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M/M小説 (原書)レビューブログ

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[タグ]ジャンル:YA・NA の記事一覧

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Carry the Ocean
Heidi Cullinan
CarryTheOcean.jpg★★★ summary:
The Rooseveltシリーズ1。
Jeremeyは高校を卒業したものの、今の望みはただ、大学に入るまでひたすら眠りたいだけ。誰にも気がつかれたくない。誰のことも気が付きたくない。
だがそんな望みは、Emmetと出会った瞬間に消えたのだった。大学で数学とコンピュータサイエンスを専攻するその少年は、頭が回って前向きで、Jeremeyとつきあいたがってて、高機能自閉症だった。

Jeremeyにはそれを気にする余裕はない。自分の気持ちを持て余し、そんな自分を責めていた。
自分と、両親の作った小さな規範の世界から抜け出せずにもがく彼を、Emmetが救い出し、彼らは共同生活を始める。

それぞれに問題をかかえ、葛藤し、二人のどちらにとっても世界は優しい場所ではない。
でもそんな世界でも、幸せに生きる方法はある。きっと。
.....



これジャンル的にはYA(ヤングアダルト:青少年向けの作品。一般に性描写淡し)のようなのですが、正直どこかのカテゴリに入れてしまうのはもったいないパワフルな作品です。
高機能自閉症で、知能は高いが感情の働き方が他人とは違っているEmmetと、鬱病に苦しみ、自分を受け止めることのできないJeremeyの2人の一人称で、物語は進んでいきます。読者はそれぞれの視線を通して世界を再認識することになる。彼らから見える世界、彼らに届く光と闇を通して。非常に挑戦的な、そして高いテクニックを要求される書き方ですが、お見事。
何に彼らが苦しめられているのか、感情を表に吐き出せないEmmetや、自分の感情に圧倒されてその向こうが見えなくなるJeremey、2人の苦しみや葛藤、不安、そして喜びや愛情がはっきりと伝わってくる。

それにしてもEmmetは偉いな!自分の障害を知り、考え、対処し、何か起きればその起因となることをつきとめてあらかじめ対処しようとする。障害を「個性」として生きていく強さがあり、輝きがある。
彼を支える両親も偉い。戦うこと、戦い続けること。それをしっかりと身につけて、Emmetは今度は初めて見つけた恋のために戦おうとするのです。その道は平坦とは言えないけれど。
その愛は、きっとJeremeyと彼の世界を救う。

繊細な、そしてとても豊かな物語です。文中に出てくるタイトルの由来が本当に美しくて、個人的にタイトル大賞をあげたい。
物語にしっかり浸ってみたい時におすすめの一作。

★共同生活
★YA(ヤングアダルト)

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The Foxhole Court
Goodreads-icon.pngNora Sakavic

TheFoxhallCourt.jpg★★★ summary:
All for the Game1巻。
ヤクザもの×天涯孤独×スポ根×メンヘラ。言ってしまえばそういうシリーズ。
そして青春。

Neil Jostenには秘密があった。今の誰にも正体を知られるわけにはいかず、過去の誰にも居場所を知られてはならない。
だがExyというスポーツは、いくら母親に折檻されようがやめられなかった。逃げつづける彼の、それだけが生きる意味だった。
8年間、大量のパスポートを使い、髪の色と瞳の色を変えながら彼は生きのびたが、母親は旅の途中で死んだ。車ごと彼女を燃やして見送ったのはNeilひとり。

大学のチームにスカウトされ、彼はそれが最悪の判断だと知りながらパレルモの州立大学のチームに加わる。そこはまるで「寄せ集め」としか言いようのないプレーヤーの巣窟で、Neilも早速ドラッグを盛られてその洗礼を受ける。
いつか過去に追いつかれたらここも逃げなければならない。
今の自分を捨てて。次はどこへ?
それともここで、戦うに足るものを見つけられるのだろうか。
.....



全三巻のスポ根もの。て言ってしまうと語弊があるけど、根本的にはこれ青春小説だと思うんです。孤独な主人公がついに仲間を発見し、お互いを変えて、友情を軸にチームの勝利と栄光への道を模索する。

しかしこの主人公のNeilは組織から逃げつづけている男。見つかれば悲惨な死が待っているとわかっているし、いつか見つかると思って諦めているふしもある。
チームメイトもじつにカラフル。
同じチームにいるKevinはこのスポーツExyの生みの親を母に持ち「Exyの息子」と言われるエリートプレーヤーである一方、ヤクザ組織との関係も深く、かつていた常勝チーム内での自分の位置を示す「2」のタトゥを左頬に入れられている。
そのKevinを奇妙なほどに守っているのがAndrew、少年院上がりの凶暴な少年。普段は裁判所命令で感情を抑える薬を飲んでいて、いつも退屈したような顔をしていますが、一瞬で凶暴になる絵に描いたようなメンヘラ。そして優秀なゴールキーパーだが何のやる気もない。
彼はNeilが何かを隠していると勘で察知し、Kevinを守るためにNeilからその秘密を引きずり出そうとするのです。

ほかにも様々にアクの強い少年少女が寮で暮らしながら、ゴタゴタとExyのシーズンを戦っていく。スポーツ以外のことでも、彼らはそのシーズンをのりきっていかなければならない。いやいや、じつに騒がしいシーズン。大学スポーツも命がけだ。

Exyというのは作者が考え出した架空のスポーツで、ラクロスとアイスホッケーを合わせた感じの非常にフィジカルコンタクトが激しいスポーツだとのこと。
Neilはアタッカーで、大体は二人一組で攻め上がっていく。
まあNeilはアタッカー向きだよね。負けず嫌いでどこか自己破壊的なほどに衝動的なところもあり、一巻では敵にするべきでない相手に喧嘩を売ってしまう。その結果、チームメイトが命を落とします。
そこから話はまた新たなフェイズに入っていくのだけれども。逃げなきゃ逃げなきゃと言いながら、そのNeilの中には運命に対する怒りがあって、そのはけ口として自分に許しているのがExyだけなんだろうな。
Andrewがキーパーっていうのはもうプレイ中に「動きたくねえんだろ」感がすごく強い。でもまあ、彼もちゃんと理由があってキーパーなのです。それはまだ先の話。

YAなので全体にエロはなく、一巻はもう最後まで「誰とカプになるんだ!?」の問いがぶらさがったまま。その辺とか、Neilが心を少しでも開いていけるかな…というのは二巻以降に持ち越しで、まず一巻は導入部。
GRのレビューで「二次っぽい」という評価を見て膝を打ったんだけど、なんていうか学園パロっぽいキャラの濃さと設定の尖り方があります。漫画っぽいというか。私はそれはすごく好きなので、是非読む側がのっかっていって積極的に楽しみたい三冊。三冊通すとかなりえげつない(痛い)シーンもあるのでそこはご注意。
主人公の名前が同じせいもあるだろうけど、読みながらドン・ウィンズロウの「ストリート・キッズ」シリーズを思い出した。あれも人をたよることを知らない主人公の話だった。そういう青少年の痛々しさ、ギザギザハート的な繊細さが隠しきれないNeilの成長を読めてよかった。

一巻はKindle無料だし、三冊セットもあるので、読む時は一気読みオススメです。
三巻通して、追いつ追われつのサスペンス感と、Neilの成長ぶりと、大学スポーツリーグでの栄光と挫折の階段を楽しめるシリーズ。ぐっとくるロマンスも(最後には)ちゃんとあるよ!

★スポ根
★組織からの逃亡

The Raven King
Goodreads-icon.pngNora Sakavic

TheRavenKing.jpg★★★ summary:
大きな犯罪組織から逃げているNeilを、Andrewは守れると言った。学校に残ってExyをプレイするかどうかはNeil次第だと。
だがAndrewは代価を要求する。天才プレーヤーKevinが逃げ出さないよう、同じチームに引き止めておくこと。

誰もが過去から逃げている。
彼らを守っているのは、社会病質者の青年Andrewだけ。
いびつな、一瞬にして壊れそうな状況の中で、少しずつNeilたちのチームはこれまでなかったまとまりを得ていく。
それは団結ではない。
きっともっと必死でもっと切羽詰まった、一秒ずつのサバイバル。

そんな中、AndrewとAaronの双子にも過去が追いついてくる。いつも一緒にいるくせに互いを憎んでいるこの双子たちにもそれぞれの物語があり、それがついに白日のもとにさらされていく。

そしてNeilの恐るべき敵も、Neilの存在に気がついていた。Neilはついに選択を迫られる。
すべてを捨てて逃げるか。手に入れるつもりもなかったなにもかもを後に残して。
それとも、足をとめて立ち向かうか。たとえ死が避けられないとしても。
.....



All for the Game2。
逃げ回り、警戒心が強く、人を信用しないNeilが少しずつ変わっていくシリーズ二冊目です。
彼とAndrewの関係もこの二巻で大きく変わる。

Andrewは、Neilが大量の偽パスポートを持っていることも逃亡中であることも知っているけれども、周囲にそれを話す気配はない。
彼にとって大事なのはKevinの身の安全のことだけに思える。
とは言っても、サイコパス気味で薬を飲んでいるAndrewに保護欲があるようには見えず、Neilに対してもなんだか「珍しいいきもの」「便利かもしれないいきもの」を見ているような感じです。

そのAndrewが大きな傷をかかえていること、そして彼なりの無慈悲で効率的な形でそばにいる人間を守っていることが、この二巻で見えてきます。
痛みをどこかに強くとじこめてしまったAndrewは、決して弱音は吐かない。ただ自分と世界を切り離しているだけ。
彼を覆った鋼の殻の向こう側をのぞけるのは、あるいはのぞこうという度胸を持つのは、同じくらい大きな痛みを背負って前に進みつづけているNeilだけなのです。
だからこそAndrewはNeilを嫌いながら興味を持ち、Neilの薄皮をはぐようにその中をのぞきこもうとする。
でも忘れてはならない。深淵をのぞきこむ時、向こうだってこっちがのぞけるということを。

二人のわずかな、一瞬だけかさぶたの内側を見せ合うような交流は、ピュアでもあるし痛々しくもある。

いろんな血なまぐさい設定はありながら、スポーツで青春で全寮ものの王道をきちんと踏んでいるシリーズだと思う。
青少年のわかりあえなさと、わかりあえないからこその互いの引力(二人だけでなく、チーム全体としても)が時に繊細に、時に荒々しく描き出されています。

一巻で少しゆったり目だった展開が、キャラ紹介完了で二巻になって走り出した感じ。ほかのチームの面々もはっきりとした個性や役割を見せて、このでこぼこで落ちこぼれのチームがまとまりはじめます。
Neilは気がついていないけれども、彼らをまとめていっているのはNeilの存在なのです。人のことに興味がないといいながら人のことを放っておけず、逃げるべきだとわかっていてもExyを愛するあまり(そしてチームにも愛着を持ちはじめて)自分の命の残りが減っていくのにそこを去ることができない。彼には自分でも気がついていない強さと統率力があって、それが見えてくるのもこの2巻からです。読んでいてとても応援したい。
それにしても人からちょっと優しいことをされるたびに、思考停止でフリーズしてしまうNeilがかわいいやら不憫やら。

2を読むなら3も買っておいたほうがいいですよこれは。
そこそこ青春展開だった2巻の後半から一気に怒濤の血まみれ展開がはじまって3巻になだれこみます。
YAだけれどもむしろ「YAはあまり」という人に読んでほしいシリーズ。有無を言わせぬ少年漫画っぽさもあって楽しいです。

★青春
★自己犠牲

★Three-Star rating system★


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