仕事を学び、母から掃除や料理を学んできた彼ですが、とてもまっすぐな性格をしています。だからこそ「自分を偽ることができず」にカミングアウトに至るわけですが、父から家を追い出されたこと、その後の父からのさまざまな妨害行為に大きなショックを受ける。
そんな中でも頭を上げ、持ち前のユーモアを発揮して、周囲をなごませていきます。
Jamesの兄のJohnも結構ふざけた性格で、EthanがJamesに車を買ってやることを聞くや「いっそお前、俺の恋人にならないか」とか平気でEthanに言っちゃう。「セックス抜きだけど」とか言われて、Ethanはちょっと頭をかかえたりするわけですが、ここの友人同士の仲のよさは笑えます。
ほかにもたくさん笑いどころがある。
全体に重いテーマを扱ってはいますが、楽しい小説です。

家族との葛藤、Ethanとの関係、町の人々の反応や実際の妨害行為など、Jamesは多くのものに向きあわなければならない。
彼は戦うことにためらいはありませんが、自分の愛する者たちにまで害が及んだ時、ついに揺らいでしまう。町を出ていけばすむのかもしれないが、ここで逃げたら一生逃げつづけなければならないのかもしれないと。

この作者の作品の特徴として、「下唇を噛むのが受け」という規則があります。こだわりだ…
受けと言ってもリバ表現もないことはないですが、エロだけでなく、基本的に攻め受けの役割分担がしっかりついている感じです。庇護者と被保護者というような。
攻めは格好よく、強く、たくましく、常に受けのことを一番に考えて溺愛していて、ラブラブ。
格好いい男×素直な受けが好きな人なら、とてもおすすめ。受けっぽいとは言っても、ちゃんと男らしい受けです。
あと、犬がかわいい!!

Ethanが何故わざわざ毎年とても醜いクリスマスツリーの木を買うのか、それが気になる…のですが、クリスマスの続編があるようなので、今度読んでみようと思ってます。

★溺愛系
★エロ多め

Home Of His Own
T.A. Chase
HomeOfHisOwn★★★ summary:
Tony Romanosはプロのロデオライダーとして各地を旅しながら、友人のRandyとLesが暮らす牧場にたびたび転がりこむ。彼らはTonyを家族のように迎え、家族のように愛した。そこはほとんど、Tonyにとって「家」と呼べる唯一の存在だった。

Tonyは15の時、家族にカミングアウトしたがそれは悲惨な結果におわり、家族が決して自分を受け入れないことを悟った彼は家を出ていく。ひとりで生きていくことを学び、ひとりで生き抜いてブルライダーとなった彼は、RandyやLesのような友人を得て幸福だったが、彼自身の家──彼だけの居場所はいまだにどこにもなかった。
そんなある日、縁を切った、彼を嫌悪している筈の家から手紙が来る。Tonyの甥にあたるJuanがどうやらカミングアウトして、実家は大騒ぎになっているらしい。来てほしいと姉に乞われるが、Tonyは一体自分に何を求められているのか、どうしていいのかよくわからない。自分が自分でありつづけるために家族を捨ててきた彼が、今さら甥に何を言えるだろう。

Brody MacCaffertyは、弟と2人で身をよせあうように暮らしていたが、ギャングの犯罪行為に関ったことからついに殺すか殺されるかというところまで追いつめられ、弟を残して故郷を去る。
LAでボディガードとして身をたて、やがて自分の警備会社を持つまでになった彼は「必ず迎えにいく」と約束した弟を探し出そうとする。だがたぐった糸は、奇妙なところでTonyと彼とを結びつけていた。

どちらも一夜の関係(one-night stand)だと思っていた。もう一度会うとは思っていなかった。
どちらも自分にとっての「家」を持たずに生きてきた。互いが互いの帰る場所になることなど、想像もしていなかった。
.....


No Going Homeに出てきたブル・ロデオのカウボーイTonyの物語です。No Going HomeはRandyとLesの話でしたが、この話では彼らが脇役になります。
この「Home of his own」は本当にとても大好きな話です。話もいいし、キャラもいい。
Tonyはしたたかでシニカルな大人ですが(煙草を吸っている様子が非常に格好いい)、ユーモアに満ちた男です。RandyやLesなどの心を許した相手のそばにいると子供のような面も見せ、Randyとは特に兄弟のようで、何かあるととっくみあったりしてもう大変。
その一方、Tonyは家族を捨ててきたことによる深い孤独の影も持っている。自分の内側に空虚な場所があることを知っていて、それが埋められる日を心のどこかで待っているが、そういう日がこないだろうとも思っている。
多分、自分の中にある影ゆえに、彼はどこか無邪気なRandyが好きなのだと思う。そしてTonyはLesにも惹かれ、LesもTonyに惹かれているが、RandyとLesの間にあるものはTonyにとって手をのばせないものだった。多分、出会うのが少し遅かった。
Randyたちと一緒にいる時間はTonyにとって楽しい時間ですが、ほろ苦くもある。

人生を生き抜くことを知り、その苦さも知りながら、煙草を吸って自分自身ごと笑いとばす──Tonyはそんな男で、BrodyはそんなTonyに強く惹かれていきますが、その一方でTonyが命がけで牛に乗っていることにも向き合わなければならない。馬のロデオ以上に牛のロデオは危険で、いつ大怪我をするか、もしかしたら命を落とすことすらあるかもしれない。
ある日ロデオサーキットで事故を目のあたりにしたBrodyは、その悲惨さを恐れる。だがそれはTonyの生き方で、Tonyと関係する限り受け入れなければならないものでもある。
一方のTonyは甥の問題に力を貸してあげたいと思うが、実家のほとんどの人間はTonyを相変わらず蛇蝎のように忌み嫌い、そこに戻る場所はもうない。Tonyがかつて一度は「Home」だと思った場所は、もはやこの地上のどこにもない。

どちらも強く、自分の力で生きてきた男たちが、よりかかるのではなくよりそうように、恋以上のものを育てていく。その日々は濃密で、ドラマティックで、時にユーモアに満ちている。
彼らは自分の「Home」を手に入れることができるのか。人にとって「Home」や「Family」というものが何であるのか、それはただ場所や血のつながりのことを言うのか。

ちなみにTonyが加わっている「PBR」はブル・ライド専門のロデオ組織で、PRCA(プロフェッショナル・ロデオ・カウボーイズ協会)におけるブル・ライドの地位の低さに不満を持った選手が設立した協会です。プロとして加わるにはいくつかの条件が必要ですが、賞金が高いことで知られ、アメリカ1のロデオ組織です(対抗組織としてCBRというのもあります)。ロデオ、それも牛を使ったブル・ライドは今アメリカでビッグビジネスになりつつあるようで、その牛の競りもすごく盛り上がるらしい。
前作の「No Going Home」ではTonyはまだPBRに加わってなかったので、その次の年に条件を満たして参加し、ブルライダーとして順調にやってきたようです。

あと、おまけとしてRandyとLesのクリスマスストーリー「Where His Home Lies」がついています。これはひたすらに甘い! 作者のT.Aは男性ですが、スラ読んでると男の人の方がロマンティックな話を書く気がします。

★エロ度高

The One That Got Away
Madeleine Urban and Rhianne Aile
★★ summary:
記者であるDavid Carmichael はある日偏頭痛に苦しみ、転んで肩をひどく痛めてしまう。
彼の親友でありライバル紙で働く記者のTrace Jacksonは一人暮らしのDavidの面倒を見るために彼の家に泊まりこみはじめる。その時は、どちらも何も考えず、それが何よりも自然なことのように思えた。
DavidもTraceも独身で記者という共通点があったが、彼らの間には決定的なちがいがあった。Davidはカミングアウトしたゲイであり、Traceはプレイボーイとして浮名を流すことも多いストレートである。だがそのことが2人の友情に影響したことはなかった。

TraceはDavidの面倒を見、食事を作り、2人は冗談をとばしては笑いあい、映画のDVDを見た。相手の存在が心地よく肌になじむ、そんな日々の中で、Davidはいつのまにかこの「親友」に恋に落ちはじめている自分を発見するが、そこに望みはなかった。Traceはストレートであって、そして何よりDavidの一番の友である。友情を失うより恋を捨てる方がまだましだった。

だがTraceの中にもまた、Davidに対してこれまで感じたことのなかった感情が芽生えはじめていた。それが何であるのか、彼はまだ知らない。だが2人の間でテンションは高まりはじめ、ゲイの男とストレートの男はその境い目で彼らの道を探しはじめる。
果たして友情は友情のまま愛へとかわるのか、それともTraceが感じているのはただの好奇心なのか? 深く踏みこんで友情を傷つけることを恐れながら、彼らは互いへと落ちていく。
.....


ゲイの男とストレートの男、という組み合わせの恋の話です。「男は好きじゃないけどお前は別だ」タイプ。
これはその中でも非常に軽いタッチの話で、「男を好きになるなんて俺はどうかしてる!」的ネガティブな逡巡はあまりありません。TraceはDavidのことを本当に心の底から大切な友人だと思っているし、Davidが自分を同じように大切にしていることも知っている。わりといい年の大人の男たちなんですが、互いに対してもともとちょっと盲目的です。
互いの間にあるものに気付いたTraceは一瞬あわてはするんだけど、どこかで「Davidならまあいいか」的な安心感もある。この場合の「まあいいか」は「恋をしてもいいか」で「カップルになってもいいか」とはちょっと距離があるんですが。
この話のおもしろいところは、「ああ、恋に落ちた」と思ってからのステップの踏み方です。男を「好きだな」と思って、その感情を受け入れても、ストレートであるTraceはその欲望までは簡単に受け入れられない。
え、男にキスする?本気かよ。…まあ何とかなるかも。してみると意外と悪くない感じ。
しかし男のペニスにさわる?ちょっと待て、それはないだろ!絶対ない!
大体、そんな感じで話が進んでいきます。そこのところの、じれったいほどに「少しずつ」な進み方と丁寧な描写がおもしろい。

もともとゲイであるDavid側にはそっちのためらいはないんですが、Traceが足踏みしているのはよくわかる。彼を強いたくはないし、友情にひびを入れたくもない。Traceよりちょっと年上で、とても優しい男です。恋がうまくいかなかった場合はどうにかしてTraceと友人に戻る道も残しておきたい。Traceの嫌がることをするとか弱味につけこむとかは死んでも嫌だ。…でもやっぱり欲しいぞ、と。
そんなふうにちょっとぐるぐるしながら、少しずつTraceの了解を得て、少しずつ互いの肉体的な距離をつめていく。ふれればふれるだけ、ほしくなるのもまた事実。果たしてDavidはTraceを安心させながら「最後」まで導くことができるのか。

洒落た会話とユーモア、それに優しさがちりばめられた、楽しい一冊です。どことなく映画っぽい雰囲気も漂う。
最後まで安心して読める感じで、親友同士のカプとか、おだやかなハッピーエンドが好きな人におすすめ。

★ゲイ/ストレート
★友情からはじまる恋


※2010年1月、15000語書き足した新バージョンがここで発売されました。気になる…

A Fostered Love
Cameron Dane
FosteredLove★★★ summary:
Marisolは多くの子供を引き取り、里親として育て、送り出してきた。Christian Sanchezもまたその1人であり、成人して29歳になった今もMarisolともっとも近い存在だった。彼がMarisolの葬儀やその後の遺言執行を受け持つのは当然のようなものだった。
葬儀の前日、里子の一人だったJonah Robertsが、その姿をMarisolの家の戸口に見せる。
Jonah。Christianは、Marisolのこの家でわずかな時間ともに暮らした少年を、ふたたびこの目で見ることがあるとは思わなかった。
いつでも人と距離をへだて、何かに怒っていたJonahはついに破滅的な犯罪を犯し、警官に引きたてられてこの家を去った。Christianはその時に自分の心のどこかが壊れたような気がしていた。

あれは15年前。Christianは14歳、Jonahは16歳。Jonahは彼の初恋だった。

一方のJonahはChristianのことを一度も忘れたことがなかった。たとえChristianが自分を忘れてくれるよう願っていても。
少年刑務所で車の修理を覚え、今では自分の店を持つようになった彼だが、自分がほかの人間とちがうことを感じていた。彼は誰も愛したことがなかった。誰かと何かを分けあったこともなく、友人と呼べる存在すらいない。事務的なことを除いて、人とどう関ればいいのかわからず、関ることを望んでもいなかった。
だがその深い奥で、Jonahは自分がChristianを求めていることを知っていた。その感情は、Christianを目にした瞬間から無視しようもなく強まり、彼を心底怯えさせる。彼は生きのびるすべも何かに立ち向かう方法も知っていたが、Christianとどう接していいのか、どうすればいいのかはわからなかった。

Marisolの遺言にそって、彼らは協力しながら、家を売るための修理と手入れをはじめる。
再会は果たしてどこへ彼らを導くのか。15年の空白を経て自分たちの間を何がつないでいるのか、まだどちらにもわからなかった。
.....


Cameron Daneの新刊が出ていたので、読んでみました。
相変わらずとても激しく、どこか攻撃的な恋の話です。
里子の「兄弟」同士の恋。彼らはほんの2月ほど同じ部屋を分け合っただけで、その後の15年、1度も顔をあわせていない。それが里親Marisolの死によってふたたび会い、彼女の家の手入れをはじめる。
里親の思い出、Jonahとともにいた記憶のある家を片付けて人に売ることにChristianは痛みを感じており、その痛みゆえに彼は時おりJonahに攻撃的になってしまいますが、もともととても優しい男です。子供の時からどこか純粋で、ひたむきな少年だった彼を、Jonahは忘れたことがなかった。

Jonahは自分が「hell」と呼ぶような場所で子供時代をすごし、人に道具のように使われて捨てられ、ねじまげられた人生を生きてきた。それらへの怒りや傷を内に秘めたまま、だが彼は2度と道をそれずに、自分の人生をきちんと作りあげる。強い意志を持った男ですが、一方で自分が他人を愛せるような人間ではないと思っていて、他人に近づくやりかたもよく知らない。
Cameron Dane特有の「内側に脆いものをかかえこんでもがく、強い男」そのもので、彼が自分自身の魂を剥ぐように、自分の苦しみをChristianに明かしていく姿がひとつの話の核になっています。

そして相変わらずエロはとても激しい。「そこはもうちょっと理性を」とかつっこみたくなる状況もないではないですが、そこを含めて強烈な感情のぶつけあいがこの作家の魅力でもあり、互いのどちらをも呑みこんでいくような激しさの中で、彼らは相手の存在を自分に刻みつけるように確認していく。特にJonahのように心に高い壁を作りあげてしまった男には、その壁をわずかでもゆるめるにはそれだけの強い衝撃が必要なんだろうなあ、と思わせる、時に痛々しい行為でもあります。
Jonahが自分の中にある夢や人への思慕を、体に刺青として刻んでいるのはとても暗示的です。そしてまた、そうして体に刻むことでしか語ることのできない男が、やはり痛々しい。

かつて、15年前、Jonahがただ破滅への暗い道をころげ落ちようとしていた時、その人生を変える決断をさせたのはChristianの存在だった。
15年たって、彼らはふたたび、自分の人生をかけた瞬間と向かいあう。

激しいものが好きな人におすすめ。

★エロ多め(ちょっとダーティな感じ)
★再会

St. Nacho's
Z. A. Maxfield
StNachos★★ summary:
Cooperは故郷から逃げ出してからこの3年、バイクで町から町へと渡り歩きながらほとんど路上で眠るような生活をしていた。時おりレストランの厨房などで働き、バイオリンを引いてチップを稼いだが、少しでも居心地がよくなるとそこからまた逃げ出す。
人と話したり、必要以上に関ったりする気はなかった。いや出来なかった。もはや彼の知る人の「言葉」は音楽だけだったからだ。

St.Nacho'sという海辺の店に転がりこんだ今度も、長く滞在するつもりはなかった。
その店では耳の聞こえないShawnという美しい若者が働いていた。彼にはCooperの音楽は聞こえない。
だがどうやってか、ShawnはCooperの中にある言葉を誰よりもよく理解するようだった。

過去と向き合うことができないまま、セックスだけの関りですべてを終わらせようとするCooperを、Shawnは時に乱暴なほどの情熱で殻から引きずり出す。そして静かな海辺の店で、Cooperは自分の中にある恐れ、罪、いつも背を追ってきた混沌とゆっくりと向き合いはじめるが、過去はやがて現実の形をとって…
.....


「何かから回復する」というのはスラにはよく見られるテーマで、それは肉体的な怪我や病気だったり、精神的なダメージだったりしますが、この話もそのひとつです。
Cooperを追っているのは過去の破滅的な生活と、その時に体にこびりついた泥のような記憶で、それから逃げつづけた彼はただこの先も逃げることだけを考えている。
ジュリアード音楽院でバイオリンを学び、もっとも若い第一バイオリン兼コンサートマスターとして未来を嘱望されていた彼は、アルコールやパーティに溺れ、車の事故をおこして、すべての未来を失っています。友人は彼のせいで刑務所へ行った。親は彼を家から追い出した。
それでも音楽だけは彼の最後の「言葉」として、世界と彼を結びつける。

Shawnは耳が聞こえません。唇を読むことはできるけれども、完全ではない。天使のようにきれいな顔をしている22歳の若者ですが、結構激しい面もあって、6歳上のCooperに対しても何の遠慮もありません。(セックスはTop、かつちょっとdirtyらしい…)
彼に惹かれたCooperは関係を持ってしまうが、それを深めたくはない。Cooperが求めているのはただのセックスであって、人との関りではない。だがShawnはCooperを離そうとしないし、Cooperの内側が痛みと混乱に満ちていることがわかってからも目をそらそうとせず、その視線につられるようにCooperもやっと自分のことを見つめるようになっていく。
その日々と変化がCooperの、淡々とした一人称で語られていきます。

Shawnに音楽が聞こえないことをわかっていて、ある時、Cooperは演奏している間バイオリンにさわらせてやる。振動をShawnが感じられるだろうと思って。
音楽はCooperにとって「最後に残された人としての言葉」で、しかしそれが誰かにつたわることを彼は期待していなかった。ましてやShawnには。だがShawnがどうやってか彼の「言葉」を正しく聞きとったことを感じ、その瞬間、はげしく動揺したCooperは演奏を乱してしまう。
これはとても美しく、痛みに満ちたシーンだと思う。音楽を自分の言葉としながらも、それが人につたわるとそこから逃げ出そうとするCooper。…まあ、もちろんShawnは彼が逃げることをゆるさないわけですが。

全体に筆致は淡々としています。痛々しくはありますが、必要以上にドラマティックに盛り上げる感じはない。文学的と言ってもいいような雰囲気もあるような。
会話文が少なく、Cooperの一人称も長いセンテンスが多い上に全体の話も長いので、多少長文読むのに慣れた人向けかと。(あとメール文などがぽつぽつ文中に入ってるので、斜体を反映しないStanzaで読むにも慣れがいる)
「うちは全部18禁だから」と言いきるLooseIDから出ているものにしては、びっくりするほどエロ描写少なめだ。
特にエロ以外の部分重視の人、繊細な話が好きな人におすすめ。

★バイオリニスト/耳の聞こえない恋人
★トラウマ・恐怖症

★Three-Star rating system★


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・2017年
・7月 ヘルハイ3巻
・夏 雑誌短編
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・12月 アドリアンXmas
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*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
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・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
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*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
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