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Knowing Caleb
Cameron Dane
Knowing Caleb★★★ summary:
Hawkins兄弟は本当は兄弟ではない。彼らはそれぞれ悪魔の種族の出であり、今は一族から離れ、アメリカで牧場を経営しながら新たな人生を送る仲間であった。
そのうちの2人が恋人と出会い、それぞれ苦難を経て人間になった今、Caleb Hawkinsだけが残されていた。

だがCalebは、自分が決して兄たちのような真実の恋を見つけることはないだろうと、わかっていた。
彼の過去を誰も知らない。彼が背負わなければならない罪を、兄たちですら知らない。悪魔だとばれるよりも、その罪が暴かれることの方がCalebにとっては恐ろしかった。

Jake Chaseは6年前に最愛の妻を失ってから、生きる希望を取り戻せずにいた。
Calebは悲嘆に暮れているJakeを見つけ、牧場に雇い入れる。
特に何も問題はないはずだった。

だが2人は互いに強く惹きつけられるのを感じ、2人ともに愕然とする。
どちらもゲイではない。
それなのに、どちらも相手を無視できず、拒否できない。感じたことのない飢えや欲望に流されるように相手に手をのばしながら、どちらも、もがくようにそこから逃れようとしていた。

果たしてストレートの2人の男は、それぞれの過去を乗り越えて2人をつなぐものを直視できるのだろうか。そしてCalebは、自分の罪をJakeに見せることができるのだろうか。
.....



Hawkins Ranchシリーズ。最後に残った3人目の兄弟の話なので、もしかしたらシリーズ最終巻かもしれません。
これまであまり正体というか、本当の性格がよく見えていなかったCalebの話です。

Calebは陽気で、女好きで、これまでのシリーズでも実にいい男です。「Falling」でCainが人間になれる方法やその他あやしげな魔法を探し出してきたのも彼だし、「ReneCade」でRenの理解ある雇い主として気を配っていたのも彼。
でもその中で、Caleb自身がどういう人なのか、いまいち見えてきていないのも確かです。どこかつかみどころがない。

それが何故なのか、彼は本当は外に見せかけているほど「この世に悩みなき」明るい人ではないのだということが、この話の中でかかれています。

そして、いまだ妻の喪失から立ち直れないJake。彼の痛みも深く、その悲嘆は読んでいるこちらが息苦しいほどです。
それぞれ、強い輪郭を持つ男2人にフォーカスが強く当てられた話で、彼らをつなぐ性的な欲望も含め、強烈な話運びになっています。
やっぱとにかく激しいぞ、Cameron Dane。この人はこの牧場シリーズが一番強烈な気がする。
その中でも、「男と男」という感じでがんがんぶつかりあい、傷つけあったりしていくのがこの話。とにかくまっすぐぶつかりあい、はらわたを引きずり出すように互いの内側をのぞきこむ。
何と言うか、本当に力技な話だと思う。うっかり引いたりしないで一気に盛り上がって読んでいきましょう。いやもうほんと激しくて、Calebが本当は悪魔なんだ!ということなんか、ささいな問題な気がするくらいです。

話としては、彼らの関わりの他、Calebが何度も狙われる謎の狙撃事件などが起きたりして、そちらもなかなか相手の正体が見えずにおもしろいです。
そんでやっぱり、兄弟の絆がいいですね。色々なものをくぐり抜けてきた彼らが幸せに暮らしている様子を見ると、ほのぼのします。この話の中での数少ない息抜きポイント。

もう、台風かなんかの夜に読んだ方がいいんじゃないだろうかというくらい、激しくドラマティックな話。
激しいもの好き、ストレート同士がもがく話が好き、あとは苦しんでるキャラに萌えるんだよねという人におすすめ。

★ストレート×ストレート
★悪魔

A Red-Tainted Silence
Carolyn Gray
A Red-Tainted Silence★★★ summary:
Brandon AshwoodはNicholas Kilmainに出会った瞬間のことを忘れられなかった。
青い瞳、黒髪、舞台の上で他を圧するたたずまい、そしてその歌声──
Nicholasと一緒なら、夢見た音楽を作れる。どこまでもいける。そう思った17の時。

だが、彼らにはその時予想もしなかった困難な道が待っていた。
出会い、再会、恋、そして失望と、やっとつかんだ成功。
その裏でBrandonはNicolasを守るためなら何でもした。彼から離れることすら。

10年以上に及ぶ彼の苦しみは、Nicholasの誘拐と拷問という無残な形ではね返る。それでもついにNicholasを取り戻したBrandonは、これですべてが終わったと思っていた。
Nicholasを傷つけ、周囲の人間を傷つけつづけた日々は終わるだろうと。もう一度、彼らはやり直せる。

しかしそれはまだ、すべてのはじまりにすぎなかった。
.....



31歳のBrandonが病院でNicholasの看病をしながら、17の時にNicholasをはじめて見た時の回想をするシーンからはじまります。
彼は、自分がくぐりぬけてきたもの、何故愛していながらNicholasを傷つけたのか語るために、回想録をパソコンで書き始めるのです。

現在と回想の過去が折り重なる形で進むので、最初は「過去のもつれをといて、めでたしめでたし」という話かと思いましたが、もっとずっと複雑でした。Brandonの中には彼自身も押し殺している(と言っても時おりそれが表層に出ているような描写もあるのですが)暗い記憶があって、それは彼を離さず、さりとて彼自身が語る回想の中にもなく、その空白がぽっかりと物語の中に口を開けている。
やがてNicholasも気付く。Brandonがその闇に呑み込まれそうなこと、それに自分で気付いていないことにも。
Brandonが誘拐されたNicholasを救い出したように、今度はNicholasがその闇を探して、Brandonをそこから救い出さなければならない。でもNicholasにはBrandonを苦しめている物が何なのか、そもそも何を探せばいいのかがわからない。

いくつもの現実が折り重なった構成がなかなか見事で、読んでいて驚きました。
最初は彼らの置かれた状況が全然見えてこないのですが、Brandonのつづる過去と同時に、彼らのいる現在が見えてくる。
同時に、10年以上に渡ってBrandonを苦しめつづけていた悪意が、ふたたび彼に襲いかかります。誰がその牙の持ち主なのかわからないまま、2人はもがき、現在の苦しみに過去の苦しみが折り重なるようにつづられていく。
しかしその「過去」もあくまでBrandonによって語られる過去で、そこにちょっとしたトリックというか錯誤があります。あれはうまい。

BrandonもNicholasも繊細な青年で、夢を追いかけながら互いを見つけ、スターダムにまで駆け上がった。
物静かでシャイなBrandonに対してNicholasは活力にあふれ、人々の称賛や注目を必要とする、根っからのスター気質。わがままなところもありますが、飴を欲しがる子供のような純粋さは彼の魅力でもある。
2人は強く惹かれあっているけれども、Brandonは段々とNicholasの影にひきこもるようになり、Nicholasはそれに気付かない。2人の距離は離れていきます。
そんな過去が、Brandonの回想録には痛々しく記されている。その様子が読む側に少しずつ見えてくるもどかしさは、登場人物のもどかしさとシンクロしているようで、ここにも叙述のうまさが光ります。

たまにNicholasには腹が立つけれども、でもいい子なんだよなー。Brandonを自己否定や自己嫌悪から引きずり出せるのは彼の愛の力だけ!というのはよくわかる。あそこはほんとに2人でひとつだ。
2人ともかなりささいなことに悩んだり、怒ったりして、しばしば足元をあやまる。自分の視点にとらわれて、どれほど間違っていてもそこから抜け出せなくなったりする。
そんな愚かさとか、悪循環の怖さなんかもあったりして、とても「人間らしい」2人の様子がくっきりと描き出されている話です。

いくつか設定に甘いところもなくはないし、私の好みとしてはちょっとキャラ泣きすぎ!と思ったりもしましたが、そんな細部はさしおいて、骨太なテーマに貫かれた非常にいい作品だと思います。久々に横っ面を張られたような気分。
21万語とかなり長いですが、最後まで緊張感が持続していて、その分の読みごたえはあります。(一般に長編=Novelで4万語から5万語以上)

心理が繊細に描かれた話が好きな人に特におすすめ。苦しんだり蹂躙される主人公に萌える、という人にもおいしい一冊だったり。
それにしてもいいタイトルだ。

★トラウマ
★自己犠牲

Zero at the Bone
Jane Seville
Zero at the Bone★★★ summary:
外科医のJack Franciscoは、病院の地下駐車場で女性が殺される現場を目撃してしまう。

裁判の証人として保護された彼を、「D」という名の殺し屋が殺しに来た。
しかし彼はJackを殺さなかった。

そもそもDは、この依頼を受けたくなどなかった。だが誰かが彼の正体をつかみ、依頼を受けるよう脅迫してきたのだ。
Dはたしかに殺し屋だ。だが、彼は彼なりの線を自分の中で引いていた。殺すのは、殺されるべき理由がある相手だけ。そしてJackに理由はない。彼はただタイミングが悪い時にそこに居合わせただけだ。
彼にはJackは殺せない。
だがもしDがここで逃げても、誰かがこの不運な外科医を殺しに来るだろう。誰かがJackを殺そうと決心していて、彼に安全な場所はないのだ。

Dはやむなく、Jackとともに、彼を守りながら逃亡をはじめる。
感情を深く埋めた殺し屋と、外科医。
彼らは生きのびられるだろうか。そして2人の間に何かの感情が生まれたとして、そこに未来はあるのだろうか?

しかも、狙われているのはJackだけでない。Dを執拗に狙い、苦しめようとするのは誰なのだろう。
.....



去年話題になった本らしいです。なかなかよく書けていて、骨太な話です。
Dは孤独で、すべての過去と自分の中の人間らしい部分を葬った殺し屋。彼には殺しをはじめた理由があるのですが、それも含め、感情を遠いところに沈めてしまっている。自分がもう、人間だという気すらしない。

Jackと思わぬ形で逃亡生活を始めてから、それが少しずつ変わっていく。
Jackはなかなかおもしろい男です。人並みに怖がったり、混乱したりするけれども、好奇心が強くて、癇癪をおこすとなかなかすごい。非日常のストレスが彼に無茶をさせている面もあるのですが、彼はほとんど義務感のようにDの中にあるものを見いだそうとする。
それは一種、医者としての本能なのかもしれません。傷を見ると放ってはおけない、みたいな。
誠実にしつこい。

Dの中で絡まって固着したものは、そう簡単にほぐせるものではない。そしてまた、彼の人生は人の命を奪ってきた道でもある。
Jackは彼と対立し、自分の価値観を揺さぶられて混乱し、時おりDのために心底悲しむ。いい人です。そしてそんなJackに、Dは惹かれていく。
2人はもう後戻りできませんが、先に何があるのかもわからない。

逃亡生活の中での緊張や対立、感情の揺れが強く描き出されています。
Dを助ける謎の存在「X」とか、裏の話も面白い。
個人的にはDがもうちょっとニヒルなままでもいいかなーと思いますが、Jackに転んでからのDの、世界の中でJackだけが安全な場所であるかのような切迫した情熱も読みごたえがあります。何だか色々自分が剥き出しになっちゃって、どうしようもなくなってる感じが切ない。

JackはDの過去をそのまま許すことはできないし、Dは自分がJackにふさわしい男だとは思えない。
彼らは色々な痛みをのりこえて、自分たちでどこか妥協点を探し出さなければならない。そういう、もがく様子にリアリティがある。

結構Dのしゃべり方が崩れているので、会話文を読み慣れた人向けかも。D視点になると地の文も同じように崩れるし。

“Usedta do, ya mean.”


とか(Used to do, you mean.)。全体がこんな感じ。
この言葉づかいの差というのは、JackとDがまるで違う世界の人間であるということを強調しているのだと思う。あくまで正しい文法でしゃべるJackをDがからかうシーンもある。

「殺し屋とターゲット」とか聞くだけで萌える人、正反対の世界のカプ、骨太な話が好きな人におすすめ。長いし密度が濃いのでたっぷり楽しめます。エロも多し。
作者のサイトでは後日談の短編が出ています。色々と困難を乗り越えつつがんばっていて、そのうち続編とか出るかもしれないなーと思ったり。

★殺し屋
★証人保護プログラム

Arsenic and Rio
D. J. Manly
Arsenic and Rio★★★ summary:
Marshallは、世界の何も信じていない少年であった。
薬物中毒の男のために路上で体を売って金を稼いでいた彼は、グループホームに保護されたが、誰にも心を開こうとしなかった。

Halは、手に取るようにMarshallのことが読めた。愛を信じていないと言いながら、愛に飢えた少年。
少年の心の隙間に入りこみ、その絶望と自己嫌悪を巧みに操って、HalはMarshallを金を稼ぐ道具として使いはじめる。体を売り、その後に相手の男を脅迫するのだ。
Marshallは時に激しい嫌悪感に襲われたが、Halから離れることはできなかった。

Halだけが、Marshallの友達だった。
たとえHalがMarshallを殴ろうとも、それはMarshallのためなのだ。
Halのほかに誰がMarshallのことを心にかけ、誰がMarshallのことを大切にしてくれるだろう。

コーヒー農園のオーナーAngelo Farelliに出会った時、Marshallの世界は大きく揺らぎはじめる。
Angeloは親切で、Marshallの過去の多くを知っても彼を蔑んだりはしなかった。Angeloといると、Marshallは安らぎを感じられた。

だが、MarshallはそのAngeloを騙し、彼の農園を手に入れなければならないのだ。そして、Marshallが計画からそれぬよう、Halが近くからじっと見張っていた。
.....



不幸な少年の物語。
世界を信じていない、愛を信じていないと言いながら、Marshallは愛に飢えている。そして、Halは巧みにそれを利用します。
でもその偽りの「愛情」は、MarshallがAngeloと恋に落ちて本当の愛を知った時、崩れ去るのです。

Angeloをだまそうとして近づいたMarshallは、強く惹かれて恋に落ちる。でもその背中をじっとHalが見ている、その様子がじつに不気味で、Marshallが不憫になります。
Marshallは、長年Halの言うことに盲目的に従ってきたため、正常な判断を失っているところがある。Halの計画のシナリオを知っているのに、Angeloの命をどこかで救えると思っている。
思いながら、Halに言われるままにAngeloに毒を盛る、そんなMarshallの痛々しさが哀れです。

恋に落ちた時の幸せなMarshallと、Halに操られるしかないMarshall。このふたつの差が鮮やかで、それが余計に物語を痛々しくしている。
Angeloは本当にいい男で、この男と一緒ならMarshallは絶対に幸せになれそうなんだけど、Marshallにすり込まれたHalへの従属は、そう簡単に消えないのです。

Marshallを巧みに操るHalが怖いですね。Marshallの中にある空虚を正確に見抜いて、そこにうまく入りこんでいく、その狡猾さにぞっとする。
ああいう男からMarshallが自力で逃げることができないのは、もう仕方ないと思うなあ。
もっともその弱さが、Angeloの命の危機と、彼らの運命の破綻を招いてしまうわけですが。

うまく人間関係が絡み合っていて、キャラクターの彩りもよく、Marshallの変化がきちんと書かれています。
不幸な少年が運命に翻弄される話にぐっとくる人におすすめ。
この話単体ではハッピーエンドではありませんが、続編の「After Arsenic and Rio」が出ています。

★詐欺
★人間不信

Match Maker
Alan Chin
Match Maker★★☆ summary:
4年前、Daniel Bottegaは、プロテニス選手Jared Stoderlingのコーチとして名誉と勝利に向かって戦っていた。
だが彼らはともにゲイであること、そして恋人同士であることを知られ、大会から締め出されてしまう。
二人は今でもパートナーだったが、その傷はJaredに深く刻まれ、いまだに立ち直ることができずに酒に溺れていた。

テニスクラブのコーチとして暮らしているDanielの元に、Connor Linという18歳の若者がコーチを頼みに来る。彼には才能があったが、Danielはかつての「ゲイ」としての烙印を持ったままプロテニス界に戻るのは気が進まなかった。
もし彼がコーチするConnorが、彼との関わりからゲイの疑惑を受ければ、それだけで様々な不利益を受けるだろう。
テニスで審判を敵に回せば、試合はそこで崩壊する。不利なラインコールはプレーヤーの精神を削り、追い込んでしまう。4年前、彼らがJaredを追い込み、追いつめて、テニス界から消してしまったように。

だが、DanielはConnorとともに、ふたたびプロテニスの世界に戻る。JaredもまたConnorのダブルスのパートナーとしてテニスに復帰した。
彼らの道は険しく、勝利の栄光と、その裏腹に、彼らに向かって投げかけられる憎しみに満ちていた。

そして、憎しみは一発の弾丸となってDanielの未来を粉々に砕く。
.....



これはとてもいい話で、テニスが好きだと倍面白い。テニスが分からなくてもスポーツ好きなら萌えますが、4大メジャー大会とATPツアーについてくらいは何となく知っておいた方がわかりやすいと思う。「ローランギャロス」はメジャーのひとつ全仏オープンのコートで、赤土(クレー)コートである、とか。
私はわりとテニス好きなので萌え萌えして読みました。現役のプレーヤーのことは名前を変えて書いていますが、「この人のモデルは○○っぽい」とか、結構想像できます。

かつて「ゲイであること」で未来を奪われたカップル、DanielとJared。彼らは新しいプレーヤーConnorに導かれるようにしてプロテニスの世界に戻る。
そこで巻き起こるさまざまな苦しみや、それを乗り越えるための彼らの戦いが書かれています。結構、半端なくシビアです。
彼ら3人だけでなく、周囲にいる人々の感情や愛憎が入りまじって、大きな運命のうねりのようなものに全員が翻弄されている感じ。

個人的に気が散る点が多少あって、Connor Linの一家というのがアメリカにいる中国人一家なのですが、日本人に対する憎しみやうらみつらみがところどころに出てきます。作者当人が特に政治的に偏っているとは感じませんが(名前からして中華系だとは思うが)、そのへんがスラとしては集中できないのはたしかだったり。
チャイナっぽいと言えば、非常にチャイナっぽい一族ではあった。恐喝まがいに取引を自分に有利にしようとするところとか、時期的なものもあってこっちも遠い目になってしまいました。わがままを言ってしまえば、もうちょっと純粋に楽しみたいかなーという気持ちもあります。

しかし、そのへんを置いても、非常に緻密に彼らの戦いの様子が描かれていて、スポーツスラとして秀逸です。テニスの駆け引きと言うものをよくわかっている人なのだと思う。コーチングも具体的でおもしろい。
「ちょっと順調に勝ちすぎ」とかは感じないこともないですが、そこはスポ根ものみたいなものだと思えば納得。
何より、Danielのパートナー、Jaredのキャラが格好いい。「戦う男」である彼は、かつて戦う舞台を奪われて酒に溺れた。そこからまた戦う世界に戻り、別人のように生き生きと戦いますが、また巨大な敵に打ちのめされてしまいます。彼が、新たな傷の中で迷い、時にDanielにつらいことを言いながら、戦いつづけようとする姿は美しい。
絶望や、後悔の中から、人がどうやって希望を取り戻すのか。この話には、テニスという部分をこえて人が「戦う」姿があると思います。

かなりつらいシーンも含まれます。エロは描写少なしで、ほぼ直接描写なし。雰囲気あるから楽しいですが。
スポーツスラと、「ゲイの権利」を中心にした戦いをよく絡めた良作。深刻だけど勢いのある話を読みたい人におすすめ。
個人的なイメージだと、プレイスタイルはJaredはフェデラー、Connorはデルポトロっぽいと思う。

★テニス
★ゲイへのヘイト・クライム

Breaking Logan's Laws
Cameron Dane
Breaking Logan's Laws★★★ summary:
Quinn Securityシリーズ

Logan Jeffriesは負傷をきっかけに警官をやめ、かねてから友人に強く誘われていたQuinnセキュリティに入社する。
だが、彼には社内で決して顔を合わせたくない相手がいた。
Nate Jordan。友人の義理の弟。
明るく活発な彼の姿に、いつもLoganは目を引き寄せられたが、決して手をのばしてはならない相手だった。

Loganには、決して破らないようにしている5つのルールがあった。ストレートの男と関わらない、仕事とセックスを決して混ぜない…誰かを、自分の弱みになるほど近づけてはならない。
彼自身しか知らないそれらのルールを盾にして、LoganはNateとの間に壁を作ろうとする。

Nateは、新しい仕事でLoganのアシスタントとして働くのを承諾したことを、大きく後悔していた。
3年前に見てからずっと恋をしていた相手、そして決してNateのことを見てはくれない男。そのそばで働くのは、どんな苦しみだろうか。
だが、彼は間近で見るLoganの姿に、いつもは押し隠されているLoganの真実の感情をかいま見るようになり…
.....



Quinn Securityシリーズ
前までのカプとはかなりきっちり切り離されてるので、単独で読めます。

Cameron Daneらしい話でもあり、らしくない話でもあり。
「らしい」のは、自分の中のルールや枠にしがみついてもがいている、強くて頑強な男が苦悶する姿。Loganの強さというか、容赦ないたたずまいは物語の中からもはっきりと読みとれるので、彼が自分のルールや、古傷、Nateへ揺らいでしまう気持ちなど様々な物の中で苦しむ姿も鮮やかです。
「らしくない」のは、ふたりがお互いに強く惹かれつつ、体の関係をなかなか結ばないあたり。結構しぶとい、今回のLoganは。そのしぶとさと、くじけないNateの体当たりっぷりが楽しい。

でも、エロ魔神というかエロ魔王というか、さすがなCameron Dane。どえらく濃厚な自慰シーンとかはさまってて、エロ的にもとてもこってりしてます。自慰をここまでドラマティックに書くのって、この人くらいのもんだと思います…ちょっと妄想の域にまで入ってて、エロいけどつい笑ってしまいました。

彼らは2人で、相手への強い引力を感じながら、ひとつの事件に取り組みます。それは金持ちの娘が行方不明になった事件で、こっちの事件の方もなかなか興味深く書かれています。特に、被害者の双子の弟の拗ねて繊細で甘ったれたろくでなしな姿とか、サブキャラもよくできていて、全体に話に深みを与えてます。ちょっとこの弟が切ないので、そのうち続編で彼の話を書いてくれないかなーとか思ったり。

Nateが必死にLoganの役に立とう!とがんばる姿もけなげで、Loganが段々とほだされていくのもよくわかる。Nateを拒否するのって、ほとんど何かなついてくる犬を蹴飛ばすようなもので、情がうつるとそんなことできるわけもありません。
少しずつ、Loganは自分のルールを破って行かなければならないわけですが、それでも抵抗は残る。もういい加減そういう気持ちは手放してしまえばいいものを、いつまでもLoganはぐるぐると堂々巡りをして、もがいて、何かにしがみついている。
複雑で、強靭で、そして時に理不尽なLoganの拒否や怒りを、Nateがどう突破していくかが読みどころです。
まあ最後は体当たりだ。いろんな意味で!

Loganと元彼が顔を合わせる短いエピソードとかも印象的で、キャラ同士の関わりがよく練られていると思います。
エロも話も読みごたえのある長編を読みたい時におすすめ。まあすべてが濃いので、濃厚注意です。

★失踪事件の捜査
★頑固な年上×強情な年下

Dark Horse
Kate Sherwood
Dark Horse★★★ summary:
Dan Wheelerの人生は、もっと単純にいくはずだった。人が苦手で、馬のことしか知らない。
だがどうやってか、彼は1人の男と深い恋に落ちたのだった。

しかし今その恋人は、病院のベッドで目を覚ますことなく眠りつづけている。

そんなある日、Danの働く厩舎へ馬を買いに来たのは若い億万長者のEvan Kaminskiと、彼の馬のトレーナーJeff Stevensの2人だった。
彼らに出会ったことから、Danの人生はふたたび、思っても見なかった方向へ転がり始める。

果たして、もう1度誰かと恋に落ちることは可能なのだろうか?
それも1人とではなく、2人と?
.....



不器用で人付き合いが下手なDanの人生が上から下へとひっくり返る話。

長い話ですが、全体が大きくふたつに分かれていて、前半では恋人を失うDanの悲嘆、後半ではEvanやJeffとの問題でぐるぐるするDan、というような構成になってます。
後半も人間関係が絡み合って楽しいんですが、特に美しいのは前半で、Justinに対するDanの愛情や、彼を失う痛みや喪失感、怒りが鮮やかに描かれています。胸をつくようなシーンがいくつもあって、切ない。

Danの人生に新たに現れたEvanとJeffのキャラクターもよく出来ています。活発でやや後先考えないEvan、落ちついていて包容力のあるJeff。彼らはカップルだけれども、EvanはDanに誘いをかける。
お互いにカジュアルなカップルなのかなーと思っていたら、そういうわけではなく、「最後には相手に戻ってくる」ことをお互いに約束しているから、お遊びOKらしい。あそこもかわったカプです。

若いEvanのエネルギーにちょっとたじろぎ、Jeffのおだやかさに惹かれながら、Danの気持ちは決して恋人を去らない。
Danは本当に不器用で頑固な男で、あれこれ考えすぎてよくにっちもさっちもいかなくなっています。ちょっとしたことから不安になってしまい、不安になってしまう自分が嫌になり、そうやって嫌になると何もかもを投げ出したくなり、でも黙々と働こうとする。
その堂々巡りっぷりが実にリアルで、「もうちょっと割り切れよ」と思う一方、色々なものが割り切れずに悶々としてしまう気持ちはよくわかる。めんどくさい男ですが、それがDanだから仕方ない。自分でもそれがわかっていて、友人のChirsのアドバイスが得られない時には「Puppet-Chris」という架空のアドバイザーの反応を想像したり、Puppet-Chirsに頭をひっぱたかれたりと、ちょっと変わった男でもあります。

この小説は、珍しく、時制が現在形で進んでいきます。でもしばらく読むまで気付かなかったので、かなり自然に処理されてるんじゃないかなあ。現在形にすることで、臨場感が出ている気がする。
キャラがよく立っていて、全体にみんなそれぞれの欠点をかかえている様子がなんともほほえましい。Evanなんかも、一見金持ちの若造みたいな感じだけど、結構苦労してるんだよね。この人がプライベートで甘えん坊なのは普段のビジネスマン・Evanの裏返しなのでしょう。

恋人との死別ものにぐっとくる人なら、これは読むべき!ってくらい前半が痛々しくて切ないです。
後半、Evanが妹によせる愛情や、厩舎での生活もいきいきと細かに描かれていて、馬好きにもおすすめの一冊。ちなみに後々3Pになるので、複数が苦手な人は注意ですが、しかし3人ならではの人間関係の難しさも楽しいです。
続編の「Out of the Darkness」も出ています。

★死別
★3P

★Three-Star rating system★


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・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター

 
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