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The Dark Horse
Josh Lanyon
The Dark Horse★★★ summary:
ハリウッドの俳優Sean Fairchildは1年にもわたってストーキング行為を受けていたが、ストーカーPaul Hammondは車の事故で死んだ。少なくともそれが、護衛を担当していた刑事Daniel MoranがSeanに繰り返し信じさせようとしていることだった。
Danと一緒に暮らすようになり、Seanは危機は去ったという恋人の言葉を信じようとするが、またもや彼にポストカードが届きはじめる。Hammondが彼に送ってきたものとそっくりなカード。「miss me?」「soon…」見なれた独特の文字と短いメッセージ。

Hammondは死んだ、とDanは言いつづけ、Seanはそれを信じられなくなっていく。
Hammondが死んだのなら、何故警察は彼の死体を見つけることができないのか? 彼が死んだのなら、誰が一体ポストカードを送ってきているのか?
そしてある日、SeanはついにHammondを見た──少なくとも見たつもりだった。だがそれはSeanの恐怖がつくりあげた幻影なのか? 
Danは彼を守ろうとしている。だが誰から? Hammondからか、それとも少しずつ正常な認識を失っていくSean自身から…?

不安、不信。さまざまな感情が彼とDanの間を蝕んでいく。彼はDanに依存しすぎているのだろうか。友人が言うように、Danに操られはじめているのだろうか。
.....



「Adrien Englishシリーズ」のJosh Lanyonのクライムサスペンス。

Seanはかつて、ゲイである自分とそれに失望する家族や周囲との軋轢にたえかね、自分自身を責めた結果、自殺をこころみたことがあり、そのため自分の心の安定に対して不安をもっている。
そしてその不安を誰かに見せること、見すかされることを恐れています。自分自身の欠陥を人に見せること、人の判断に自分をゆだねることを恐れ、恋人のDanが自分を守ろうとすることに対してもほっとすると同時に、怒りを感じる。自分のテリトリーを侵害されているような怒り、それを許す自分への怒り。
Danの態度に対して不信をもちながら、まず彼は「自分自身が信頼にあたいするのかどうか」をつねに問いつづけなければならない。それは痛みに満ちた問いであり、その不確かな世界でSeanの気持ちは揺らぎ、彼はDanを、自分を恐れるようになる。

なんたって一人前の男ですから、男にたよりきったり守られたりすることに対して当然の反発があるわけで、Lanyonはそういう男の葛藤を書くのがとってもうまいです。どんなに繊細でも基本的に男らしい。
Seanの葛藤を見ているDanの方はちょっと苛々してて、「たよってくれよ!」って思ってるのも何となくつたわってくるんですが(あくまで彼はSeanの意志を尊重しようとしますが)、他人と距離をおくことに慣れているSeanには、Danと近づきすぎていること自体が落ちつかない。近づきすぎていると思う、でもそばにいるのは心地よい、そのへんのぐらぐらしている感じがなかなかに可愛い。
口論や怒りの発露。そういうものの中で、それでもSeanはDanと確実なものを築きあげようともがく。しかしそのやりかたがわからない、みたいなもどかしさがあります。

それでもやがて、彼は自分の本当の望みに気付く。その時にはもう遅すぎたかもしれないけれど。
心情が丁寧に書かれていて、Seanに共感したり苛々したりしつつ、惹きこまれて一気に読んでしまった。Lanyonはやっぱりいいなあ。そしてこの人の書く警官はどうしていつも、こうも格好いいのだ…!

中編なので、わりとさらっと読めるかと。でも読みごたえはあります。「包容攻め×繊細な受け」好きには特におすすめ。

★クライムサスペンス
★トラウマ持ち

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Under My Skin
M. L. Rhodes
★★ summary:
Sebastian Kellerは「The smart guy」という、自分に貼られるレッテルが嫌いだった。だが人はいつでも彼をそういうふうに見る。
幾度かの手ひどい破局のあと、他人と関係を持つことに自信を失った彼は自分の経営する旅行ガイド書店でそれなりに幸福にやっていた。
ある日、隣のテナントにタトゥの店が入るまでは。

彼らが大ボリュームでかける音楽、彼らへの客で商店街の駐車場が占拠されてしまう状態、それがSebastianを苛立たせる。かつて彼を甘い言葉でだまし、すべてを彼から絞りとって消えた以前のボーイフレンドはタトゥを入れ、大型バイクに乗っていた。二度とそういうタイプの人間とはかかわるまいとしていたのに、隣にそういう「信用ならない」連中が出入りしていることが彼の怒りをかきたてる。

何よりも嫌なのは、「Rad Tattoos」というその店のオーナー、Dylan Radamacherを見るたびに自分自身の心が乱れることだった。自分がまだ凝りていないということにSebastianは心底うんざりし、距離をおこうとするが、DylanはDylanでSebastianとどうにかして和解したいと思っていた。
.....


短編~中編くらいの長さですが、おもしろかったです。
「過去に傷ついている男、その心をひらこうとする男」というテンプレですが、やっぱり普遍的なドラマだからテンプレになるわけで。そのへんの葛藤、自分自身への苛立ちや過去を振り払おうとしながら振り払えず、傷ついているがゆえの怒りを他人に向けて相手を傷つける──そんな入り組んだ気持ちがドラマティックに凝縮されている。

Sebastianは、「他人が自分に貼るレッテル」は嫌っているのに、自分自身がDylanにレッテルを貼りつけていることには気づいていない。過去ばかりをのぞきこんで、どうしても一歩を踏み出すことができない。
Dylanを過去の恋人とまとめて「こういう"タイプ"には二度と近づかない」と切って捨てようとするSebastian、「チャンスをくれ」というDylan。だが、あらゆる不幸や破綻が訪れるのをひたすら待って、すべての物事に悪い面を見ようとするSebastian。
ほんの一瞬のささいなことから、感情は修復できないほどにもつれる。

続編の「Under My Skin II」も出ていまして、最初は似たような感情の交錯のくりかえしの「後日談」風味かと思ったんですが、こっちも予想外の事件がおこっておもしろかったです。
相手を気づかって押すまいとする男、その曖昧な態度から悪いサインばかりを拾いあげてしまう男。過去はのりこえたようでいて、何もおわっていない。過去を手ばなしていないのは自分自身でもある。
感情的な悪循環の物語ではありますが、短編だからこそ読む方も繰り返される悪循環に食傷せず、一気に楽しめるタイプの話だと思います。
IIの中で、電話で「一緒に朝日を見ようか」と言うシーンは、とてもロマンティックで綺麗だった。

まあ短編でも2つ買うと7ドルこしちゃうんですけどね。それでもおすすめ。

★短編

Stealing West
Jamie Craig
SteelingWest★ summary:
Leon Stroudは強盗、そして身におぼえのない殺人で賞金首となって逃亡生活を送っていた。彼はこれまで人に向けて銃を撃ったことはなかったが、賞金稼ぎたちが彼の言い訳を聞くわけもない。
彼の犯罪のパートナーであり、性的なパートナーでもあったKennethは、馬車を襲った時に出会った子持ちの女性と恋に落ち、2人の男と情婦、その子供の4人はカリフォルニアへと逃げるために列車に乗る。

その列車の中で、Leonは賞金稼ぎのThomas Gradyと顔をあわせる。ThomasにKennethを追わせるわけにはいかない──Kennethは彼の大事な友であり、そして今や女と恋に落ちて家庭を持とうとしている。
Leonはやむなく、シエラネバダ山脈の上で列車を降り、Thomasに自分を追わせることにした。友から賞金稼ぎを引き離すために。
.....


Stealing Northe の続編、ということですが、そっちはとばしてこっちを読んでみました。(Stealing Northeは相棒のKennethが恋人と出会い、恋に落ちる話。M/M/F)
ありていに言って表紙買いだったのですが、Leonが意外に子供っぽくてかわいかったです。
相棒のKennethの幸せのために1人で危険に身をさらし、意固地になって足の痛みや疲労をこらえ、Thomasにとらえられてからも憎まれ口を叩きつづける。彼らの間にはりつめる緊張感は時に性的な高揚となって、2人のどちらをもとらえる。
賞金稼ぎとしてLeonをとらえているThomasには様々な意味でアドバンテージがあるわけですが、その力、その支配そのものがLeonを魅了する。
BDSMカテゴリですが、それほど強いプレイはないです。最後のシーンだけちょっとありますが、全体には普通の縛りというか。

さらっと読んで楽しむタイプの話。
西部劇の雰囲気、お尋ね者、賞金稼ぎ、などの言葉に反応してしまう人におすすめ。
賞金稼ぎは萌える!

ちなみに書店のページで「Saddle Up」という同テーマ(カウボーイ)の5冊セットも売っていますが、これは…あんまりおすすめしないです。Spirit Sanctuary はちょっとおもしろかったかな。

★賞金首/賞金稼ぎ
★ウェスタン

Allergies
T. A. Chase
Allergies★★★ summary:
デザイナーのRaymond Marvelsは、仕事場にあるパソコンの不調のため、会社にエンジニアを派遣してもらう。
部屋に入ってきたエンジニアは見たこともないほどゴージャスな男で、彼らの関係はあっというまに深まるが、どういうわけか、RayはそのLou Canisがそばに来るたびに強いアレルギー反応を示すのだった。とは言え、それは彼らの関係を妨げはしなかった。

Louは、新しい職場で出会ったRayに夢中だった。このシャイで奥手なデザイナーはこれまでの彼の「タイプ」ではなかったが、Louは、行きずりや短い情事では終わらないものが2人の間にあることを感じていた。
たとえRayが、彼が半径3メートル以内に近づくたびにくしゃみを連発しようとも、この新しい恋人を離す気はない。
だが、Louにはひとつ、出会ったばかりの恋人に言えない大きな秘密があった。そしてその秘密が、Rayのアレルギーの原因なのではないかと、Louは疑っていた。
Louの家族に会ったRayは兄弟にアレルギー反応を示し、Louは確信する。恋人のアレルギーは──Louに対するものが一番ひどいとしても──Lou個人ではなく、彼らの一族に対するものなのだ。
Louの一家は、人狼の一族であった。

LouはどうやってRayに自分の秘密を言うべきかわからない。かつて人間の恋人に正体をあかして殺されそうになった姉は「本当に好きなら、まだ黙っていた方がいい」とアドバイスするし、兄は「関係が深くなればなるだけ傷も深くなる。もし駄目になっても立ち直れるよう早いうちに告白してしまった方がいい」と言う。
Rayは人間としてのLouを好きになってくれた。だが、狼としてのLouは?

いつかは言わなければならない。だが、いつ?

その一方で、見知らぬ人狼がLouの一家のテリトリー内へ断りなく入って…
.....



人狼の恋人にアレルギーになってしまった、という、全体に幸せな話。
スラには人狼ものはかなり多いですが、ここの一族は大変「狼」っぽいのがいいです。Louには8人の兄弟がいて、末っ子の彼以外は全員双子です。姉の生んだ子供すら双子。
彼らは仲がよく、荒々しく、陽気で、つねに「群れ」の中での序列を競っている。一瞬で結束し、外から見ると驚くほど喧嘩し、そして全員、「犬」に関するジョークに目がない。
Rayに対してもLouの中の狼は独占欲を見せ、命令し、支配したがる。Rayはそれを受け入れるけれども、決して弱々しく言いなりになるタイプの恋人でもない。

Rayはシャイですが、地に足がついていて、おだやかでユーモアにあふれた男です。T.A.の受けはいつもそういうところが可愛いと思う。
ちょっとあたふたしたり、及び腰だったりするんだけども、一度恋に落ちてしまえば、その中でとても幸せそうにのびのびしているのが愛らしい。
Louの秘密、Rayのアレルギー、となかなかに前途多難な恋人たちですが、それを感じさせない幸せっぷりです。

この話はT.A.が彼のブログで更新していたもので、ちょっとだけ加筆や修正があるけれども、基本的には同じものです。ブログでは毎週火・水曜日に(通常は)話の更新がされているので、興味がある人はどうぞ。今は西部劇風の連載をしています。

「Allergies」は人狼の話ですが、この後にブログでこれとつながる吸血鬼の話を書いていまして、そのうちまとめられて出版される予定になっています。それぞれ完結した別々の話だけれども、あわせて読むとまた楽しい。
誰かが「人外」を狩りはじめている。それは誰か? 人狼と吸血鬼、そしてその他の一族も、力をあわせ、新たな敵に対して戦わなければならない。その先に何があるのか、というのも楽しみなところ。

ラブラブなのが好きな人には絶対おすすめ。
あと大家族の感じが好きな人、双子萌えでもいける。

★人外(人狼)
★甘エロ

Death Or Life
T.A. Chase
Death or Life★★ summary:
Noah Wiltsonは、静かに暮らすこと以外は何も望んでいなかった。だが大統領選挙に立候補する父のため、「理想の家族」を見せるためのキャンペーンにつきあわざるを得ない。
父親にそれ以上の興味や関心を持たれていないことを、Noahは知っていた。息子がゲイであることが明るみに出れば、自分の選挙に大きくかかわる。父が気にしているのはそれだけだ。
Noahは普段は父親や家族と距離をあけ、必要とされればキャンペーンにつきあい、父の邪魔にならないようにしてきた。

だからある夜部屋に戻ると、殺し屋が待ち受けていたこと、そしてその殺し屋から雇い主が父親であることを聞き、Noahは心の底から驚愕した。

殺し屋は、これが最後の仕事になることを知っていた。Noahの存在を誰かが邪魔にしているように、自分の存在も誰かの邪魔になっている。消される前に消えるしかない。
Noahを殺すか、生かすか。その選択は彼の手の中にある。もしもうこの仕事を続けないのなら、Noahを殺すことに何の意味があるだろう?

自分の身を父親から守るための書類を持って、Noahは母方の祖父の元へ身を寄せる。事情を呑みこんだ祖父はNoahのために護衛チームを雇った。
セキュリティのリーダーにはCain Packertがついた。かつて政府のために働いた経歴を持つというこの男にNoahは強く惹かれるが、同時に、Cainの中に、暗闇で出会ったあの殺し屋に似たものを感じていた。
.....



父親に殺されかかった青年と、殺し屋と、護衛の話。
誰と誰がカプなのかはとりあえず内緒。ていうか、途中までまさか三角関係??とびっくりしたのですが(T.A.らしくないので)、そんなこともなく、甘々カップルでした。やっぱりね。

そして内緒にするとあまり書けることがない…
相変わらずカプ的には幸せですが、今回は殺し屋やその出生の秘密などが絡んでいて、どことなくあやうい緊張感が常に張りつめています。
そしてまた、Noahの父親はまだNoahのことをあきらめていない。Noahの危険はまだ去っていない。

Noahはただの研究員であって、生死のやりとりや殺し屋の存在は彼の理解を越えている。突然の事態に翻弄されながらも、彼は彼らしくまっすぐに物事に対処しようとしています。
おだやかでありながら、芯が強いあたりは、いかにもT.Aのキャラらしい。恋人に秘密があることを感じとりながらも、それをこえた信頼を寄せる様子がなかなか愛らしいです。

殺し屋の独特な性格づけが、物語に陰影を与えています。どこか人生に無関心で、人を殺すことを何とも思っていないが、決して残酷な男ではない。現実的で、シニカルで、感情を抑えた男。
彼がNoahを助けたのは決して感傷からではない。だがそのことは、Noahだけでなく彼自身の人生を決定的に変えることにもなる。

あらすじの割にそれほど暗かったり、悲壮だったりということはなく、読みやすい作品だと思います。長さとしても一気に読めるし、わりと万人向けというか、サスペンス+甘々カプが好きな人ならさらにおすすめ。
作中に出てきたもう一組のカプ(Lordと口のきけない青年Mars)の物語がすごく気になります。T.Aによると彼らの話もそのうち書くそうなので、そっちも楽しみ!

★殺し屋

Str8te Boys
Evangeline Anderson
Str8te Boys★★ summary:
Maverick HolmsとDuke Warrenは同じ大学のサッカーチームに所属し、4年の間ルームメイトであった。
Dukeは陽気で、不屈で、時に騒々しいほどのところがあったが、Mavはこの友人を心の底から大事にしていた。

大学生活、そしてDukeとのルームシェアが終わろうとしている時、2人で払っている家賃の半分をDukeが使いこんでしまう。
金に困った2人に、ゲイの友人が「Str8te Boys」というサイトを紹介してくれた。それは男同士の写真をのせているゲイ向けのサイトだが、タイトル通り「ストレートの」男をテーマにしたもので、あまり「ゲイっぽい」ものではない。ちょっと雰囲気のある写真を取るだけだ。
そのモデルをして、金の穴埋めをしないかと言うのだ。

Mavは少し迷ったが、それほど抵抗があるわけではなかった。MavもDukeもゲイではない──だがたまに2人は、「gay chicken」というチャレンジをして遊んだ。ふれたり、極端に近づいたりして、先に引いた方が負けというものだ。
2人のふざけあいは、時にかなりきわどいところまでいった。どちらも負けまいとして、そのチャレンジはどんどんエスカレートし、キスをしないという暗黙のルールさえもいつのまにかなし崩しになっていた。

それでも、彼らはどちらもゲイではない。
少なくともそれがMavの信じていることだった。そして彼は、Dukeとともに写真のモデルになることを承諾するのだが…
.....



卒業を目の前にした、大学生のルームメイト2人の話。
「Str8te Boys」てのは「Straight Boys」の意味で、ストレートっぽい男たちの、きわどい雰囲気の写真をのせているサイトです。2人はここでモデルをして稼ごうとする。

2人はとても仲がよくて、でもMavはそれをすべて友情だと思っている。
話はMav視点から語られるのですが、彼の視線を通してすら、「お前は鈍いよ」と言いたくなる鈍さというか、かたくなさです。「gay chicken」ゲームでキスをしても問題ない、何故ならそれはゲームで、相手はDukeだから。別に何もおかしなことはないな。Mavの頭の中ではそんな感じで物事が回っています。
気付け。せめて、キスの先にいってしまった時に気付け! ゲームを自分から仕掛けるようになった段階で、気付けよ! 
と、そのへんを楽しむ話でしょう。

陽気な雰囲気があって、全体に何か「大学生っぽさ」というか、荒削りな情熱で進んでいく感じがおもしろいです。話全体のノリがよくて読みやすい。
「gay chicken」とかも実際にあったらどうよ、という遊び方なんだけど、大学生だと思うと悪ノリはありだと思う。青春ぽいというか。
それでまた、気持ちの裏にあるものが段々わかってくるにつれ、Dukeの視点から物事を考え直すとすごく楽しいです。あー、ここで耐えてるな、とか。ここは地獄だなとか。

本当にノーマルだと思っていた、とか、自分との葛藤とか、同級生からの疑いや反射的な否定など、大体一揃い分のドラマが入って楽しく読める一本です。長さもそんなにないし。
友情発展ものが好きな人、言いたくて言えない感じが好きな人におすすめ。

★ルームメイト
★チャレンジゲーム

Nowhere Diner: Finding Love
T. A. Chase
Finding Love★★★ summary:
Timothy Gapinは傷心のうちに、故郷のミネソタを去る。
残ることはできなかった。彼はゲイであることを隠している恋人のために、ずっと自分たちの関係を秘密にしてきた。誰にも言わず、誰にも見られないように。それは仕方がない。そのことには耐えられた。
だが恋人は父親に言われるまま、女性と結婚した。しかも結婚してからもTimとの関係を続けたいと言う。
Tim自身も、また相手の女性も、そんな扱いを受けるいわれはない。嘘に塗り固められた人生に入りこんでしまう前に、Timはそこを去るしかなかった。

バスに乗って故郷を去った時、どこへ行くというあてはなかった。ただ遠くへ、遠くへ。
4日間バスで移動を続け、深夜のテキサスの食堂で、Timは食堂の若者が癇癪をおこして辞めるところに行き合う。成行からその青年のかわりに食堂で働きはじめた時、Timは何かを期待していたわけではなかった。
ただ通りすぎていく途中でたまたま足をとめた、それだけの、何でもない場所だった。

だが食堂と仲間は彼の存在を受け入れ、Timは思いもかけずに自分の居場所を得る。
そしてトラック運転手Bernie Capleyとの出会いは、Timに探すつもりのなかったものをもたらした。彼はBarnieと恋に落ちたのだ。
しかしミネソタに置いてきた筈の過去は、そのまま彼を放っておいてはくれなかった…
.....



「Nowhere Diner」の「Nowhere」というのは、どこにもないような不思議な場所、というようなことだと思います。

この食堂が実際になかなか不思議というか、ありそうでなさそうな不思議感が漂う場所で、小さい町の小さな食堂らしくゴシップもとびかい、人のことに口もはさむのですが、その一方でちゃんと相手の尊厳を大事にする。ゲイだからと言ってTimを特別視したりはしない。
海軍のコックあがりの主人、レズビアンであることから家を叩き出されたウェイトレス、戦争のトラウマから酒に溺れているコック。決して人生は薔薇色ではないけれども、彼らはその食堂で小さな世界の調和を作っています。

Timは22歳で、人生の経験も乏しく、過去の恋の記憶を引きずってもいる。
思いもかけずにBernieとつきあうようになってからも、どうもその記憶が彼を揺さぶります。あの不誠実な恋人以外、Timは恋人を持ったことがない。「電話するよ」と言われて「わかった」と返事をしても、電話がくるわけないと決めこんでしまうところがある。相手を信じるとか信じないということではなく、Timはそんなふうにちゃんと約束を守ってもらったり、恋人から大事にされたことがない。
そのことにひとつずつ気付き、Timは自分がどれほど不健全な恋をしていたのかに気付いていく。

コックのChadとTimとの淡い友情もいい味を出しています。
傷ついている相手を、Timは無理に殻から引きずり出そうとはしない。自分が傷を得た経験から、彼はただChadに居場所を提供して、Chadのブライドを尊重する。そのことはきっとChadにはとても大きなことだったのだと思う。
Chadの物語はこの中では語られませんが、「Nowhere Diner」シリーズとしていずれ書かれるのではないかなーと。というか、作者のTAのことだから、故郷にいるあのろくでなしな元恋人もいつか救済してあげそうな気がします。まあ救済される前にいっぺんどん底に落ちることまちがいなしだが。ほんとにあの男、最低だー!あの最低っぷりは結構すごい。
でも彼の中にも痛みや苦しみはある。それはよくつたわってきます。

人生の現実が色々とふりかかってくる中で、その痛みと、おだやかな食堂の空気とが調和した、独特の雰囲気の話です。
つらいことはたくさんあるんだけど、明日はいいことがおこるかもしれない。そんな静かな希望が全体を通して感じられるのは、Timのおだやかな人となりが語り口から感じられるからでしょう。BernieがTimの中に何を見て恋に落ちたのか、何故Timを助けたいと思ったのか、Bernie自身も語らないんだけど、読む方にはつたわってくる。派手ではないけれども、とても魅力的でやわらかな青年です。

どこにもない、どこかにあるかもしれない場所。
そんな食堂を舞台にした、ほろ苦さもある大人のおとぎ話。気持ちの中に静かに入ってくる話です。おすすめ作。
包容攻め好きとか、攻めに大事にされる受けが好きな人には、特に!おすすめ。

★過去の傷
★居場所探し

★Three-Star rating system★


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*他訳者さん*
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・マイ・ディア・マスター

 
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