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Slash(m/m小説) レビューブログ

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[タグ]ジャンル:BDSM の記事一覧

A Strong Hand
Catt Ford
A Strong Hand★★★ summary:
SMシーンの高名な写真家であるDamianは、予定していたモデルが来られなかったある日、思いついたイメージをためしてみるためにアシスタントのNickを使う。そして、Nickが完全に彼のイメージを再現していることを発見した。

Nickは学費のために仕事を必要としていた。全裸でSMシーンの写真を撮ることにもそれほどの抵抗を感じなかった。Damianはすぐれた写真家で、モデルを大事に扱っているのを見ていたし、カタログの写真はモデルの顔が判別できないよう暗い影にされていることも知っていた。
彼が知らなかったことは、自分がDamianのイメージの中で折り曲げられ、器具に拘束されることにどれほどの興奮を覚えるか──どれほど、Damianの支配の下で昂揚するか、ということだった。
彼は欲情し、驚く。Nickはゲイではなかったし、SMに対するわずかな知識も、興味もなかった。だがDamianの下で彼は服従の喜びを覚えていく。

DamianとNickは、互いの間にあるものを探りはじめ、DamianはNickを自分のSubとして様々なことを教えはじめる。
一度Nickが自分の中の性癖に気付いた以上、無自覚にその世界に入っていくことは危険をともなう。「セーフワード」の存在すら知らないNickを無知なまま放置しておくことはできなかったし、DamianはNickを支配する誘惑には勝てなかった。
だがNickの持つ好奇心が満たされた時、Nickが彼を去るだろうことも、Damianにはわかっていた。彼らは10の年の差があり、Nickを動かしているのはあくまで未知の世界への誘惑でしかない。
そう思いながらも、いつのまにか、DamianはNickに対する気持ちを無視できなくなっていく。支配と愛情の境い目で、彼は苦しみ、主人としての自信も失い‥‥
.....



わりとSMってサディズム/マゾヒズム的な観点からとらえられがちですが、スラにおける(というか欧米における、か?)SMというのは「Slave/Master」の関係性を重視するものが主で、嗜虐的な(だけの)ものは少ないように思います。
BDSM系の名作と言えば「Remastering Jerna」なんかもすごく好きなんですが、このへんを読むと「主人にもスキルが必要」ということがよくわかります。奴隷の欲望と限界を正確に読み、己を律するだけの強さがない人間は、Dom(Dominant=支配者)になる資格がない。
奴隷と主人とは言っても彼らの間には深い信頼が必要で、互いを信頼するからこそ彼らは深くシーンの中へ入っていく。奴隷の服従と屈服を得た主人には、その信頼に応える義務があります。
信頼を基礎として、彼らは互いの限界をさぐりながら、行為を深めていく。痛みや拘束具は、己を通常では感じられない世界へ解放していくための道具であって、目的ではない。

この「A Storong Hand」は、そのへんを見事に凝縮した話で、プレイの物理的な詳細だけでなく、そこにある精神的なつながりやハーモニーを書いています。
初心者で、ゲイでさえないNickを新たな世界へ導こうとしながら、DamianもまたDomとしての資質を問われる。彼は経験の深いマスターですが、Nickとの間にあるものはそれまでの彼の経験だけでは対処できないものです。
NickはDamianの支配を望んではいるが、一方で見知らぬ行為に怯え、途中でセーフワードを口走ってしまうこともある。
この場合、セーフワードを発した奴隷(ってのも何かちがうんだけど、Subをどう訳せばいいものやら…)ではなく、そこまで追いこんでしまった主人に問題がある。それが、即座に行為をやめて反省するDamianの様子からもよくわかります。
話の中でも何度か言及されますが、彼らはDomとSubの関係ではあるが、本質的にその関係を支配し、すべての力を持っているのはSubの方なのです。

Nickは迷い、惑い、Damianはいくつもの間違った手段を取ってしまう。
失敗と葛藤をのりこえ、彼らは互いを信頼することを覚え、相手のリミットを覚え、単なるプレイをこえる人間関係をつくりあげていく。そして、さらに深い感情も。

SMの話というより、信頼と人間関係の葛藤の話です。エロは山盛りですが、特にハードなプレイもなし。痛くもないし、受けもそんなにいじめられたりはしないので、SM読まない人でもおすすめ。
あと、写真を撮るシーンで紡ぎ出されるイメージがとても艶っぽくて美しい。
ラストはちょっとあっさりしすぎた感もありますが、そこまでがとてもおもしろかったし、特殊要素ではあるけれども、人間関係の絡みがよかったので★みっつ。

★BDSM

Bound by Deception
Ava March
Bound by Deception★★☆ summary:
1822年、ロンドン。
弱小貴族の青年、Oliver Marsdenには誰にも言えない秘密があった。
子供の頃に侯爵の次男であるVincent Prescot と出会い、固い友情を築きながら、彼はずっとこの友人に恋をしていた。
誇り高く、有能で、貴族らしいたたずまいのVincentは彼にとってかけがえのない友であると同時に、決してかなわない恋の相手だった。

だがある日、OliverはVincentがロンドンの娼館で男を買っていることを知ってしまう。
ギャンブルで勝った金を持ち、Oliverは娼館の女主人に特別な願いをたのみこんだ。
Vincentが次に訪れる時、自分を男娼としてVincentの部屋に入れてほしいと。

ついにその日、顔がわからないほどに暗く灯りを絞った部屋でVincentを待ちながら、Oliverは部屋にそろえられた道具を見て驚く。Vincentが男を買っているというのも充分以上の驚きだったが、その部屋にあるものは彼の友人に対する想像をこえていた。
鎖、手枷、鞭。それはOliverの知らない世界であったが、Vincentがそれを求めるならすべてをさし出す覚悟が、Oliverにはあった。

一度、ただこの一夜。Vincentの手が、唇がこの体にふれるなら。
ほかのことはどうでもよかった。一生に一度、ほしいものを手にできるのなら。
.....



思いが高じて、だますようにして友人に抱かれようとする男と、娼館で男を買いながらも自分が男を好きであることを否定している男の話です。

Ava Marchは「Object of His Desire」がおもしろかったのですが、これも同じ、ヒストリカルなスラッシュです。
相変わらず心理描写が繊細で、同時にとてもキャラクターが魅力的です。どちらも彼らなりの欠点をかかえ、彼らなりの長所があり、だがとても誠実な男たちです。

Vincentは、Oliverの求めるすべてを持っている。名誉、力、金、己に対する強い誇り。
Oliverもまた、Vincentにはないものを持っています。VincentはOliverに話を聞いてもらうのが好きで、Oliverが何気なく言う一言に、自分を理解されて受けとめられていると感じる。彼にとっては得難い友人です。
だが、あの娼館で一夜の行為を共にした相手、心に残って消えない男娼が、まさかこの友人だったとは思っていない。

そしてまたVincentはその誇り、完璧な息子であろうとする自意識の中で、自分の性癖を自分に対しても否定している。たしかに娼館で男を買っているが、自分は彼らの求めるものを与えているにすぎないのだと。
2人が向きあった時、Vincentは自らの弱さをそのままOliverにぶつけ、自分の醜い言葉にたじろぎます。それが本当の自分の姿だったのかと。暴かれるのは、一夜のことだけではないのです。

高まっていく緊張の中で彼らの友情はどうなるのか。VincentはOliverの行為を知るのか、そして自分自身を受け入れることができるのか。

BDSMプレイはそれほどキツいものはないですが、きちんと雰囲気や気持ちの流れが描かれていて、とてもいいシーン。彼らが「対」であることが、シーンからつたわってくる。
全体を通して端正な、誠実な物語だと思う。どこかクラシカルな文章が物語の舞台や雰囲気とよくあっていて、貴族やヒストリカルなものが好きな人だけでなく、おすすめの一作です。短編というわけではありませんが、それほど長くもないので、気軽に手を出せる1本かと。

続編の「Bound to Him」も出ていまして、同じように誠実で、静かな色気と緊張感のある話です。
これはこのままシリーズ化するかな? するといいなあ。

★ヒストリカル
★BDSM

Bound to Him
Ava March
Bound to Him★★★ summary:
Lord Vincent PrescotとLord Oliver Marsdenの関係がはじまってから、6ヶ月がたとうとしていた。
Vincentは、自分のすべての望みに応えてくれる恋人に満足し、父親から買い取った領地の開拓にも成功し、忙しくすごしている。

だが、Oliverは時おり憂鬱になっていた。
たしかに彼は、Vincentと体を重ねることができるならほかに何もいらないと思った。「心はいらない」とも友人に言った。
それでも6ヶ月の関係の中で、Vincentがまるで変わらないことにOliverは大きな痛みを感じてもいた。彼らの間は前と変わらない──いや前よりも悪い。もはや友人同士としてOliverと社交パーティで顔を合わせることすら、Vincentは避けようとした。

行為がおわれば、VincentはOliverの部屋を去る。一度として、ともに朝まですごしたことすらない。
自分がVincentの「汚れた秘密」になってしまったかのような重い失望感を、Oliverは拭うことができなかった。

そんなある日、Vincentは、父親からの呼出を受ける。
長男にすべての目を向け、次男のVincentがいかに努力しようと一顧だにくれなかった父親の、今になって息子の存在をたのみにする言葉に、Vincentは揺さぶられる。
だが父の要求に応えることは、Oliverとの関係を完全にあきらめなければならないことを意味した。貴族の令嬢との結婚。

迷い、Oliverに助言を求めようとするVincentは、だが相談を切り出す前に恋人から別れを告げられる。彼にとってはあまりにも唐突に、そしてあまりにも絶対的に。
.....



Bound by Deception」の続編。
相変わらず、誠実で繊細な2人の話です。

Vincentは世間の目を気にし、そしてまだ完全に自分たちの関係を受けとめることができていない。そして、そのことがどれほどOliverを傷つけているのか、見えていません。
Oliverは待つことに疲れはじめ、Vincentは何が友人を苛立たせているのかわからない。
ひとつひとつの苛立ちは些細なことだが、すべては深い絶望から出ている。Vincentは決してOliverを、そして彼の愛情をあるがままに受け入れようとしないのではないかと。

それでもOliverは愛する相手のためにできる限りのことをしようとするけれども、体のいい道具になってしまったようで、心にささくれるものをどうにもできない。そしてそれは、Vincentのせいばかりではありません。Oliver自身の環境の悪さ、わずかな収入にたより、自分でしっかりと身をたてることのできない状況もまた、彼を傷つけている。

Ava Marchの小説でうまいところは、必ず話の中でキャラクターたちが自分自身と向き合い、変わっていくところです。恋が、そして互いの存在が互いを変えていく。
時に痛みをもつ言葉を相手にぶつけあって、そしてその痛みが彼らに真実と向き合う勇気を与える。自分の中にある、目をそむけていた真実。
その「変化」を導くのが大変にうまい作家だと思う。一瞬で何かが変わるわけではないが、痛みが染みこんでいくように何かが見えてくる、その静かな目覚めが丁寧な筆致で浮かびあがってきます。

今回もまた、VincentとOliverは大きな決断を強いられる。Vincentはずっと関心を得たいと思っていた父からのたのみを断りきれず、同時にOliverの存在を心から追い出すこともできない。彼は何かを選ばねばなりません。そのことは、自分の奥深くに眠らせていたものの大きさを彼に気付かせる。Oliverに対する思い。
Oliverもまた、Vincentとまっすぐに向き合うために、自分自身を変えていかなければならない。ただ待つだけではなく、自分をもっと誇りに思えるように。

2人は互いをとらえる感情の中でもがき、相手の存在にあらためて気付く。
相手を鏡のようにして自分の姿をあらためて見つめ、相手の目にうつる自分に真実を見る。それが恋というものかもしれません。

BDSMプレイがありますが、そう強くもないものなので、特に読む人は選ばないかと。
ヒストリカルなもの、秘められた関係が好きな人におすすめ。

★貴族
★すれちがい

Bound By Love
T. A. Chase
Bound by Love★★★ summary:
もう故郷に戻るべき時、気まぐれな双子の兄──JTの面倒を見続けるのをやめる時だった。
Tyler Newsomeは兄とロデオサーキットに背を向け、故郷の牧場へ戻ることにする。ロデオに参加している時も、いつも彼の心は故郷にあった。
いや、故郷だけではない。故郷にいる1人の男へと。

Ren AlstonはいつでもTylerに惹かれていた。
だがアフガン戦争から戻ってからの彼はフラッシュバックに苦しめられ、人とまともな関係を持てる状態ではなかった。そんな時、Tylerの兄JTに言い寄られて一時的に関係を持ったが、ほとんど長続きしなかった。
どのみちJTときちんとした人間関係を結べるとは、Renは思っていなかったが。わがままで気性の激しいJTは嵐のようで、おだやかで辛抱強いTylerとはまるでちがった。彼らの関係は互いに一瞬の愉しみでしかなかった。

それから時間がたち、Tylerの帰還を聞いたRenはそのニュースを歓迎する。人生の安定を取り戻した今こそ、Tylerと向き合うだけの勇気が持てるかもしれない。
そして今度こそ、そこから何かをはじめられるかもしれない。

だが彼らを取り巻く環境はやさしくはない。JTは相変わらず、Tylerの周囲を引っかき回して弟の関心を取り戻そうとする。
Renには自分と同じように戦争でトラウマを追った弟がいて、ひどいフラッシュバックが彼に銃を握らせる。
そんな現実の中で、2人のカウボーイは長年秘めてきた思いを、確固とした絆に育てることができるだろうか。
.....



おだやかでまったりした性格のTylerと、年上のカウボーイ、やや支配的で傲慢なほどに強い性格のRenの話です。
全体にラブラブっとした話で、個人的にはこれ読んでると結構ほのぼのするんですが、背景は入り組んでいて、風あたりの強い現実の中で互いを求めようとする2人の姿を応援したくなります。そしてまた2人でいる時の感情の濃厚さがすごい。

一方、JTの破滅的な性格もなかなかいい味を出している。TylerとJTは子供の頃に母親をなくしていて、その時に母から「JTの面倒を見て」とたのまれたTylerはそれからずっと兄のために色々なものを犠牲にしてくる。だがそれでも──だからこそ、JTはTylerが自分から離れていくことが許せない。
Tylerは自分より兄の方が人目を引き、ロデオの才能もあり、いわば自分が影の存在であることを知っているけれども、そのことをコンプレックスにはしていません。自分は自分、JTはJT。おだやかにその状態を受けとめ、そんな地に足のついたおだやかさをRenは愛し、癒される。

Renは戦争でのフラッシュバックをかかえていて、疲れきるまで何日も眠らずにすごすような男です。強いが、その内側に深い傷をかかえている。
Tylerの存在は彼の中にある闇を少しばかり明るいものにして、彼を幸福にします。Tylerを決して手放すつもりはないけれども、Renは自分が他人とまっすぐに向き合い、正常な恋愛ができるかどうか心のどこかであやぶんでもいる。
そしてその不安を癒やすのも、Tylerの存在なのです。

色々なドラマの糸が入り組んで、濃淡の深い話ですが、一方で明解な強さのある物語です。T.Aの話はどれも読みやすく、平明なようで深いのがすごいと思う。
JTのわがままさも決してただわがままなだけではなく、彼もまたどこかに苦しみをかかえているのが見えてきます。まあどうしようもないガキですが。

非常にかわいい、相手の存在をまっすぐに求めようとする2人の話です。受け攻め固定。
甘々で濃厚な話が好きな人におすすめ。双子ネタが好きな人も(双子カプじゃないけども)。
BDSMプレイやら、カラメルソースプレイやらあって、エロシーンも濃厚です。えげつないような描写はないので、よっぽど苦手な人以外は読む人は選ばないかと。
JTの話は、続編としていずれ出るとのことです。楽しみ~。

★BDSM
★年の差

Bound and Determined
Jane Davitt & Alexa Snow
Bound and Determined★★☆ summary:
もうじき21歳になる大学生、Sterling Bakerはたまたまパーティで見たBDSMシーンに衝撃を受け、それこそが自分の求めるものであると感じる。
彼は支配的な父親に常に反感を覚えてきた。それは、自分が支配する側になりたかったからではないだろうか。

だが初めて行ったクラブで、大学の教授Owen Sawyerの姿に行きあたって、Sterlingは自分の考えが間違っていたことに気付く。
彼が求めているのは、支配することではない。支配されることだ。
Owenのような、強い、確信に満ちたDomに支配され、コントロールされるSubに、彼はなりたいのだった。

Owenは、何のスキルも経験もない、しかもかつての教え子を自分のSubにするつもりはなかった。
長い間、彼はどんなSubにも満足できなかった。多くの者が彼の名を求めてすり寄ってきたが、誰もがあまりにわかりやすく、あまりにも平凡で、常に誰もがOwenを失望させた。

だがSterlingは不屈だった。ついにOwenから手ほどきを受けることに成功し、それが思っていたほど単純でたやすいものではないと悟りながら、彼は引かなかった。
彼の中にある強さ、しなやかさ、そして複雑な痛みはOwenを引きつける。
ふたりの関係はいつしか単なるDomとSubの域を越えていたが、どちらもそれを言い出せず、いつしか生まれた亀裂はSterlingをより破滅的な行為へと押しやり…
.....



Sterlingは、父親の支配によって精神的に傷つき、自分の中に高い壁を作っています。常に他人にチャレンジしたがり、挑戦的で、高慢。
Owenが最初に見て、拒否したのはそういう「外側」のSterlingですが、その内側には脆い、優しい、誰にも手をふれさせない部分があります。
Owenは支配とコントロールによってSterlingの思考を吹き飛ばし、壁を崩し、SterlingはOwenにだけはすべてをさらけだす。それはOwenが彼を知り、彼の限界を知り、決して傷つかないよう守ってくれると信頼しているからです。
Sterlingには、支配される必要がある。信頼する相手、自分のすべてを預けられる相手に。そしてOwenは己のすべてでそれに応える。
それはほとんど、そのまま恋のように見えます。
支配と被支配、関係としてはいびつなようでもありますが、彼らの間ではそれは健全で、純粋で、必要なことなのです。

Owenはとても強い、卓越したDomです。
彼はSterlingの中にあるものを引きずり出し、Sterlingの欲するものをあたえ、そうすることに喜びを感じる。
どんなSubも──かつて別れたただ1人を除いて──彼を満足させることはなかった。だがSterlingの不屈さ、それと対をなす心の底からの服従、Owenを喜ばせようとする姿はOwenを揺さぶっていく。

プレイそのものも色っぽくてよいですが、DomとSubという特殊な立場を踏まえた上での感情の変化が非常に微細に書かれていて、読みごたえがある。
BDSMの話ってプレイの物理的な描写以外は単調になりがちな傾向があるんだけども、これはプレイの中で起こる葛藤や、2人の互いに対する理解が、そのまま彼らの人間関係に投影され、互いへの感情を深めていく。とても繊細に書かれた話だと思います。
生き生きしたSterlingも、彼を支配して愛でるOwenの強さも、とても魅力的です。

BDSMを中心とした人間関係、そして「初心者のSub」と「それを導くDom」の物語と言うと「A Strong Hand」に近い構成ですが、あれがプレイそのものよりは主人公同士の感情的な絆を中心に据えていたのに対して、この「Bound and Determined」はプレイの比重がとても大きい。
ので、がっつりとBDSMが読んでみたい、という人向け。
BDSMって日本のSMとはちょっとちがう(ものが多い)ので、「SMって何がいいのかわかんない」という人でもためしに読んでみるといいんじゃないかなーと思います。苦痛や拘束は「手段」であって、その先にあるものにたどりつくには、何よりも信頼が必要で、その信頼の存在が、この話のテーマにもなっています。

苦痛や、公開プレイも(一部)含んでいます。(強烈なものではないので、すごく苦手な人以外は大丈夫かと)
公開プレイってあまり好きじゃないんですが、この話の中での位置づけはよかったですね。何故人はBDSMを求めるのか、何故クラブ内で公開プレイをするのか、という「何故」のあたりがきちんとしたフォーカスで描き出された話です。

★支配
★焦らし

Blood Slave
Kim Dare
Blood Slave★☆ summary:
Keatsは吸血鬼がいないということを認めたくなかった。友人のLelandに、超自然的な存在を探してうろつき回ったり変なパーティに出たりするのはやめると約束したものの、彼はまだそういうものに惹かれていた。
吸血鬼のふりをした人々が集まる、無害なパーティ。それに出るのは約束破りにはならないだろう。
そう思って参加したパーティで、彼はまさに、ばったりと友人のLelandに出会う。

Lelandはもう何ヶ月も、Keatsを噛みたい欲求をこらえてきた。
だが、ハロウィーンの夜、まさに吸血鬼たちが獲物をむさぼろうとするその宴の場所で、好奇心のまま呑気にさまよっているKeatsを見た時、その自制心も吹き飛びそうだった。
Keatsは何を考えているのだ? Lelandが彼を下僕として認めなければ、Keatsは多くの吸血鬼の欲望のままにむさぼられる。だが下僕として宣言すれば、Keatsを自分の物として保護はできるが、それは完全にKeatsがLelandに従わなければならないと言うことを意味した。

吸血鬼と人間は、主人と下僕。それ以外のものではあり得ない。
だが陽気で不屈で、度し難いユーモアのセンスを持つKeatsを、この愛しい友人を、Lelandは下僕として慣らすことが出来るのか?
.....



吸血鬼もの、そしてBDSM、というカテゴリにもかかわらず、ユーモア小説です。
なんつーか、Keatsがかなりぶっとんでるというか、肝が据わりすぎていて、自分を守ろうとしているLelandの鼻っ面を引き回しているようなところがあって、それが度をすぎると笑えてきます。
いやもう、奔放というか、欲望に忠実というか。

Lelandはいい男で、吸血鬼としての風格も、主人としての威厳も備えていますが、Keatsはそんなものには縛られません。言いたい放題、やりたい放題。
それを上から押さえつけようとするLeland。LelandはKeatsを守りたいのです。だが、Keatsはしたたかに、彼の支配をやり返す。

Keats自身はBDSMが好きで、Lelandが好きで、Lelandと主従の関係になるのに否やはありませんが、それが自分の人間性を無視した一方的な関係になるのは受け入れられない。彼はただLelandと楽しみたい、そしてそのためならわりと恥を知らない男でもあります。

シチュが耽美で、吸血鬼と人間の支配関係なのに、内面は「もう勘弁してくれ」の主人と「わああ楽しい」の下僕の話。結局ラブラブだけど。
わりと短くテンション高め、ややトンデモ。
ユーモア系が好きで、何か困ってる主人とか見ると萌える!の人におすすめです。

★吸血鬼×人間

Crossroads
Keta Diablo
Crossroads★★ summary:
Frank McGuireは彼に仕事のすべてを教えてくれた相棒が自分の腕の中で死んでから、警察をやめて探偵の仕事をしていた。
そんなある日、その相棒の息子が行方不明であると知らされる。

Rand Brennan。両親は彼が自分の性的なアイデンティティ──ゲイであることを受けとめ切れずに混乱していることをずっと心配していた。
彼は自分自身を探そうと模索する中で、マリファナを吸い、大学から消え、どこか場末のビリヤードホールで働いていたが、今や愛する妹からの電話にさえ出ようとしなかった。

FrankはRandを探す仕事を引き受ける。同時にFBIから依頼を受けて、少女連続殺人事件の犯人を追いはじめていた。
Frankを死者が訪れ、何かを告げようとするのだが、彼らが必死に告げようとするメッセージをFrankはうまくつかみ取ることが出来ない。
死者は何を望んでいるのか。シリアルキラーはどこで次の獲物を探しているのか。
.....



死者の声を聞くサイキックの元警官(30歳)と、その死んだパートナーの息子(22歳)の話。
全体にこう、展開が早いと言うか、たまにびっくりします。

Frankは銃に撃たれて自分の腕の中で死んだパートナーの記憶にまだ苦しんでいて、相手の家族と疎遠になっています。Randが消えたと聞いた時、彼を襲ったのはその後ろめたさと、かつてRandを見た時の記憶──自分の欲望でした。
彼はRandの行方をつきとめると同時に、この青年がもう二度と馬鹿な真似をして家族を心配させないように、こってりおしおきをしてびびらせてやろうと計画します。そして案の定というか何と言うか、その計画で彼自身も深みにはまってしまうのです。

このあたり「おいおい、そんなことしていいのかよ」とつっこみたくなる感じで、特に商業スラはNon-con(合意なし)は滅多に見ないのでびっくりしましたが、まあそういう感じの流れです。
互いの体に流されちゃう、というのはいいシチュだと思うので、そのへんのびっくりをクリアすると楽しい。でもやっぱりちょっと「おいおい」と言いたくなるような強引さだ、Frank!ってかヌンチャクはそういう用途に使っていいのか。パートナーの息子にそんなことしていいのか。

Frankはかなり強引でかたくなな男で、Randに対しても厳しい態度を取る。
自分のセクシュアリティに対してもがいているRandは、そんなFrankの行為に疑問や迷いを粉砕されるのだけれども、彼らはどうしても体が先行するので、どうにもコミュニケーション不足なところがあります。
でもRandのいさましさというか、強情さやへこたれなさはFrankといい勝負。こいつもちょっと無茶。

そんな肩肘はった2人ががつんがつんとぶつかりあいながら、時おり深々と相手をのぞきこむような一瞬の訪れが、濃密でいい。

文章はわりと味気ない方ですが、何せ勢いとエロがあるので、一気に楽しく読めます。つっこみどころは多い。多いが、でもそれは作品のマイナス部分というよりは、この話のスタイルであって、つっこみ含めで楽しむものだとも思います。
シリーズ続編あり。全体に、勢いと無茶ぶりで出来ている感じで、強引で支配的な攻め×意地っ張りで反骨精神のある受けに萌える人におすすめ。
エロは軽いBDSM風味。

ちなみにここの書店は警告をでかいアイコンで表示するのですが、それが何とも凄いので、リンク先要チェックです。確かにわかりやすいけど、もうちょっとためらえ。

★無理矢理エロ

★Three-Star rating system★


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