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Slash(m/m小説) レビューブログ

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Feral
Joely Skye
feral★★ summary:
Ethanはクーガーのシェイプシフターであった。8年前、それを珍しがった人狼の群れが彼をとらえ、Ethanの友人である雌の人狼は死に、Ethanは繰り返し拷問を受けた。
シェイプシフターは変身することで傷を癒やすことができる。傷と痛みには終わりがない。
どうにか逃げ出したEthanは、ひ弱な人間の体を忌み嫌い、クーガーに変身して2度と人間には戻らなかった。8年間。
そして彼は決して再び、人間に戻るつもりはなかった。

だが、もはや人間であることがどういうものなのか忘れかけた彼を、また人狼の群れが追う。

Bramは、Ethanが拷問されていた時、その群れにいた。後ろ盾もなく、力もなく、狼である自分をコントロールする力の弱い彼は、その時どうすることもできずにそのクーガーを見ているしかなかった。
8年たち、その時の残酷なリーダーはもういない。だが次にリーダーになった男は、アルファとしての力を誇示してBramを支配する、傲慢な男であった。
「野生に戻ったクーガーは殺さなければならない」と、リーダーは言う。人であることを忘れたクーガーは人間を襲って食う。その前に狩って、殺す必要があると。
Ethanが殺されないようにする方法はただひとつ、彼をとらえ、人間であることを思い出させ、手なずけることだった。

Bramは人肌のあたたかさで、Ethanを人間の形に引き戻し、彼を人として世界につなぎとめようとする。Ethanの怒りと憎しみの前で、それは簡単なことではない。
Ethanはただ自由を求めてもがく。それがどんな方向であろうとも。
.....



人狼ものは大量にありますし、狼以外の獣のシェイプシフターが入っているのもままありますが、これは「人」とその内なる「獣」との対立や引きあうダイナミズムを中心に書かれた、その意味で珍しい話です。詳細な心理描写で、緊張感のある展開が続く。
人と獣はシームレスにつながっているわけではなく、どこか痛みをともなう形でもつれあっています。変身には10分から、時には半時間もかかる。変身を終えた時、記憶はいくらかとび、混乱して、自分がどこにいるのか何がおこっているのか、多くのことが抜け落ちている。

Ethanは8年もの間、必死にクーガーの姿を保ってきた。だが人間にふれられ、人間のあたたかさを思い出すと、孤独をのがれようとして人の形に戻ってしまう。
彼の中の獣はその弱さを嫌い、牙を剥いて獣の形にしがみつこうとする。人間が孤独をうずめるために他人にふれようとする一方で、獣は怒りにふるえている。
そんなふうに、彼らは2つの顔を持ち、時にその両方に引き裂かれます。

また、Ethanが長年の孤独と痛みをかかえる一方で、BramにはBramの問題がある。彼は群れのオメガであり、彼の中の狼は服従することに慣れているが、Bram自身はそのことに怒りを覚えている。
彼は服従しながらも反発し、アルファに対して卑屈であることに馴染みながらもそれを忌み嫌う、ねじれたオメガなのです。

このアルファがじつに、嫌な感じで。一見まともな男に見えるだけに、何かこう落ちつきの悪い嫌さがある。
Bramが何か変な感じに弱々しいので、前半は読んでてかなり焦れます。ハラハラというよりイライラ。イライラしながら読みすすめたい人にはうってつけの話です(結構楽しい)。ちゃんと終わりにはきっちりと落とし前をつけるので、イライラの分だけカタルシスも楽しめる。
Ethanがクーガーから人間の世界へと戻ってくる前半部もおもしろいですが、後半のBramの変化もなかなか読みごたえがある。
クーガーは人狼のように群れを作る性質はないので、Ethanは群れだのオメガだのがピンとこない。それはBramにとって救いでもあり、つらくもある。
2人はちがう種ですが、互いによりそい、信頼するすべを覚えていく。そしてその信頼をもとに、ふりかかっていく危機をのりこえていかなければならない。シフターを追うのは、狼たちばかりではない。

普通じゃないシフターものを読みたい人とか、クーガーたまらねえ!という人とか、リハビリ過程があるものに萌える人におすすめ。
猫科のシフターものって、もっとみんな書けばいいと思うよ!

★シェイプシフター(野生)
★逃亡

Channeling Morpheus: Manikin
Jordan Castillo Price
Channeling Morpheus:★★☆ summary:
Marushkaという女の吸血鬼が、Michaelに永遠の命を囁いて彼女の部屋へと誘う。レースやベルベット、磁器、真珠──陽光の入らない一室はそれらのものであふれていた。
「人形」たちに美しい衣装を作ることに情熱を注ぐこの女吸血鬼は、Michaelを新たな獲物にしようとしていた。
見目のよい、ちょっとした小物をふやすように。もう一体の人形をふやそうと。

Michaelは吸血鬼たちが長く生きれば生きただけ性質が悪くなるのではないかと疑ってはいたが、彼らがどれほど常軌を逸脱するのかまではわかっていなかった。自分がどんなことに足をつっこもうとしているのかも。

吸血鬼を眠らせることには成功したものの、にっちもさっちもいかない危機に陥ったMichaelの最後の希望は、Wild Billだった。吸血鬼の男。
彼はMichaelを救ってくれるだろうか。それとも、2人の間に「何か」が存在すると思っているのはMichaelだけなのだろうか。セックスよりも、血よりも深い何かが。
.....



Channeling Morpheusシリーズ」3作目。
前2作ではキャラクター同士の邂逅と関係の深まりを書いていましたが、このあたりからまさにJordan Castillo Priceの本領発揮というか、暗い、湿った、ざらついた世界を思うさま楽しむことができます。
年経たヴァンパイアの暗い部屋でBillとMichaelは再会し、Michaelは浴室の床に倒れたままのヴァンパイアの首を切り落とさなければと思いながら、闇の中でBillの愛撫を受ける。暗い情熱が2人をつないでいる。

Wild Billは生きていくために人の血を吸わなければならず、彼が誰かを殺しているわけではないと知りつつも、彼とのキスに他人の血を味を感じたMichaelの感情は乱れる。BillがMichaelだけの血で生きていけるわけはない。だが、それでもMichelは耐えられない。それは嫉妬です。
恋人というわけでもなく、名前のつけられない関係に溺れるように、2人は互いを求めていく。未来がそこにあるのか、多分2人のどちらもわからない。

吸血鬼の血で血まみれになったMichaelをBillは抱きしめ、MichaelはBillの口の中にある他人の血の味を消そうと、自分を噛むようせがむ。
2人をつなぐ不気味なほどの情動と、そのテンションが見事です。長さとしてはちょっと長めの短編という程度ですが、色々なものが凝縮されていて濃密に楽しめると思います。

ダークな雰囲気が好きな人に是非おすすめ。

★吸血鬼×人間
★吸血プレイ

Dreaming of Dragons
T. A. Chase
Dreaming of Dragons★★★ summary:
エルフのMordredと聖騎士Georgeは、幻想界で長年に渡る恋人同士であった。何ものも自分たちの関係をおびやかすことはない。2人のどちらも、そう考えていた。

だがドラゴンや、魔法の生物たちが幻想界の領域を越えて人間の世界に現れはじめ、Georgeはガイアの命を無視して人間に力を貸すために立ち上がる。2つの世界のバランスを取り戻すために。
恋人が自分から離れていくことに、Mordredは気付いてはいたがどうすることもできなかった。人間たちに──主にKaelとHughに──力を貸してやりたいのはMordredも同じだ。
ただ恋人の高潔なほどの犠牲的精神は、Mordredは持ち合わせていなかった。
そしてGeorgeの正義を求めるまっすぐな心根を、Mordredは愛していたが、理解しているとは言いがたかった。

GeorgeはMordredから離れて別のものを守りはじめ、だが彼らの戦いを嘲笑うかのようにドラゴンは現われつづける。
Mordredは、ドラゴン出現の裏で糸を引く者の正体を暴くために最後の賭けに出た。
それは恋人のため、そして人間界にいる友人たちのための賭けであった。だがその賭けがGeorgeとMordredを大きく引きはなすことになる。

2人は世界を守るため、友人たちを守るためにどこまで自分たちを犠牲にしなければならないのか。
そしてMordredは恐れていたことを目のあたりにする。Georgeの高潔さは、彼の──彼らの──すべてを犠牲にするほど強いものであることを。
.....



Here Be Dragons」の続編。かつ、完結編(おそらく)。
KaelとHughの2人の人間を中心に語られた前作に対し、今作は幻想界の人たち、魅惑的で移り気な美しいエルフMordredと、はからずも遠い昔に彼と恋に落ちてしまった気高い聖Georgeを中心にして展開していきます。

前回に引きつづき、まだドラゴンや海蛇は人間界で暴れ回っています。KaelとHughはドラゴン狩りに追われ、Georgeはそれを影のように助ける。
Mordredは、ちょっと暇にしています。んでもって、暇になるとかまってほしくなるのが、この猫のように高慢なエルフの気質でもある。皆が駆けずり回っているこの非常時に無責任ですが、そのへんが可愛いところです。

もともと彼は、聖Georgeなんていう堅物と恋に落ちるつもりはなかった。1人の恋人とずっとつれ添うなんてことは、気まぐれなエルフにとって予想の外だった。
それでもお互い、とらわれるように恋に落ちてしまった、その遠い昔の出会いと回想が物語のそこかしこにはさんであって、「いやホントにそんなつもりはなかったんだけど」というMordredのつぶやきが聞こえてくるようで、おもしろい。

わがままを言ってばかりではなく、MordredはMordredで仕事はしてますが、忙しいGeorgeに「お前は暇でいいな」と言われてカチンとしたりする。そりゃGeorgeほど熱心じゃないけどさ、そんな言い方あるかよ、てな感じでやさぐれたりします。
いや本当、可愛いです、このエルフ。あんまりこれを1人にしちゃいかんよ、Georgeも。
実際に悪い虫が近づいてきたりするわけですが、Mordredの方が虫よりたちが悪いかも。

私は、前作を読んだ段階ではそんなにこのカプには興味が沸かなかったのですが(何か出来すぎな感じのカプだし)、いざこの2人に焦点を移して語られてみると、感情のやりとりや重ねてきた年月が鮮やかにせまってきてとても楽しめました。
一方で、Kealの問題もちゃんと書かれていて、Kaelが前作で描かれたトラウマから完全に立ち直っている様子も見てとれます。よかったなあ。なかなかにいさましくて、Keal好きならそこだけで一読の価値あり。相変わらずHughとラブラブです。

2人の人間と、エルフと騎士は、ドラゴンの出現をとめられるか。そのメインのストーリーもしっかり書かれていて、隙なく楽しめる話に仕上がっています。
そして最後に、彼らは何かを犠牲にしなければならない。命、記憶、恋。犠牲を払うのは誰なのか。
ある意味ベタな展開ですが、それが正面きって書かれていて、文句なしに最後の最後まで盛り上がります。「王道」はやはりこうでなきゃ。

前作を楽しんだ人なら絶対におすすめ。
2冊あわせて上質の「物語」でもあるので、ドラマとファンタジーと愛らしいカップリングを同時に楽しみたい人に。

★堅物騎士×移り気エルフ
★自己犠牲

Enthralled
Laura Baumbach
Enthralled★★ summary:
Colin Dobsonがホテルの窓から身を投げたまさにその瞬間、夜空を飛来した何かが、彼を部屋の中へ押し戻した。

Rowland Campbellは3人の吸血鬼ハンターに追われ、矢で貫かれたまま人間の部屋にとびこむ。
そこで出会ったのは、自殺願望を持つ端麗な青年であった。

彼らは完璧な取り合わせであった。Colinは死を歓迎し、Rowlandは傷を癒やすために人間の血が必要だった。
この暗い闇を生きる日々はRowlandの望んだものではない。だがそれでも彼は千年以上の長きにわたって、生きるために戦いつづけてきた。それが人間の命を奪うことを意味しても。この先も戦い続けることに迷いはなかった。
Colinの血を啜ることにも。

はじめは獲物と捕食者。だが2人は互いの中に、自分に欠けていたものを見出す。ColinはRowlandに守られ、必要とされ、欲されることに満たされ、Rowlandはこのひ弱な人間の中にある純粋さに惹かれた。それは彼の中にある、決して埋められない筈の空隙を満たす光。
.....



Breathing(Enthralled2)
Laura Baumbach
Bleathing★★☆ summary:Colinは、それまでの、外界から切り離されたような人生では考えられないような日々を送っていた。
Rowlandとともに旅をし、独占欲の強いこの恋人から、信じられないような快楽と情熱を教えられる。RowlandはColinを守り、すべてを与えた。

だが同時に、すべてを分かちあおうとはしなかった。どこへ行くのか、何のためなのか。常に彼は判断を自分で下し、Colinを従わせた。そのことにColinが不満を持っているわけではなかったが。
ただひとつ、Colinが恋人と分かちあいたいと望むものは、呼吸──生きている恋人のように、Rowlandの息とそのあたたかさを分かちあいたかった。彼はRowlandを愛していたが、闇の中で息をしない肉体とともに横たわっているのは、想像以上に彼の気持ちを波立たせた。

RowlandはまたもやColinに何も言わないまま、彼を刺青師のところへつれていく。
そして彼らの背後には、執拗にRowlandを追うハンターの影も迫っていた…
.....



短編なので、2本まとめて紹介。
「Enthralled」シリーズの1と2です。

吸血鬼と人間で、わりとテンプレというか王道ですね。
Rowlandは古く力の強い吸血鬼で、強く、たくましい肉体と、不屈の精神を持つ。Colinは子供の頃からの病、それにともなって外界から隔絶されて育ち、家族とのふれあいも少なかったようで、繊細というかちょっと壊れやすい感じ。それだけに、無邪気でかわいいところもある。
2人が運命のように互いに落ちていく様子が語られています。

Rowlandがまさに「闇の支配者」然としていて、傲慢で美しく、いい吸血鬼っぷりです。
獲物として見ていたColinに惹かれるものを覚え、飽きるまでそばに置いとくかと思って手を出してみる。しかし気付いてみれば、相当がっつりColinにハマってしまっているようです。
「俺様」な人が(というか吸血鬼が)恋に落ちた相手を守るの図ってのは、とにかく読んでいて楽しい。守ろうとしながら支配する、その感じがよく出ています。

戦闘シーンや刺青のシーンなどもしっかり書かれていて、一気に盛り上がって読めます。
吸血鬼や王道好きの人におすすめ。
体格差、保護者/被保護者、支配者/従属者など、わりとスラの中でも「BLっぽい」感のある話なので、「スラッシュを読んでみたいけど、あんまりガチムチっとしたのは…」という人にも入りやすい1本だと思います。

★吸血鬼/人間
★タトゥー

Dreaming in Color
Cameron Dane
Dreaming in Color★★☆ summary:
この2年、Colin Baxterは赤いドアのある家の夢を見ていた。
そして、その家に住む男の夢を。

男の顔はいつも見えない。だが男の中にある痛みや悲嘆はColinに鮮やかにつたわって、いつも彼はそれを癒やしたいと思うのだった。夢の中で男とくり返し体を重ねながら、彼はいつか現実にその家を、そして家の主人を見つけたいと願っていた。それはそれほどリアルな夢だった。

友人の結婚式のためにフィジーを訪れたColinは、ボートの上から小さな島に建つ家を見て呆然とする。
あの家だった。幾度となく夢で訪れた家。
だがその家に赤い扉はなく、家に住む男はColinの夢など見たこともないと言う。

己のあやまち、そして死んだ恋人の記憶から逃げるようにフィジーへ渡ってきたMarek Donovanの望みは、ただそっとしておいてもらうことだけだった。そのために人里離れた島に家を買ったのだ。それから2年、彼は望み通り孤独に暮らしてきた。
だがいきなり現れたColinの姿、そして彼がこの家と赤い扉の夢を見ていたという話を聞いて、Marekは凍りつく。
Colin Baxter。忘れる筈もない、彼の高校の同級生。過去から現れた男。
これは何かの罠か、復讐なのだろうか。Colinは、Marekが何をしたのか知っているのだろうか。Colinの体に残る傷、その痛みをもたらして彼の人生を変えたのがMarekであったことを。彼は知っていて、現れたのではないだろうか。
.....



夢の話です。
「あなたの夢を見ていたんだ」というのはよくある恋物語ですが、「家の夢を見ていた」というのは、スラというよりホラーっぽいパターンですね。
これも超自然現象が(ほんのちょっと)からんできて、見方を変えるとちょっと怖い。いや、話はハッピーエンドで情感のあふれるいい話ですが。あの家はこの先もずっとこうやって自分の好きな住人を呼びよせていくのかなーとか、余計なことを考えると涼しくなれます。

Marekは幾度もあやまちを冒してきた男で、Colinに対しても強い罪悪感をもっている。彼らは互いに惹かれていくけれども、惹かれれば惹かれるだけ、Marekは過去にあったことを言い出すことができません。
Colinは自分を許さないだろう、そう思いながら、それが怖くて口をとざし、Colinを抱きしめる。彼の痛みが物語の焦点になっています。

大人になってからの再会の話もおもしろいんですけども、学生時代の追憶がパワフル。そんなにその部分のボリュームはないんですが、少年の罪悪感や情動、羨望、焦りや虚勢で混沌とした心や、それに追いたてられるように最悪の選択をしてしまう、その一瞬の怖さがよく出ていると思います。
そして今でもMarekはそのあやまちに背を追いかけられている。向き合わないから抜け出せないんですが、1人で向き合うことができないMarekの気持ちもよくわかる。

Colinも頑固でかわいいですが、Marekの複雑で痛みをかかえたキャラクターがいい。はじめは冷たくColinをあしらおうとするけれども、結局それができない。強い男のようでいて、あちこちにやわらかな部分をかかえている、それが見えてきます。
この話は、Colinが夢によって「家」を見つけ出し、Marekを悲嘆や孤独から引きずり出すまでの話ですが、決してColinや偶然の力だけではなく、Marekが自分の決断で闇から抜け出そうとする、その部分が美しい。

あとJordan(Colinのルームメイトの女性)が、なかなか魅力的。
「ゲイに理解のあるお節介な女性」ってはよくあるサブキャラですが、あまりにも無個性だったりいたたまれないような振舞いをしたりするケースが少なくない。あれはキツくて苦手です。
その点、Jordanは個性的で、彼女自身も色々な問題をのりこえてきた(Colinのおかげで)様子が、うまいこと見え隠れしています。びっくりするほど口が悪いが。

Cameron Daneにしては色々地味な話だけど(エロも結構あるけど、わりとそこも地味)、それだけにいつもより万人向けかも。おとぎ話のようなフィジーの美しい自然、超自然的な夢、10日間のバカンスなどの「非現実」的な部分と、痛みや苦しみのある「現実」の世界をうまくつないで織りあげた、佳作だと思います。

運命とか、あやまち、贖罪など、そういうキーワードが好きな人におすすめ。

★過去のあやまち
★夢

Gaven
J. C. Owens
gaven★☆ summary:
Gavenは敗北に打ちのめされていた。
Masarianの軍勢の前に彼らの民は破れ、友であるMichaelも死んだ。

自分自身も殺されることを予想していた彼は、突然現われたMasarianの将軍によってとらえられ、彼の「父親」であるという人間の前につれていかれる。
その「父親」はMasarianの権力者であった──
Gavenが敵だと信じて疑わなかったMasarianは、彼自身の生まれ故郷だったのだ。

人生の変化を拒み、彼らの元から逃げ出したGavenは、Michaelを埋葬するために故郷へと走る。

だが彼の力では及ばないほどの荒々しい力が、Gavenを追ってきていた。彼をとらえたあの男、年をとらず、人の血を呑む戦士──Vlar。
.....



BLにあって商業スラにないもの、というのは色々ありますが、「無理矢理」カテゴリってのが基本的にない。ネット上では見かけるので、嗜好というよりモラル的なもんなのだろうかと思ったりしてます。
でもファンタジーだとたまにそんな話があったりして、「ファンタジーだからちょっとガイドラインがゆるくなるんだろうな」とも思ったりもしてます。

で、この話が「敵につかまって、父親と名乗る男によって別の男に身柄を与えられる」みたいなあらすじだったんで、こりゃまずまちがいなく無理矢理系かと思ったら、かなりちがいました。ううむ。そんなところに文化差を感じたり。

基本的に、Gavenの成長ストーリーです。ファンタジー部分がしっかりしていて、描写も丁寧なのでファンタジー好きなら読んでいて楽しい。
Gavenが何度も逃げ出そうとしてもがくところや、自分の非力さに打ちのめされる心の動きもよく書かれていて、世界に自然に入りこめます。
Gavenの価値観は根底からくつがえされ、彼は傷つき、追いつめられる。自分を疑い、世界を信じることができない。選択は目の前に2つあって、そのどちらを選ぶこともできない。
そういう気持ち、そしてGaven自身の変化が、脱走や身にふりかかる苦難を通して描き出される。

どちらかと言うと、スラ部分よりはそういう「ファンタジー」の部分を楽しむ話だと思います。私はファンタジーが好きなので、かなりよかった。
人外が出てくるんですが、そんなに人外っぽくもなく、そこはちょっと惜しいかなあ。前半がすごく丁寧に書かれてる分、逆にあっさりと終わったのも勿体ない。人外がいるならもうちょっとエロエロしてもいいだろう!「儀式」だってあるんだしさ。…とかまあ、それはこっちの勝手なイメージですが。
でもエロが1つもなくても成り立つような、ちゃんとしたファンタジーです。
Gavenは苦しみ、孤独の末に、最後に自分の帰る場所を発見する。

ファンタジージャンルが好きな人におすすめ。

★敵
★ファンタジー

Nick Of Time
T. A. Chase
Nick of Time★★ summary:
吸血鬼Gryphonは、かつてないピンチにいた。人間にとらえられ、武器や陽光を使って拷問され、動物の血だけを与えられてぎりぎり生かされている。
もう少し人間の血があれば、自分を癒やし、そこから逃げられる。だがもうその望みはないように思えた。

Nickは、この世界に人間以外のものが生きていることを知っていた。人狼、吸血鬼、そのほかの神話や伝説の生き物…
恋人のためにその調査に関るうちに、Nickはいくつかの秘密を探りあて、そのために殺されそうになる。恋人だと信じたその相手から。
叩きのめされ、死にかかった彼は、ぼろ屑のようにGryphonのいる場所へと放りこまれた。

死を覚悟したNickはGryphonへ自分の血を差し出し、Gryphonは逃げ出すチャンスのためにNickの犠牲を受け入れる。
命をかけたその絆が、Nickと自分との、そして人外のものたちの存在すべてを巻き込む、大きな戦いのはじまりなのだと、知らないままに。
.....



「Nick Of Time」というのは主人公のNickの名前でもありますが、それ1つのセンテンスで「あやうい時、際どい時(に間に合った)」という言い回しなんだそうです。

NickとGryphonは暗闇の中で血を介して出会い、その絆は一瞬で固いものとなる。GryphonはNickの血を吸い尽くさずにとめる自信がない。Nickは死を覚悟しているので、それでもいいと言う。
Nickの自己犠牲と、血が、彼らを結びつけます。自分たちが想像していたよりも遥かに強く。2人を巻きこむ感情の強烈さ、鮮やかさがひとつの読みどころです。

Gryphonは1000年以上を生きてきた吸血鬼ですが、人の世のことにはあまり興味がない。でもNickに一瞬にしてとらえられ、彼の命を救うために神々へ祈る。まあその祈りがちょっとしたトラブルを呼ぶのですが。
Nickは人と接することがちょっと苦手で、シャイだけれども、興味のあることになると質問がとまらなくなる、ちょっとオタクな部分も持っている。そして、そんな自分に自信がない。
そんなNickがGryphonのそばでしっくりと馴染んで、2人のどちらも相手なしではいられないような様子がなかなか愛らしい。Nickははじめて、自分を本当に受け入れてくれる相手に出会う。それが吸血鬼であったということは、彼にとって問題ではないのです。

とにかくやっぱり吸血鬼ものってのはエロいよね! 大変にエロ多し。
素敵だけど、大丈夫か、ちゃんと世界を救えるか!

ところでこの話はTAのブログで連載されていたもので(後半は出版にあたって書き足されてます)、「Allergies」とつながっています。
「Allergies」では人狼と人が恋に落ちますが、最後の方で、どうやら人狼を襲っている人間たちがいるらしい…というネタ振りがあった。この「Nick Of Time」では、その人間たちが人狼だけでなく人外の存在すべてに対して敵意を持っていることが判明し、彼らに渡してはならない「本」の存在があらわになります。
吸血鬼と人間のカップル、GryphonとNickが、危機を戦うために立ち上がる。
話の途中で、「Allergies」のLouとRayも出てきます。「Nick Of Time」だけで独立してますが、あっちも読んでおくと、あの人狼一家が出てきた時に愉快です。特に噂のママがついに登場!だったしね!
Rayは相変わらずかわいいなあ。「人狼にノミはつく?」と、Louに隠れてこそこそ聞いているのも彼らしい。クリスマスにはノミとり首輪プレゼントか? Lou大ピンチ。

さて、GryphonとNickは(いちゃいちゃしつつも)彼らの目的を果たすために戦いますが、そのラストで、やはり次の戦いの気配が出てきます。
おそらくそれは、今回出てきていたJessとPavelの2人、人狼と吸血鬼である彼らが次の話で受け継ぐのでしょう。今後もこうやって、カプを変えながら全体の話が進んでいくんじゃないかな、と思います。
すべてがどこに向かって進んでいるのか、とても楽しみ。いずれはLouの兄貴のRoverとかBanditも幸せになれると思うんだけど。Roverってどこか苦労性っぽくて、群れのために色々犠牲にしてそうで、幸せになってほしいですよ。

甘々人外もの好きにおすすめ。カプ同士がクロスオーバーしつつ進んでいくので、そういう構成が好きな人にも。
ちなみに8/31発売でしたが、ここのパブリッシャーの「8月売り上げベスト1」です。すごいぞTA!

★吸血鬼×人間
★超能力

★Three-Star rating system★


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・2017年
・後半 王子二巻
・12月 アドリアンXmas

・ほかにも出るかも
・王子とか何か売れてくれ〜(色々軽くピンチ)
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*発行済*
・フェア・ゲーム
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・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
・狼の見る夢は
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・死者の囁き(アドリアン2)
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・海賊王の死(アドリアン4)
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*他訳者さん*
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