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Hawkins Ranch: Falling
Cameron Dane
★★★ summary:
Hawkins3兄弟(Conner、Cain、Caleb)は牧場の経営者としてその町に落ち着いていたが、彼らはじつは兄弟ではない。それどころか、人間ではなかった。
人より古くから地上に生きていた太古の一族──悪魔──、それが彼らの正体である。
一族との暮らしを捨て、それぞれイギリスをさまよううちに3人は出会い、自分たちの人生を求めてともにアメリカに渡ってきたのだった。血のつながりはなく、そして悪魔としても種族の異なる彼らであったが、3人をつなぐものはまさに「家族の絆」としか言いようのないほど強く、あたたかな気持ちだった。
だが、今ではConnerは悪魔ではない。愛する女性の力によって人間となっていた(1作目「Demon Moon」)。
そんな兄を、Cainは心の底から羨望していた。Cainは男性を好んでいたが、彼の種族は種の繁栄のために決して同性愛を許さず、もし同性と関ったことが知られたら即座に処刑が待っていた。そのため、Cainはその長い人生の中で一度も、そして誰とも関係を結んだことがなかった。
兄夫婦が暮らす家から出たCainは自分の家と厩舎を建て、虐待され傷ついた馬を引き取って訓練する牧場を1人で切り回していた。孤独には慣れていたし、彼は馬たちを心の底から愛していた。

そんなある日、Cainは兄から呼び出される。兄の妻Cassyの幼馴染、Lukeがひどい怪我を負って前の牧場を追い出され、退院した後も行き場がなく、そのまま兄の家の居候となっているというのだ。Cassyのそばに男がうろうろするのが許せない、という兄の子供っぽさに少々あきれつつも、Cainは仕方なく自分の牧場でLukeを引き取って働かせることを承知する。
だがそれがひどく危険であることも、わかっていた。彼は3年前にLukeと顔をあわせた時から、ずっとLukeに惹かれ、そんな自分の気持ちを恐れていた。もしLukeに対する気持ちが抑えられなければ、その先には破滅しかない。
それを肝に命じながら、それでもCainはLukeとともに働く毎日を楽しみはじめる。彼らはどちらも馬に対する深い愛情をもっていた。明るく、繊細で、だが時に驚くほど頑固なLukeの存在は、それまで孤独しか知らなかったCainにとってかけがえのない存在になりはじめていた。

長年の孤独と自制が作りあげた心の壁と、そして処刑への恐れ。さらにはその先に必ず訪れるであろう、処刑そのもの。Cainが乗り越えなければならないものはあまりに大きい。それは望みのない道に見えたが…
.....



Hawkins Ranchシリーズ。とりあえず今回は「Falling」を。
これシリーズ2作目なんですけども、1作目の「Demon Moon」はノマカプものです。結構あっちのスラ作家さんは、男女ものとスラの両刀書きだったり、男女ものをずっと書いてる人がスラに参入してきたりしますね。シリーズの中でまざってると微妙に困ったりしますが。
男女ものと混ぜて読むのはなあ、という人は1作目を読まなくてもいけると思います。

Cameron Daneはとにかく何もかもドラマティック!な作品を書く人で、登場人物は痛いほどむき出しに自分をぶつけあい、時に削るように互いを変えていきます。ちょっとテンションとしては昼ドラめいたところすらある。何というか、まさに「ハーレクイン」って感じもします。
力技なところもあるんですが、その「力」が半端ではなくキャラも皆魅力的なので、一度入りこむとそのまま最後まで話の中に引きずりこまれる。

「Falling」のCainは、とにかく「落ちまい、落ちまい」としながらLukeの存在に落ちていく、もがく男です。もがく悪魔というか。
誇り高く、自分の存在に自信を持っている、孤高な男ですが、彼の世界はLukeの存在に完全に揺さぶられてしまう。時に怯え、時に反発し、それでもCainはLukeに対して誠実であろうとする。
そんな力強い、苦しげな存在に、Lukeも否応なく惹かれていく。彼にはCainのかかえている問題が見えていないが、Cainの誠実さと優しさを愛し、そのぎこちなさの向こうにある痛みに手をさしのべたいと願う。
時に2人はただ感情に押し流され、時に混乱し、それでも魂は痛みや傷をこえてただまっすぐに相手を求める。

エロはかなり激しいです。Cameron Daneの書くエロシーンは当人によると「人の心と体がどちらももっともむき出しになる瞬間」という位置付けがあり、感情的なぶつかりあい、融合、心の変化にともなう体の反応などなどストーリーそのものを投影するエロです。非常に濃密な感情があふれています。喜び、痛み、怒り、相手への思い、時に拒絶など、意志と感情が互いへまっすぐに向かい、激しい反応を引きおこす。その中で、相手のもっとも深いところにふれ、さらに深くを求める。そういうエロです。なんか「情事」って感じがよくあてはまるような。
最中によくしゃべるのはご愛嬌。

色々な意味で「激しい」とか、「溺愛」路線が好きな人におすすめ。家族の絆とか、そういうあたりもしっかり押さえられている。
カウボーイものって、わりとよくホームドラマ要素もつきますね。牧場は家族経営が多いからかなあ。

★エロ度高
★人外(変身エロあり)

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Fatal Shadows & A Dangerous Thing
Josh Lanyon
AdrienEnglish1★★★ summary:
Fatal Shadows(1作目)
LAでミステリ書店を営みながら小説を書くAdrien Englishは、友人のRobertが滅多刺しにされて殺された事件の嫌疑をかけられる。Adrienはゲイ、Robertはバイセクシュアルで、学生時代からの古い友人同士だったが、彼らは恋人であったことは一度もなかった。だが他人から見れば奇妙に近しい彼らの関係、そしてこの9ヶ月RobertがAdrienの書店で働いていたこと、Robertが死ぬ前に最後に会った相手がAdrienであったこと、口論をして別れたこと、Robertが何故かレストランにAdrienを探しに戻ってきたこと──などがLAの殺人課刑事、Jakeの疑いを呼ぶ。
同時にAdrienの周辺で奇妙なことがおきはじめ、本屋への侵入事件や無言電話などからAdrienは自分がストーキングされていると感じるが、刑事たちはAdrienの思いすごしか、なお悪いことに、疑いを自分からそらそうとする陽動であると思っているようだった。
Adrienは逃げ場のない状況からの出口を探すためにやむなく事件を調べはじめるが、そこには彼とRobertの学生時代にまで根を遡る、深い、深い憎悪と狂気の物語が隠れていた。
古い、自分の知らない罪と恋のせいでAdrienは命の危険にさらされる。次は自分が殺される番だと気付きながら、誰がその凶器を握っているのかわからない。それでも彼は出口を探して闇を掘るしかない。

A Dangerous Thing(2作目)
Adrienはうまくいかない恋人(未満?)との関係にいささか苛立って、祖母の遺産である牧場へと車をとばす。子供の頃から一度も帰ったことのない、今は誰も住んでいない、誰も友人のいない場所へと骨休みと執筆を兼ねて出かけたものの、そこで彼が見たのは謎の死体と、その死体の消失、そして自分の敷地に生えるマリファナの青々とした茂みや、何故か敷地の山奥を掘り返している謎の集団だった。
トラブルが次々と襲いかかり、Adrien自身の身にも危険が及んだ時、恋人が駆けつけて彼を救おうとする。だがAdrienはただ救出されるにはあまりにも頑固で、山と積まれた問題を残してその場から逃げ出す気などさらさらなかったのだが…
,,,,,


Adrien Englishミステリシリーズ1&2が1冊に入っています。
このシリーズは人気作家Josh Lanyonの中でも一番人気のシリーズで、本当に何というか…いい小説です。謎解きがあり、人と人とのドラマや葛藤があり、どうにもならない運命の出会いや別れがある。
あえて言ってしまえば、これは「Adrien Engiishの人生」の断片のような話なのです。

Adrien Englishはとても魅力的な主人公で、この話は一人称で語られるのですが、Adrienがどういう人間なのか、会話や彼のややシニカルな独白の中から鮮やかにたちのぼってきます。32歳、父親はアメリカ人で母親はイギリス人、父とは早くに死別。16歳の時に生死にかかわる大病をわずらって以来心臓の弁に異常があり、薬を服用。敏感な時期をいつ死ぬかもわからないという状況下ですごしたためかやや人生にさめた視点をもっていて、他人に対してはさらりとした人づきあいをする方です。5年間暮らした恋人が去っていったことがいまだに深い影をおとしているようにも見えます。
だが人なつこくもあり、ユーモアに満ち、率直で、Adrienと話すと人はたいてい自分の内面を正直に見せる。そしてAdrienは非常にするどい目で、他人の内面を読む。ミステリ好きではあるが犯罪に関しては素人の彼が、そうして彼独特の視点から様々な断片をひっくり返しながら真相を掘り出し、実は自分のすぐそばによりそっていた狂気の存在に気付く──その瞬間まで、緊迫感のある展開が続きます。

「ミステリ風味のスラッシュ」というよりは「ミステリでもありスラッシュでもある小説」と言った方がいいか。ミステリとして充分おもしろいですが、スラッシュとして見るなら1作目はシリーズの「導入」です。本当の展開はその先にある(その2作が1冊に入っているのは、本当にかしこいと思う)。
1作目で彼は思わぬ相手と関り、2作目ではその関係が彼の予想した以上に深まる。だがそれは色んな意味において未来のない恋で、その関係のいびつさと思いの激しさがAdrienと彼の人生を悩ませつづけます。
そんな中でもがきながらも、いつもAdrienはフェアで、毅然としている。そのことが自分を傷つける時でさえ。決して声高でもなく、弱くもありますが、こんなにたたずまいの潔い男というのはあまりいないんじゃないだろうか。
ドラマティックに語られるわけではありませんが、淡々と、皮肉とユーモアをまじえたAdrienの語り口には胸にせまるような繊細さがあって、はじまってしまった関係の先にあるものをAdrienが見すえたり、目をそらしたりしている様を読むのが時おりつらい。そして彼の語り口から浮き上がってくるのは彼の人生だけではなく、望みのない恋人の、複雑で痛みに満ちた人生でもある。

駄洒落とか謎解きとかあって英語としては私の手に余るところもあるんですが、難解なわけではないので、長文読み慣れてる人なら本筋は普通に楽しめると思う。
現在はシリーズ4作目まで出ています。これがまた胸がしめつけられるような話だったりするのですが、そっちのレビューはまたいずれ。
Lanyonはミステリとはちょっと毛色のちがう暴力的なクライムサスペンスも書いていて、そっちも本当におもしろい(強い男同士のカプが好きな人にはたまらん!)。「m/m小説の書き方」というハウツー本も書いています。今度読んでみようかな。キャラクターの際立ち方が本当に強くていいのです。
彼の作品に「ホームズ&モリアーティシリーズ」ってのがあるのは心底気になる…

いろんな意味でおすすめのシリーズですが、エロ以外の部分重視の人には特におすすめ。非常に自我の強い2人の向き合う話でもあるので、「男同士の恋愛」(ガチムチって意味じゃないぞ)を求める人にも。

★ミステリ・サスペンス

ReneCade
Cameron Dane
ReneCade★★★ summary:
Cade McKennaは過去を忘れるため、モンタナの小さな町へ副保安官として赴任してきた。彼の顔の半分は傷で覆われているが、誰もその理由は知らない。Cadeは誰にも自分のことを語らない。仕事を黙々とこなし、社交的なやりとりは好まず、孤独で厳しい男であった。
保安官の息子Ren BooneはHawkins' Ranchで働きながら、牧場の仕事を何でもこなす日々が好きだった。父親と2人だけで暮らし、明るくふるまう彼は誰にでも好かれていたが、彼は自分がゲイであることを、2人の親友を除いて周囲に押し隠していた。父親にさえも。
だがCadeの、周囲を拒否するような殻の下に強い情熱と痛みを見て、RenはCadeに磁力のように惹きつけられる。CadeもまたRenの存在に心を乱され、彼らは秘密裏に関係を持ちはじめる。
Renは望み、Cadeは抗いながらも抗いきれない。いびつなものをかかえながら、それでも彼らは心を剥き出しにするように向きあい、少しずつ、2人の関係はうまくいきはじめたように思えた。
だが彼らの関係は最悪の形で崩壊する。Renの裏切り。

はたして、2人はその裏切りの裏にあるもの、Renの中にある深い痛みを明らかにできるのか。Cadeは傷の痛みを呑みこんで、ふたたびRenを腕に迎え入れることができるのか。
それは望みのない道のようにRenには思えたが、それでもRenはCadeをあきらめられない。裏切ったのは自分で、傷つけたのは自分だが、Renはその崩壊の中で自分の本当の気持ちに気付いていた。

一方、牧場の魚の養殖池に毒が入れられ、犯人探しがはじまる。その悪意は思わぬ形でCadeへと襲いかかり…
.....



Hawkins Ranchシリーズですが、他の作品とは関係なく独立して読むことのできる話です。Hawkins兄弟はちょっとした脇役で、ここでは彼らの牧場で働く若者Renと、保安官助手のCadeの話に焦点があたっている。

このCadeがじつに強烈で複雑な男です。顔に傷をもち、笑わない副保安官。何事にも厳しく、何より己を律して揺らぐところがありませんが、その内側にはまだ過去からの生々しい傷が残っています。Renの裏切りは、その傷をかきむしり、中から膿みのような痛みがあふれ出してくるのをどうすることもできない。彼が誰にも立ち入らせなかった深みへと、Renはやすやすと入りこんできて、挙句にそこに痛みを残した。
Renの裏切りは本当に馬鹿げたものですが、RenにはRenの暗い部分がある。少年時代、今の町に引っ越してきた時に切り捨ててきた筈の暗い痛み。彼はそのすべてを捨て、過去の自分を捨て、今の「明るく人なつっこい」自分をこの場所で一から作りあげてきた。だがCadeに向かう感情は彼を根っこから揺さぶり、怯えさせ、判断を歪めるほど強烈なものだった。
互いに衝動につかまれ、どうしようもないほど惹かれていますが、裏切りの痛みが2人を分かちつづける。

ただひとり、信頼できる家族である父親へのカミングアウト(Renの実の父ではありませんが)、昔からの親友との腐れ縁な関係、古い過去から追いかけてくる捨てた筈の「家族」。Renの痛みはあざやかで、それとクロスするCadeの苦痛もまた鮮烈なものです。
Cadeは自分を切り捨てて、ただ「副保安官」として立派につとめを果たそうと、自分の感情や痛みをどこかへ埋めてしまおうとするが、Renの存在は彼をつらぬくような傷となる。
2人は互いを求めずにはいられない。だが求めながら、そこにある痛みに息をつまらせる。そんな関係が痛々しく書かれています。

Renはとても若々しくて、のびやかでいい若者なんですけども。自分でした裏切りとは言え、彼が打ちのめされ、必死になる姿は胸にくるものがあります。
望みのないものを、人はいつまで待ちつづけていられるか。許しとは何か。そんなものが圧巻の迫力で書かれています。RenやCadeだけでなく、人と人の感情の交錯には時おり息がつまるような気がする。
がっつりボリュームもありまして全編激しいので、とにかく激しいものが好きな人におすすめ。

ところでこの「ReneCade」というタイトル、RenとCadeの名前をつなげたものでもありますが、「Renegade」(裏切り者)とのダブルミーニングでもあります。最近になってやっと気がついた…
個人的に、Hawkins Ranchシリーズで一番好きな話です。ほんとにキャラがいいし、まるで異なる2人が傷つけあいながら惹かれあう、その対比が荒々しくも美しいのです。

★エロ多め
★裏切り

Surrender Love
Kayelle Allen
SurrenderLove★ summary:
Luc Saint-Cyrには多くの秘密がある。
彼は太古の昔に遺伝子操作で作り出された「戦士」たちの系譜につらなる、不死者の1人である。それも、流刑とされた銀河の果てで生きるのをよしとせず、そこから逃れ出た秘匿された一団の1人だった。
彼らのリーダーPietasは「peril」というゲームを作り出し、「死によってこそ生に意味がある」という信条のもと、プレイヤーである不死者たちに「死」と「生まれ変わり」によって数えきれないほどの人生を繰り返させる。
perilからは誰も抜け出せない。ゲームマスターのPiatasの意志の下で、様々な名で、生きてはまた死ぬ。Cyken Tomarusは、そうして数千年を生きつづけてきた。
Cyken Tomarus、今回の彼のゲームこそ「Luc Saint-Cyr」としての人生を生きることである。

その人生ごとに、彼は望みをもって恋をくり返してきた。そのことに何か意味があると信じて。永遠と思えるほどの時間の末に、まだ希望を捨てきれずに。
だが今回の恋も痛みだけを残して終わる。5年間ともにいた恋人のWulfは、Lukを去っていった。

Izzorah Ceeovwは、この2年でブレイクしたロックバンドKumwhatmayのドラマーである。彼は猫系のヒューマノイドであるKinの一族で、猫の目ととがった耳、そして体の一部に毛皮をもつ。
Izzorahもまた、秘密を隠していた。彼は、3つの時からほぼ盲目であったが、それを押し隠している。Kinの従兄弟による一族同士にしか聞こえない耳打ちや、Kin独特のするどい嗅覚がそのカモフラージュを可能にしていた。
男性を好む性癖を表に出したこともない。彼の故郷の星では女性だけが権利をもち、男性は1人の女性の戦士に複数で仕える存在でしかない。男同士の恋愛は死を意味した。Izzorahは15の時に位の高い女性の戦士のところへ嫁がされたが、必死の思いでそこから逃げ出し、5年かけてTarthの惑星にたどりついた。その来歴も、Izzorahが人に言うことのできない秘密であった。

彼らのバンド、KumwhatmayはLuc Saint-Cyrの会社と大きな契約を結ぶために招かれる。
その席でLucとIzzorahは顔をあわせ、互いが互いの運命だと知る。だが、あまりにも多くの秘密が彼らを取りまき…
.....



SFです。
Izzorahは猫科ヒューマノイドですが、Lucも黒い肌と、黒いコンタクトのサイバーアイをしていたりとか。多民族とか他種族のSFですね。

LucやIzzorahといったメインキャラクターもくっきりとした輪郭をもっていて、特に様々なハンディキャップを持ちながら昂然と頭をあげているIzzorahは愛らしく、読みどころは多いです。
なんせ猫科ヒューマノイドって、それだけでちょっと心ときめく。描写を読んだかぎりだと、尻尾がないようなのが残念です。でも耳プレイはあるし耳好きにはおすすめ(いるのかな?)。"pointed ear" としか描写がないんだけど、あれ獣耳(てか猫耳)じゃないのかなあ。pointed earだとエルフみたいな方を想像してしまうのですが、でも個人的には猫耳だとかたく信じております。伏せたりたてたりしてるし。

Lucは複雑な秘密をかかえた複雑な人物で、その幾重もの感情をIzzorahは嗅覚でかぎわけ、彼の望みを満たしたいと願う。Lucを幸せにしたい。
Lucは多くを持つ人間ですが、ただ何もかえりみず自分を幸せにしたいと願ってくれる相手ははじめてだった。
だがIzzorah自身は秘密のほかに、彼自身も知らない心臓の欠陥があり、それは彼の命を危機に陥れる。Lucは彼を救おうと奔走しますが、それによってまたひとつ、根の深い秘密と数千年にわたる陰謀が目の前にあらわれます。

不死者としてのゲームや、彼らの企みもからんでくるので、ちょっとわかりにくいかも。全部つかんでる気がしないのは英語力の問題かもしれませんが。設定がなじむまでややぎこちないですが、中盤からは色々と動いて盛り上がりもあり、とてもおもしろいです。
ただ、大筋と小枝含めて、かなり未解決の問題があるので、これは「待て続編」ってことなのかなあ。一段落はついてるんですが。ちょっと落ちつきの悪い感が残るのが残念です。
ですがSFの部分がよくできていると思うし、Kinの故郷の文化描写なんかもおもしろいので、そのあたりが好きな人にはおすすめ。超年上の不死者をたしなめつつ愛らしく手玉にとる、LucとIzzorahのカプはとてもほほえましいです。猫だしね!

スラには結構正面きったSFがありますね。どうしても設定がきっちりしている分、恋愛要素が薄くなりがちなんですが、この話はそのへんのバランスはいいです。
SF設定こみで、ストーリー全体を楽しみたい人に。

★異文化(SF)
★猫科ヒューマノイド

Tigers and Devils
Sean Kennedy
Tigers and Devils★★★ summary:
フットボールの熱狂的なファンであり、FFFフィルムフェスティバルの総責任者のSimon Murrayは、ゲイとしてカミングアウトしてはいるが社交的な人間ではない。親友とその妻に無理矢理パーティにひっぱり出されても、居心地が悪いだけでしかなかった。
そんな時、客の何人かがフットボールについて話しているのを小耳にはさむうち、何故かSimonはフットボールスターのDeclan Tylerについて弁護する羽目になる。膝の負傷と手術によってゲームに出られないDeclanの、過去の功績までが侮辱されるのを彼は許せなかった。
「彼は傲慢なろくでなしかもしれないが、選手として素晴しいのはまちがいない」
そう言い切ったSimonの背後では、まさにDeclan Tylerその人が自分への賞賛と罵倒を同時に聞いていたのだった。

SimonとDeclanは彼らのぎこちない出会いをのりこえ、確かな関係を築きはじめる。少なくとも、当人たちはそうしようとした。
だがそれは簡単なことではなかった。Declanはオーストラリアで一番有名と言っても過言ではないフットボールプレーヤーであり、それは彼がスーパースターとしてメディアに扱われることを意味した。Declanはカミングアウトしておらず、Simonは2人の関係を隠そうと必死になる。自分のためではなく、Declanのために。
時にそれはSimonをいたたまれない気持ちにさせ、Declanを傷つける。

Simonの親友はそうした関係についてDeclanを責め、Simonは友人と大喧嘩をしてしまう。
人前でのスキンシップを避け、フットボールのパーティに出席するためにDeclanが女性のパートナーをエスコートする間、Simonは1人で待つ。そうして多くの犠牲を払いながら、それでもいつまでも彼らの気持ちを隠しとおせるものではなく…
.....



物語は、SimonとDeclanの関係の深まりと、そのたびごとに彼らが直面しなければならない様々な試練を中心にして展開していきます。
「スーパースターと一般人の恋」というテーマも、「カミングアウトしていないスポーツ選手の恋」というテーマもわりとよくあるんですが、この小説はSimonの視点から、彼らがくぐりぬけていく出来事と気持ちの揺らぎをとても丁寧に書いていて、読んでいるとどんどん彼らの人生に引きこまれます。
なんせSimonがいい。彼はシニカルで、正直で誠実、口が悪く、短気で、頑固で、そしてとても殻にこもった人間です。繊細な部分をもっているからこそ、時おり攻撃的に皮肉屋になるようにも見える。Declanはおだやかで包容力のある人間で、Simonの刺刺しいところを楽しんでいるふしもあります。
ひとつひとつの物事にSimonは傷つき、動揺し、それをDeclanがつなぎとめる。しかしDeclanの中にも迷いがある。あまりに多くをSimonに犠牲にさせること、そしてSimonがいつか自分を責めるのではないかと、彼は恐れている。

秘密、葛藤、そしてやがてはメディアからの注目、中傷。Simonの世界は、Declanとつきあうことによって何もかもがひっくりかえされてしまう。それでもSimonはDeclanと一緒にいたいが、どうしても未来を信じられない時もある。
問題は外部だけでなく彼らの間にもあって、むしろそちらから、2人は時おりどうにもならなくなって行きづまってしまいます。きっかけは些細なことだったりもするんですが、1本ずつ藁がつまれていって、小さな物事が最後の藁になる感じが苦しいほどにつたわってくる。
傷ついて、相手を守ろうとして、道を踏みちがえる。どちらもすまないと思っていても、あやまれずに問題をこじらせる。

読んでいて、こうまで気持ちをこめて主人公を応援した小説は久しぶりです。
Simonは決してよくできた人間でもなく、傲慢だったり、意地悪だったりもするんだけど、そこも含めてとても愛すべきキャラクターだと思う。周囲の友達が文句を言いながらもSimonをサポートする気持ちがよくわかる。
そしてSimonを愛でるDeclanの気持ちがとてもよくわかります。とは言え、Declanの包容力と忍耐には頭がさがる。ハリネズミを手の平でころがしてるようなもんです、ほんと。

嵐のような日々の中で、それでもDeclanといる時のSimonは幸せで、彼は少しずつかわっていく。本当に少しずつですが。どうにかして心をひらこうとする時もあるけれど、まだまだ孤独な人間でもある。
果たして彼らは嵐のような日々をのりこえて、共に未来を築いていくことができるのか。

私はフットボールは全然わからないんですが(あとオーストラリアの地理も)、そこのところは踏まえなくても楽しめます。
メロドラマ的ではなく、どちらかと言うとシニカルな感じに書かれている話なので、じめじめした恋愛ものはちょっと、という人でもおすすめ。Simonのえげつないユーモアのセンスはとってもおもしろい。「そこでそんなこと言わなくても!」と思いながら何度も笑わされました。

これはSean Kennedyの最初の長編なんだそうです。
で、かなり長い。相当な長さがあると思いますが、おもしろいです。
エロシーンはほとんど直截的な表現はないのですが(キスシーンはとってもエロティックですが!)、それでこれだけの長編を一気に読ませる力量はすばらしい。今後が注目の作家です。

★スーパースター/一般人

Many Roads Home
Ann Somerville
Many Roads Home★★ summary:
Sardelsa大公の息子Yveniは、父親の死後、義理の兄の罠を逃れて命からがら故国を離れる。
あと2年たって19歳になれば、彼は法定年齢に達し、その時こそ国に戻って自分の継承権を主張し、簒奪者である義兄と対決することができる筈だった。
それまで身を隠し、力をたくわえるしかない。

姿をやつし、身分を偽り、密輸業者とともに船に乗ったYveniは、船の難破で連れを失って一人ぼっちになってしまう。
たよれる者がいる国まではまだ遠い。どうにか商隊とともに旅に出るが、道中でさらわれ、奴隷として売られる羽目に陥った。

Paoleは子供の頃に奴隷業者にさらわれ、売られてからずっと奴隷として生きてきた。いい主人も、悪い主人もいた。
だが最後の主人は思いやりがあり、Paoleに人の治療をする能力が生まれつきそなわっていることを知ると、彼に教育を施した。そして自分の死とともに、Paoleを解放した。
自由になり、村から村へと治療の旅を続けながら、だがPaoleは自分の内側に埋められない孤独を感じていた。
長い冬を1人の小屋でこす前に、彼は市場で奴隷を買う。1人でも、苛烈な運命から救い出せればいいと思ってのことだったが、その相手が本当の奴隷ではなくSardelsaの世継であると知り、Paoleは怒りにかられる。

YveniとPaole。2人の運命は奇妙な形で絡み合い、その中で、Yveniは国に戻って使命を果たそうともがくのだったが…
.....



作者のAnn Somervilleはサイトで素晴しいエンパスのシリーズを書いていて、彼女が商業デビューしたことが、私が商業スラッシュを買って読むようになったきっかけでした。
相当な筆力のある作家で、芯の通った設定とストーリー、キャラの間にあるテンションや、時に相手を傷つけずにはいられないほどの価値観のせめぎあいが読みどころです。
なかなか商業では彼女独自の持ち味を発揮できずにいるように見えましたが、「Many Roads Home」では2人の登場人物の生き方を、ファンタジー世界を舞台に鮮やかに描き出しています。(電話とかあるんで、ファンタジーと言ってもまたちょっと毛色がちがう感じですが)

Yveniは姉や妹を故国に残して、遠い国で奴隷として売られる。Paoleは奴隷を助けて、ついでに旅のつれになってくれればいいと思って大枚はたきますが、Yveniは彼にとって憎い国の人間だった。そして、奴隷ですらなかった。
なかなか本当のことを言わないYveniをPaoloは信頼できず、YveniはPaoleからどうにか逃れようとする。
2人のいきちがいと、激しい対立、やがてわかりあうまでに至る日々が丁寧に書かれています。

国を逃げた時にはまだ弱々しい、我侭で高慢な部分もあるYveniは、色々な苦難の中で自分の知らなかった世界を知り、成長していきます。
Paoleは彼を厭いながら、その中にあるしなやかな強さに惹かれていくけれども、いずれYveniが国へ戻り、自分の手の届かない存在になってしまうだろうこともわかっている。
故国からさらわれ、奴隷として異国に育ち、Paoleには戻る場所がない。そんな彼にしてみれば、Yveniの中にある理念や理想が、ひどくまぶしく見えるのです。

この作者の作品はディテールが細かいこと、設定が非常に骨太であることが特徴で、ファンタジーとかSFとか、非常にうまい。
今回もPaoleの(Yveniと出会う前の)村から村への旅と、その中で感じる孤独や、Yveniの逃亡の日々が細部に渡って書かれています。
スラとしての2人の関係というよりは、他の登場人物も含めたそれぞれの生き様と選択、それが交錯するさまがメイン。

そういう、ファンタジー世界のディテールを読むのが好きな人におすすめ。
作者のサイトではかなりの量のフリーストーリーが読めますので、こちらもおすすめです。とりあえず「Darshian Tales」を読むのがいいかな、と。

★ファンタジー

Bound and Determined
Jane Davitt & Alexa Snow
Bound and Determined★★☆ summary:
もうじき21歳になる大学生、Sterling Bakerはたまたまパーティで見たBDSMシーンに衝撃を受け、それこそが自分の求めるものであると感じる。
彼は支配的な父親に常に反感を覚えてきた。それは、自分が支配する側になりたかったからではないだろうか。

だが初めて行ったクラブで、大学の教授Owen Sawyerの姿に行きあたって、Sterlingは自分の考えが間違っていたことに気付く。
彼が求めているのは、支配することではない。支配されることだ。
Owenのような、強い、確信に満ちたDomに支配され、コントロールされるSubに、彼はなりたいのだった。

Owenは、何のスキルも経験もない、しかもかつての教え子を自分のSubにするつもりはなかった。
長い間、彼はどんなSubにも満足できなかった。多くの者が彼の名を求めてすり寄ってきたが、誰もがあまりにわかりやすく、あまりにも平凡で、常に誰もがOwenを失望させた。

だがSterlingは不屈だった。ついにOwenから手ほどきを受けることに成功し、それが思っていたほど単純でたやすいものではないと悟りながら、彼は引かなかった。
彼の中にある強さ、しなやかさ、そして複雑な痛みはOwenを引きつける。
ふたりの関係はいつしか単なるDomとSubの域を越えていたが、どちらもそれを言い出せず、いつしか生まれた亀裂はSterlingをより破滅的な行為へと押しやり…
.....



Sterlingは、父親の支配によって精神的に傷つき、自分の中に高い壁を作っています。常に他人にチャレンジしたがり、挑戦的で、高慢。
Owenが最初に見て、拒否したのはそういう「外側」のSterlingですが、その内側には脆い、優しい、誰にも手をふれさせない部分があります。
Owenは支配とコントロールによってSterlingの思考を吹き飛ばし、壁を崩し、SterlingはOwenにだけはすべてをさらけだす。それはOwenが彼を知り、彼の限界を知り、決して傷つかないよう守ってくれると信頼しているからです。
Sterlingには、支配される必要がある。信頼する相手、自分のすべてを預けられる相手に。そしてOwenは己のすべてでそれに応える。
それはほとんど、そのまま恋のように見えます。
支配と被支配、関係としてはいびつなようでもありますが、彼らの間ではそれは健全で、純粋で、必要なことなのです。

Owenはとても強い、卓越したDomです。
彼はSterlingの中にあるものを引きずり出し、Sterlingの欲するものをあたえ、そうすることに喜びを感じる。
どんなSubも──かつて別れたただ1人を除いて──彼を満足させることはなかった。だがSterlingの不屈さ、それと対をなす心の底からの服従、Owenを喜ばせようとする姿はOwenを揺さぶっていく。

プレイそのものも色っぽくてよいですが、DomとSubという特殊な立場を踏まえた上での感情の変化が非常に微細に書かれていて、読みごたえがある。
BDSMの話ってプレイの物理的な描写以外は単調になりがちな傾向があるんだけども、これはプレイの中で起こる葛藤や、2人の互いに対する理解が、そのまま彼らの人間関係に投影され、互いへの感情を深めていく。とても繊細に書かれた話だと思います。
生き生きしたSterlingも、彼を支配して愛でるOwenの強さも、とても魅力的です。

BDSMを中心とした人間関係、そして「初心者のSub」と「それを導くDom」の物語と言うと「A Strong Hand」に近い構成ですが、あれがプレイそのものよりは主人公同士の感情的な絆を中心に据えていたのに対して、この「Bound and Determined」はプレイの比重がとても大きい。
ので、がっつりとBDSMが読んでみたい、という人向け。
BDSMって日本のSMとはちょっとちがう(ものが多い)ので、「SMって何がいいのかわかんない」という人でもためしに読んでみるといいんじゃないかなーと思います。苦痛や拘束は「手段」であって、その先にあるものにたどりつくには、何よりも信頼が必要で、その信頼の存在が、この話のテーマにもなっています。

苦痛や、公開プレイも(一部)含んでいます。(強烈なものではないので、すごく苦手な人以外は大丈夫かと)
公開プレイってあまり好きじゃないんですが、この話の中での位置づけはよかったですね。何故人はBDSMを求めるのか、何故クラブ内で公開プレイをするのか、という「何故」のあたりがきちんとしたフォーカスで描き出された話です。

★支配
★焦らし

★Three-Star rating system★


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モノクロームロマンス(M/M翻訳)


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・2017年
・7月 ヘルハイ3巻
・夏 雑誌短編
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas
・冬 雑誌短編
・ほかにも出るかも
・不甲斐なくてごめん

*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター

 
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