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Here Be Dragons
T.A. Chase
HereBeDragons★★★ summary:
アイルランドで爬虫類の研究をしているKael Hammersonには、暴力的な恋人から逃げ出してきた過去があった。その経験は彼の中に深いトラウマとなり、今でもフラッシュバックに苦しめられている。
Kealの上司のHugh Priceは、この物静かで知性的な部下に強い興味を持っていたが、部下と関係を持つことが利口には思えずに一歩距離をあけたままでいた。

だが海に奇妙な生き物が現れはじめ、KealとHughはともにその調査にあたることになる。
巨大な海蛇か何かと思われたそれは、船舶を襲い、毒を吐く。KealとHughは目撃証言のある海域を調査中、その生き物に襲われたが、あやういところで難をのがれた。

Kealは夢の中で奇妙な世界に入りこんでしまい、大地の女神ガイアとエルフのモルドレッド、竜殺しのセント・ジョージ(聖ゲオルギウス)によって、あの「蛇」がドラゴンであること、ガイアたちの世界から人間の世界へ魔法の生き物たちを送りこんでいる勢力があることを知らされる。かつて2つの世界を隔てた幕を、引き裂こうとする者たちがいる。
ガイアたちは人間の世界にじかに力を及ぼすことはできない。Kealたちは自分の力でドラゴンを、そして続々と現れはじめる神秘の生き物たちをとめなければならない。だがKealは「異質だから」というだけの理由で神話の生き物たちが迫害されていくことには耐えられなかった。

一方でHughとの関係は急速に深まっていく。だがささいな瞬間がKealにフラッシュバックを呼びおこす。自分がいつかそれをのりこえられる日がくるのかどうかKealにはわからなかった。それまで待ってくれとHughに言うのがフェアなことかどうかも。
またKealには、ほかにも人に言うことのできない秘密があった…
.....



T.A.Chaseの現代ファンタジー。続編(完結編…だと思う)の「Dreaming of Dragons」も先日出ました。
この一作目は、KealとHughのカップルを中心に進んでいきます。

Kealは前の恋人からひどい暴力を受け、支配され、命もあぶないような状態からやっとのことでアイルランドへ逃げてきた。他人とまだ深い関係を持つ心構えができていませんが、Hughに磁力のように引きつけられていく。
Hughはとてもいい男で、Kealの事情を知って互いの関係をゆっくりとすすめていこうとするけれども、時おりKealのフラッシュバックはHughに対して向けられてしまう。Hughが何かをしたからではなく、昔の恋人と同じ位置に立ったからとか、同じ台詞を(ちがう意図でも)口にしたからとか。
その馬鹿馬鹿しさをわかっていても、Kealは反射的にフラッシュバックをおこすのをやめられない。

Kealがフラッシュバックをのりこえるには、時間の経過だけでなく、自分に対する確信を取り戻す必要がある。
Hughはそれをわかっていて、それを手伝いたいと思う。ただ真綿にくるむように守ってやりたいが、それだけでは何も解決しない。常に一歩引き、Kealに自分で立ち上がるチャンスと、自由な空間を与える。
自分を受けとめてくれるHughに対してKealは幸せと後ろめたさ、自分自身へのコンプレックスを同時に感じながら、壊れる前の自分自身を取り戻そうともがきます。
2人ともとても優しく、魅力にあふれた人間で、読んでいるとKealを応援したくなります。傷を負い、後ろ向きになることもあるが、彼はしなやかで強い男です。

その一方、彼らはドラゴンとも戦わなければならない。Kealが好むと好まないとにかかわらず、ドラゴンはこの世界に害を為し、この凶暴で強大な生き物を放置しておくことはできないのだった。
だがどうやれば、人がドラゴンを殺せるのだろう?

私はこれがはじめて読んだT.A.Chaseの本で、ドラゴンだ!とタイトルだけ見て買ったら現代ものだったので、ちょっと騙された感を持ちつつ(自分が悪いんだけど)読んでみたらすっごくおもしろかったのでした。
以来T.A.のファンですが、彼の魅力はある程度「王道」を抑えながら、その先にひろがりのある世界を描き出すところではないかと思います。豊かな情感を持つキャラクター、孤独や愛情、融和といった強烈なテーマ、わかりやすいが陳腐ではないストーリー。世界とキャラクターの中に、読む者を引きずりこむ力を持っている作家です。
その魅力が存分に味わえるシリーズです。話としては荒唐無稽なようですが、キャラクターの感情の動きがしっかりと書かれているので、現実味がないという感じはあまりなく、現代ファンタジーとしても充分に楽しめると思います。
傲慢で美しく、気まぐれで勝手なモルドレッドがまた可愛い…
KealとHugh、モルドレッドとセント・ジョージ、この2つのカプの入り組み方もなかなかエロいところがあって、味わい深い。

★竜
★トラウマ(DV)

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Dreaming of Dragons
T. A. Chase
Dreaming of Dragons★★★ summary:
エルフのMordredと聖騎士Georgeは、幻想界で長年に渡る恋人同士であった。何ものも自分たちの関係をおびやかすことはない。2人のどちらも、そう考えていた。

だがドラゴンや、魔法の生物たちが幻想界の領域を越えて人間の世界に現れはじめ、Georgeはガイアの命を無視して人間に力を貸すために立ち上がる。2つの世界のバランスを取り戻すために。
恋人が自分から離れていくことに、Mordredは気付いてはいたがどうすることもできなかった。人間たちに──主にKaelとHughに──力を貸してやりたいのはMordredも同じだ。
ただ恋人の高潔なほどの犠牲的精神は、Mordredは持ち合わせていなかった。
そしてGeorgeの正義を求めるまっすぐな心根を、Mordredは愛していたが、理解しているとは言いがたかった。

GeorgeはMordredから離れて別のものを守りはじめ、だが彼らの戦いを嘲笑うかのようにドラゴンは現われつづける。
Mordredは、ドラゴン出現の裏で糸を引く者の正体を暴くために最後の賭けに出た。
それは恋人のため、そして人間界にいる友人たちのための賭けであった。だがその賭けがGeorgeとMordredを大きく引きはなすことになる。

2人は世界を守るため、友人たちを守るためにどこまで自分たちを犠牲にしなければならないのか。
そしてMordredは恐れていたことを目のあたりにする。Georgeの高潔さは、彼の──彼らの──すべてを犠牲にするほど強いものであることを。
.....



Here Be Dragons」の続編。かつ、完結編(おそらく)。
KaelとHughの2人の人間を中心に語られた前作に対し、今作は幻想界の人たち、魅惑的で移り気な美しいエルフMordredと、はからずも遠い昔に彼と恋に落ちてしまった気高い聖Georgeを中心にして展開していきます。

前回に引きつづき、まだドラゴンや海蛇は人間界で暴れ回っています。KaelとHughはドラゴン狩りに追われ、Georgeはそれを影のように助ける。
Mordredは、ちょっと暇にしています。んでもって、暇になるとかまってほしくなるのが、この猫のように高慢なエルフの気質でもある。皆が駆けずり回っているこの非常時に無責任ですが、そのへんが可愛いところです。

もともと彼は、聖Georgeなんていう堅物と恋に落ちるつもりはなかった。1人の恋人とずっとつれ添うなんてことは、気まぐれなエルフにとって予想の外だった。
それでもお互い、とらわれるように恋に落ちてしまった、その遠い昔の出会いと回想が物語のそこかしこにはさんであって、「いやホントにそんなつもりはなかったんだけど」というMordredのつぶやきが聞こえてくるようで、おもしろい。

わがままを言ってばかりではなく、MordredはMordredで仕事はしてますが、忙しいGeorgeに「お前は暇でいいな」と言われてカチンとしたりする。そりゃGeorgeほど熱心じゃないけどさ、そんな言い方あるかよ、てな感じでやさぐれたりします。
いや本当、可愛いです、このエルフ。あんまりこれを1人にしちゃいかんよ、Georgeも。
実際に悪い虫が近づいてきたりするわけですが、Mordredの方が虫よりたちが悪いかも。

私は、前作を読んだ段階ではそんなにこのカプには興味が沸かなかったのですが(何か出来すぎな感じのカプだし)、いざこの2人に焦点を移して語られてみると、感情のやりとりや重ねてきた年月が鮮やかにせまってきてとても楽しめました。
一方で、Kealの問題もちゃんと書かれていて、Kaelが前作で描かれたトラウマから完全に立ち直っている様子も見てとれます。よかったなあ。なかなかにいさましくて、Keal好きならそこだけで一読の価値あり。相変わらずHughとラブラブです。

2人の人間と、エルフと騎士は、ドラゴンの出現をとめられるか。そのメインのストーリーもしっかり書かれていて、隙なく楽しめる話に仕上がっています。
そして最後に、彼らは何かを犠牲にしなければならない。命、記憶、恋。犠牲を払うのは誰なのか。
ある意味ベタな展開ですが、それが正面きって書かれていて、文句なしに最後の最後まで盛り上がります。「王道」はやはりこうでなきゃ。

前作を楽しんだ人なら絶対におすすめ。
2冊あわせて上質の「物語」でもあるので、ドラマとファンタジーと愛らしいカップリングを同時に楽しみたい人に。

★堅物騎士×移り気エルフ
★自己犠牲

Fighting Dragons
T. A. Chase
Fighting Dragons★★☆ summary:
Here Be DragonsDreaming of Dragonsの続編

世界の境目を破って現れはじめたドラゴン。だがその騒動は、討伐隊の働きと、破れ目をとじたエルフと聖騎士の働きで鎮静しつつあった。

ドラゴン討伐隊のメンバー、下士官Bailey Stevensonと隊長David Wellmineは、出会ってからずっと互いに惹かれるものを感じていた。
BaileyはできることならDavidとの関係を深いものにしたかったが、Davidにはどうしても振り切れないためらいがあった。

仲間たちは彼らの様子を心配し、そしてアイルランド最大の休日である聖パトリックの日、魔力が最大になるその日に、おせっかいなエルフのたくらみが動き出す。
彼らに恋の魔法が投げかけられたのだ。
その魔法は2人の中にあるためらいを突き崩す。

だが魔法は一日しか続かない。この情熱と欲望が消えた時、2人はどうなるのだろう。
Davidは家族に対する体面と責任を振り切って、Baileyの手をつかんだままでいられるのだろうか。それとも彼は、Baileyに背を向けるのだろうか。
.....



前二作の続編ですが、スピンオフと言うかちょっとおまけっぽい感じになっています。
竜はもう出てこないし、世界はわりと平和。段々と、皆が戦いが収束した後の人生におさまりつつあります。

そんな中で、もうじき役目を失うドラゴン討伐隊。そこにいる2人の男の物語。

Baileyは戦争で重傷を負い、今でも後遺症に苦しんでいる。そのことが、彼の中にためらいとなって巣喰っています。誰が傷の残った兵士を恋人としたいと思うだろうか?
一方のDavidは、Baileyに惹かれてはいるものの、議員の父親からの期待とプレッシャーの中から一歩を踏み出すことができない。
がんじがらめにされ、跡継ぎとして父親の描いた絵図通りの人生を送ってきた彼の、唯一の反抗は、軍隊に加わったことだった。
彼は誇り高く、強靭な男ですが、父親の期待に応えたいという長年の願いは根深い。たとえ何をしたとしても、父親は息子を一人前としては認めないのに、息子は「いつか」という望みをかけて父の言葉に従い続けているのです。

そんな彼らの様子を見かねて、よせばいいのにおせっかいをするのがエルフのMordred。彼は今、自分の力を使えませんが、友人のエルフに頼んで聖パトリックの日に恋の魔法を投じてもらう。
「人の人生に手を出すのがいいことだとは思わない」とMordredの恋人のGeorgeは眉をひそめるけれども、エルフの単純な「好意」を責めることも出来ない。
果たして物事はどう転がるか。あんまりオッズはよくない。

ぎりぎり三万語という短さで、あっさりと読めますが、小道具も効いているし、きちんとドラマ部分は押さえています。何より愛らしくていいな、この2人と周囲の様子が。
第一作のカプ、KealとHughもいるし、第二作のMordredとGeorgeもいる。色々な心配事がなくなった今、彼らの関心は仲間に向いている。
おせっかいと言ってしまえばそれまでだけど、愛情と好奇心がいりまじってテンションが上がっている姿がほほえましい。Mordredは相変わらず衝動には逆らえないし、子供っぽい安易さで物事に乗り出してしまう。
彼らがみんなで楽しくやっている様子を読めるのが、この話のもうひとつの楽しみ。

楽しく読めて、気持ちのいい一冊。
前作を楽しんだ人に。
これ一冊でスタンドアローンではあるのだけど(きちんとキャラの説明などは書いてあって、これだけでも読み解ける)、やっぱりシリーズ第一作から読んだ方がいいと思います。

★聖パトリックの日
★恋の魔法

★Three-Star rating system★


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