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Hawkins Ranch: Falling
Cameron Dane
★★★ summary:
Hawkins3兄弟(Conner、Cain、Caleb)は牧場の経営者としてその町に落ち着いていたが、彼らはじつは兄弟ではない。それどころか、人間ではなかった。
人より古くから地上に生きていた太古の一族──悪魔──、それが彼らの正体である。
一族との暮らしを捨て、それぞれイギリスをさまよううちに3人は出会い、自分たちの人生を求めてともにアメリカに渡ってきたのだった。血のつながりはなく、そして悪魔としても種族の異なる彼らであったが、3人をつなぐものはまさに「家族の絆」としか言いようのないほど強く、あたたかな気持ちだった。
だが、今ではConnerは悪魔ではない。愛する女性の力によって人間となっていた(1作目「Demon Moon」)。
そんな兄を、Cainは心の底から羨望していた。Cainは男性を好んでいたが、彼の種族は種の繁栄のために決して同性愛を許さず、もし同性と関ったことが知られたら即座に処刑が待っていた。そのため、Cainはその長い人生の中で一度も、そして誰とも関係を結んだことがなかった。
兄夫婦が暮らす家から出たCainは自分の家と厩舎を建て、虐待され傷ついた馬を引き取って訓練する牧場を1人で切り回していた。孤独には慣れていたし、彼は馬たちを心の底から愛していた。

そんなある日、Cainは兄から呼び出される。兄の妻Cassyの幼馴染、Lukeがひどい怪我を負って前の牧場を追い出され、退院した後も行き場がなく、そのまま兄の家の居候となっているというのだ。Cassyのそばに男がうろうろするのが許せない、という兄の子供っぽさに少々あきれつつも、Cainは仕方なく自分の牧場でLukeを引き取って働かせることを承知する。
だがそれがひどく危険であることも、わかっていた。彼は3年前にLukeと顔をあわせた時から、ずっとLukeに惹かれ、そんな自分の気持ちを恐れていた。もしLukeに対する気持ちが抑えられなければ、その先には破滅しかない。
それを肝に命じながら、それでもCainはLukeとともに働く毎日を楽しみはじめる。彼らはどちらも馬に対する深い愛情をもっていた。明るく、繊細で、だが時に驚くほど頑固なLukeの存在は、それまで孤独しか知らなかったCainにとってかけがえのない存在になりはじめていた。

長年の孤独と自制が作りあげた心の壁と、そして処刑への恐れ。さらにはその先に必ず訪れるであろう、処刑そのもの。Cainが乗り越えなければならないものはあまりに大きい。それは望みのない道に見えたが…
.....



Hawkins Ranchシリーズ。とりあえず今回は「Falling」を。
これシリーズ2作目なんですけども、1作目の「Demon Moon」はノマカプものです。結構あっちのスラ作家さんは、男女ものとスラの両刀書きだったり、男女ものをずっと書いてる人がスラに参入してきたりしますね。シリーズの中でまざってると微妙に困ったりしますが。
男女ものと混ぜて読むのはなあ、という人は1作目を読まなくてもいけると思います。

Cameron Daneはとにかく何もかもドラマティック!な作品を書く人で、登場人物は痛いほどむき出しに自分をぶつけあい、時に削るように互いを変えていきます。ちょっとテンションとしては昼ドラめいたところすらある。何というか、まさに「ハーレクイン」って感じもします。
力技なところもあるんですが、その「力」が半端ではなくキャラも皆魅力的なので、一度入りこむとそのまま最後まで話の中に引きずりこまれる。

「Falling」のCainは、とにかく「落ちまい、落ちまい」としながらLukeの存在に落ちていく、もがく男です。もがく悪魔というか。
誇り高く、自分の存在に自信を持っている、孤高な男ですが、彼の世界はLukeの存在に完全に揺さぶられてしまう。時に怯え、時に反発し、それでもCainはLukeに対して誠実であろうとする。
そんな力強い、苦しげな存在に、Lukeも否応なく惹かれていく。彼にはCainのかかえている問題が見えていないが、Cainの誠実さと優しさを愛し、そのぎこちなさの向こうにある痛みに手をさしのべたいと願う。
時に2人はただ感情に押し流され、時に混乱し、それでも魂は痛みや傷をこえてただまっすぐに相手を求める。

エロはかなり激しいです。Cameron Daneの書くエロシーンは当人によると「人の心と体がどちらももっともむき出しになる瞬間」という位置付けがあり、感情的なぶつかりあい、融合、心の変化にともなう体の反応などなどストーリーそのものを投影するエロです。非常に濃密な感情があふれています。喜び、痛み、怒り、相手への思い、時に拒絶など、意志と感情が互いへまっすぐに向かい、激しい反応を引きおこす。その中で、相手のもっとも深いところにふれ、さらに深くを求める。そういうエロです。なんか「情事」って感じがよくあてはまるような。
最中によくしゃべるのはご愛嬌。

色々な意味で「激しい」とか、「溺愛」路線が好きな人におすすめ。家族の絆とか、そういうあたりもしっかり押さえられている。
カウボーイものって、わりとよくホームドラマ要素もつきますね。牧場は家族経営が多いからかなあ。

★エロ度高
★人外(変身エロあり)

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Allergies
T. A. Chase
Allergies★★★ summary:
デザイナーのRaymond Marvelsは、仕事場にあるパソコンの不調のため、会社にエンジニアを派遣してもらう。
部屋に入ってきたエンジニアは見たこともないほどゴージャスな男で、彼らの関係はあっというまに深まるが、どういうわけか、RayはそのLou Canisがそばに来るたびに強いアレルギー反応を示すのだった。とは言え、それは彼らの関係を妨げはしなかった。

Louは、新しい職場で出会ったRayに夢中だった。このシャイで奥手なデザイナーはこれまでの彼の「タイプ」ではなかったが、Louは、行きずりや短い情事では終わらないものが2人の間にあることを感じていた。
たとえRayが、彼が半径3メートル以内に近づくたびにくしゃみを連発しようとも、この新しい恋人を離す気はない。
だが、Louにはひとつ、出会ったばかりの恋人に言えない大きな秘密があった。そしてその秘密が、Rayのアレルギーの原因なのではないかと、Louは疑っていた。
Louの家族に会ったRayは兄弟にアレルギー反応を示し、Louは確信する。恋人のアレルギーは──Louに対するものが一番ひどいとしても──Lou個人ではなく、彼らの一族に対するものなのだ。
Louの一家は、人狼の一族であった。

LouはどうやってRayに自分の秘密を言うべきかわからない。かつて人間の恋人に正体をあかして殺されそうになった姉は「本当に好きなら、まだ黙っていた方がいい」とアドバイスするし、兄は「関係が深くなればなるだけ傷も深くなる。もし駄目になっても立ち直れるよう早いうちに告白してしまった方がいい」と言う。
Rayは人間としてのLouを好きになってくれた。だが、狼としてのLouは?

いつかは言わなければならない。だが、いつ?

その一方で、見知らぬ人狼がLouの一家のテリトリー内へ断りなく入って…
.....



人狼の恋人にアレルギーになってしまった、という、全体に幸せな話。
スラには人狼ものはかなり多いですが、ここの一族は大変「狼」っぽいのがいいです。Louには8人の兄弟がいて、末っ子の彼以外は全員双子です。姉の生んだ子供すら双子。
彼らは仲がよく、荒々しく、陽気で、つねに「群れ」の中での序列を競っている。一瞬で結束し、外から見ると驚くほど喧嘩し、そして全員、「犬」に関するジョークに目がない。
Rayに対してもLouの中の狼は独占欲を見せ、命令し、支配したがる。Rayはそれを受け入れるけれども、決して弱々しく言いなりになるタイプの恋人でもない。

Rayはシャイですが、地に足がついていて、おだやかでユーモアにあふれた男です。T.A.の受けはいつもそういうところが可愛いと思う。
ちょっとあたふたしたり、及び腰だったりするんだけども、一度恋に落ちてしまえば、その中でとても幸せそうにのびのびしているのが愛らしい。
Louの秘密、Rayのアレルギー、となかなかに前途多難な恋人たちですが、それを感じさせない幸せっぷりです。

この話はT.A.が彼のブログで更新していたもので、ちょっとだけ加筆や修正があるけれども、基本的には同じものです。ブログでは毎週火・水曜日に(通常は)話の更新がされているので、興味がある人はどうぞ。今は西部劇風の連載をしています。

「Allergies」は人狼の話ですが、この後にブログでこれとつながる吸血鬼の話を書いていまして、そのうちまとめられて出版される予定になっています。それぞれ完結した別々の話だけれども、あわせて読むとまた楽しい。
誰かが「人外」を狩りはじめている。それは誰か? 人狼と吸血鬼、そしてその他の一族も、力をあわせ、新たな敵に対して戦わなければならない。その先に何があるのか、というのも楽しみなところ。

ラブラブなのが好きな人には絶対おすすめ。
あと大家族の感じが好きな人、双子萌えでもいける。

★人外(人狼)
★甘エロ

Without Reservations
J. L. Langley
WithoutReservations★★★ summary:
ネイティブアメリカンの血を引く獣医のChayton Winstonは、実は人狼でもあった。満月になると狼に姿を変えて狩りに出かける。
ある時、彼の群れの仲間が撃たれた狼を──それも人狼を──Chayのもとに運びこんできた。白い狼を一目見た瞬間、いや見るまでもなく近づいた時から、Chayはそれが彼の「mate」であると知る。
狼には運命の相手がいる。それはただの恋ではなく、どこか大きな力で運命づけられたただ一人の相手。否応なしに惹きつけられ、一生を分かちあう相手だ。
Chayはまだ4つの時から、ずっと自分のmateを夢に見てきた。白い肌と青い目のパートナー。ついに出会ったことにChayは喜ぶが、同時に予期せぬ驚愕にもとらえられていた。彼の運命の相手は、雄狼──男だったのだ。

Keaton Reynoldsは傷から回復して目をさまし、自分がmateとともにいることを悟る。一瞬で、彼は惹かれ、とらえられるが、次の瞬間に相手がストレートの男であることを知って、その喜びは砕け散る。
昔の恋人が「自分はゲイではない」と周囲にふるまう態度に傷つけられたことのあるKeatonは、「ゲイではない」男とまたかかわりあう気はなかった。mateであれ、何であれ。

Keatonは彼らの出会いをなかったことにしようとするが、Chayは後に引かない。はじめのうちこそ驚いたが、Chayはずっと望んでいたmateを前にして後ずさりするような男ではなかった。そしてKeatonと少しずつ関係を積みかさねながら、Chayは心の底から、この美しく、強情で癇癪もちの、小柄な狼を好きになっていく。まさしくKeatonは、彼の求めるmateだった。
Chayの心を信じながら、それでもKeatonは彼らの未来を信じられない。いつか、Chayはやはり女の子の方がいいと思いはじめるのではないだろうか。それにChayの家族や友人が、彼のmateが男であると知ったらどう思うだろう? 自分の存在や、自分たちの関係はChayの未来や幸せを傷つけてしまうのではないだろうか。

そんなある日、Keatonの車のブレーキホースが切断されて、事故をおこし…
.....



J.L. Langleyの人狼もの。
ここの人狼は、興奮すると目だけ狼になります。狼の目で見つめあったりして、大変エロい。
んでもって、女性の人狼はいないそうです。だからChayは、白い狼が自分のmateだ!と気付いた時、まず「女の狼がいるんだー」と感心する。まちがってるぞお前。でもまちがってることにびっくりしてなお、Chayはひるみません。小柄なKeatonを「Little Bit(ちっこいの)」と呼び、他にもKeatonを苛立たせるいろんな渾名を勝手につけながら、彼はどんどんKeatonの生活に入りこんでくる。ためらわないし、迷わない。
Keatonは希望と自制の間で揺れ動きながら、どうにかしてChayを自分の生活から押しやろうと思うけれども、一度「これは運命だ」と決心したChayをどうにかできるわけもない。

ゲイとストレートのカプの話ってのはそんなに珍しくないですが、ゲイ側(Keaton)がとにかく逃げよう逃げようとしているのがおもしろい。逃げると言ってもただの及び腰ではなく、「女じゃなくってすいませんね、こっちに気を使ってくれなくても全然結構ですよ」みたいな、ちょっと攻撃的な逃げ方です。
J.L. Langleyの受け(タイプ)はみんなそうなんですけど、Keatonも小柄で敏捷で、ユーモアと反骨精神に満ち、愛らしい癇癪もちでもあります。この受けを、包容で強引な攻め(タイプ。たまにリバやるので)が溺愛するという、まさに鉄板カプ。しかもすごい可愛い。
Keatonはとても強い狼で、Chayが属する群れの中でもおそらく最強の狼ですが、戦いや主導権争いを好まない。16歳の時に家族や仲間にゲイであることをカミングアウトし、拒絶された彼は家をとびだして自力で学費を稼ぎ、自分だけの力で生きてきた。その彼がはじめて自分を預けられるほど信頼した相手が、Chayです。逃げよう逃げようとしながら、Keatonは頑固で誠実なChayにふれるにつれ、彼に傾いていく。

2人が飼っている子犬(ChayからKeatonへのプレゼントです)がまた可愛い。いいムードになったところでChayの爪先をかじり、Chayが狼に変身すれば「遊んで!」とばかりにChayの耳をかじる。どうにかしてくれ!と狼のまなざしでKeatonにうったえるChayが笑えます。狼なのに。
Chayの友人や母親など、障害は多けれど、彼らは互いとともに新しい生活を作りはじめる。
その一方、誰かがKeatonを狙っていることが段々とあきらかになります。はたして彼らはすべてのトラブルを無事のりこえられるのか?

ほんとーに愛らしい、笑えるカプです。
いくらか残った問題が気になるのですが、何故ChayがKeatonの狼としての強さを嗅ぎとることができないのかとか、銀の弾丸が最後に効かなかったのはどうしてかとか、あれは裏設定があるのかないのか。
まあでもそれはさておいて、とても楽しめる一冊。気になる友人のRemiの話は、続編が出てるので読んでみるつもりです。

★人狼もの
★運命の相手(mate)

With Caution
J. L. Langley
WithCaution★★ summary:
兄弟としての誓い。恋人としての約束。どちらも守るのは命懸けとなる。

Remington Lassiterは命を落とすところを人狼の血によって救われ、その結果人狼となってしまう。新しい生活に慣れるのに必死の彼に、弟から助けを求める電話がかかってくる。
年の離れた弟は、Remiにとって唯一の「家族」のようなものだった。子供を束縛し母やRemiを殴る父親と、その父親から離れられず言いなりになる母に、彼は愛情を感じられない。
だが弟を守るためなら、Remiは父の言うことすべてに従った。まだ14歳の弟がどうにか無事に大人になるまで、Remiは何でも耐える覚悟だった。

探偵事務所を営むJake Romeroは、Remiを助けようと決心する。
Remiは気付いていないが、彼を人狼に変えたのはJakeの血であった。その時にもう、彼はRemiは彼のmate(運命の相手)だと知っていた。だがそのことをRemiには言えない。Remiは人狼になったばかりで、しかもストレートで、友人のChayが男の恋人を持った時に口をきわめて罵った「ホモ嫌い」である。そして今や、弟と父親についてのトラブルもかかえている。
やむなく自分の欲望を押しこめ、JakeはRemiを守ろうとする。
Remiの父親の過去を調べはじめた彼は、やがて暗いRemiの過去と、そこにある殺人事件に行きあたる。

その一方で、RemiはどんどんとJakeに惹かれていく自分を抑えきれなくなってきていた。また、人狼としてのRemiにも奇妙な現象がおこりはじめ…
.....



Without Reservations」の続編です。Without..に出ていたChayの友人のRemiと、群れの仲間のJakeの話。
前作のネタバレ含むので、ご注意。


Remiは前作でKeatonを「おかま野郎」と罵倒したほどのhomophobia(恐怖症というより、homohaterって感じですが…)です。なので、Jakeが彼のmateであることは皆で「しばらくRemiには伏せておこうか」ということになっている。
しかしそれを知らないまま、RemiはJakeに惹かれて、あれだけ拒否反応を示したにしちゃJakeに近づくことに対してあまり葛藤がない。
Remiが何故そうなのか、何故あれほどKeatonをののしったのか、何故前作であれほど「嫌なやつ」でありながらChayの長年の友人だったのか、そういうことがこの作品できちんと語られていきます。
彼が何から自分を、そして年の離れた弟を守らなければならなかったのか。守るために多くを捨て、自分を覆い隠し、攻撃的な態度を身にまとった、そんなRemiの人生が次第に浮き上がってくる。

自分自身を犠牲にして弟を守ってきたRemiは、Jakeと出会ってはじめて弟と同じほど──あるいは弟以上に大切な存在を見つける。そのことが彼に戦う勇気を与えますが、過去の恐怖をのりこえることは簡単ではない。
それでも手遅れになる前に、彼は弟を父親の手から救い出そうとする。

この弟(Sterling)がかわいいんですよ。まあよくしゃべるよくしゃべる。明るくてこまっしゃくれてて、勘がよく、たじろがない。
Remiが彼をかわいがるのもよくわかります。SterlingにとってもRemiは父親がわりのようなもので、RemiがJakeやその友人と会っていることを知ったSterlingは(兄に友人ができたことを喜びつつ)、彼らを見定めにかかります。14歳ながらも、Remiのことを守ろうとするんですね。
だがその彼もまた、この戦いの中で無傷ではいられない。

一方で、Remiは狼として「オメガ」であり、Jakeは彼の「アルファ」であるということがわかる。それは彼らの属する群れを2つに割る結果となり、彼らは元の群れを離れて自分たちの群れを持たねばならない。
なかなか大変です。はたしてRemiはSterlingを守りきれるのか、そしてJakeはRemiを守りきれるのか。

補足すると、人狼もののスラにはよく「アルファ」「ベータ」、そしてたまに「オメガ」が出てきます。
動物学上、群れのリーダーをアルファ、そしてそのアルファをサポートする副官的存在がベータ、さらに群れで最弱の個体をオメガと言う。オメガはどうしてもみそっかすにされたりいじめられたりするのですが、群れという全体を構成する上で必要な存在らしい。
スラの場合、大抵オメガは珍重されます。オメガは弱いが、オメガを手に入れるということは名誉であり、オメガを自分のものにするということは自分が群れのアルファになるということを意味する。
で、何か元ネタがあるんじゃないかと思うけど、「オメガは戦いには向かないが、特殊能力がある」という設定がとても多いです。いわゆる超能力レベルのものから、群れをまとめるための何らかのシンパシー的能力まで色々ありますが。また一般に人狼のオメガは「オメガとして生まれる」存在で、オメガでなかった者がオメガになったりすることはない。
このへんの「お約束」はどこからはじまったんだろうなあ。


Remiの印象が前作とあまりにちがってくるのでとまどいましたが、次第にそれも納得いくし(もうちょっと変化の過程がほしい気もしましたが)ドラマティックでおもしろい話でした。
SterlingとRhysの話がまた後に引いてますけど、これはそのうち書くそうです。本当に愛らしいぞSterling。彼らの短編がJ.L.Langleyのサイトにのっていますので、本編読了後にどうぞ(下部の「free story」のところから)。
何かゴージャスで手に負えない男になりそうだなあ、Sterling…

ボリュームが結構あるんですが、スピード感もあり、バランスのとてもいい話です。
前作の「Without Reservations」を楽しんだ人なら絶対におすすめ。

★人狼もの
★運命の相手

Payback
Jordan Castillo Price
Payback★★ summary:
Scary Maryはデトロイトのゴスクラブで行方不明となり、死体となって発見された。

Michaelは、親友が吸血鬼に殺されたと知っていた。
その存在をあからさまにされることはないが、吸血鬼たちは都市の闇に息づき、「吸われたがる」若者たちなどをその餌食にしていた。だがそのことを警察や家族に言うことはできない。
Michaelは家を去り、様々な事件の新聞記事などをもとに吸血鬼を追い、2年かかってその中の1人を発見する。

杭や槌、十字架、聖水、そしてドラッグまで用意して、吸血鬼が立ち寄るバーに出かけたMichaelは、体良くその吸血鬼、Grayとともにバーを出ることに成功する。
だが彼にとって計算ちがいだったのは、Wild Billという男も一緒についてきたことだった。タトゥを入れ、レザージャケットをまとったセクシーな男。
もし狩りに心を取られていなければ、Michaelがデートしたにまちがいない男。

3人の生々しいセックスの最中、Wild Billは何故か、吸血鬼に薬を盛ろうとするMichaelに協力する。
彼は何者なのか。何が目的なのか。そしてMichaelはうまくGrayを「狩る」ことができるのか…

.....


Jordan Castillo Priceによる「Channeling Morpheus」のシリーズ1作目。
短編と言ってもいいような短さですが、シリーズ全体を通して濃厚でおもしろいです。この1作目は導入編という雰囲気がありますが、まずつかみとしても成功している。

Michaelはゴスメイク(主にアイライナーのようです)をしている美しい青年で、まだ若い。21歳。友人の仇の吸血鬼を1人で追っています。
退廃的で、少し疲れたような雰囲気を漂わせる青年だけれども、その内側は親友を失った痛みに満ちています。吸血鬼が元凶だと知った彼は、杭を手にしてそれを追わずにはいられない。勇気があり、向こう見ずでもある。世を投げた厭世的なところも見せる一方で、妙に純情なところもある。
吸血鬼たちは、彼の痛みと孤独に惹かれます。
そしてMIchaelは今回の狩りを通して、自分が持っていた「吸血鬼」の悪鬼のようなイメージをくつがえされることになる。それはScary Maryの死と同じように、彼の人生を変えていきます。

作中に出てくるRohyrnolというのは催眠鎮静薬で、デートドラッグ(レイプドラッグ)としても使われる。
吸血鬼はこれに弱くて「夢の世界へ行ってしまう」そうですよ。シリーズ名の「Channeling Morpheus」というのも、「Morpheus(モルペウス:ギリシア神話の夢の神)とチャネリングする」という意味かと。

このシリーズは、同じようにやや短めの連作で続きまして、今5作目まで出ています。MichaelとWild Billについて書かれたその先の話がおもしろいというか、やはり濃厚で、独特の香りがあります。
話もおもしろいシリーズなんですが、特筆するべきはその雰囲気のような気がする。
Jordan Castillo Priceの文章には不思議な雰囲気があります。ダークで、湿り気がある。かと言って饒舌ではなく、むしろ淡々とした筆致。
たとえばCameron Daneの文章は「温度が高い」といつも思うんですが(…70度くらいかな?)、Jordan Castillo Priceは「温度の低い」作家ですね。温度が低く、耽美な湿り気と、コンクリートの打ちっ放しのようなざらつきとストイックさが同居しています。
この先のシリーズで書かれる2人の道行きもまさにそういう、ダークなものがまとわりついた、どこに行くかわからない不安定さと、互いを求めてしまう激情とがどろどろに入りまじった話です。

吸血鬼ものが好きだとか、ダークっぽいものが好きな人におすすめ。まずは好みにあうかどうか、このシリーズ1を読んでみるというのもいいと思います。

★吸血鬼
★短編

Vertigo
Jordan Castillo Price
Vertigo★★ summary:
Channeling Morpheusシリーズ2作目。

MichaelとGrayとの邂逅から2ヶ月。Wild Billは吸血鬼の集団とともに、吸血鬼グルーピーの連中の血を吸い、セックスし、それなりに平和にすごしていた。
だがそこに、ついに彼の居場所をつきとめたMichaelが現れる。
Michaelはここに「吸血鬼を狩りにきたわけではない」と言う。彼はWild Billに会いに来たのだ。「杭のことは心配しなくてもいい」と言われるが、Wild Billが心配しているのは杭のことなどではなかった。

彼はMichaelに惹かれていた。強烈に。
だがMichaelは吸血鬼を狩る人間で、Wild Billはもう何十年も前に人間であることをやめ、吸血鬼となっている。どれほど惹かれても、Michaelに近づくのがいい考えだとは思えなかった。

そしてMichaelは、Wild Billの思った通り、その手の中にひとつふたつ、巧みな仕掛けを準備していたのだった。
.....



前作「Payback」に続く、今度はWild Billの視点から書かれる再会話です。やはり短編。
退廃的で、重く湿った、その一方でストイックなJordan Castillo Priceの雰囲気は健在。

MichaelとWild Billとをつなぐものは、そういう重く湿った「何か」であるように見えます。欲望なのか、それともそれが欲望以上のものなのか。互いにそれがわからないまま、Wild Billは逃げようとするが、Michaelは彼を追う。
2人の関係は、「Payback」の出会いからはじまり、この「Vertigo」で決定的な変化を迎えます。

ひどく微妙な、闇のふちをMichaelは歩きはじめているようにも見える。彼をつき動かすものはきっと孤独で、Wild BillもまたMichaelの孤独に惹きつけられる。
深い、暗い予感を含んだ物語です。
「Payback」を楽しんだ人なら絶対におすすめ。

★吸血鬼×人間
★短編

Here Be Dragons
T.A. Chase
HereBeDragons★★★ summary:
アイルランドで爬虫類の研究をしているKael Hammersonには、暴力的な恋人から逃げ出してきた過去があった。その経験は彼の中に深いトラウマとなり、今でもフラッシュバックに苦しめられている。
Kealの上司のHugh Priceは、この物静かで知性的な部下に強い興味を持っていたが、部下と関係を持つことが利口には思えずに一歩距離をあけたままでいた。

だが海に奇妙な生き物が現れはじめ、KealとHughはともにその調査にあたることになる。
巨大な海蛇か何かと思われたそれは、船舶を襲い、毒を吐く。KealとHughは目撃証言のある海域を調査中、その生き物に襲われたが、あやういところで難をのがれた。

Kealは夢の中で奇妙な世界に入りこんでしまい、大地の女神ガイアとエルフのモルドレッド、竜殺しのセント・ジョージ(聖ゲオルギウス)によって、あの「蛇」がドラゴンであること、ガイアたちの世界から人間の世界へ魔法の生き物たちを送りこんでいる勢力があることを知らされる。かつて2つの世界を隔てた幕を、引き裂こうとする者たちがいる。
ガイアたちは人間の世界にじかに力を及ぼすことはできない。Kealたちは自分の力でドラゴンを、そして続々と現れはじめる神秘の生き物たちをとめなければならない。だがKealは「異質だから」というだけの理由で神話の生き物たちが迫害されていくことには耐えられなかった。

一方でHughとの関係は急速に深まっていく。だがささいな瞬間がKealにフラッシュバックを呼びおこす。自分がいつかそれをのりこえられる日がくるのかどうかKealにはわからなかった。それまで待ってくれとHughに言うのがフェアなことかどうかも。
またKealには、ほかにも人に言うことのできない秘密があった…
.....



T.A.Chaseの現代ファンタジー。続編(完結編…だと思う)の「Dreaming of Dragons」も先日出ました。
この一作目は、KealとHughのカップルを中心に進んでいきます。

Kealは前の恋人からひどい暴力を受け、支配され、命もあぶないような状態からやっとのことでアイルランドへ逃げてきた。他人とまだ深い関係を持つ心構えができていませんが、Hughに磁力のように引きつけられていく。
Hughはとてもいい男で、Kealの事情を知って互いの関係をゆっくりとすすめていこうとするけれども、時おりKealのフラッシュバックはHughに対して向けられてしまう。Hughが何かをしたからではなく、昔の恋人と同じ位置に立ったからとか、同じ台詞を(ちがう意図でも)口にしたからとか。
その馬鹿馬鹿しさをわかっていても、Kealは反射的にフラッシュバックをおこすのをやめられない。

Kealがフラッシュバックをのりこえるには、時間の経過だけでなく、自分に対する確信を取り戻す必要がある。
Hughはそれをわかっていて、それを手伝いたいと思う。ただ真綿にくるむように守ってやりたいが、それだけでは何も解決しない。常に一歩引き、Kealに自分で立ち上がるチャンスと、自由な空間を与える。
自分を受けとめてくれるHughに対してKealは幸せと後ろめたさ、自分自身へのコンプレックスを同時に感じながら、壊れる前の自分自身を取り戻そうともがきます。
2人ともとても優しく、魅力にあふれた人間で、読んでいるとKealを応援したくなります。傷を負い、後ろ向きになることもあるが、彼はしなやかで強い男です。

その一方、彼らはドラゴンとも戦わなければならない。Kealが好むと好まないとにかかわらず、ドラゴンはこの世界に害を為し、この凶暴で強大な生き物を放置しておくことはできないのだった。
だがどうやれば、人がドラゴンを殺せるのだろう?

私はこれがはじめて読んだT.A.Chaseの本で、ドラゴンだ!とタイトルだけ見て買ったら現代ものだったので、ちょっと騙された感を持ちつつ(自分が悪いんだけど)読んでみたらすっごくおもしろかったのでした。
以来T.A.のファンですが、彼の魅力はある程度「王道」を抑えながら、その先にひろがりのある世界を描き出すところではないかと思います。豊かな情感を持つキャラクター、孤独や愛情、融和といった強烈なテーマ、わかりやすいが陳腐ではないストーリー。世界とキャラクターの中に、読む者を引きずりこむ力を持っている作家です。
その魅力が存分に味わえるシリーズです。話としては荒唐無稽なようですが、キャラクターの感情の動きがしっかりと書かれているので、現実味がないという感じはあまりなく、現代ファンタジーとしても充分に楽しめると思います。
傲慢で美しく、気まぐれで勝手なモルドレッドがまた可愛い…
KealとHugh、モルドレッドとセント・ジョージ、この2つのカプの入り組み方もなかなかエロいところがあって、味わい深い。

★竜
★トラウマ(DV)

★Three-Star rating system★


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*発行済*
・フェア・ゲーム
・フェア・プレイ
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・恋のしっぽをつかまえて
・狼を狩る法則
・狼の遠き目覚め
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・天使の影(アドリアン・イングリッシュ1)
・死者の囁き(アドリアン2)
・悪魔の聖餐(アドリアン3)
・海賊王の死(アドリアン4)
・瞑き流れ(アドリアン5)
・幽霊狩り(ヘルハイ1)
・不在の痕(ヘルハイ2)
・還流

*他訳者さん*
・わが愛しのホームズ
・ロング・ゲイン
・恋人までのA to Z
・マイ・ディア・マスター

 
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