Slash×Slash

Slash(m/m小説) レビューブログ

※万人向けの内容ではないのでご注意ください
→このブログについて

[タグ]長さ:1~3万語 の記事一覧

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Walk Among Us
Vivien Dean

WalkAmongUS
★★ summary:
ニューヨークに住んでいる画家のCalvin Shumacher は、10年以上前に縁を切った父親の葬儀のために、故郷に戻ってくる。父親は彼がゲイであることを許さず、家を逃げるように出たCalvinは自立して生きていくことを学ばざるをえなかった。
父の死にほとんど何も感じることなく、ただ人から「冷たい息子だ」と言われるのをさけるためだけに墓場に立っていたCalvinだが、しめやかに行われる筈の葬儀の最中に銃声が鳴り響く。

参列者のひとりが倒れ、皆が逃げまどう中、Calvinは霊廟の屋根にいる射撃手の姿を見ていた。その男のまなざしは静かで、Calvinの心を射抜くほどの哀しみに満ちていた。
すぐ立ち去るかに思えた殺人者は墓場にとどまり、Calvinは彼に相対する。何も悪いことはしていないという男の言葉に、Calvinは驚く。
“You shot someone.”
だが男から返ってきた答えは予想だにしないものだった。
“No. I shot something.”
.....



前にEPPIE受賞の記事とかしれっと書きましたが、あれ本選じゃなくて「カバー」のカテゴリみたいですね。いつもいかに適当に見てるかバレようってもんです。
受賞作はこっち
それはともかく、ちゃんと受賞作の1つ「Walk Among Us」を読んでみました。たまたま買ってあったものなので、ただの偶然だったりしますが。

謎めいた男、謎の死体、故郷に戻ってきても父の死を嘆くことができず、孤独なCalvinはその謎に惹かれていく。男の謎掛けのような言葉はどこまで真実なのか、彼は何者なのか。そして“Walk among us”は一体何なのか。
アンソロ・短編部門なので、短めです。それなりに読みごたえやオチもありますし、気楽に段落のつくものを読むにはとてもいいと思う。

ちなみに同カテゴリの候補作の「If All The Sand Were Pearl」も読んだことありますが(たまたま。あれ表紙がかわいいので買ってしまったのです)、こっちは古風な感じの、ちょっと耽美っぽい雰囲気が好きな人は楽しめるのではないかと。
家の借金のために知らない男の夫になることを決めた主人公──という、すごくBLっぽい話なんですが、時代ものなのかファンタジーなのか判然としない(多分ファンタジー)、そんな貴族的な慣習にしばられた社会の話です。
…扉の外に立っているお世話係とくっつくのではないかと思いながら、読みおわってしまったのは内緒。

両方Samhainから出ていて、「A Calling of Souls story」ってキャッチがついてますが、Samhainは何にでも(シリアスなら)このキャッチをつける気がしないでもない。

GLBTカテの受賞作は「Orientation」
これはレビューで激賞されているのを見たことがあるので、今度読んでみようっと。25% Discountのうちに買うべしか。
「Historical/Western Erotic Romance」カテの候補作「Stealing Northe」と「Stealing West」もスラみたいですね。「Stealing Northe」はM/M/Fって書いてあるけど、まあ。読んでみるかな、カウボーイ。別にそんなに執着してるつもりもないのですが、どんどんカウボーイものがふえていく。
あまりにも氾濫しているパラノーマルやシェイプシフターものにも、そろそろ手を出すか…

★短編

スポンサーサイト

Object of His Desire
Ava March
ObjectOfHisDesire★★ summary:
1821年8月、イギリスのダーハム。
22歳のHenry Shawは、10歳以上年上のSomervilleの侯爵、Arsen Greyに恋をしていた。ロンドンで出会い、彼を所領へ招いたこの男は傲慢で、美しく、倦怠感を身にまとってなお優雅な男だった。
だがその恋は不可能なものだった。Arsenは領地を継ぐための跡継ぎが必要だし、いずれ妻を迎える。何より彼は、己の屋敷で連日ひらかれている淫蕩なパーティに訪れる魅惑的な高級娼婦にその目を向け、男に興味を見せなかった。

彼の屋敷にはさまざまな貴族たちが招かれ、口に出すこともはばかるような様々な欲望を満たしていく。Shawもそれらの女性たちに誘惑されつづけるが、パーティが続く一週間の間、彼は女たちにとりあおうとはしない。できなかった。彼が望むのはArsenだけで、それは決して手に入れられないものであった。

退廃のパーティ、女たち、ArsenのShawに対する無関心、無意味な嫉妬、苛立ち、無表情の下に覆った己の欲望──すべてのものに疲れきって、ShawはArsenのもとを離れようと決心する。
だがその時、Arsenが彼を寝室へといざなった。

ただ一度、この一度きり。気持ちと体を満たして、それで終わりにしようとShawは決める。Arsenのそばにはいたい。だが彼の秘められた愛人になって、ただ道具のように彼に使われていくことはできない。それをすれば、自分が自分でなくなってしまう。Shawにはそれがよくわかっていた。
.....



19世紀のイギリス、退廃の館とその主の話です。
中編なのであまり複雑な話ではありませんが、人の心の動きがよく書かれています。Shawは田舎の出で、大柄で、他の貴族たちのように洗練された美はないが、その館に集う人間の中でただ一人、Arsenに対する揺るぎのない忠誠心を持っている。
Arsenはそれを知っていて、Shawをくりかえしためします。

Arsenは富と身分をもち、美しい男ですが、傲慢で、その傲慢さとShawのまっすぐな心根が、一夜の情交を通じてぶつかりあう。Arsenの傲慢さは、本当に大事なものを失いかねないほどに強いものでもあり、Shawはその向こうにあるものを見なければならない。そしてShawもまた、プライドの低い男ではない。身分や名前ではなく、彼は自分自身でありつづけることによって背をのばして立つ、誠実で潔い男です。
Arsenに性の道具として使われるくらいなら、どれほど愛していてもArsenの元を離れた方がましだと思っているし、それを実行しようとする。
一方のArsenはShawの中にある誠実さを求め、自分が他の愛人たちから得られなかったものをすべてShawが与えてくれることを知っている。金では買えない、手に入らないものをShawがArsenに感じさせてくれることを知っている。
それぞれの心の動きと、求めるものがきちんと描き出されているので、読んでいて物語が心に入ってきます。

傲慢な年上の貴族、純朴でまっすぐな田舎出の青年──。
青年は貴族に恋をし、望みがないと思っているが、じつは青年にめろめろなのは貴族の方だった、というテンプレ鉄板。でも楽しいぞ!
そういう話が好きな人だったら絶対におすすめ。良質に楽しめる一編です。

★短編
★ヒストリカル(貴族)

Payback
Jordan Castillo Price
Payback★★ summary:
Scary Maryはデトロイトのゴスクラブで行方不明となり、死体となって発見された。

Michaelは、親友が吸血鬼に殺されたと知っていた。
その存在をあからさまにされることはないが、吸血鬼たちは都市の闇に息づき、「吸われたがる」若者たちなどをその餌食にしていた。だがそのことを警察や家族に言うことはできない。
Michaelは家を去り、様々な事件の新聞記事などをもとに吸血鬼を追い、2年かかってその中の1人を発見する。

杭や槌、十字架、聖水、そしてドラッグまで用意して、吸血鬼が立ち寄るバーに出かけたMichaelは、体良くその吸血鬼、Grayとともにバーを出ることに成功する。
だが彼にとって計算ちがいだったのは、Wild Billという男も一緒についてきたことだった。タトゥを入れ、レザージャケットをまとったセクシーな男。
もし狩りに心を取られていなければ、Michaelがデートしたにまちがいない男。

3人の生々しいセックスの最中、Wild Billは何故か、吸血鬼に薬を盛ろうとするMichaelに協力する。
彼は何者なのか。何が目的なのか。そしてMichaelはうまくGrayを「狩る」ことができるのか…

.....


Jordan Castillo Priceによる「Channeling Morpheus」のシリーズ1作目。
短編と言ってもいいような短さですが、シリーズ全体を通して濃厚でおもしろいです。この1作目は導入編という雰囲気がありますが、まずつかみとしても成功している。

Michaelはゴスメイク(主にアイライナーのようです)をしている美しい青年で、まだ若い。21歳。友人の仇の吸血鬼を1人で追っています。
退廃的で、少し疲れたような雰囲気を漂わせる青年だけれども、その内側は親友を失った痛みに満ちています。吸血鬼が元凶だと知った彼は、杭を手にしてそれを追わずにはいられない。勇気があり、向こう見ずでもある。世を投げた厭世的なところも見せる一方で、妙に純情なところもある。
吸血鬼たちは、彼の痛みと孤独に惹かれます。
そしてMIchaelは今回の狩りを通して、自分が持っていた「吸血鬼」の悪鬼のようなイメージをくつがえされることになる。それはScary Maryの死と同じように、彼の人生を変えていきます。

作中に出てくるRohyrnolというのは催眠鎮静薬で、デートドラッグ(レイプドラッグ)としても使われる。
吸血鬼はこれに弱くて「夢の世界へ行ってしまう」そうですよ。シリーズ名の「Channeling Morpheus」というのも、「Morpheus(モルペウス:ギリシア神話の夢の神)とチャネリングする」という意味かと。

このシリーズは、同じようにやや短めの連作で続きまして、今5作目まで出ています。MichaelとWild Billについて書かれたその先の話がおもしろいというか、やはり濃厚で、独特の香りがあります。
話もおもしろいシリーズなんですが、特筆するべきはその雰囲気のような気がする。
Jordan Castillo Priceの文章には不思議な雰囲気があります。ダークで、湿り気がある。かと言って饒舌ではなく、むしろ淡々とした筆致。
たとえばCameron Daneの文章は「温度が高い」といつも思うんですが(…70度くらいかな?)、Jordan Castillo Priceは「温度の低い」作家ですね。温度が低く、耽美な湿り気と、コンクリートの打ちっ放しのようなざらつきとストイックさが同居しています。
この先のシリーズで書かれる2人の道行きもまさにそういう、ダークなものがまとわりついた、どこに行くかわからない不安定さと、互いを求めてしまう激情とがどろどろに入りまじった話です。

吸血鬼ものが好きだとか、ダークっぽいものが好きな人におすすめ。まずは好みにあうかどうか、このシリーズ1を読んでみるというのもいいと思います。

★吸血鬼
★短編

Vertigo
Jordan Castillo Price
Vertigo★★ summary:
Channeling Morpheusシリーズ2作目。

MichaelとGrayとの邂逅から2ヶ月。Wild Billは吸血鬼の集団とともに、吸血鬼グルーピーの連中の血を吸い、セックスし、それなりに平和にすごしていた。
だがそこに、ついに彼の居場所をつきとめたMichaelが現れる。
Michaelはここに「吸血鬼を狩りにきたわけではない」と言う。彼はWild Billに会いに来たのだ。「杭のことは心配しなくてもいい」と言われるが、Wild Billが心配しているのは杭のことなどではなかった。

彼はMichaelに惹かれていた。強烈に。
だがMichaelは吸血鬼を狩る人間で、Wild Billはもう何十年も前に人間であることをやめ、吸血鬼となっている。どれほど惹かれても、Michaelに近づくのがいい考えだとは思えなかった。

そしてMichaelは、Wild Billの思った通り、その手の中にひとつふたつ、巧みな仕掛けを準備していたのだった。
.....



前作「Payback」に続く、今度はWild Billの視点から書かれる再会話です。やはり短編。
退廃的で、重く湿った、その一方でストイックなJordan Castillo Priceの雰囲気は健在。

MichaelとWild Billとをつなぐものは、そういう重く湿った「何か」であるように見えます。欲望なのか、それともそれが欲望以上のものなのか。互いにそれがわからないまま、Wild Billは逃げようとするが、Michaelは彼を追う。
2人の関係は、「Payback」の出会いからはじまり、この「Vertigo」で決定的な変化を迎えます。

ひどく微妙な、闇のふちをMichaelは歩きはじめているようにも見える。彼をつき動かすものはきっと孤独で、Wild BillもまたMichaelの孤独に惹きつけられる。
深い、暗い予感を含んだ物語です。
「Payback」を楽しんだ人なら絶対におすすめ。

★吸血鬼×人間
★短編

All the Things You Are
M. Jules Aedin and Anna J. Linden
All the Things You Are★☆ summary:
Bryantはアラバマの大学でフットボールの選手をしていたが、膝の怪我でプロスポーツの道をあきらめなければならなかった。
ゲイであることを隠し、同じフットボールの仲間と秘密の関係を持っていた彼は、相手と別れてサンフランシスコへと引っ越す。自分を隠さずにすむ場所へ。

ある日Bryantは、長い黒髪の女性が荷物をかかえているところに出会い、手を貸そうとする。

日系アメリカ人のKaiは、その黒髪と小柄な体躯から女性扱いされることにうんざりしていた。
またまちがわれた彼は、思わずBryantの助けをはねつけてしまうが、Bryantが膝の怪我をかかえていることに気付き、罪悪感から自分の働くマッサージの店に招いて無料で施術する。
それが2人の出会いだった。

彼らの関係は急速に深まるが、BryantにはKaiになかなか言えないいくつかの願いがあった。
そしてその中には、Kaiにとっては受け入れがたい価値観のものもあった。…たとえば、結婚とか。
......


「To Have and to Hold」というアンソロジー企画がありまして、6月は毎日1本ずつ短編をお届け!なアンソロです。季節柄「結婚やそれに関るもの」というのがテーマなようです。
好きな作家が書いていたもんでアンソロ買わないと読めないのかと勘違いして買ってしまいましたが(先月まで割引だったし)、バラでも買えます。まあ思わぬ作家に会えるアンソロ好きだからいいんですが。
そんなわけで、6月4日現在、毎日1本ずつ短編が送られてきていまして、3本読了。折角なので、おもしろいものがあったら紹介していきたいと思います。

この「All the Things You Are」はガタイがいいけれども、ちょっとロマンティックなところがあって感受性の強いBryantと、きつい性格といくらかの癇癪を持ったKaiとの可愛いカプの話です。
出会い、互いに相手を好きになるけれども、ちょっと湿っぽいと思ってはっきりと気持ちを口に出すことができない。特にBryantはやや脳内で先走るところがあるので、言いたい、でも言えない、もしKaiがカジュアルな関係のつもりだったらこれは重すぎる!と、ぐるぐるしています。

個人的に男性カップル同士の結婚というのがどうもピンとこないので、結婚を軸にしたロマンスというもの自体がよくわからなかったりするのですが(「社会に認められる」ことの重要性が日本と欧米とでちがう気がする)、でもBryantはそれを差し引いても愛らしい。
彼は結婚したいというよりは、いずれ「結婚」という形を踏まえることのできるシリアスなカップルになりたいんですね。
Kaiはそこのところはわかっているつもりだけれども、他人に認められるためだけの形式的な制度(彼の中では結婚はそれにあたる)には意味を持てない。
2人の価値観は大きくくいちがっていて、どちらも相手と話し合わないせいで、気持ちばっかりがもつれる(主にBryantの)。で、ある日臨界に達してしまったりするわけです(主にBryantの)。
で、今度あわてるのはKaiの番。さあ大変。

さらっと読めて、気持ちのいい、可愛い話です。べたべたにロマンティックでもなく、むしろドライになろうとして無理をしているBryantを楽しむ1本のような。
下手すればNovellaくらいの長さになりそうなテーマを短編にまとめた手腕は見事だと思う。この先も幸せにばたばたしそうなカプなので、後日談とか続編とかほしいなあ。

★短編

Bound by Deception
Ava March
Bound by Deception★★☆ summary:
1822年、ロンドン。
弱小貴族の青年、Oliver Marsdenには誰にも言えない秘密があった。
子供の頃に侯爵の次男であるVincent Prescot と出会い、固い友情を築きながら、彼はずっとこの友人に恋をしていた。
誇り高く、有能で、貴族らしいたたずまいのVincentは彼にとってかけがえのない友であると同時に、決してかなわない恋の相手だった。

だがある日、OliverはVincentがロンドンの娼館で男を買っていることを知ってしまう。
ギャンブルで勝った金を持ち、Oliverは娼館の女主人に特別な願いをたのみこんだ。
Vincentが次に訪れる時、自分を男娼としてVincentの部屋に入れてほしいと。

ついにその日、顔がわからないほどに暗く灯りを絞った部屋でVincentを待ちながら、Oliverは部屋にそろえられた道具を見て驚く。Vincentが男を買っているというのも充分以上の驚きだったが、その部屋にあるものは彼の友人に対する想像をこえていた。
鎖、手枷、鞭。それはOliverの知らない世界であったが、Vincentがそれを求めるならすべてをさし出す覚悟が、Oliverにはあった。

一度、ただこの一夜。Vincentの手が、唇がこの体にふれるなら。
ほかのことはどうでもよかった。一生に一度、ほしいものを手にできるのなら。
.....



思いが高じて、だますようにして友人に抱かれようとする男と、娼館で男を買いながらも自分が男を好きであることを否定している男の話です。

Ava Marchは「Object of His Desire」がおもしろかったのですが、これも同じ、ヒストリカルなスラッシュです。
相変わらず心理描写が繊細で、同時にとてもキャラクターが魅力的です。どちらも彼らなりの欠点をかかえ、彼らなりの長所があり、だがとても誠実な男たちです。

Vincentは、Oliverの求めるすべてを持っている。名誉、力、金、己に対する強い誇り。
Oliverもまた、Vincentにはないものを持っています。VincentはOliverに話を聞いてもらうのが好きで、Oliverが何気なく言う一言に、自分を理解されて受けとめられていると感じる。彼にとっては得難い友人です。
だが、あの娼館で一夜の行為を共にした相手、心に残って消えない男娼が、まさかこの友人だったとは思っていない。

そしてまたVincentはその誇り、完璧な息子であろうとする自意識の中で、自分の性癖を自分に対しても否定している。たしかに娼館で男を買っているが、自分は彼らの求めるものを与えているにすぎないのだと。
2人が向きあった時、Vincentは自らの弱さをそのままOliverにぶつけ、自分の醜い言葉にたじろぎます。それが本当の自分の姿だったのかと。暴かれるのは、一夜のことだけではないのです。

高まっていく緊張の中で彼らの友情はどうなるのか。VincentはOliverの行為を知るのか、そして自分自身を受け入れることができるのか。

BDSMプレイはそれほどキツいものはないですが、きちんと雰囲気や気持ちの流れが描かれていて、とてもいいシーン。彼らが「対」であることが、シーンからつたわってくる。
全体を通して端正な、誠実な物語だと思う。どこかクラシカルな文章が物語の舞台や雰囲気とよくあっていて、貴族やヒストリカルなものが好きな人だけでなく、おすすめの一作です。短編というわけではありませんが、それほど長くもないので、気軽に手を出せる1本かと。

続編の「Bound to Him」も出ていまして、同じように誠実で、静かな色気と緊張感のある話です。
これはこのままシリーズ化するかな? するといいなあ。

★ヒストリカル
★BDSM

Bound to Him
Ava March
Bound to Him★★★ summary:
Lord Vincent PrescotとLord Oliver Marsdenの関係がはじまってから、6ヶ月がたとうとしていた。
Vincentは、自分のすべての望みに応えてくれる恋人に満足し、父親から買い取った領地の開拓にも成功し、忙しくすごしている。

だが、Oliverは時おり憂鬱になっていた。
たしかに彼は、Vincentと体を重ねることができるならほかに何もいらないと思った。「心はいらない」とも友人に言った。
それでも6ヶ月の関係の中で、Vincentがまるで変わらないことにOliverは大きな痛みを感じてもいた。彼らの間は前と変わらない──いや前よりも悪い。もはや友人同士としてOliverと社交パーティで顔を合わせることすら、Vincentは避けようとした。

行為がおわれば、VincentはOliverの部屋を去る。一度として、ともに朝まですごしたことすらない。
自分がVincentの「汚れた秘密」になってしまったかのような重い失望感を、Oliverは拭うことができなかった。

そんなある日、Vincentは、父親からの呼出を受ける。
長男にすべての目を向け、次男のVincentがいかに努力しようと一顧だにくれなかった父親の、今になって息子の存在をたのみにする言葉に、Vincentは揺さぶられる。
だが父の要求に応えることは、Oliverとの関係を完全にあきらめなければならないことを意味した。貴族の令嬢との結婚。

迷い、Oliverに助言を求めようとするVincentは、だが相談を切り出す前に恋人から別れを告げられる。彼にとってはあまりにも唐突に、そしてあまりにも絶対的に。
.....



Bound by Deception」の続編。
相変わらず、誠実で繊細な2人の話です。

Vincentは世間の目を気にし、そしてまだ完全に自分たちの関係を受けとめることができていない。そして、そのことがどれほどOliverを傷つけているのか、見えていません。
Oliverは待つことに疲れはじめ、Vincentは何が友人を苛立たせているのかわからない。
ひとつひとつの苛立ちは些細なことだが、すべては深い絶望から出ている。Vincentは決してOliverを、そして彼の愛情をあるがままに受け入れようとしないのではないかと。

それでもOliverは愛する相手のためにできる限りのことをしようとするけれども、体のいい道具になってしまったようで、心にささくれるものをどうにもできない。そしてそれは、Vincentのせいばかりではありません。Oliver自身の環境の悪さ、わずかな収入にたより、自分でしっかりと身をたてることのできない状況もまた、彼を傷つけている。

Ava Marchの小説でうまいところは、必ず話の中でキャラクターたちが自分自身と向き合い、変わっていくところです。恋が、そして互いの存在が互いを変えていく。
時に痛みをもつ言葉を相手にぶつけあって、そしてその痛みが彼らに真実と向き合う勇気を与える。自分の中にある、目をそむけていた真実。
その「変化」を導くのが大変にうまい作家だと思う。一瞬で何かが変わるわけではないが、痛みが染みこんでいくように何かが見えてくる、その静かな目覚めが丁寧な筆致で浮かびあがってきます。

今回もまた、VincentとOliverは大きな決断を強いられる。Vincentはずっと関心を得たいと思っていた父からのたのみを断りきれず、同時にOliverの存在を心から追い出すこともできない。彼は何かを選ばねばなりません。そのことは、自分の奥深くに眠らせていたものの大きさを彼に気付かせる。Oliverに対する思い。
Oliverもまた、Vincentとまっすぐに向き合うために、自分自身を変えていかなければならない。ただ待つだけではなく、自分をもっと誇りに思えるように。

2人は互いをとらえる感情の中でもがき、相手の存在にあらためて気付く。
相手を鏡のようにして自分の姿をあらためて見つめ、相手の目にうつる自分に真実を見る。それが恋というものかもしれません。

BDSMプレイがありますが、そう強くもないものなので、特に読む人は選ばないかと。
ヒストリカルなもの、秘められた関係が好きな人におすすめ。

★貴族
★すれちがい

★Three-Star rating system★


[カテゴリ]View ALL
レビュー (310)
★★★ (88)
★★ (188)
★ (34)
モノクローム・ロマンス (10)
電子ブックリーダー (23)
iPodTouch・Stanza (19)
nook (4)
雑談 (84)
英語 (29)
文法 (4)
読書日記 (11)
…このブログについて (8)
…書店情報 (2)
[タグリスト]

07 | 2017/08 [GO]| 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

カテゴリ一覧 最近の記事一覧 プロフィール リンク一覧 メールを送る
[カテゴリ]


モノクロームロマンス(M/M翻訳)


■公式サイト■

・2017年
・7月 ヘルハイ3巻
・夏 雑誌短編
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas
・冬 雑誌短編
・ほかにも出るかも
・不甲斐なくてごめん

*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
・ドント・ルック・バック
・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター

 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。