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Somebody Killed His Editor
Josh Lanyon
Somebody Killed His Editor★★ summary:
Holmes & Moriarityシリーズ1

40歳のミステリライター、Christopher Holmesは作家人生の岐路に立たされていた。彼が長らく書いてきたシリーズの売り上げが落ち、エージェントから「もっと時代に即した、売れるものを書かないと」と強く言われる。
エロティックなものや吸血鬼やらが出てくるもの。一体どうやって?

エージェントのすすめで、彼はとある作家の集会にしぶしぶ参加する。そこに来る出版社の人間に新しいシリーズのアイデアを買ってもらわなければ、作家としての彼のキャリアは行き詰まったも同然だった。
問題は、彼にはまるで新しいシリーズのアイデアがなかったこと、さらに切迫した問題は、集会のあるロッジにたどりつく前に女の死体に行きあたったことだった。

橋が落ちて、誰もそのロッジから──嵐がやむまで──出ていけない。まるで推理小説の舞台のようなその状況で、Holmesは思わぬ男と顔をあわせる。
J.X. Moriarity。元警官のベストセラー作家。
10年前、週末をともにした相手。ただ1人、彼を「Kit」と呼ぶ男。
そしてJ.X.は、Christopherを殺人の容疑者として部屋に軟禁すると言う…
.....



Moriarityと言えばモリアーティ教授かと思いきや、あっちの綴りは「Moriarty」らしい。でも当然、あの2人を念頭にしたキャラですね。性格はかけらも似てない(似せてない)と思うけど。
古典のミステリのスタイルを踏まえつつ、それを使って現代のスラにしてみた、というユーモアミステリです。

外界から閉ざされたロッジ、嵐、正体不明の殺人者、2つ目の死体、主人公にかけられる嫌疑──と、古典的なミステリの要素がたっぷりつめられています。作者のLanyonは非常にテクニカルな作家なので、色々とほかにも計算されているにちがいないと思いますが、私はミステリの原書を読んだことがほとんどないのでどこまで何を踏襲しているかわからないのがちょっと残念。
あと時事ネタとか、実在する人の名前とかが散見されますね。「セーラームーンのフィギュアか」とか、そういうツッコミしかわからない自分がちょっと切ない。わかる人なら10倍は楽しめるでしょう。
でもそれはそれとして(得意技でスルーしつつ)、おもしろく読んだ一冊です。

主人公のChrisはかなり悲惨な状況です。ずーっと書いてきたシリーズが打ち切りになるかもしれない。古典的なミステリというのはもう求められていないのかもしれない。
マーケティング、すべてをひっくるめた「パッケージ」の問題なの、とエージェントは言う。小説そのものはもはや問題ではないのだと。
それで嫌々、作家の集会に出てくるわけですが、落ちていく橋を命からがら走りきり、死体を見つけ、うっかりJ.X.とよりを戻したと思えば「気の迷いだった」と言われる。挙句に新シリーズの話なんかそりゃもう、砂上の楼閣です。ていうかこの人がでたらめに話す新シリーズネタが、実際無茶苦茶なんですが。

踏んだり蹴ったりの状況下、Chrisは持ち前のユーモアで周囲をさらに苛々させていく。それも、主にJ.X.を。Chrisは繊細だけど相当に図太い。
J.X.はどうもChrisを守りたいと思っている様子ですが、10年前の逢瀬の時の出来事を許してもいないし、でもChrisに惹きつけられる自分を否定もできない。
J.X.のChrisに対する人あたりにも、相当にきついものがあります。

この2人の関係がなかなかいい。J.X.は5つ年下で、かつてはChrisを憧れの目で見ていた新人の後輩だったのに、久々に会ってみたらえらい皮肉屋で悠然としたベストセラー作家になっていて、Chrisは正直落ち着きません。そりゃそうです。それにしてもJ.X.は魅力的。
作家と元警官、というのは同作者のAdrien Englishシリーズにも似た流れですが(あっちは作家志望の本屋と警官ですが)、あれほどヒリヒリした、さわると怪我しそうな切迫感はありません。J.X.はゲイである自分を否定してないしね。
それだけに、反発しあいつつも、ひとつ転がれば2人で幸せになれそうな感じがあって、読んでいるとじれったくも楽しい。

J.X.はずっとChrisが好きだったんだろうなー、それで怒っているんだろうな、というのがあちこちに滲み出ているのに、当のChrisが鈍いのもかわいい。セックスなら別に平気だけど、それ以上のところに話が及びそうになるといつも慌ててはぐらかそうとするし。
そういうつもりはないのについつい事件をつっついてみるChrisを、J.X.は本気で心配し、苛立っている。でもそんなJ.X.をChrisは助けたり、最後のしっぺ返しをしてのけたりする。いい組み合わせの2人です。

ミステリ部分も、やはり古典ミステリへの敬愛をこめてだと思いますが、基本パターンにのっとっているのでわかりやすい。
わりと軽めに楽しめる一冊。
古典ミステリやユーモアミステリが好きなら勿論、「10年ぶり」とかに萌える人にもストライクだと思います。

作中に「Elementary, my dear..」という決め台詞がありますが、これはホームズの「Elementary, my dear Watson」(初歩だよ、ワトソン君)からのものです。
ほかにもそういうのいっぱい隠れてるんだろうなー。
しかしdearとか入ってたのね、ホームズの台詞。萌える。

★ミステリ(古典系)
★再会

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Faith & Fidelity
Tere Michaels
Faith and Fidelity★☆ summary:
ニューヨーク市警風紀取締課の刑事、Evan Cerelliは、長年つれそった最愛の妻を交通事故で失ってから、まるで抜け殻のような人生を送っていた。ただ子供たちのために生き、仕事を続けてはいたが、世界はまるで、彼の周囲ですべての色を失ってしまったようだった。
彼は中学で妻に出会い、恋に落ちて、それからずっと他の女性を見たことはなかった。彼女は彼の最大の友人であり、理解者であり、恋人であり、妻であり、子の母であり、彼を世界につなぎとめる存在だった。

元殺人課の刑事Matt Haightは、仲間に背を向けられて警察を去ってから、警備会社で働いてはいるものの、ボトルの底をのぞきこむような日々を送っていた。
アパートにろくな家具も置かず、人生の目的もなく、ただその日をやりすごすために酒に手をのばす。

警官の退職パーティで、2人は出会い、お互いの存在にほっとする。相手を憐みもせず、詮索もせず、余計な世話も焼かない。
ただそこにいて、一緒に酒を飮むだけの友人。2人でいる間は、転落した人生を取り戻そうともがかなくてもいい。何か別のものになろうとせず、自分自身でいられる。

だがその気持ちがいつのまにか、友情以上のものへと変わりはじめる。それに気付いた2人は、仰天する。
それまで自分がゲイだと思ったこともなかった。そんなことはありえない。その筈だった。
.....



Mattは42歳、Evanは30代半ば~後半の筈、だと思う(探してみたけど年齢発見できず。でも長女が17歳だし)。
人生の荒波に叩きつぶされかかった2人が、まるで予期しなかった次の荒波にぶつかって、恐れ、たじろぎつつも、そこから新しい人生を模索していく話です。

Evanは、周囲から愛されています。4人の子供たち、彼の心配をして食事の面倒を見ようとする女性パートナー、理解ある仕事場の仲間。
彼らが自分を案じ、心にかけていてくれることはわかる。でもそのあたたかさを、Evanはもう感じとることができない。
妻が失ってから心がとじてしまった彼は、自分が「ゆっくりと死にかかっている」のを知っているけれども、どうしようもないまま、世界からすべり落ちていく。

その彼にはじめて届いたのが、Mattの存在です。彼のあたたかさにしがみつくように、Evanは人生のぬくもりを思い出していきますが、その先、どうしたらいいかわからない。
Mattと一緒にいて、果たしてどうなる? 事故から1年たったとは言え、亡くなった妻への裏切りにはならないだろうか? しかも男と? 子供たちがこれを知ったらどう思うだろう?
現実の重さをただ恐れ、引いていこうとするEvanを、Mattはとめることができない。

そういう、社会の規範や自分の常識の中で、自分たちの関係をどうするべきかわからない2人の大人の男(てか親父)の心模様を中心にした話です。
そんなに颯爽とした感じもなく、時々情けなかったり、ちょっとよれよれした感じもある親父っぷりがいい。

途中、Mattがたまたまひっかけるone-night-standの相手のJamesがめっちゃくちゃ格好よくて、この一夜のエピソードがいい具合に効いています。(シリーズ次作「Love & Loyalty」は彼が主人公の話です。すごくいい)
いかに色々こみ入ってしまったからと言って、それまで40年自分がストレートだと思って生きてきたMattが「男をひっかけに」夜の町に行くのは正直違和感があるんですけども、Jamesがあんまりいい男なのでそのへんはまあいいか、という気持ちにもなる。

細かい部分はいくつか気になりますが、感情表現が豊かで、全体によく書けている話です。
40すぎて、とか、自分がゲイだと思ったこともない親父、とか、そういうものが好きな人におすすめ。

★ストレート×ストレート(子連れ)
★親父

Love & Loyalty
Tere Michaels
Love & Loyalty★★★ summary:
シアトルの殺人課の警官Jim Sheaは、自分が捜査を担当したある殺人事件を忘れることができなかった。
一人娘が殺され、Jimが起訴した殺人者は無罪となり、それを目の当たりにした母親は心臓の発作をおこし、息絶えた。
家族のすべてを無残に奪われた父親は、だがJimを責めることはなかった。

ドラマティックな実話の映画化権を求めてハリウッドの人間は蟻のようにむらがったが、父親はGriffin Drakeとその相方である女優のオファーにだけ返事をした。映画が決して犠牲者の名誉を穢さないこと、面白半分のものにならないことを条件に、映画化の契約が結ばれる。
だが彼は、癌で余命いくばくもない。映画の完成を見ることはないだろう。
それを当人以外に知っているのはJimだけで、彼の意志通りに映画が作られるのを見届けるのが、Jimの誓いでもあった。

シナリオライターGriffin Drakeにとってこの映画は、自分のキャリアを高めるまたとないチャンスであった。
Jimから詳しい事件の話を聞こうとした彼は、この、強く自分を抑制している物静かな刑事に惹かれていく。一夜の打ち合わせはデートへと変わり、GriffinはそのままJimの家にとどまってしまう。それは彼らのどちらとっても、意外な成行だった。

Jimは何も探してはいなかった。一夜のセックス以上の関係も、愛も、信頼も。
Griffinの存在に心をくつろげながら、彼はいつかそれが終わり、Griffinが彼の人生から立ち去るだろうと思う。これまでずっと、すべてがそうだったように。
.....



Faith & Fidelity」に出てきたJames(Jim)の話。あれからちょっとたっているようです。独立した話なのでこれだけで読めますが、MattとJimとの奇妙な絆を知っておくと、Jimの内側がより深くわかります。

Jimは45歳の、とっても格好いい男です。
誰もが彼に恋人がいないことを意外に思うほど格好いい。だがJimは孤独で、孤独に慣れ、自分のルールで物事を運び、人と距離を保つことに慣れている。
彼をつつむ壁の向こうにある傷つきやすい素顔をGriffinが感じとったのは、彼もまた明るく馴染みやすい人間のようで、その裏に繊細な顔を持っているからかもしれません。
はじめてのデートの日、Jimが誕生日だと知った彼は、小さなカップケーキを買って蝋燭をたてる。こんなことして嫌がられないかな、と内心ドキドキしながらベッドにケーキを持ってきてサプライズを演出しようとする姿に、Jimはほだされてしまうのです。

そんな彼らの関係は、何ともぎこちなくて、それがとても可愛い。
わりと簡単にはじまって、互いの存在が気持ちいいけれども、自分がここにいていいのかどうか確信が持てない。相手の気持ちを探り合い、自分が踏みこみすぎてないかどうか考え、たじろぎ、立ちどまる。相手の反応を息をつめて待つ、その様子がリアルです。

家にろくな家具を置かず、仕事以外の私生活を持たないJimの姿は、前作でMattに心の内を見せたあの「James」とは少しちがって見える。あの時は、こんなに殻にこもった人には見えなかったし。
それは、遠い場所で知らない相手に心をひらくしかなかった、そんなJimの問題なのだと読んでいるうちにわかってくる。彼の中には色々と豊かなものがあるけれども、Jimはそれを静かな壁で覆ってしまっている。それを他人に見せることを恐れている。

惹かれながらたじろぐ彼らの心の動きもいいですが、周囲の様子もおもしろい。Jimの友人たちは彼を心配し、Jimが誰かいい人を見つけることを願っています。彼らは自分たちではJimの孤独を救えないことを知っているのでしょう。
そんな彼らなので、いざJimが恋人を持った時には過剰に反応します。
JimがGriffinを皆とのディナーにつれていく、という電話をすれば「頭を打ったのか」とか「何かの暗号か」とたしかめ、Griffinが現れれば「本当に存在したんだ!」と驚く。いい友人ですよ。うるさがるJimの気持ちもわかるけど。
最後の最後に、Jimがこっそり恋をしていた友人との会話がある、そのシーンも、とてもいい。

一方で、長年の友の裏切り、自分のした約束への責任、そんなものが彼らの関係を揺さぶり、2人の人生を変えていきます。
GriffinはすべてをなげうってJimとの約束を守ろうとする。でもそれだけでは充分ではないかもしれない。

前作もおもしろかったですが、こちらはまたぐっと緊張感のある、力強い描写の話になっています。Jimが少しずつGriffinに心をひらいていく、その様子がきちんと描き出されていて、説得力がある。
JimやGriffinだけでなく、周囲の人間の感情もよく書かれていて、物語に厚みをそえています。人間関係を中軸に据えた話が好きな人におすすめ。

★ハリウッド
★遠距離

Slow-Play
Carol Lynne
Slow-Play★★ summary:
Bobby Quinnはチャータークルーズの船長という仕事と、まかされた船を愛していた。この船は彼が手に入れ、すみずみまで修復し、美しく磨き上げた。人生そのもののように愛した相手だった。
だが義理の兄はBobbyからその船を奪い、ただの雇われ船長として彼を働かせ続ける。かつてあれほど愛したこの船が、今はBobbyをつなぎとめる鎖となっていた。
家族からなるべく距離を置き、誰かと付き合うこともなく、Bobbyが遊びに出かけるのは友人たちとのポーカーだけであった。

Jules Petersは、孤独に慣れ、そして孤独に疲れていた。
目指した医者になり、大きな家に住みながら、彼のすることと言えば古い車を買い取り、パーツをひとつひとつ集めて元のように美しい姿に直すことだけだった。そんなことでもしていなければ、あまりにその家は孤独すぎた。

サンフランシスコ湾でのクルーズをプレゼントされたJulesは、船長のBobbyと出会う。
この若い男にかつてないほど強く惹かれながら、Julesはためらっていた。彼はもう孤独に慣れきっていて、その殻から出るのには勇気を要したし、Bobbyの若さは、Julesが望むような長い関係を求めていないように見えた。

BobbyもJulesに惹きつけられていたが、何より、今のBobbyには他人と付き合う余裕がなかった。
兄との関係はますます悪くなり、Bobbyは追いつめられる。自分を曲げて兄のために働き続けるか、それとも心から愛した船を捨てて別の人生を探すか。だがそれは、自分の体の半分をもぎ離すようなものだった。
.....



Poker Nightシリーズ2。

ポーカー仲間の1人Bobbyと、前作「Texas Hold 'Em」のEricが働いている病院の医師Julesとの話。
気付かぬままに人生の壁に行き当たり、疲れている2人の男が出会って、それぞれに新しい道を見出す話です。

40代前半あたりのJulesは、その年になるまで1人しか恋人と呼べる相手がおらず、そしてその関係は相手の死によって悲劇的な結末を迎えている。
彼はおだやかな人間ですが、用心深く、他人を自分のテリトリーにすぐ招き入れたりしない。
Julesの心には死んだ恋人が、もう20年近くも住みついていて、苦しんだ記憶はたやすく彼の心を離さない。

Bobbyは自分の金持ちの家族が道具のように人を使う様子を見て育ったため、金のある人間を信用しない。Julesのこともすぐには信用できない。彼もやはり、Bobbyを道具のように使っているのではないだろうか。死んだ恋人からのリバウンドで、手近に来た若い男に傾いているだけなのではないだろうか。
互いの悩みや、行き違いが、ストーリーを通してくっきりと浮き上がってきます。

ちょっと子供っぽく、一本気なところがあるBobbyと、慎重でおだやかなJulesとの組み合わせがいいコントラスト。
JulesはBobbyと付き合いはじめて、否応なくほかのポーカーの仲間とも関わりあっていく。JulesとBobbyだけではなく、友人全員が力を合わせ、Bobbyの窮地を救っていくのです。
「友人達+Jules」ではなく、全員まとめて友人になっていく様子がいい。前作のEricもごく自然にメンバーの中に馴染んでいて、相変わらず忙しいようですが、彼とZacもうまくやっているようです。

いったん壁を越えるとやたらとエロエロな関係になるので、たまにおいてけぼりの感もあるほどですが、それもCarol Lynneの作品の楽しい部分。
体の関係を作るのも、気持ちよさに溺れたり誤魔化されたりするのもいいけれども、それを支える信頼の土台を2人は作らなければならない。
そうやって向き合い、もがき、互いの大切さに気付いていく様子がかわいいです。

タイトルの「Slow-Play」はポーカーの戦略で、強い手を持っているのに逆に振る舞い、相手が賭けにのってくるよう仕向けるやり方。
シリーズ1と同じように「仲間で結束してがやがや」というのが好きな人におすすめ。「死んだ恋人の記憶から逃れられない年上の男」が好きなら、さらにおすすめ二倍です。

★船乗り/医者
★仲間

Pocket Pair
Carol Lynne
Pocket Pair★★ summary:
高校教師Trey Hugginsは、この3年、ずっと校長のCole Hardingを見ていた。
だがColeがゲイかどうかもわからないし、たとえそうだとしてもTreyのような男には興味を持たないだろう。それはよくわかっていた。

毎週ポーカーをする友人たちはいたが、Treyは孤独だった。
ネット上で知りあった相手とブラインドデートにこぎ着けるが、相手はTreyの家に押し入り、レイプした上、彼を刺す。
体の傷と同時に、Treyはいかに自分が愚かでつけこまれやすかったか、自分を責め、傷ついていた。

Coleはこの職について25年、仕事とプライベートライフを完璧に分けてきた。
同じ職場の部下、Treyの物静かでおだやかな物腰に惹かれ、彼がコーヒーに砂糖を3つ入れて飲んでいることまで知りながら、ColeはTreyへと1歩を踏み出すことが出来なかった。
だがTreyが刺されたと聞いた時、自制を振り切ってほとんど反射的に行動する。もっと早く手をのばすべきだった。Treyに、彼は孤独ではないと知らせていれば、起きなかった事件でもあった。

Treyを刺した犯人はデート強盗の常習者で、警察はTreyに裁判の証人になってほしいと言う。
ゲイのレイプ殺人まで絡んだその裁判は大きなスキャンダルとなり、マスコミや、ゲイを糾弾するグループが大挙して町へ押し寄せて、Treyは追いつめられ…
.....



Poker Nightシリーズ3。週末のポーカー仲間の1人、Treyの物語。
Treyは1話の「Texas Hold 'Em」でもZacの買い物につきあって料理のレシピを丁寧に教えてくれたりと、とてもいい人です。でもその時も「自分のような人間とつきあいたい男なんてあまりいない」的に、少し自虐的なところも見せている。
この人は「shit」とか「damn」とか毒づかない。丁寧な物腰と口の聞き方の人のようで、それを友人からからかわれたりしています。

そんな奥手で繊細な彼なので、ブラインドデートで男に殺されかかって、かなりの自己嫌悪に陥る。
友人たちが彼を助け、Treyは「Slow-Play」のカプであるBobbyとJulesの家に滞在して、面倒を見てもらう。
今回は本当にみんなが団結してTreyを助けよう!としている様子が鮮やかに出ていて、友情模様がなかなか素敵です。
誰も、Treyの心の中がそれほど孤独だとは思っていなかった。だから今回の事件はTreyだけでなく、彼ら全員を揺さぶる。そして彼らは全員で、そこを乗り切ろうとします。

ColeはTreyに惹かれるが、自分が25年もかけて築き上げてきたキャリアをそこに賭けていいものかどうか悩む。
しかもTreyは今や時の人で、裁判の渦中にいる。
証人として証言を求められ、追いつめられるTreyをColeは支えたいと思う。恋人が一番苦しい時にそばにいることもできず家で待つしかないなんて、それはどんな男だろう?

繊細なTreyが傷つけられる姿が痛々しくて、保護欲とためらいに揺れるColeとの関係がいい。
この話では、ポーカー仲間でありながらこれまでちょっと仲間と距離をあけていたAngeloが、Treyを守ろうとしてがんばる図がすごくけなげでいいです。Angeloはよく仲間のからかいの種にされているんですが(洒落た高いスーツとか、スニーカーフェチとかまあ色々あって)、Treyは繊細なので、Angeloがからかいで本当に傷ついた時がわかる。そういう時に助け船を出してあげてきた。
その恩返しと言うわけではないけれども、今回、AngeloはTreyをほとんど体を張って守ります。スーツをびしっと着込み、でかい刑事に恐れず強い口をきいたりとか、萌えるぞAngelo。

TreyとColeの恋模様もいいですが、やはりこのポーカー仲間の団結ぶりが見ものです。
Treyはいくつなのかなあ。30歳くらいじゃないかと思うんだけど、Coleは大体47、8歳らしいので、実のところ年の差カプっぽいような気もする。

傷ついた繊細受けが好きな人、友達同士の団結ものにぐっとくる人にお勧め。

★奥手受け
★レイプ裁判

Family Unit
Z. A. Maxfield
Family Unit★★ summary:
退役軍人のLoganは、癌で死んだ恋人の家に移り住んだ。
恋人の記憶をしのんでいたハロウィンの夜、彼はRichardに出会う。

45歳のRichardには大きな過去があった。
ゲイであることを認める前の混乱、その時に生まれた息子。その息子も事故で死に、彼は8歳になる孫のNickを引き取って1人で育てていた。
Nickは、彼に残されたただ1人の家族だ。孫のためならRichardは何を捨てても惜しくはなかった。

たとえLoganにどれほど惹かれていたとしても、一瞬の情熱や恋のためには捨てられないものがある。
2人だけでも、Richardと孫のNickはまぎれもない家族として暮らしていた。

RichardとLoganは互いに惹かれながら、ただ恋人というだけではない新しいスタンスを探さなければならない。意見のくいちがい、価値観の相違、8歳の子供の存在。
そのすべてを乗り越えて、新しい家族の形を。
.....



45歳のおじいちゃんって若いよね。Loganも最初はRichardが「父親」なんじゃないかと思います。
Richardがのりこえてきた人生は楽なものではありません。若い時の性的な混乱でできた息子とは長年会えず、やっと互いの関係を修復したと思ったら事故で息子は失われ、薬物中毒の母親の手から孫を奪い返し、彼はそのNickをひたすら守って育てている。
かつて恋か子供かという選択を迫られて、RichardはNickを選んだ。それはNickが8歳になった今も同じ。

しかし勢い余ってRichardは過保護にすぎるし、すべてのものからNickを守れるわけではないということを、どこか納得していない風です。時にはNickは1人で戦わなければならない、そのことを受け入れようとしない。
Loganは彼を尊重するけれども、時おり2人の意見は大きくくいちがう。

特に暴力というか、「力」の関わるところになるとRichardは反射的な拒否を示します。
彼には何故Loganが従軍したのか理解できないし、家の中に銃を置いていると知るや彼の家に行くことも拒否する。ある種の潔癖症と言ってもいい。
Richardにはそういう、どこか理想的な完璧さを求めるところがあって、それは現実感覚に優れたLoganとはちょっと相いれない。

でもLoganはいい男だね!彼はRichardの拒否に傷つくけれども、理解している。RichardがNickのことになると過剰反応を示すことも、子供のことが第一に来ることも理解する。理解しすぎじゃないかという時もあるが、でもほんとにいい男だ。
譲歩ばかりするだけでなく、Richardにも理解して歩みよってもらおうと、Loganは色々な努力を重ねます。一方的な譲歩が2人の関係を壊しかねないことを、彼はよく知っている。

Richardの問題は他人との妥協に慣れていないことで、その深くには、「家族」を失ってきたことによる傷がある。ゲイであることが彼にその孤独を負わせた。
孫のNickに対する過保護なほどの愛情はその埋め合わせでもありますが、同時に彼はNickと自分の作った殻にこもって、他人をたやすく入れようとしません。
LoganがRichardと本当の恋人になるためには、「家族」としての信頼を得ないといけない。まあ、Loganは簡単にあきらめるような男でもないけどさ。
そういう2人の様子を書いた話です。

中年になってからの恋ではあるけれども、2人とも結構ピュアなところがあって、人と人との距離を丁寧に描いた話全体に繊細な味わいがあります。軍隊とかそういうあたりの価値観は何と言うか「アメリカン」な感じもするので、そのへんは好き好きあるかも。
ところどころRichardの名前が誤植でNickになっていて、人の名前が間違ってるのってそんなに珍しくはないんだけど、8歳の子供の名前だとさすがにこっちの萌えっとした気持ちがしぼみますね。惜しい。でも最後のオチまできちんと作られていて、いい話です。

価値観のちがう大人たち(片方子連れ)のリアルな恋模様に萌える人に。
ちょっと長めなので、じっくり楽しめます。

★元軍人×非暴力主義者
★家族

Thirty Days
Shayla Kersten
Thirty Days★★ summary:
Biton Savakisはニューヨークに住む42歳の裕福な弁護士である。
だが彼の人生は今や危機に瀕していた。10年にわたって彼のそばにいたErikを、3ヶ月前に癌で失ったのだ。
ErikはBitonの恋人であり、そして何よりも、従順で愛しい奴隷であった。

根っからのDom(主人)であるBitonは、それ以来喪失と、飢えにさいなまれていた。
誰かを支配したい欲望はあるが、クラブで誰を見てもそういう気持ちにはなれなかった。
そんな彼を見かねた友人が、傷ついて途方に暮れているSub(奴隷)を彼に紹介する。
迷い、自分ではどうすることもできないまま主人を求める奴隷、Cavan。Bitonは彼を30日間の契約で引き受けた。
それは喪失から気をそらす助けになるだろうし、もしかしたらまたBDSMの世界へ戻る足がかりになるかもしれない。

だがCavanはただのBDSMの奴隷ではなかった。
彼は、養子制度の隙間からこぼれおちて人身売買のシステムの中で売り飛ばされてきた、犯罪被害者であったのだ。
痛みと恐怖しか知らず、闇雲に主人に従うことしか知らない彼を、Bitonはその闇から救い出せるだろうか。
.....



10年以上のパートナー兼奴隷を癌で失ったDomと、現代式奴隷制の被害者でトラウマ持ちの奴隷の、30日の物語。

Cavanは里親の間をたらい回しにされる間、いつのまにか「奴隷」として訓練されて売られる存在になっていました。
彼はほかの生き方を知らず、支配するだけのマスターしか知らず、奴隷としての自分しか知りません。

Bitonも「マスター」であるけれども、彼とかつての「奴隷」のEricの間にあったものは豊かで深い、人間的なつながりです。支配することで愛情を示す者、支配を受け入れることで自分自身を解放し、完全に相手にゆだねる者。奴隷は主人を信頼し、主人は奴隷を支配しながら守り、彼らは対となる。
Cavanはそんな関係を知らない。ただ支配されることしか知らない彼は、ほかに生きる術を知らないから「主人」をほしがるだけで、その生き方は彼の選んだものではない。
BitonはそんなCavanをどうするべきかわからないけれども、もちろん、Cavanを見捨てることもできません。Bitonは犯罪を告発し、犯人をとらえる手助けをし、Cavanをカウンセラーに見せる。

彼らは2人とも迷っています。Bitonは愛するEricを失って人生の意義すら見失っているし、Cavanには何もかも理解しがたいことばかり。
わりとさっさとエロい関係になるのですが、それが解決にならないことは明らかです。セックスはその瞬間の迷いを吹きとばして体を満足させるけれども、何ひとつ変えることができない。
Cavanは迷える奴隷のままで、Bitonはそんな彼を支配の対象にはできない。Cavanが心底望まなければ、彼はBitonの「本当」の奴隷にはなれない。そして奴隷になれない相手を、Bitonはそばに置きつづけてはいられません。
どうしたらいいのかととまどい、もがく、両方の気持ちがよく書かれていると思います。

痛々しい奴隷と困りきった主人の話ですが、ちゃんと犯罪捜査やカウンセリングなど現実の側面も入ってきて、話にほどよい厚みがあります。
奴隷側からの「支配されたい」欲求を書いた話は多いけれども、主人側からの「支配したい」欲求、その切迫感を書いた話は珍しいので、そのあたりも読みどころ。Cavanにもちゃんと自立の気配が見えてきている、そういうラストも好感が持てます。

トラウマものが好きな人、主人/奴隷関係が好きな人におすすめ。

★BDSM
★人身売買

★Three-Star rating system★


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